Outlookでメールを送受信しようとしたら、突然「対象のプリンシパル名が間違っています」というエラーメッセージが表示される。
今まで問題なく使えていたのに、急にこのエラーが出ると本当に困りますよね。「プリンシパル名って何?」「どうやって直すの?」と戸惑う方も多いはずです。
この記事では、このエラーメッセージの意味から、原因の特定方法、具体的な解決手順まで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
エラーメッセージの基本情報
正確なエラーメッセージ
このエラーは、以下のような形で表示されます。
日本語版
対象のプリンシパル名が間違っています
英語版
The target principal name is incorrect
完全なエラーメッセージの例
タスク '[メールアドレス] - 送信中' でエラー (0x80070057) が報告されました:
'対象のプリンシパル名が間違っています。サーバーの応答:
Server certificate verification failed: hostname mismatch'
エラーが発生するタイミング
よくある状況
- メールの送受信を実行した時
- Outlookの起動時
- 自動送受信のタイミング
- 手動で「送受信」ボタンをクリックした時
影響範囲
- メールの送信ができない
- メールの受信ができない
- 場合によっては両方できない
「プリンシパル名」とは?エラーの意味を理解する
専門用語を分かりやすく
プリンシパル名(Principal Name)
- セキュリティ上の「身元確認に使われる名前」
- メールサーバーの正式な名前のこと
- SSL/TLS証明書に記載されている情報
例え話
- 身分証明書の名前と実際の名前が一致しないようなもの
- 「佐藤太郎」という身分証を持っているのに、「田中次郎」と名乗っている状態
このエラーが意味すること
簡単に言うと
- Outlookが接続しようとしているサーバー名
- そのサーバーが持っているSSL証明書の名前
- この2つが一致していない
セキュリティ上の意味
- OutlookがSSL/TLS接続でサーバーの身元を確認している
- 証明書の名前が違うと「本物のサーバーじゃないかも」と警告
- セキュリティ機能が正常に働いている証拠
エラーが発生する5つの主な原因
原因1:サーバー設定の名前が間違っている
具体例
正しい設定:
受信サーバー: mail.example.com
間違った設定:
受信サーバー: webmail.example.com
または
受信サーバー: 192.168.1.100(IPアドレス)
証明書は「mail.example.com」用に発行されているのに、別の名前で接続しようとしているため、エラーが発生します。
原因2:プロバイダがサーバー設定を変更した
よくあるケース
- メールサービス提供者がサーバーを移行
- サーバー名が変更された
- 設定変更の案内メールを見逃していた
例
- 旧:pop.oldserver.com
- 新:mail.newserver.com
古い設定のまま使っていると、エラーが発生します。
原因3:SSL証明書の有効期限切れ
原因
- サーバー側のSSL証明書が期限切れ
- 証明書の更新が遅れている
- サーバー管理者の対応待ち
症状
- 突然エラーが発生する
- 特定の日付から問題が始まる
原因4:自己署名証明書の使用
原因
- サーバーが正式な認証局ではなく、自己署名証明書を使用
- 主に小規模な組織や個人サーバー
特徴
- 正規の証明書ではないため、Outlookが警告
原因5:プロキシやVPNの干渉
原因
- 会社のプロキシサーバー経由で接続
- VPN接続中
- ネットワーク機器がSSL通信を検査している
症状
- 特定のネットワークでのみ発生
- 自宅では問題ないが、会社で発生
解決方法:基本的なトラブルシューティング
手順1:サーバー設定を確認・修正
最も多い原因がサーバー名の設定ミスです。
Windows版Outlook
- アカウント設定を開く
- 「ファイル」→「アカウント設定」→「アカウント設定」をクリック
- 該当するアカウントを選択
- 問題のあるメールアカウントをクリック
- 「変更」ボタンをクリック
- 「詳細設定」をクリック
- 「詳細設定」タブを確認
受信サーバー(POP3/IMAP)
- サーバー名を確認
- 正しいサーバー名を入力
送信サーバー(SMTP)
- 「詳細設定」タブで送信サーバー名を確認
- 正しいサーバー名を入力
- 「次へ」→「完了」をクリック
- Outlookを再起動
正しいサーバー名の確認方法
- メールプロバイダの公式サイトを確認
- 契約時の設定情報メールを確認
- プロバイダのサポートに問い合わせ
手順2:IPアドレスではなくホスト名を使用
IPアドレスで設定している場合、ホスト名に変更します。
悪い例
受信サーバー: 203.0.113.50
送信サーバー: 203.0.113.50
良い例
受信サーバー: mail.example.com
送信サーバー: smtp.example.com
SSL証明書はホスト名(ドメイン名)に対して発行されるため、IPアドレスでは証明書の検証ができません。
