インターネット層とは?データが世界中を旅する仕組みを徹底解説

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「インターネットってどうやって繋がってるの?」
「IPアドレスって何のためにあるの?」
「データがどうやって目的地に届くのか知りたい」

普段何気なく使っているインターネット。その裏側では、驚くほど精巧な仕組みが動いているんです。

その中核を担うのが「インターネット層」。この層のおかげで、あなたのメッセージは世界中のどこにでも正確に届けられます。この記事では、インターネット層の役割から具体的な仕組みまで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

読み終わる頃には、ネットワークの世界がもっと身近に感じられますよ!


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  1. インターネット層とは?データの「宅配便」を担当する階層
    1. TCP/IPモデルって何?
    2. インターネット層の役割
  2. インターネット層の3つの重要な役割
    1. 役割1:アドレッシング(住所付け)
    2. 役割2:ルーティング(経路選択)
    3. 役割3:パケット化(小包に分ける)
  3. インターネット層の主要プロトコル
    1. 1. IP(Internet Protocol)
    2. 2. ICMP(Internet Control Message Protocol)
    3. 3. ARP(Address Resolution Protocol)
    4. 4. IGMP(Internet Group Management Protocol)
  4. IPパケットの構造:データの「封筒」の中身
    1. IPヘッダー(宛名ラベル部分)
    2. ペイロード(データ部分)
  5. ルーティングの仕組み:データが目的地に届くまで
    1. ルーティングテーブル
    2. ホップバイホップ転送
    3. TTL(Time To Live)の役割
  6. 実践:インターネット層を体験してみよう
    1. pingコマンド:相手に到達できるか確認
    2. traceroute:経路を可視化
    3. IPアドレス確認
  7. IPv4とIPv6の違い
    1. IPv4の特徴
    2. IPv6の特徴
    3. 移行の現状
  8. プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレス
    1. プライベートIPアドレス
    2. グローバルIPアドレス
    3. NAT(Network Address Translation)
  9. インターネット層のセキュリティ
    1. IPスプーフィング
    2. IPsec(IP Security)
  10. よくある質問
    1. Q1. インターネット層とOSI参照モデルの違いは?
    2. Q2. ルーターとスイッチの違いは?
    3. Q3. IPv6に移行しないといけない?
    4. Q4. 自分のIPアドレスを隠せる?
  11. まとめ:インターネット層はネットワークの心臓部

インターネット層とは?データの「宅配便」を担当する階層

インターネット層は、TCP/IPモデルにおける4つの階層のうちの一つです。

TCP/IPモデルって何?

TCP/IPモデルとは、インターネット通信を4つの階層に分けて理解するための枠組みのこと。

4つの階層:

  1. アプリケーション層(メール、Webなど)
  2. トランスポート層(TCP、UDP)
  3. インターネット層(IP、ICMP)← 今日の主役
  4. ネットワークインターフェース層(イーサネット、Wi-Fiなど)

実例:
メールを送るとき、各層が順番に働きます:

  • アプリケーション層:メール内容を作成
  • トランスポート層:データを分割して送る準備
  • インターネット層:どのルートで届けるか決める
  • ネットワークインターフェース層:実際に物理的な電気信号に変換

インターネット層の役割

インターネット層の主な仕事は、データを正しい宛先に届けること

郵便配達に例えると:

  • 住所を書く(IPアドレスの付与)
  • 最適な配達ルートを決める(ルーティング)
  • 途中の配送センターを経由する(ルーターでの転送)

インターネット層の3つの重要な役割

役割1:アドレッシング(住所付け)

すべてのデバイスにIPアドレスという固有の識別番号を割り当てます。

IPアドレスとは:
ネットワーク上のデバイスを特定するための「住所」のようなもの。

実例:

送信元:192.168.1.10(あなたのPC)
宛先:172.217.175.46(Googleのサーバー)

この情報があるから、データは正しい相手に届きます。

役割2:ルーティング(経路選択)

データが宛先に到達するための最適な経路を決定します。

仕組み:
インターネットは無数のルーター(中継機器)が網の目のように繋がっています。インターネット層は、これらのルーターを経由する最適な道筋を判断するんです。

実例:
東京から大阪にデータを送る場合:

東京のPC → 東京のルーター → 名古屋のルーター → 大阪のルーター → 大阪のサーバー

このように、複数の中継地点を経由して届けられます。

役割3:パケット化(小包に分ける)

大きなデータをパケットという小さな単位に分割します。

パケットとは:
データを小さな塊に分けたもの。手紙を複数の封筒に分けて送るようなイメージです。

なぜ分けるの?

