もし、あなたの前に現れた人物が、次の瞬間には全く別の姿に変わっていたらどう思いますか?
そして、その存在が人々に狂気と混乱をもたらすために暗躍していると知ったら?
クトゥルフ神話の世界には、千もの姿を持ち、人間たちの破滅を楽しむ恐ろしい存在がいるんです。
この記事では、クトゥルフ神話最恐のトリックスター「ナイアーラトテップ」について、その神秘的な系譜や変幻自在の姿、恐るべき特徴を分かりやすくご紹介します。
概要
ナイアーラトテップ(英語:Nyarlathotep)は、クトゥルフ神話に登場する架空の神格です。
他の邪神たちが眠りについたり、遠い星に封印されている中、唯一自由に活動できる存在として知られています。
「外なる神」と呼ばれる上位の神々の使者でありながら、自分自身も強大な力を持つという、特殊な立ち位置にいるんですね。
人間の姿に化けて社会に紛れ込み、科学技術や魔術を教えたりしますが、それを受け取った人間は大抵破滅してしまいます。まるで人間の堕落と破滅を楽しんでいるかのような、悪意ある神なんです。
系譜
ナイアーラトテップの神話上の位置づけは、とても複雑で興味深いものになっています。
アザトースとの関係
宇宙の中心に存在する最強の邪神アザトースの従者、あるいは息子とされています。アザトースは「盲目にして白痴の神」と呼ばれ、知性を持たないため、ナイアーラトテップがその意思を代行しているんです。
外なる神々との関係
- 使者として仕える:外なる神々の総意を体現し、その意思を伝える
- メッセンジャー:神々と人間の間を取り持つ(ただし人間にとっては災いしかもたらさない)
- 代行者:眠っている神々の代わりに活動する
敵対関係
唯一恐れる存在として、火の精クトゥグアがいます。地の精であるナイアーラトテップにとって、火の精は天敵なんですね。
姿・見た目
ナイアーラトテップの最大の特徴は、千もの異なる姿を持つことです。
主な化身(姿)
暗黒のファラオ
- 背の高い浅黒い肌の男性
- エジプトの古代王のような風貌
- 人間に最も近い姿で現れる時の形態
闇をさまようもの
- 燃える三つの眼
- コウモリのような黒い翼
- 触手を持つ異形の姿
- 光を嫌い、闇の中で活動
無貌の神
- 顔のない黒いスフィンクス
- 三重の冠をかぶる
- ハゲタカの翼とハイエナの胴体
- 鋭い鉤爪を持つ
夜に吠えるもの
- 円錐形の頭部(顔がない)
- 流動的な肉体に触手
- 北米の森に現れる姿
これらの姿は状況や目的に応じて使い分けられ、同時に複数の場所で違う姿で活動することもできるそうです。
特徴
ナイアーラトテップには、他の邪神とは一線を画す独特な特徴があります。
行動パターンの特徴
積極的な人間への干渉
- 他の邪神が人間に無関心なのに対し、積極的に関わる
- 人間社会に紛れ込んで暗躍
- 科学者や宗教指導者に化けることも
トリックスター的性質
- 人を騙して破滅に導く
- 回りくどい方法で苦しめることを好む
- 混沌と狂気をもたらすことが目的
知性と悪意
- 高い知性を持ち、計画的に行動
- 純粋な悪意で動いている
- 人間の破滅を楽しんでいる節がある
能力
変身能力
あらゆる姿に変化可能。人間はもちろん、動物や怪物の姿にもなれます。
次元移動
あらゆる時空に同時に存在でき、瞬間移動も可能です。
精神攻撃
見た者に狂気をもたらし、集団を発狂させることができます。
不死性
通常の方法では決して殺すことができません。
伝承
ナイアーラトテップが登場する主な物語をご紹介します。
ラヴクラフトの作品での登場
「ナイアーラトテップ」(1920年)
初登場作品。エジプト人のような姿で現れ、奇妙な科学実験を見せて人々を狂気に陥れます。電気装置を使った不思議な実演は、見た者を恐怖で震え上がらせたそうです。
「未知なるカダスを夢に求めて」(1926-27年)
主人公ランドルフ・カーターを騙そうとしますが、最終的に逃げられてしまい、悔しがる場面も。邪神にも感情があることが分かる貴重なエピソードです。
「闇をさまようもの」(1935年)
プロヴィデンスの教会に潜む、光を恐れる怪物として登場。「星の智慧派」という邪教の崇拝対象として描かれています。
現代の創作での扱い
近年では様々な作品でモチーフとして使用され、特に日本では「這いよれ!ニャル子さん」という作品で美少女キャラクター化されるなど、独特の展開を見せています。ゲームやアニメにも頻繁に登場し、クトゥルフ神話の中でも特に人気の高いキャラクターとなっているんです。
出典
ナイアーラトテップは、アメリカの作家H.P.ラヴクラフト(1890-1937)によって創造されました。
誕生の経緯
1920年、ラヴクラフトは奇妙な悪夢を見ました。夢の中で「ナイアーラトテップ」という名前を聞き、その存在について理解したような感覚を覚えたそうです。
この夢をもとに書かれたのが、散文詩「ナイアーラトテップ」でした。
名前の由来
エジプト風の響きを持つこの名前は、以下の要素から影響を受けた可能性があります:
- 古代エジプトのファラオの名前(〜ホテプ)
- ダンセイニ作品の登場人物名
- ラヴクラフトの造語
クトゥルフ神話での発展
その後、ロバート・ブロックやオーガスト・ダーレスなど多くの作家によって設定が追加され、現在のような複雑で魅力的なキャラクターに発展しました。
まとめ
ナイアーラトテップは、クトゥルフ神話最恐のトリックスターにして、千の顔を持つ混沌の使者です。
重要なポイント
- 外なる神々の使者でありながら、自身も強大な力を持つ
- 千もの化身を持ち、自在に姿を変える
- 人間社会に積極的に干渉し、破滅をもたらす
- 高い知性と悪意を持つ、珍しいタイプの邪神
- 唯一封印を免れた自由に活動できる神
- ラヴクラフトの悪夢から生まれた存在
他の邪神たちが遠い星で眠っている間も、ナイアーラトテップは今も世界のどこかで暗躍しているかもしれません。
もしかしたら、あなたの隣にいる人も…?
コメント