ストレージ規格を完全理解【HDD・SSD選びの決定版ガイド】

プログラミング・IT

「パソコンのストレージを増設したいけど、規格が多すぎて分からない…」
「SATAとNVMeって何が違うの?M.2って何?」

パソコンやサーバーのストレージを選ぶとき、様々な規格が出てきて混乱してしまいますよね。

ストレージ規格とは、HDDやSSDをコンピュータに接続するための「接続方式」や「形状」を定めたルールのことです。規格によって転送速度や互換性が大きく変わるため、正しく理解することがとても重要なんです。

この記事では、ストレージ規格の基礎から実践的な選び方まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます!


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ストレージ規格とは?基本を理解しよう

規格の2つの要素

ストレージ規格を理解するには、2つの視点が必要です。

物理的な規格(フォームファクター):
ストレージの大きさや形状を定めたもの

例:

  • 2.5インチ
  • 3.5インチ
  • M.2

接続方式の規格(インターフェース):
データをどうやって送受信するかを定めたもの

例:

  • SATA
  • NVMe
  • PCIe

身近な例で理解しよう

スマホの充電ケーブルをイメージしてください。

コネクタの形状(フォームファクター):

  • USB Type-C
  • Lightning
  • Micro USB

通信規格(インターフェース):

  • USB 2.0(遅い)
  • USB 3.0(速い)
  • Thunderbolt(超高速)

同じType-Cでも、中身の通信規格が違えば速度が全然違いますよね。ストレージも同じ考え方なんです。


主なフォームファクター(物理規格)

3.5インチ

デスクトップPC向けの最も一般的なサイズです。

特徴:

  • サイズ:幅約10cm × 奥行き約14.6cm × 高さ約2.6cm
  • 主にHDDで使用
  • 大容量が可能(最大20TB以上)
  • デスクトップPCの内部に取り付ける

用途:

  • デスクトップPC
  • NAS(ネットワークストレージ)
  • サーバー

メリット:
容量あたりの価格が安い

デメリット:
サイズが大きく、ノートPCには使えない

2.5インチ

ノートPC向けの小型サイズです。

特徴:

  • サイズ:幅約7cm × 奥行き約10cm × 高さ約0.7~0.95cm
  • HDDとSSDの両方で使用
  • ノートPCやコンパクトデスクトップに最適

用途:

  • ノートPC
  • PS4などのゲーム機
  • 小型デスクトップPC

接続方式:
ほとんどがSATA接続

M.2

最新の小型規格です。

特徴:

  • サイズ:幅約2.2cm × 長さ様々(42mm、60mm、80mmなど)
  • 基板むき出しの形状
  • 超薄型・軽量
  • 高速なNVMe接続が可能

サイズ表記:

M.2 2280 = 幅22mm × 長さ80mm
M.2 2242 = 幅22mm × 長さ42mm
M.2 22110 = 幅22mm × 長さ110mm

最も一般的なのはM.2 2280です。

用途:

  • 最新のノートPC
  • 最新のデスクトップPC(マザーボードに直接取り付け)
  • 小型PC

メリット:

  • コンパクト
  • 高速(NVMe対応の場合)
  • ケーブル不要

デメリット:

  • 価格がやや高い
  • 発熱しやすい

U.2

エンタープライズ向けの規格です。

特徴:

  • 2.5インチサイズだがSATA接続より高速
  • データセンターやサーバー向け
  • 一般ユーザーには縁が薄い

mSATA

古い規格で、現在はほとんど使われていません。

M.2の前身となった規格で、小型ノートPCで使われていました。


主なインターフェース(接続規格)

SATA(サタ)

正式名称:
Serial ATA(シリアル・エーティーエー)

世代と速度:

SATA 1.0(SATA I):

  • 最大転送速度:1.5Gbps(約150MB/s)
  • 2003年登場

SATA 2.0(SATA II):

  • 最大転送速度:3Gbps(約300MB/s)
  • 2004年登場

SATA 3.0(SATA III):

  • 最大転送速度:6Gbps(約600MB/s)
  • 2009年登場
  • 現在の主流

特徴:

  • L字型のコネクタ
  • 電源ケーブルと通信ケーブルが別々
  • 安価で広く普及
  • 下位互換性あり(SATA 3.0のSSDをSATA 2.0で使える)

用途:

  • 2.5インチSSD/HDD
  • 3.5インチHDD
  • 光学ドライブ

メリット:

  • コストが安い
  • 対応機器が多い
  • 取り付けが簡単

デメリット:

  • 速度に限界がある(最大600MB/s程度)
  • ケーブルが必要

NVMe(エヌブイエムイー)

正式名称:
Non-Volatile Memory Express

速度:

  • 理論上:最大32Gbps以上
  • 実測:1,000~7,000MB/s(製品による)
  • SATAの約10倍の速度

特徴:

  • PCIe接続を使用
  • SSDに最適化された規格
  • 非常に高速
  • 主にM.2形状で使用

世代:

NVMe Gen 3(PCIe 3.0):

  • 最大約3,500MB/s

NVMe Gen 4(PCIe 4.0):

