薄暗いピラミッドの奥から、ヨロヨロと足音が聞こえてきます。
包帯にぐるぐる巻きにされた人影が、ゆっくりとこちらに近づいてくる…それは永遠の眠りから目覚めた「ミイラ」かもしれません。
古代エジプトの墓を荒らした者には恐ろしい呪いがふりかかるという伝説は、今でも多くの人々を震え上がらせています。
この記事では、映画やゲームでもおなじみの怪物「ミイラ」について、その不気味な姿や特徴、恐ろしい伝承をやさしく解説します。
概要

ミイラ(マミー)は、古代エジプトの埋葬法から生まれた不死の怪物です。
本来、ミイラは古代エジプトで死者の体を保存するための技術でした。
でも、20世紀初頭のツタンカーメン王の墓の発見をきっかけに、「墓を荒らすと呪われる」という伝説が広まり、ホラー映画や小説の定番モンスターとして定着したんです。
怪物としてのミイラは、死んでいるはずなのに動き回るアンデッド(不死者)の一種。墓を守る番人として、侵入者を襲う恐ろしい存在として描かれています。包帯を巻いた姿で、ゆらゆらと歩きながら呪いをまき散らす…そんなイメージが定着していますね。
姿・見た目
ミイラの見た目は、とにかく不気味で特徴的です。
ミイラの外見的特徴
- 全身包帯巻き:頭から足まで、ぐるぐると布や包帯で巻かれている
- ほころびた包帯:古い包帯がところどころほつれて垂れ下がっている
- 干からびた肌:包帯の隙間から見える肌は、土色に乾燥している
- ヨロヨロした動き:生者とは違う、ぎこちない歩き方
- くぼんだ目:目の部分は暗く落ちくぼんでいることが多い
映画などでは、包帯がほどけかけながら歩く姿が描かれることが多いんです。そして、低いうめき声を上げながら、両手を前に突き出して獲物を追いかける…まさに恐怖の象徴ですね。
興味深いことに、実際の古代エジプトのミイラは、140メートルもの長い亜麻布で丁寧に巻かれていました。表面には呪文や祈りの言葉が書かれていて、死者を守る役割があったそうです。
特徴
怪物としてのミイラには、普通の死体とは違う恐ろしい特徴があります。
ミイラの主な特徴
不死性
ミイラの最大の特徴は、すでに死んでいるのに倒せないということ。刀や剣で刺しても効果がなく、普通の方法では止められません。なにせ、もともと死体なので、人間を殺す方法が通用しないんです。
呪いの力
ミイラには恐ろしい呪いの力があるとされています。特に有名なのが「ファラオの呪い」。墓を荒らした者や、ミイラを冒涜した者には、病気や不幸、そして死が訪れるという伝説があります。
弱点
でも、ミイラにも弱点があります。
- 火に弱い:乾燥した包帯と防腐処理された体は燃えやすい
- 聖水:宗教的な力に弱いとされる
- 太陽の光:古代エジプトの太陽神ラーの光を恐れるという説も
能力と行動
怪物ミイラの行動パターンにも特徴があります。
- 墓の守護者:自分の墓や宝物を守り、侵入者を襲う
- 執念深い追跡:一度狙った獲物をどこまでも追いかける
- 超人的な怪力:見た目以上の力を持つ
- 不気味な存在感:ホコリを立てながら歩く姿は恐怖そのもの
伝承

ミイラにまつわる伝説で最も有名なのが、「ツタンカーメンの呪い」です。
ツタンカーメンの呪い
1922年、イギリスの考古学者ハワード・カーターが、エジプトでツタンカーメン王の墓を発見しました。3000年以上も前の少年王のミイラが、ほぼ完全な状態で見つかったんです。
ところが、発掘に関わった人々に次々と不幸が…。
- 発掘の資金提供者カーナヴォン卿が、発見から数か月後に急死
- 関係者が次々と謎の死を遂げる
- 「王の眠りを妨げる者に死を」という呪いの言葉が発見されたという噂
実際には、これらの死は偶然だったという説が有力ですが、「ミイラの呪い」という概念を世界中に広めるきっかけになりました。
映画での活躍
1932年の映画『ミイラ再生』で、ミイラは本格的なホラー映画の主役になります。
主人公は古代エジプトの神官イムホテップ。禁じられた恋のために生きたまま埋葬された彼が、3700年後に蘇るという物語。俳優ボリス・カーロフの怪演により、ミイラはフランケンシュタインの怪物やドラキュラと並ぶ、ホラー映画の定番モンスターになったんです。
その後も『ハムナプトラ』シリーズなど、多くの映画でミイラは活躍。砂嵐を操ったり、呪いで人を操ったりと、どんどんパワーアップしていきました。
日本での受容
日本でも1961年に『恐怖のミイラ』というテレビドラマが放送され、ミイラ人気が広まります。
特撮番組では「ミイラ人間」(ウルトラマン)、「ミイラーマン」(ジャイアントロボ)など、多くの作品に登場。また、楳図かずおの漫画『ミイラ先生』では、水を飲むと美女に変身するミイラが描かれ、独特の恐怖を演出しました。
起源
怪物ミイラの起源は、実際の古代エジプトのミイラ作りにあります。
古代エジプトのミイラ作り
古代エジプト人は「死後の世界での復活」を信じていました。そのため、死者の体を保存することがとても重要だったんです。
ミイラ作りの工程(王族や富裕層の場合):
- 内臓の除去:脳や内臓を取り出す(心臓だけは残す)
- 乾燥処理:ナトロン(天然の塩)で70日間乾燥
- 防腐処理:香料や樹脂を塗る
- 包帯巻き:呪文を書いた亜麻布で全身を巻く
- 埋葬:棺に納めて墓に安置
この技術は紀元前3500年頃から始まり、なんと3000年以上も続いたそうです。
怪物化への道のり
では、なぜ保存された死体が「動く怪物」になったのでしょうか?
19世紀のミイラブーム
ヨーロッパでエジプト学が流行し、ミイラの「開封ショー」が娯楽として行われました。貴族たちが集まって、ミイラの包帯を解く様子を見物したんです。
薬としてのミイラ
中世ヨーロッパでは、ミイラの粉が万能薬として売られていました。「ミイラ取りがミイラになる」という言葉も、ミイラを取りに行った人が砂漠で倒れてミイラになってしまうことから生まれたと言われています。
ホラーへの転換
20世紀になると、古代の呪いや超自然的な力という要素が加わり、ミイラは恐怖の対象に。特に1920年代のツタンカーメン発掘と、その後の映画化によって、「動く死体」としてのミイラ像が確立されました。
まとめ
ミイラは、古代エジプトの埋葬文化から生まれた独特の怪物です。
重要なポイント
- 全身を包帯で巻かれた不死の怪物
- 古代エジプトの埋葬技術が起源
- ツタンカーメンの呪いで世界的に有名に
- 刀や剣が効かないが、火に弱い
- 墓を守り、侵入者に呪いをかける
- 映画やゲームで定番のホラーモンスター
ミイラは、人類の「死」と「永遠の命」への恐れと憧れが生み出した怪物です。
古代エジプト人が大切に保存した死者が、現代では恐怖の象徴になっているのは皮肉なことかもしれません。
でも、だからこそミイラは、時代を超えて私たちを魅了し続ける存在なのかもしれませんね。
コメント