  • 大きなデータを一度に送ると、ネットワークが混雑する
  • 一部が失われても、その部分だけ再送すればいい
  • 複数の経路を使って効率的に送れる

実例:
1MBの写真を送る場合、約700個のパケット(1パケット約1500バイト)に分割されます。


インターネット層の主要プロトコル

インターネット層では、いくつかの重要なプロトコル(通信ルール)が働いています。

1. IP(Internet Protocol)

インターネット層の中核となるプロトコル。データの宛先指定と配送を担当します。

2つのバージョン:

IPv4(Internet Protocol version 4)

  • 現在最も広く使われているバージョン
  • アドレス形式:192.168.1.1のような4つの数字
  • アドレス総数:約43億個(不足気味)

IPv6(Internet Protocol version 6)

  • 次世代のバージョン
  • アドレス形式:2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334のような16進数
  • アドレス総数:事実上無限(340兆の1兆倍の1兆倍)

2. ICMP(Internet Control Message Protocol)

ネットワークの診断やエラー報告を行うプロトコルです。

主な用途:

  • pingコマンド(相手に到達できるか確認)
  • traceroute(経路を表示)
  • エラーメッセージの送信

実例:
「宛先に到達できません」というエラーメッセージは、ICMPが送っています。

3. ARP(Address Resolution Protocol)

IPアドレスからMACアドレス(物理アドレス)を調べるプロトコル。

MACアドレスとは:
ネットワーク機器に固有の物理的な識別番号。変更できないハードウェアの「シリアル番号」のようなものです。

なぜ必要?
IPアドレスは論理的な住所ですが、実際のデータ送信には物理アドレス(MACアドレス)も必要だからです。

実例:
「192.168.1.10というIPアドレスを持つ機器のMACアドレスは何?」と問い合わせて、「AA:BB:CC:DD:EE:FFです」という返事をもらいます。

4. IGMP(Internet Group Management Protocol)

マルチキャスト通信(一対多の通信)を管理するプロトコルです。

実例:
オンライン動画配信で、一つのストリームを複数の視聴者に効率的に届けるときに使われます。


IPパケットの構造:データの「封筒」の中身

IPパケットは、以下のような構造になっています。

IPヘッダー(宛名ラベル部分)

パケットの先頭にある制御情報で、主に以下が含まれます:

バージョン(4ビット)

  • IPv4かIPv6かを示す

ヘッダー長(4ビット)

  • ヘッダーのサイズ

サービスタイプ(8ビット)

  • 優先度や遅延要求を示す

全体の長さ(16ビット)

  • パケット全体のサイズ

識別子(16ビット)

  • 分割されたパケットを識別する番号

フラグとフラグメントオフセット

  • パケットの分割に関する情報

生存時間(TTL: Time To Live、8ビット)

  • パケットがネットワーク上に存在できる最大時間(ホップ数)
  • ルーターを通過するたびに1減り、0になると破棄される

プロトコル(8ビット)

  • 上位層のプロトコル(TCP、UDPなど)を示す

ヘッダーチェックサム(16ビット)

  • ヘッダーの誤り検出

送信元IPアドレス(32ビット)

  • 送信元の住所

宛先IPアドレス(32ビット)

  • 宛先の住所

ペイロード(データ部分)

実際に届けたいデータ本体が入っています。

実例:
メールの本文、Webページのデータ、動画ファイルの一部などです。


ルーティングの仕組み:データが目的地に届くまで

インターネット層の最も重要な機能、ルーティングについて詳しく見てみましょう。

ルーティングテーブル

各ルーターはルーティングテーブルという「道路地図」を持っています。

実例:

