「グラフィックカードはPCIe 4.0対応」「SSDはPCIe Gen3」
パソコンのスペック表でこんな表記を見たことはありませんか?
PCIeは、パソコンの性能を大きく左右する重要な接続規格です。グラフィックカードやSSD、拡張カードなど、さまざまなパーツがこの規格を使って接続されています。
「難しそう」と思うかもしれませんが、基本を理解すれば誰でも分かります。この記事では、PCIeインターフェースの仕組みから種類、選び方、トラブル対処まで分かりやすく解説していきます。
パソコンをもっと深く理解して、自分に合った構成を選べるようになりましょう!
PCIeって何?基本から理解しよう
インターフェースとは何か
まず「インターフェース」という言葉から説明しましょう。
インターフェースとは、異なる機器同士をつなぐための「接続規格」や「接点」のこと。パソコンでは、マザーボード(本体の基板)と各種パーツをつなぐ役割を果たします。
例えるなら、電車の線路のようなもの。規格が統一されているから、いろんなメーカーの車両(パーツ)が走れる(接続できる)んですね。
PCIeの正式名称と読み方
PCIeは「ピーシーアイイー」または「ピーシーアイエクスプレス」と読みます。
正式名称は「PCI Express(ピーシーアイ エクスプレス)」。その頭文字を取って「PCIe」と略されることが多いですね。
PCIeが生まれた背景
以前は「PCI」という古い規格が使われていました。
しかし、グラフィックカードやストレージの高速化に対応できなくなり、2004年に後継規格としてPCIeが登場。現在では、パソコンの拡張スロットの標準規格として広く使われています。
PCIeの主な役割
データのやり取りを高速化
マザーボードと各種パーツの間で、大量のデータを素早く転送します。
ゲームの映像処理や、大容量ファイルの読み書きなど、高速なデータ転送が必要な場面で活躍するんです。
拡張性を提供
後から機能を追加できるのがPCIeの魅力。
グラフィックカード、SSD、サウンドカード、ネットワークカードなど、さまざまなパーツを追加できます。
柔軟性が高い
用途に応じて、スロットのサイズや速度を選べる設計になっています。
この柔軟性が、PCIeが長く使われている理由の一つですね。
PCIeの仕組みを知ろう
レーンという概念
PCIeの大きな特徴が「レーン」という仕組みです。
レーンとは、データが通る道のこと。高速道路に例えると分かりやすいかもしれません。1車線より2車線、2車線より4車線の方が、たくさんの車(データ)が通れますよね。
レーン数の種類
- x1(バイワン):1レーン
- x4(バイフォー):4レーン
- x8(バイエイト):8レーン
- x16(バイシックスティーン):16レーン
数字が大きいほど、同時に転送できるデータ量が増えます。
世代による速度の違い
PCIeには世代(Generation、ジェネレーション)があり、新しい世代ほど高速です。
各世代の転送速度(1レーンあたり)
- PCIe 1.0:250MB/秒
- PCIe 2.0:500MB/秒
- PCIe 3.0:985MB/秒(約1GB/秒)
- PCIe 4.0:1,969MB/秒(約2GB/秒)
- PCIe 5.0:3,938MB/秒(約4GB/秒)
- PCIe 6.0:7,877MB/秒(約8GB/秒、2022年登場)
世代が1つ上がるごとに、転送速度が約2倍になっているんです。
実際の転送速度の計算
レーン数×1レーンあたりの速度で計算します。
例えば、PCIe 4.0 x16の場合:
2GB/秒 × 16レーン = 32GB/秒
この数字を見ると、いかに高速かが分かりますね。
上位互換性と下位互換性
PCIeには互換性があるのが便利なポイント。
下位互換性
新しい規格のスロットに、古い規格のカードを挿しても動きます。
PCIe 4.0のスロットに、PCIe 3.0のグラフィックカードを挿しても問題ないということですね。
上位互換性
古いスロットに、新しい規格のカードを挿すことも可能。
ただし、動作速度は古い方の規格に制限されます。PCIe 3.0のスロットにPCIe 4.0のSSDを挿すと、PCIe 3.0の速度で動作するんです。
PCIeスロットの種類とサイズ
物理的なサイズの違い
PCIeスロットには、見た目のサイズが異なるものがあります。
PCIe x1スロット
最も短いスロット。長さは約25mm。
サウンドカードやUSB拡張カードなど、それほど速度が必要ないパーツに使われます。
PCIe x4スロット
中くらいのサイズ。長さは約40mm。
