「Macの動作がおかしい…」
「起動時に変な画面が出る」
「音量設定が勝手に変わってしまう」
こんなトラブルに遭遇したら、NVRAMリセットを試してみる価値があります。
NVRAMとは、Macが起動時や動作中に必要な設定情報を保存しているメモリのことです。この情報が何らかの原因で壊れてしまうと、様々な不具合が起こることがあるんですね。
でも安心してください。NVRAMリセットは、誰でも簡単にできる基本的なトラブルシューティング方法です。
この記事では、NVRAMとは何か、どんな時にリセットすべきか、具体的なリセット方法まで、初心者の方でも分かるように詳しく解説していきます。
NVRAMとは?基本を理解しよう

まずは、NVRAMの基礎知識から見ていきましょう。
NVRAMの正式名称
NVRAMは「Non-Volatile Random Access Memory」の略です。
日本語にすると「不揮発性ランダムアクセスメモリ」となります。
不揮発性とは
不揮発性というのは、電源を切っても情報が消えない性質のことです。
通常のRAM(作業用メモリ)は電源を切るとデータが消えますが、NVRAMは電源オフでも情報を保持し続けるんですね。
NVRAMに保存される情報
Macでは、以下のような設定情報がNVRAMに保存されています。
音量設定
システムの音量レベルです。
画面解像度
ディスプレイの解像度設定が記録されます。
起動ディスク
どのディスクから起動するかの情報です。
タイムゾーン設定
時刻に関する地域設定が保存されているでしょう。
カーネルパニック情報
システムクラッシュの記録も残されます。
実例
例えば、音量を50%に設定してMacを再起動しても、同じ50%で起動します。
これは、その設定がNVRAMに保存されているからなんですね。
NVRAMとPRAMの違い
古いMacユーザーなら「PRAM」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
PRAMとは
PRAMは「Parameter RAM」の略で、NVRAMの前身となる技術です。
Intel Mac以前の世代で使われていました。
現在のMacはNVRAM
2006年以降のIntel Mac、そしてApple Silicon(M1/M2/M3など)搭載Macでは、すべてNVRAMが使われています。
機能的にはPRAMとほぼ同じですが、技術的には進化しているんですね。
なぜ「PRAMリセット」と呼ばれることも
古い呼び方が定着しているため、今でも「PRAMリセット」と呼ぶ人がいます。
でも、現在のMacで正確には「NVRAMリセット」が正しい表現です。
NVRAMリセットが必要な10の症状
以下のような症状が出たら、NVRAMリセットを試してみましょう。
1. 音量設定が保存されない
再起動するたびに音量がゼロになる、または最大になってしまう症状です。
2. 画面解像度が勝手に変わる
毎回起動時に画面表示がおかしくなる場合があります。
3. 起動ディスクが認識されない
「?」マークのフォルダが表示されて起動できないトラブルです。
4. タイムゾーンがリセットされる
時刻が正しく表示されず、再設定しても直らない症状ですね。
5. 外部ディスプレイが正しく認識されない
外部モニターを接続しても表示されない、または解像度がおかしい場合があるでしょう。
6. 起動音が鳴らない、または異常に大きい
音量設定が正常に保存されていない可能性があります。
7. 起動が異常に遅い
NVRAMの情報が壊れて、起動プロセスに問題が発生している場合です。
8. カーネルパニックが頻発
システムクラッシュが繰り返される時も、NVRAMリセットで改善することがあります。
9. キーボードやマウスが起動時に反応しない
入力デバイスの認識に問題がある症状です。
10. スリープから復帰できない
スリープ後、画面が真っ暗なままになってしまう場合もあるでしょう。
実例
例えば、外部ディスプレイを使っている方で、毎朝Macを起動すると解像度が640×480のような低解像度になってしまう場合、NVRAMの問題である可能性が高いです。
Intel MacでのNVRAMリセット方法
Intel プロセッサ搭載Macの手順です。
準備
すべての外部デバイス(USB機器、外付けディスプレイなど)を取り外しておくと確実です。
ただし、キーボードとマウスは接続しておきましょう。
リセット手順
ステップ1: Macをシャットダウンする
完全に電源を切ってください。
ステップ2: 電源を入れてすぐに以下のキーを同時に押す
option + command + P + R
4つのキーを同時に押し続けます。
ステップ3: 約20秒間押し続ける