宛先ネットワーク        次のルーター        インターフェース
192.168.1.0/24         直接接続            eth0
10.0.0.0/8            192.168.1.254       eth0
0.0.0.0/0             203.0.113.1         eth1(デフォルトルート)

この表を見て、「この宛先には、こっちのルーターに転送すればいい」と判断します。

ホップバイホップ転送

データは、ルーターからルーターへ一歩ずつ転送されます。

実例:

1. 自宅のPC(192.168.1.10)
   ↓
2. 自宅のルーター(192.168.1.1)
   ↓
3. ISPのルーター1
   ↓
4. ISPのルーター2
   ↓
5. Googleのルーター
   ↓
6. Googleのサーバー(172.217.175.46)

各ルーターは「次にどこへ送るか」だけを判断します。最終目的地までの全経路を知っている必要はありません。

TTL(Time To Live)の役割

パケットがネットワーク上で無限にループするのを防ぐ仕組みです。

仕組み:

  1. パケット送信時、TTLに初期値(通常64や128)を設定
  2. ルーターを通過するたびにTTLが1減る
  3. TTLが0になったら、パケットを破棄してエラーメッセージを送信元に返す

実例:
経路設定が間違っていてパケットがループしても、TTLが0になれば自動的に破棄されます。これにより、ネットワークの混雑を防げるんです。


実践:インターネット層を体験してみよう

実際のコマンドで、インターネット層の動きを確認してみましょう。

pingコマンド:相手に到達できるか確認

Windows/Mac/Linux共通:

ping google.com

結果例:

PING google.com (172.217.175.46): 56 data bytes
64 bytes from 172.217.175.46: icmp_seq=0 ttl=116 time=10.5 ms
64 bytes from 172.217.175.46: icmp_seq=1 ttl=116 time=9.8 ms

読み方:

  • icmp_seq:パケットの順番
  • ttl=116:まだ116ホップ分の寿命が残っている
  • time=10.5 ms:往復にかかった時間(10.5ミリ秒)

traceroute:経路を可視化

データがどのルーターを経由しているか確認できます。

Windowsの場合:

tracert google.com

Mac/Linuxの場合:

traceroute google.com

結果例:

1  192.168.1.1 (192.168.1.1)  1.234 ms
2  10.0.0.1 (10.0.0.1)  5.678 ms
3  203.0.113.1 (203.0.113.1)  12.345 ms
4  172.217.175.46 (172.217.175.46)  15.678 ms

各行が一つのルーター(ホップ)を表しています。データがどんな道筋を辿っているか一目瞭然ですね。

IPアドレス確認

自分のIPアドレスを確認してみましょう。

Windowsの場合:

ipconfig

Mac/Linuxの場合:

ip addr show

または

ifconfig

プライベートIPアドレス(192.168.x.xなど)が表示されます。


IPv4とIPv6の違い

インターネット層の中核であるIPには、2つのバージョンがあります。

IPv4の特徴

アドレス形式:

192.168.1.1

4つの数字(0-255)をドット区切りで表現。

メリット:

  • シンプルで覚えやすい
  • 現在最も広く普及している
  • 対応機器が多い

デメリット:

  • アドレスが約43億個しかなく、不足している
  • ヘッダーが複雑でオプション機能の追加が難しい

IPv6の特徴

アドレス形式:

2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334

8つのグループを16進数で表現。

メリット:

  • アドレスが事実上無限(340兆の1兆倍の1兆倍)
  • ヘッダーが簡潔で処理が高速
  • セキュリティ機能が標準搭載(IPsec)
  • 自動設定機能が充実

デメリット:

  • アドレスが長くて覚えにくい
  • まだ完全には普及していない

移行の現状

現在はデュアルスタック(IPv4とIPv6の両方に対応)という方式で、徐々にIPv6への移行が進んでいます。

実例:
多くのWebサイトは、IPv4とIPv6の両方のアドレスを持っています。あなたのデバイスがIPv6に対応していれば、自動的にIPv6で接続します。


プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレス

IPアドレスには、2つの種類があります。

プライベートIPアドレス

家庭や会社のローカルネットワーク内で使われるアドレス。

範囲:

10.0.0.0 ~ 10.255.255.255
172.16.0.0 ~ 172.31.255.255
192.168.0.0 ~ 192.168.255.255

特徴:

  • インターネット上では使えない
  • 同じアドレスを他の家庭でも使える
  • 無料で自由に使える

実例:
あなたの自宅のWi-Fiに接続したスマホは、192.168.1.10のようなプライベートIPアドレスを持っています。

グローバルIPアドレス

インターネット上で使われる世界で唯一のアドレス。

特徴:

  • 世界中で重複しない固有のアドレス
  • ISP(インターネットサービスプロバイダ)から割り当てられる
  • インターネットに直接接続できる

実例:
あなたの家のルーターには、ISPから割り当てられたグローバルIPアドレス(例:203.0.113.45)があります。

NAT(Network Address Translation)

プライベートIPとグローバルIPを変換する仕組みです。

仕組み:

  1. 家のPCからインターネットにアクセス(プライベートIP使用)
  2. ルーターがアドレスをグローバルIPに変換
  3. インターネット上ではグローバルIPで通信
  4. 返信が来たら、ルーターがプライベートIPに戻して配送

これにより、一つのグローバルIPアドレスで複数のデバイスがインターネットを使えるんです。


インターネット層のセキュリティ

インターネット層にも、セキュリティ上の課題があります。

IPスプーフィング

送信元IPアドレスを偽装する攻撃。

危険性:

  • なりすましが可能
  • DoS攻撃(サービス妨害攻撃)に利用される

対策:

  • ファイアウォールでのフィルタリング
  • ingress/egressフィルタリング

IPsec(IP Security)

IPレベルでの暗号化と認証を提供するプロトコル。

機能:

  • データの暗号化
  • 送信元の認証
  • データの改ざん検出

使用例:
VPN(仮想プライベートネットワーク)でよく使われます。


よくある質問

Q1. インターネット層とOSI参照モデルの違いは?

OSI参照モデルは7層構造で、インターネット層に相当するのは「ネットワーク層」(第3層)です。TCP/IPモデルは実用的な4層構造を採用しています。

Q2. ルーターとスイッチの違いは?

ルーター:インターネット層(レイヤー3)で動作。異なるネットワーク間を接続。

スイッチ:通常はデータリンク層(レイヤー2)で動作。同じネットワーク内でデータを転送。

Q3. IPv6に移行しないといけない?

徐々に移行は進んでいますが、当面はIPv4とIPv6の両方が使われます。一般ユーザーは特に意識する必要はありません。

Q4. 自分のIPアドレスを隠せる?

VPNやプロキシを使えば、実際のIPアドレスを隠して別のIPアドレスで通信できます。ただし、完全な匿名性は保証されません。


まとめ:インターネット層はネットワークの心臓部

インターネット層は、データを正しい宛先に届けるための重要な階層です。

インターネット層の重要ポイント:

  • TCP/IPモデルの4層構造の一つ
  • アドレッシング、ルーティング、パケット化を担当
  • IPプロトコルが中核

主要プロトコル:

  • IP:データの宛先指定と配送
  • ICMP:診断とエラー報告
  • ARP:IPアドレスとMACアドレスの変換
  • IGMP:マルチキャスト管理

3つの重要な役割:

  1. アドレッシング(IPアドレスの付与)
  2. ルーティング(最適経路の選択)
  3. パケット化(データの分割)

IPアドレスの種類:

  • IPv4:現在の主流(約43億個)
  • IPv6:次世代(事実上無限)
  • プライベートIP:ローカルネットワーク用
  • グローバルIP:インターネット用

実用コマンド:

  • ping:到達確認
  • traceroute/tracert:経路表示
  • ipconfig/ifconfig:IPアドレス確認

インターネット層の仕組みを理解すると、ネットワークトラブルの解決やセキュリティ対策にも役立ちます。普段は意識しないこの層が、あなたのデータを世界中に届けているんです。

快適なネットワークライフを!

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