家族や職場で複数のパソコンを使っていると、「あのファイル、別のパソコンに入ってるんだよな…」という場面、よくありますよね。
USBメモリで毎回コピーするのは面倒だし、クラウドストレージは月額料金がかかる。そんなときに便利なのが「ファイルサーバー」です。
この記事では、無料のOS「Ubuntu」を使って、自宅や小規模オフィスで使えるファイルサーバーを構築する方法を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
古いパソコンが1台あれば、誰でも今日から始められますよ。
ファイルサーバーって何?どんなメリットがあるの?
ファイルサーバーの基本
ファイルサーバーとは、ネットワーク上でファイルを保存・共有するための専用コンピュータのことです。
簡単に言えば「みんなで使える共有のハードディスク」だと考えてください。
こんな便利な使い方ができます
家庭での活用例
- 家族の写真や動画を一箇所にまとめて保存
- スマートフォンのバックアップ先として利用
- メディアファイルをテレビやゲーム機で再生
小規模オフィスでの活用例
- 社内文書の共有と一元管理
- プロジェクトファイルのチーム共有
- 定期的な自動バックアップの実現
なぜUbuntuなのか?
Ubuntuを選ぶ理由は大きく3つあります。
完全無料で使える
WindowsやmacOSと違い、ライセンス料が一切かかりません。古いパソコンを再活用できるので経済的です。
動作が軽くて安定している
サーバー用途に最適化されているため、古いスペックのパソコンでもサクサク動きます。24時間365日稼働させても安定性は抜群。
セキュリティが強固
定期的なセキュリティアップデートが提供されるため、大切なデータを安全に保管できます。
構築前に準備するもの
必要な機器とスペック
サーバー用パソコン
- CPU:デュアルコア以上(Core 2 Duo程度でも可)
- メモリ:最低2GB(4GB以上推奨)
- ストレージ:用途に応じて(最低100GB)
- ネットワーク:有線LANポート必須
使わなくなった古いデスクトップPCやノートPCで十分です。省電力を重視するなら、ラズベリーパイなどのシングルボードコンピュータも選択肢になります。
その他の準備物
- 有線LANケーブル
- ルーターまたはハブ
- USBメモリ(Ubuntuインストール用、最低4GB)
どの共有方法を選ぶ?
Ubuntuには主に2つのファイル共有方式があります。
Samba(サンバ)
Windowsの共有機能と互換性がある方式です。Windows、Mac、Linuxすべてから簡単にアクセスできるのが最大の特徴。
家庭や小規模オフィスで最も使いやすい選択肢です。
NFS(エヌエフエス)
Linux専用の共有方式で、LinuxやMac間でのファイル共有に特化しています。設定はやや複雑ですが、Linux環境では高速で効率的。
どちらを選ぶべき?
Windowsパソコンがある環境なら、迷わずSambaを選んでください。Linux専用環境でない限り、Sambaが万能です。
Ubuntuのインストール手順
Ubuntu Serverをダウンロード
公式サイト(ubuntu.com)から「Ubuntu Server」の最新LTS版をダウンロードします。
LTSとは「Long Term Support(長期サポート)」の略で、5年間のセキュリティアップデートが保証されています。安定性を重視するサーバーには必ずLTS版を選びましょう。
インストールメディアの作成
ダウンロードしたファイルをUSBメモリに書き込みます。
Windowsなら「Rufus」、Macなら「balenaEtcher」という無料ソフトが便利です。これらのツールを使えば、数クリックでインストール用USBが完成します。
基本的なインストールの流れ
- USBメモリをパソコンに挿入して起動
- 言語は「English」を選択(日本語も選べますが、後々のトラブルシューティングで英語の方が情報が多い)
- キーボードレイアウトで「Japanese」を選択
- ネットワーク設定は自動取得(DHCP)でOK
- ストレージは「Use entire disk」で全体を使う
- ユーザー名とパスワードを設定
インストールには20〜30分程度かかります。
初期設定のポイント
インストール完了後、最初にやるべきことが2つあります。
システムのアップデート
セキュリティを最新の状態にするため、必ず実行してください。
sudo apt update
sudo apt upgrade -y
このコマンドで、すべてのソフトウェアが最新版になります。
固定IPアドレスの設定
サーバーは毎回同じIPアドレスを使う必要があります。
設定方法は2通りあり、ルーター側で固定する方法と、Ubuntu側で設定する方法があります。ルーターの管理画面から「DHCP予約」や「静的リース」という機能を使うのが最も簡単です。
Sambaでファイル共有を設定する
Sambaのインストール
まずはSambaをインストールしましょう。
sudo apt install samba -y
インストールが完了したら、Sambaが正しく動作しているか確認します。
sudo systemctl status smbd
「active (running)」と表示されればOKです。
共有フォルダの作成
ファイルを保存する場所を作ります。
sudo mkdir -p /srv/samba/share
sudo chmod 777 /srv/samba/share
/srv/samba/share
というフォルダを作成し、誰でも読み書きできる権限を設定しました。
セキュリティが気になる方は、後で詳しく権限を調整できます。
Sambaの設定ファイルを編集
設定ファイルを開いて、共有設定を追加します。
sudo nano /etc/samba/smb.conf
ファイルの最後に、以下の内容を追加してください。
[SharedFiles]
comment = Shared Folder
path = /srv/samba/share
browseable = yes
read only = no
guest ok = yes
それぞれの意味を簡単に説明します。
[SharedFiles]
:ネットワーク上に表示される共有名comment
:共有フォルダの説明path
:実際のフォルダの場所browseable
:ネットワーク上で見えるようにするread only
:書き込みを許可するguest ok
:パスワードなしでアクセスを許可
設定を保存したら、Sambaを再起動します。
sudo systemctl restart smbd
Sambaユーザーの追加(セキュリティ強化)
パスワード保護をかけたい場合は、専用ユーザーを作成します。
sudo smbpasswd -a ユーザー名
パスワードを2回入力すれば完了です。
設定ファイルのguest ok = yes
をguest ok = no
に変更すると、このユーザーでないとアクセスできなくなります。
他のパソコンからアクセスする方法
Windowsからのアクセス
エクスプローラーを開いて、アドレスバーに以下のように入力します。
\\サーバーのIPアドレス\SharedFiles
例えば、サーバーのIPアドレスが192.168.1.100
なら、\\192.168.1.100\SharedFiles
と入力してEnterキーを押すだけ。
共有フォルダが表示されたら成功です!