起動音が2回鳴るまで、または Appleロゴが2回表示されるまで押し続けてください。
ステップ4: キーから手を離す
Macが通常通り起動します。
ポイント
タイミングが重要です。電源ボタンを押したら、すぐにキーコンビネーションを押し始めましょう。
遅れると通常起動してしまい、リセットが実行されません。
実例
例えば、MacBook Proの場合、電源を入れた瞬間に画面が光るので、その時点でキーを押し始めるのがコツです。
慣れるまで何度か試してみても大丈夫ですよ。
Apple Silicon MacでのNVRAMリセット方法
M1、M2、M3などApple Siliconチップ搭載Macの手順です。
Intel Macとの違い
Apple Silicon Macでは、キーコンビネーションでのリセットはできません。
自動的にリセットが行われる仕組みになっているんですね。
リセット手順
ステップ1: Macをシャットダウンする
ステップ2: 約30秒待つ
完全にシャットダウンされるのを待ちましょう。
ステップ3: 電源を入れる
通常通り起動させるだけです。
ステップ4: システムが自動的にNVRAMをチェック
起動時に問題があれば、自動的にリセットされます。
追加の方法
それでも問題が解決しない場合は、以下の方法もあります。
macOS復旧モードから:
1. Macの電源を切る
2. 電源ボタンを長押し(起動オプションが表示されるまで)
3. 「オプション」を選択して「続ける」をクリック
4. 上部メニューから「ユーティリティ」→「ターミナル」を選択
5. 以下のコマンドを入力してEnterキーを押す
nvram -c
6. Macを再起動
実例
MacBook Air(M1)を使っている場合、通常はシャットダウンと起動を繰り返すだけで問題が解決することが多いです。
それでもダメな場合に、復旧モードからのリセットを試してみましょう。
NVRAMリセット後にやるべきこと

リセットが完了したら、いくつかの設定を確認しましょう。
1. 起動ディスクの確認
システム設定→「一般」→「起動ディスク」
正しいディスクが選択されているか確認してください。
複数のmacOSがインストールされている場合は、普段使っている方を選びましょう。
2. 時刻とタイムゾーンの確認
システム設定→「一般」→「日付と時刻」
「日付と時刻を自動的に設定」がオンになっているか確認します。
タイムゾーンも正しく設定されているかチェックしましょう。
3. ディスプレイ設定の確認
システム設定→「ディスプレイ」
解像度が適切に設定されているか確認してください。
外部ディスプレイを使用している場合は、再接続して設定を確認します。
4. 音量設定の確認
音量を好みのレベルに調整しましょう。
次回起動時も維持されるか確認します。
5. その他の設定
必要に応じて、以下も確認してください。
- FileVault:暗号化設定
- ネットワーク設定
- プリンター設定
基本的には、これらの設定はNVRAMリセットでは影響を受けません。
実例
例えば、外部ディスプレイを4Kで使っている場合、リセット後に解像度が低くなっていることがあります。
その場合は、ディスプレイ設定で再度4K解像度を選び直せば大丈夫ですよ。
NVRAMリセットで解決しない場合
他のトラブルシューティング方法も試してみましょう。
SMCリセットを試す
SMC(システム管理コントローラー)のリセットも効果的な場合があります。
SMCは、電源管理、バッテリー管理、温度管理などを制御しているんですね。
Intel Macの場合:
ノートブック型:
- シャットダウン
- shift + control + option + 電源ボタンを10秒間押す
- すべてのキーを離す
- 通常通り起動
デスクトップ型:
- シャットダウン
- 電源コードを抜く
- 15秒待つ
- 電源コードを挿し直す
- 5秒待ってから起動
Apple Silicon Macの場合:
SMCリセット機能は統合されており、シャットダウン→30秒待機→起動で自動的に実行されます。
セーフモードで起動
セーフモードは、必要最小限の機能だけで起動するモードです。
Intel Macの場合:
起動時にshiftキーを押し続ける
Apple Silicon Macの場合:
- 電源ボタン長押し(起動オプションが表示されるまで)
- 起動ディスクを選択
- shiftキーを押しながら「セーフモードで続ける」をクリック
セーフモードで問題が起きなければ、ソフトウェアの問題である可能性が高いでしょう。
ディスクユーティリティでチェック
ストレージに問題がないか確認します。
手順:
- macOS復旧モードで起動