NVMe SSDの拡張カードなどで使われることが多いですね。
PCIe x8スロット
やや長めのスロット。長さは約56mm。
高性能なストレージカードや、一部のグラフィックカードで利用されます。
PCIe x16スロット
最も長いスロット。長さは約89mm。
グラフィックカードの接続に主に使われる、最も一般的なサイズです。
ゲーミングPCでは必須のスロットですね。
スロットの見分け方
マザーボードを見ると、黒や白、青などの色分けされたスロットが並んでいます。
一般的に、長いスロットがx16、短いスロットがx1です。ただし、見た目がx16でも内部的にはx8やx4の配線しかないスロットもあるので、マザーボードの仕様書で確認が必要ですよ。
PCIeが使われている主なパーツ
グラフィックカード(GPU)
最も帯域幅を必要とするパーツです。
ゲームや動画編集、3DCG制作など、高度な映像処理にはPCIe x16スロットが使われます。最新のハイエンドカードでは、PCIe 4.0や5.0の速度を活かして、さらなる性能向上を実現しているんです。
世代による体感の違い
ゲームでは、PCIe 3.0とPCIe 4.0の体感差はそれほど大きくありません。
ただし、4K解像度でのゲームや、レイトレーシングなど負荷の高い処理では、新しい世代の方が有利になることもあります。
NVMe SSD
従来のSATA接続よりも高速なストレージ規格。
PCIe接続を使うことで、読み書き速度が大幅に向上しています。PCIe 3.0のNVMe SSDで約3,500MB/秒、PCIe 4.0では約7,000MB/秒の速度が出るものもあるんですよ。
M.2スロットとの関係
M.2は物理的な形状の規格で、その接続方式としてPCIeが使われています。
「M.2 NVMe PCIe 4.0 SSD」といった表記を見かけるのは、このためですね。
拡張カード
さまざまな機能を追加するためのカードです。
サウンドカード
高音質なオーディオ環境を実現。PCIe x1で十分な性能が得られます。
ネットワークカード
有線LANや無線LANの機能を追加。10Gbpsの高速LANカードはPCIe x4を使うことも。
キャプチャーカード
ゲーム配信や動画録画に使用。映像データの転送量が多いため、PCIe x4以上が推奨されます。
USB拡張カード
USB 3.2やUSB4などの高速USBポートを追加できます。
PCIeインターフェースの選び方
用途別の推奨規格
ゲーミングPC
グラフィックカードにはPCIe x16スロット(3.0以上)が必須。
システムドライブにはPCIe 4.0のNVMe SSDがおすすめです。ゲームの読み込み速度が大幅に改善されますよ。
動画編集・3DCG制作
大容量ファイルを扱うため、高速なストレージが重要。
PCIe 4.0のNVMe SSDを複数搭載すると、作業効率が格段に上がります。グラフィックカードも高性能なものが必要ですね。
一般的な事務作業・ネットサーフィン
PCIe 3.0で十分対応できます。
グラフィックカードも不要で、CPUの内蔵グラフィックスで十分なケースが多いでしょう。
自作PC・パーツ選び
マザーボード選びでは、PCIeスロットの数と世代を確認しましょう。
将来の拡張性を考えて、余裕のある構成がおすすめです。
マザーボード選びのポイント
レーン数の配分を確認
CPUとチップセットから提供されるPCIeレーンには限りがあります。
例えば、グラフィックカードがx16を使うと、他のスロットの速度が落ちることも。仕様書で「x16動作時は、M.2_2スロットが無効になります」といった注意書きを確認しておきましょう。
対応世代を確認
マザーボードとCPUの両方が対応していないと、新しい世代のPCIeは使えません。
PCIe 4.0を使いたいなら、対応するCPUとマザーボードの組み合わせが必要です。
物理的なスペースも考慮
大きなグラフィックカードを挿すと、隣のスロットが使えなくなることがあります。
パーツ同士の干渉も考えて、レイアウトを計画しましょう。
よくあるトラブルと対処法
カードが認識されない
原因1:しっかり挿さっていない
スロットに完全に挿し込まれていない可能性があります。
カチッという音がするまで、しっかり押し込んでみてください。スロットの端にあるツメがロックされていることも確認しましょう。
原因2:電源が足りない
グラフィックカードなどは、PCIeスロットからの電源だけでは不足します。
補助電源コネクタをきちんと接続しているか確認してください。
原因3:ドライバが未インストール
デバイスマネージャーで「!」マークが出ていませんか?