ネットワークドライブとして割り当て
毎回IPアドレスを入力するのが面倒な場合は、ドライブとして登録できます。
エクスプローラーで「ネットワークドライブの割り当て」を選び、好きなドライブレター(ZドライブやXドライブなど)を選択すれば、マイコンピュータから簡単にアクセスできるようになります。
Macからのアクセス
Finderを開いて、メニューバーから「移動」→「サーバへ接続」を選択します。
サーバアドレス欄に以下を入力してください。
smb://サーバーのIPアドレス/SharedFiles
「接続」をクリックすれば、共有フォルダがマウントされます。
スマートフォンからのアクセス
AndroidやiPhoneからもアクセス可能です。
Androidの場合
「Solid Explorer」や「CX File Explorer」などのファイル管理アプリをインストール。アプリ内でネットワークストレージを追加し、サーバーのIPアドレスを設定すればOKです。
iPhoneの場合
iOS 13以降なら、標準の「ファイル」アプリで接続できます。右上の「…」から「サーバへ接続」を選び、smb://IPアドレス
を入力するだけ。
セキュリティ対策は必須
ファイアウォールの設定
Ubuntuには「ufw」というファイアウォールツールが標準搭載されています。
必要なポートだけを開放しましょう。
sudo ufw allow samba
sudo ufw enable
これでSambaに必要なポート(139番と445番)だけが開きます。
アクセス制限の設定
特定のIPアドレスからのみアクセスを許可する設定も可能です。
Sambaの設定ファイルに以下を追加してください。
hosts allow = 192.168.1.0/24
hosts deny = 0.0.0.0/0
これで、192.168.1.xxxのネットワーク内からのみアクセスできるようになります。外部からの不正アクセスを防げるわけですね。
定期的なバックアップ
サーバー自体が壊れたときのために、外付けハードディスクへの自動バックアップを設定しましょう。
「rsync」というツールを使えば、変更されたファイルだけを効率的にバックアップできます。cronという自動実行機能と組み合わせれば、毎晩決まった時間に自動バックアップすることも簡単です。
よくあるトラブルと解決方法
接続できない場合のチェックポイント
ネットワークの確認
サーバーと接続したいパソコンが同じネットワークにいるか確認してください。別のWi-Fiネットワークに繋がっていると、アクセスできません。
ファイアウォールの確認
WindowsやMacのファイアウォールがブロックしている可能性があります。一時的に無効にして試してみましょう。
Sambaサービスの状態確認
サーバー側で以下のコマンドを実行してください。
sudo systemctl status smbd
停止している場合は、sudo systemctl start smbd
で起動します。
速度が遅い場合
有線接続を使う
Wi-Fi接続だと速度が不安定になりがちです。サーバーは必ず有線LANで接続しましょう。
ギガビット対応機器を使う
古いルーターやLANケーブルを使っていると、100Mbpsまでしか出ません。ギガビット(1000Mbps)対応の機器に交換すると、劇的に速くなります。
MTU値の最適化
ネットワーク設定の「MTU」という値を調整すると、転送効率が上がることがあります。ただし、これは上級者向けの設定なので、基本設定で問題なければ触らないほうが無難です。
容量不足への対処
外付けハードディスクの追加
USBやeSATAで外付けハードディスクを接続して、新しい共有フォルダとして設定できます。
マウント設定をしっかりやれば、サーバー起動時に自動的に認識されるようになります。
古いファイルの整理
定期的に不要なファイルを削除する習慣をつけましょう。「Duplicate Files Finder」のようなツールを使えば、重複ファイルも簡単に見つけられます。
まとめ:あなたも今日からファイルサーバー管理者
Ubuntuを使ったファイルサーバーの構築方法を解説してきました。
この記事で学んだポイント
- 古いパソコンでも無料でファイルサーバーを構築できる
- Sambaを使えばWindowsやMacからも簡単にアクセス可能
- セキュリティ対策をしっかりすれば安全に運用できる
- トラブルが起きても基本的な対処法で解決できる
最初は難しく感じるかもしれませんが、一度設定してしまえば、あとは快適なファイル共有生活が待っています。
クラウドストレージの月額料金を払い続けるより、初期投資だけで済むファイルサーバーのほうが、長期的には確実にお得です。
週末の数時間を使って、ぜひチャレンジしてみてください。
データ管理の自由と安心を、あなたの手に取り戻しましょう!
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