  • 最大約7,000MB/s

NVMe Gen 5(PCIe 5.0):

  • 最大約14,000MB/s
  • 2023年頃から登場

用途:

  • ハイエンドPC
  • ゲーミングPC
  • クリエイター向けPC
  • 最新のノートPC

メリット:

  • 圧倒的な速度
  • 低レイテンシ
  • 将来性がある

デメリット:

  • 価格が高い
  • 発熱が大きい
  • 古いPCでは使えない

PCIe(ピーシーアイイー)

正式名称:
PCI Express(Peripheral Component Interconnect Express)

世代と速度(1レーン):

  • PCIe 3.0:約1GB/s
  • PCIe 4.0:約2GB/s
  • PCIe 5.0:約4GB/s

レーン数:
NVMe SSDは通常、PCIe x4(4レーン)を使用します。

PCIe 3.0 x4 = 約4GB/s(約3,500MB/s)
PCIe 4.0 x4 = 約8GB/s(約7,000MB/s)

特徴:

  • マザーボードの拡張スロット規格
  • ストレージだけでなく、グラフィックカードなどにも使用
  • NVMeはPCIeを利用している

SAS

正式名称:
Serial Attached SCSI

特徴:

  • エンタープライズ向け
  • 高信頼性
  • サーバーやデータセンター向け
  • 一般ユーザーには不要

転送速度の比較

実際の使用感を比較してみましょう。

規格別の理論値

HDD(SATA)        :100~200 MB/s
SATA SSD           :500~550 MB/s
NVMe Gen 3 SSD     :1,500~3,500 MB/s
NVMe Gen 4 SSD     :5,000~7,000 MB/s
NVMe Gen 5 SSD     :10,000~14,000 MB/s

実用面での体感

OSの起動時間(Windows):

  • HDD:30~60秒
  • SATA SSD:10~15秒
  • NVMe SSD:5~10秒

10GBのファイルコピー:

  • HDD:約60~100秒
  • SATA SSD:約20秒
  • NVMe Gen 3:約5~10秒
  • NVMe Gen 4:約2~3秒

ゲームのロード時間:

  • HDD:30~60秒
  • SATA SSD:10~20秒
  • NVMe SSD:5~10秒

M.2の種類と互換性

M.2は形状の規格ですが、接続方式が複数あります。

M.2 SATA

特徴:

  • M.2の形状
  • 接続はSATA(最大600MB/s)
  • 価格が安い

見分け方:
切り欠き(ノッチ)が「B+M Key」または「M Key」

M.2 NVMe

特徴:

  • M.2の形状
  • 接続はNVMe(PCIe経由)
  • 高速(1,000MB/s以上)

見分け方:
切り欠きが「M Key」

互換性の注意点

M.2スロットの対応確認が必要:

マザーボードのM.2スロットには、以下の種類があります。

  • SATA専用:M.2 SATAのみ対応
  • NVMe専用:M.2 NVMeのみ対応
  • 両対応:どちらも使える

重要:
購入前に、マザーボードの仕様書で対応を確認しましょう。


ストレージの選び方

用途別の推奨規格

日常使い・オフィスワーク:

  • SATA SSD(2.5インチまたはM.2 SATA)
  • 容量:256GB~500GB
  • 理由:十分な速度でコストも安い

ゲーミングPC:

  • NVMe Gen 3 または Gen 4 SSD(M.2)
  • 容量:500GB~1TB
  • 理由:ゲームのロードが速い

クリエイター(動画編集・3DCGなど):

  • NVMe Gen 4 SSD(M.2)
  • 容量:1TB~2TB
  • 理由:大容量ファイルの読み書きが高速

データ保管用:

  • 3.5インチ HDD
  • 容量:4TB~20TB
  • 理由:大容量で安価

ノートPC:

  • M.2 NVMe SSD(2280)
  • 容量:500GB~1TB
  • 理由:小型で高速

予算別の選び方

予算重視(~1万円):

  • SATA SSD 500GB程度
  • または M.2 SATA SSD 500GB

バランス重視(1~2万円):

  • M.2 NVMe Gen 3 SSD 1TB
  • 最もコスパが良い

性能重視(2万円~):

  • M.2 NVMe Gen 4 SSD 1TB以上
  • ハイエンド向け

容量の選び方

OSとアプリのみ:

  • 256GB~500GB

OSとゲーム数本:

  • 500GB~1TB

OSと大量のゲーム・制作データ:

  • 1TB~2TB

バックアップや保管用:

  • 2TB~(HDD推奨)

接続方法と取り付け

2.5インチ・3.5インチ SSD/HDD

必要なもの:

  • SATAケーブル(通信用)
  • SATA電源ケーブル(電源用)
  • ネジ(固定用)

手順:

  1. ドライブベイに取り付け
  2. SATAケーブルをマザーボードに接続
  3. 電源ケーブルを接続
  4. ネジで固定

M.2 SSD

必要なもの:

  • 固定用ネジ(通常マザーボードに付属)
  • ヒートシンク(発熱対策、あると良い)

