【鶏の足の小屋に住む魔女】バーバヤガとは?ロシア民話の恐ろしくも不思議な妖婆を解説!

神話・歴史・伝承

深い森の奥から、臼をすりこぎで漕ぐような奇妙な音が聞こえてきたら、それはもしかしたら恐ろしい魔女「バーバヤガ」が近づいてくる音かもしれません。

ロシアや東欧の子供たちにとって、バーバヤガは「言うことを聞かないと食べられちゃうぞ」と脅される、まさに恐怖の象徴でした。でも実は、この魔女には意外な一面もあるんです。

この記事では、ロシア民話に登場する不思議な魔女「バーバヤガ」の姿や特徴、興味深い伝承について詳しくご紹介します。

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概要

バーバヤガ(Баба-Яга)は、ロシアや東欧の民話に登場する魔女のような妖婆です。

スラヴ民話の中でも特に有名な存在で、『竜王と賢女ワシリーサ』などの物語に登場します。

音楽好きの方なら、ムソルグスキー作曲の『展覧会の絵』に出てくる「バーバヤガの小屋」という曲名で聞いたことがあるかもしれませんね。

日本では「魔女ばあさん」「山姥」「鬼婆」などと訳されてきましたが、最近では「バーバヤガ」という名前でそのまま呼ばれることが多くなりました。

姿・見た目

バーバヤガの見た目は、とにかく恐ろしくてグロテスクなんです。

バーバヤガの外見的特徴

  • 体型:骨と皮だけにまで痩せこけた老婆
  • :むき出しの骨だけ(「骨の足のバーバヤガ」という異名もある)
  • :青い鉤鼻で、天井に届くほど長い
  • :鉄の歯、または石やナイフの刃のような歯
  • 大きさ:横になると頭が小屋の片端に、足が反対の端に届くほど巨大

特に恐ろしいのが、その巨大な口です。獲物が近づくと大きく口を開けるのですが、それがあまりに大きくて洞穴と間違えられるほど。そして獲物を丸飲みにしてしまうというんです。

特徴

バーバヤガには、普通の魔女とは違う独特な特徴があります。

住まいの特徴

何といっても一番の特徴は、鶏の足の上に建った小屋に住んでいることでしょう。

この小屋がまた不気味で、休みなくグルグルと回り続けているんです。森の空き地にあって、周りには人間の骸骨で作った塀が巡らされ、しゃれこうべが飾られています。その眼窩には目が残っていて光っているという、まるでホラー映画のような光景です。

移動方法

バーバヤガの移動手段もとてもユニークなんです。

  • 臼(うす)に乗って移動:細長い臼に乗り込む
  • 杵(きね)で漕ぐ:右手に持った杵で地面を突いて進む
  • ほうきで跡を消す:左手のほうきで移動した跡を消しながら進む
  • 空を飛ぶことも:鉄なべに乗って、火のついたほうきで飛ぶこともある

性格の特徴

バーバヤガの性格は、まさに二面性があります。

基本的には子供を誘拐して食べてしまう恐ろしい存在ですが、実は心の清い人間や礼儀正しい人間には親切にすることもあるんです。困っている主人公に魔法の品を与えたり、助言をしたりすることもあります。

伝承

バーバヤガが登場する民話はたくさんありますが、特に有名なものをご紹介しましょう。

ワシリーサの物語

美しいワシリーサという娘が、継母の命令でバーバヤガのところに火をもらいに行く話があります。バーバヤガは恐ろしい姿でワシリーサを脅しますが、彼女の純真さと礼儀正しさに感心し、最終的には火を分けてくれるんです。

三人姉妹のバーバヤガ

興味深いことに、バーバヤガは一人だけでなく、三人姉妹として登場することもあります。

主人公が一人目のバーバヤガのところを訪れると「私は知らないから、妹のところへ行きなさい」と言われ、二人目も同じように三人目へと案内されます。三人目が一番恐ろしく、主人公を食べようとしますが、知恵と勇気で切り抜けるという展開が多いんです。

ロシアの人々との関係

17世紀頃から木版画に登場し、ロシアの民衆文化に深く根付いていました。時には政治的な風刺画にも使われ、ピョートル大帝の時代には、彼の妻エカテリーナ1世をバーバヤガになぞらえた版画も作られたそうです。

起源

バーバヤガの起源は、とても興味深い歴史を持っています。

冬の神話から魔女へ

もともとはスラヴ神話における冬の神話的表現が起源だと考えられています。

スラヴ人がキリスト教に改宗する過程で、古い神々は善神ならキリスト教の聖人に、悪神や自然の脅威を象徴した神なら妖怪や悪魔に置き換えられていきました。北方の凍てつく冬を象徴していた存在が、恐ろしい魔女として語り継がれるようになったんですね。

鶏の足の小屋の由来

サーミ人(北欧の先住民)の高床倉庫が、鶏の足の小屋のモチーフになったという説があります。

サーミ人は、動物から食料を守るために、切り株の根っこを利用して倉庫を地面から離して建てていました。その見た目が、まるで鶏の足のように見えたことから、このイメージが生まれたのかもしれません。

最古の記録

文献に初めてバーバヤガが登場したのは、1755年のミハイル・ロモノーソフの『ロシア文法』です。この本の中で、スラヴ民話の登場人物の一人として紹介されています。

まとめ

バーバヤガは、ロシア・東欧民話に登場する恐ろしくも魅力的な魔女です。

重要なポイント

  • 鶏の足の上に建つ小屋という独特な住まいを持つ
  • 骨と皮だけの老婆の姿で、鉄の歯を持つ
  • 臼に乗って杵で漕ぎ、ほうきで跡を消しながら移動
  • 子供を食べる恐ろしい存在だが、心の清い人には親切にすることも
  • 冬の神話的表現が起源で、キリスト教化により魔女として定着
  • 三人姉妹として登場することもある
  • 日本の山姥に似た存在として親しまれている

森の奥深くで今も回り続ける鶏の足の小屋。もしあなたが礼儀正しく、清い心を持っていれば、バーバヤガはあなたの味方になってくれるかもしれませんね。

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