メーカーのサイトから最新ドライバをダウンロードしてインストールしましょう。
期待した速度が出ない
原因1:世代のミスマッチ
古い世代のスロットに新しいカードを挿すと、古い方の速度に制限されます。
マザーボードとカード、両方の世代を確認してください。
原因2:レーン数の削減
スロットの見た目はx16でも、実際の配線はx8やx4のこともあります。
BIOS画面やソフトウェアで、実際のレーン数を確認してみましょう。
原因3:他のデバイスとの競合
複数のPCIeデバイスを使うと、レーンが分割されて速度が低下することがあります。
マザーボードの仕様書で、レーン配分を確認してください。
スロットが壊れた?
症状:カードを挿しても全く反応しない
他のスロットで試してみて、カードが動作するか確認しましょう。
他のスロットで動くなら、最初のスロットが故障している可能性があります。
対処法
保証期間内なら、メーカーに連絡してみてください。
保証外の場合は、使えるスロットで代用するか、マザーボードの交換を検討することになります。
PCIeの未来と最新動向
PCIe 5.0の普及
2021年に登場したPCIe 5.0は、徐々に普及が進んでいます。
対応するマザーボード、CPU、SSDが増えてきており、特にハイエンドのゲーミングPCやワークステーションで採用が進んでいますね。
PCIe 5.0のメリット
転送速度が4.0の2倍になり、約4GB/秒(x1レーンあたり)を実現。
将来的には、より高解像度のゲームや、大規模なデータ処理がスムーズになります。
現状の課題
発熱が大きく、冷却対策が必要なこと。
また、一般ユーザーにとっては、PCIe 4.0でも十分な性能があるため、すぐに移行する必要性は低いかもしれません。
PCIe 6.0とその先
2022年に仕様が策定されたPCIe 6.0。
転送速度は約8GB/秒(x1レーンあたり)と、さらなる高速化が実現します。本格的な普及は2025年以降になると見られていますね。
新しい技術
PAM4という新しい信号方式を採用し、効率的なデータ転送を実現。
AIや機械学習、データセンターなどの分野で、まず活用されることが予想されます。
CXLとの関係
CXL(Compute Express Link)という新しい規格も注目されています。
PCIeをベースにしながら、CPUとメモリ、アクセラレータの間の通信を最適化。サーバーやデータセンター向けの技術として発展していくでしょう。
よくある質問
Q1. PCIe 3.0と4.0、体感で違いは分かる?
ゲームや一般的な用途では、ほとんど体感できません。
大容量ファイルの頻繁な読み書きや、4K以上の高解像度での作業では違いが出ることがあります。
Q2. グラフィックカードは何世代のPCIeがおすすめ?
2024年現在、PCIe 4.0があれば十分です。
将来性を考えるならPCIe 5.0対応もありですが、価格と性能のバランスを考えるとPCIe 4.0がコストパフォーマンスに優れています。
Q3. M.2 SSDとPCIeは別物?
M.2は物理的な形状規格、PCIeは接続インターフェース規格です。
M.2スロットを使うSSDの多くが、内部的にPCIe接続を使っています。「M.2 NVMe PCIe SSD」という表記になるんですね。
Q4. 古いマザーボードでPCIe 4.0のSSDは使える?
使えますが、PCIe 3.0の速度になります。
新しいSSDを買っても、マザーボードがPCIe 3.0までなら、その速度に制限されるということですね。
Q5. PCIeスロットは何個必要?
用途によって異なります。
ゲーミングPCなら、グラフィックカード用にx16が1つあれば基本的に十分。拡張カードを追加したいなら、x1やx4のスロットが複数あると便利です。
まとめ:PCIeを理解してパソコンをグレードアップ
PCIeインターフェースについて、重要なポイントをまとめます。
基本の理解
- マザーボードとパーツをつなぐ接続規格
- レーン数と世代で転送速度が決まる
- 上位互換性・下位互換性あり
レーンの種類
- x1、x4、x8、x16の4種類
- 数字が大きいほど高速
世代の違い
- PCIe 3.0:約1GB/秒(x1あたり)
- PCIe 4.0:約2GB/秒(x1あたり)
- PCIe 5.0:約4GB/秒(x1あたり)
主な用途
- グラフィックカード:x16スロット
- NVMe SSD:x4スロット(M.2形状)
- 拡張カード:x1〜x4スロット
選び方のポイント
- 用途に応じた世代を選ぶ
- 将来の拡張性も考慮
- マザーボードのレーン配分を確認
トラブル対処
- しっかり挿し込む
- 補助電源を確認
- ドライバをインストール
- 世代とレーン数をチェック
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