手順3:暗号化方式を確認
暗号化設定が正しいか確認します。
確認項目
- 「詳細設定」タブを開く
- 受信サーバーの設定
- 使用する暗号化接続の種類
- 推奨:SSL/TLS または STARTTLS
- 送信サーバーの設定
- 使用する暗号化接続の種類
- 推奨:TLS または SSL/TLS
ポート番号も確認
受信サーバー(IMAP):
- SSL/TLS:993
- STARTTLS:143
受信サーバー(POP3):
- SSL/TLS:995
- STARTTLS:110
送信サーバー(SMTP):
- TLS:587
- SSL:465
手順4:証明書の警告を一時的に無視(非推奨)
重要な注意
この方法は、信頼できるサーバーの場合のみ使用してください。セキュリティリスクがあります。
手順
- レジストリエディタを開く
- Windows + R で「regedit」と入力
- Enter(管理者権限が必要)
- 以下のキーに移動
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\16.0\Outlook\Security
※ バージョンにより「16.0」の部分が異なります
- Office 2021/2019:16.0
- Office 2016:16.0
- Office 2013:15.0
- 新しいDWORD値を作成
- 右側の空白部分を右クリック
- 「新規」→「DWORD (32ビット) 値」
- 名前:
DisableServerCertificateValidation
- 値:
1
- Outlookを再起動
セキュリティ上の警告
- この設定は、証明書の検証を無効化します
- 中間者攻撃のリスクが高まります
- 信頼できるサーバーでのみ使用
- 問題解決後は必ず元に戻す(値を0に、または削除)
高度な解決方法
解決方法1:アカウントを削除して再作成
設定が複雑に壊れている場合、再作成が確実です。
事前準備
- 重要なメールをバックアップ
- POP3の場合:必須
- IMAPの場合:サーバーにメールが残るので不要
- 設定情報をメモ
- サーバー名
- ポート番号
- ユーザー名
- パスワード
再作成手順
- アカウント設定を開く
- 「ファイル」→「アカウント設定」→「アカウント設定」
- アカウントを削除
- 該当アカウントを選択
- 「削除」ボタンをクリック
- 確認で「はい」
- Outlookを再起動
- アカウントを追加
- 「ファイル」→「アカウントの追加」
- メールアドレスとパスワードを入力
- 自動設定に従う
- 手動設定が必要な場合
- 「詳細オプション」→「自分で自分のアカウントを手動で設定」
- 正しいサーバー情報を入力
解決方法2:Outlookのプロファイルを再作成
プロファイル自体に問題がある場合の対処法です。
手順
- Outlookを終了
- コントロールパネルを開く
- Windows + R で「control」と入力
- 「メール (Microsoft Outlook)」をクリック
- 「プロファイルの表示」をクリック
- 「追加」ボタンをクリック
- 新しいプロファイル名を入力
- 「OK」
- 新しいプロファイルでアカウント設定
- ウィザードに従ってアカウントを設定
- 既定のプロファイルを変更
- 新しいプロファイルを選択
- 「OK」
- Outlookを起動
解決方法3:証明書を手動でインポート
サーバーの証明書を信頼する証明書として登録します。
手順
- 証明書をエクスポート
ブラウザで証明書を確認:
- ブラウザで
https://mail.example.com
にアクセス - アドレスバーの鍵マークをクリック
- 証明書を表示
- 証明書をエクスポート(.cer形式)
- 証明書をインポート
Windows:
- エクスポートした.cerファイルをダブルクリック
- 「証明書のインストール」をクリック
- 「現在のユーザー」を選択
- 「証明書をすべて次のストアに配置する」を選択
- 「信頼されたルート証明機関」を選択
- 完了
- Outlookを再起動
プロバイダ別の正しいサーバー設定
主要なメールプロバイダの正しい設定です。
Gmail
受信サーバー(IMAP)
サーバー: imap.gmail.com
ポート: 993
暗号化: SSL/TLS
送信サーバー(SMTP)
サーバー: smtp.gmail.com
ポート: 587
暗号化: TLS
Outlook.com / Hotmail
受信サーバー(IMAP)
サーバー: outlook.office365.com
ポート: 993
暗号化: SSL/TLS
送信サーバー(SMTP)
サーバー: smtp.office365.com
ポート: 587
暗号化: TLS
Yahoo!メール
受信サーバー(IMAP)
サーバー: imap.mail.yahoo.co.jp
ポート: 993
暗号化: SSL/TLS
送信サーバー(SMTP)
サーバー: smtp.mail.yahoo.co.jp
ポート: 465
暗号化: SSL
OCN
受信サーバー(POP3)
サーバー: pop.ocn.ne.jp
ポート: 995
暗号化: SSL/TLS