手順:

  1. マザーボードのM.2スロットを確認
  2. 斜めに差し込む
  3. 水平に倒す
  4. ネジで固定

注意点:

  • 静電気に注意(基板に直接触らない)
  • 切り欠きの位置を確認
  • 無理に押し込まない

性能を最大限に引き出す設定

BIOS/UEFIの設定

NVMeをブートドライブにする場合:

  1. BIOSに入る(起動時にDelete/F2キー)
  2. Boot順序でNVMe SSDを最優先に設定
  3. AHCIモードを確認(IDEではない)

Windows の設定

TRIM機能の確認:
SSDの寿命を延ばす機能です。

# コマンドプロンプトで確認
fsutil behavior query DisableDeleteNotify

# 0 = 有効(正常)
# 1 = 無効(要対処)

書き込みキャッシュの有効化:

  1. デバイスマネージャーを開く
  2. ディスクドライブを展開
  3. 対象ドライブを右クリック → プロパティ
  4. ポリシータブで「書き込みキャッシュを有効にする」にチェック

温度管理

NVMe SSDは熱に弱い:

  • ヒートシンクの装着を推奨
  • マザーボード付属のヒートシンクがあれば使用
  • サーマルパッドで熱を逃がす

温度確認ツール:

  • CrystalDiskInfo(無料)
  • HWiNFO(無料)

最新トレンドと今後の展望

PCIe 5.0の普及

2023年頃から、PCIe 5.0対応のNVMe SSDが登場しています。

特徴:

  • 最大14,000MB/s以上
  • 発熱が大きい(積極的な冷却が必要)
  • 価格が高い

DirectStorage

Windows 11とXbox Series X/Sで採用された新技術です。

特徴:

  • ゲームのロード時間を大幅短縮
  • NVMe SSDが必須
  • GPUとの直接通信

CXL(Compute Express Link)

次世代のメモリ・ストレージ接続規格です。

特徴:

  • CPUとデバイス間の超高速接続
  • データセンター向け
  • 一般向けは数年先

よくある質問

Q1. SATAとNVMe、どちらを選ぶべき?

SATAを選ぶべき人:

  • 予算を抑えたい
  • 日常使いが中心
  • 古いPC

NVMeを選ぶべき人:

  • 高速を求める
  • ゲームや動画編集をする
  • 最新のPC

一般的には、価格差が小さくなっているため、NVMeをおすすめします。

Q2. Gen 3とGen 4、体感差はある?

日常使いでは、ほとんど差を感じません。

差を感じる場面:

  • 大容量ファイルのコピー
  • 4K/8K動画の編集
  • ゲームのロード(一部)

コストを考えると、Gen 3でも十分です。

Q3. M.2スロットが複数あるけど、どれを使えばいい?

優先順位:

  1. CPU直結のM.2スロット(最速)
  2. チップセット経由のM.2スロット

マザーボードの説明書で、どのスロットがCPU直結か確認しましょう。

Q4. HDDは完全に不要?

いいえ、用途次第です。

HDDが適している用途:

  • 大容量データの保管
  • バックアップ
  • 動画や写真のアーカイブ

おすすめ構成:

  • システム:NVMe SSD(高速)
  • データ保管:HDD(大容量・安価)

Q5. 古いPCでもNVMe SSDは使える?

マザーボードにM.2スロットがあれば使えます。

ただし、以下の制限があります。

  • PCIe Gen 2まで:速度が制限される
  • 2015年以前のPC:対応していないことが多い

確認方法:マザーボードの仕様書を見る


主要メーカーと製品の選び方

信頼性の高いメーカー

SSD:

  • Samsung(サムスン):高性能・高信頼性
  • Crucial(クルーシャル):コスパ良好
  • Western Digital(WD):バランス型
  • Kingston(キングストン):安定性重視

HDD:

  • Western Digital(WD):シェアNo.1
  • Seagate(シーゲート):大容量が得意
  • TOSHIBA(東芝):信頼性が高い

製品選びのポイント

保証期間:

  • 3年以上が望ましい
  • 5年保証の製品も増えている

TBW(Total Bytes Written):
SSDの書き込み寿命の指標

高い方が長寿命
例:600TBW = 600TB書き込める

MTBF(Mean Time Between Failures):
平均故障時間

高い方が信頼性が高い
例:180万時間 = 約200年

まとめ:自分に合ったストレージ規格を選ぼう

ストレージ規格について、基礎から実践まで解説してきました。

重要ポイントのおさらい:

  1. 規格は物理形状と接続方式の組み合わせ
    M.2 SATAとM.2 NVMeは別物
  2. 速度ならNVMe、コストならSATA
    用途と予算で選ぶ
  3. 日常使いならGen 3で十分
    Gen 4/5は特殊用途向け
  4. 互換性の確認が最重要
    マザーボードの対応を必ず確認
  5. HDDも現役
    大容量保管にはまだ有用

ストレージは、パソコンの快適さを大きく左右する重要なパーツです。この記事を参考に、あなたの用途に最適なストレージを見つけてくださいね!

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