- 「ディスクユーティリティ」を選択
- 起動ディスクを選択
- 「First Aid」を実行
ディスクエラーが見つかれば、自動的に修復されます。
macOSの再インストール
最終手段として、macOSの再インストールも検討しましょう。
データを保持したまま再インストールできるので、比較的安全な方法です。
実例
例えば、NVRAMリセットで音量問題が解決しなかった場合、SMCリセットを試すと直ることがあります。
両方のリセットを順番に試してみると良いでしょう。
NVRAMリセットに関する誤解
よくある勘違いを解消しておきましょう。
誤解1:データが消える
真実:
NVRAMリセットで、書類、写真、アプリなどのデータは一切消えません。
保存されているのは、システム設定の情報だけです。
誤解2:頻繁に実行すべき
真実:
必要がない限り、NVRAMリセットは不要です。
定期的なメンテナンスとして行う必要はありません。
誤解3:すべての問題が解決する
真実:
NVRAMリセットは万能ではありません。
ハードウェアの故障やソフトウェアのバグには効果がないでしょう。
誤解4:時間がかかる
真実:
実際には1~2分程度で完了します。
複雑な作業ではないので、気軽に試せる方法ですよ。
NVRAMに関するターミナルコマンド
もう少し詳しく知りたい方向けの情報です。
現在のNVRAM設定を確認
ターミナルで以下のコマンドを実行すると、NVRAMの内容が表示されます。
nvram -p
たくさんの設定項目がリスト表示されるでしょう。
特定の項目だけ確認
例えば、起動音量の設定を確認したい場合:
nvram SystemAudioVolume
特定の項目を削除
特定の設定だけをリセットすることもできます。
sudo nvram -d 項目名
ただし、この方法は上級者向けです。
間違った項目を削除すると、システムに影響が出る可能性があります。
実例
トラブルシューティングの過程で、Appleサポートから「特定のNVRAM変数を確認してください」と言われた場合に、これらのコマンドが役立ちます。
よくある質問(FAQ)
Q1: NVRAMリセットはどのくらいの頻度で行うべきですか?
A: 問題が起きた時だけ実行すれば十分です。
定期的なメンテナンスとして行う必要はありません。年に一度も実行しなくても問題ないでしょう。
Q2: NVRAMリセットで保存データは消えますか?
A: いいえ、消えません。
書類、写真、音楽、アプリなど、通常のデータは一切影響を受けません。システム設定の情報だけがリセットされます。
Q3: Windowsキーボードでもリセットできますか?
A: Intel Macの場合、可能です。
ただし、option = Alt、command = Windowsキーと読み替える必要があります。Apple Silicon Macでは、キーコンビネーションは不要なので問題ありません。
Q4: NVRAMリセットとSMCリセットの違いは?
A: NVRAMは起動設定や画面・音量設定を管理し、SMCは電源管理やハードウェア制御を担当しています。
問題の種類によって、どちらを試すべきか判断すると良いでしょう。
Q5: リセット後、設定は全部やり直しですか?
A: いいえ、ほとんどの設定は保持されます。
確認が必要なのは、起動ディスク、ディスプレイ解像度、音量程度です。ネットワーク設定やアプリの設定はそのまま残ります。
まとめ
MacのNVRAMリセットについてまとめます。
NVRAMとは:
- 不揮発性メモリで、起動設定などを保存
- 電源を切っても情報が保持される
- 音量、画面解像度、起動ディスクなどの情報が含まれる
リセットが必要な症状:
- 音量設定が保存されない
- 画面解像度が勝手に変わる
- 起動ディスクが認識されない
- 外部ディスプレイの問題
- その他の設定関連トラブル
リセット方法:
Intel Mac:
option + command + P + R を20秒間押し続ける
Apple Silicon Mac:
シャットダウン→30秒待機→起動(自動リセット)
リセット後の確認項目:
- 起動ディスク
- 時刻とタイムゾーン
- ディスプレイ解像度
- 音量設定
重要なポイント:
- データは一切消えない
- 問題がある時だけ実行すれば良い
- 1~2分で完了する簡単な作業
- 解決しない場合はSMCリセットも試す
NVRAMリセットは、Macのトラブルシューティングの基本中の基本です。
設定関連の問題が起きたら、まずこの方法を試してみてください。多くの場合、これだけで問題が解決しますよ!
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