送信サーバー(SMTP)
サーバー: smtp.ocn.ne.jp
ポート: 465
暗号化: SSL
サーバー側に問題がある場合
自分では解決できない場合もあります。
サーバー管理者に確認すべきこと
確認項目
- SSL証明書の状態
- 有効期限内か
- 証明書が正しくインストールされているか
- サーバー名の確認
- 証明書に記載されているサーバー名
- 推奨される接続設定
- 既知の問題
- 同様の報告が他にもあるか
- 対応中または対応予定か
プロバイダのサポートに問い合わせる
問い合わせ時に伝える情報
- 使用しているメールアドレス
- エラーメッセージの全文
- エラーが発生し始めた日時
- 試した解決方法
問い合わせ先の確認方法
- プロバイダの公式サイトで「サポート」を検索
- 契約書類に記載の連絡先
- マイページのお問い合わせフォーム
予防策と定期的なメンテナンス
設定情報の保管
記録しておくべき情報
- 受信サーバー名
- 送信サーバー名
- ポート番号
- 暗号化方式
- ユーザー名
- パスワード(安全な方法で)
保管場所
- パスワードマネージャー
- 暗号化されたファイル
- 印刷して金庫に保管
プロバイダからのお知らせに注意
チェックすべきこと
- サーバー設定変更のお知らせ
- メンテナンス情報
- セキュリティアップデート
定期的な確認
- メールプロバイダの公式サイト
- お知らせメールの確認
- マイページのお知らせ
証明書の有効期限
確認方法
ブラウザで確認:
- ブラウザで
https://mail.example.com
にアクセス - アドレスバーの鍵マークをクリック
- 証明書を表示
- 有効期限を確認
通常、SSL証明書は1〜2年で更新されます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「対象のプリンシパル名が間違っています」は危険なエラーですか?
A. エラー自体は安全機能が働いている証拠ですが、原因によります。
- サーバー設定ミス:危険ではない(設定を直せば解決)
- 証明書の問題:サーバー側の問題(管理者が対応すべき)
- 不正なサーバー:危険(接続しない)
基本的には設定を見直すことで解決します。
Q2. 今まで問題なかったのに突然このエラーが出ました。なぜ?
A. プロバイダがサーバー設定を変更した可能性が高いです。
よくある原因:
- サーバーの移行
- SSL証明書の更新
- セキュリティ強化
プロバイダの公式サイトでお知らせを確認してください。
Q3. IPアドレスで設定していたら、このエラーが出ました。
A. ホスト名(ドメイン名)に変更する必要があります。
SSL証明書はドメイン名に対して発行されるため、IPアドレスでは証明書の検証ができません。
例:
- 悪い:
203.0.113.50
- 良い:
mail.example.com
Q4. 会社のメールで、自宅ではエラーが出ないのに会社で出ます。
A. 会社のネットワーク環境が原因です。
考えられる原因:
- プロキシサーバーの証明書検査
- ファイアウォールの設定
- 社内VPNの影響
IT部門に相談してください。
Q5. 証明書の検証を無効にしても大丈夫ですか?
A. 緊急の場合のみ、一時的に使用してください。セキュリティリスクがあります。
リスク:
- 中間者攻撃の可能性
- 偽のサーバーに接続する危険
根本的な原因(サーバー設定の修正)を解決することを強く推奨します。
Q6. このエラーが出ても、メールは送受信できていますか?
A. 状況によります。
- エラーが出ても送受信できる場合:Outlookが警告を無視している
- エラーで送受信できない場合:Outlookがセキュリティのため接続をブロック
どちらの場合も、早めに原因を特定して解決すべきです。
まとめ|正しい設定で安全なメール通信を
「対象のプリンシパル名が間違っています」エラーは、一見難しそうですが、多くの場合は設定の見直しで解決できます。
この記事の重要ポイント
エラーの意味
- SSL/TLS証明書の検証エラー
- サーバー名と証明書の名前が一致していない
- セキュリティ機能が正常に働いている証拠
主な原因
- サーバー名の設定ミス
- プロバイダのサーバー変更
- SSL証明書の期限切れ
- IPアドレスでの接続
- プロキシ・VPNの干渉
解決方法の優先順位
1. サーバー設定の確認・修正(最も多い原因)
↓
2. ホスト名の使用(IPアドレスから変更)
↓
3. 暗号化方式とポート番号の確認
↓
4. アカウントの再作成
↓
5. プロバイダ・IT部門に問い合わせ
やってはいけないこと
- 証明書検証を無効化したまま使い続ける
- エラーを無視し続ける
- 不正なサーバーに接続する
推奨する対応
- まずは設定を見直す
- プロバイダの情報を確認
- 問題が解決しない場合はサポートに連絡
- 証明書検証の無効化は最終手段
セキュリティは重要です。安易に無効化せず、正しい設定で安全なメール通信を維持しましょう。
この記事を参考に、エラーを解決して、快適にOutlookを使ってくださいね!
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