夜空に光る火の玉を見たことはありますか?それがもし、内臓をぶら下げた女性の頭だったとしたら…。
マレー半島の人々は、そんな恐ろしい姿の吸血鬼「ペナンガラン」を何世代にもわたって恐れてきました。助産婦の姿をして近づき、妊婦や赤ちゃんの血を狙う恐怖の存在。でも実は、元は普通の人間だったというから驚きです。
この記事では、東南アジアに伝わる不気味な吸血鬼「ペナンガラン」について、その恐ろしい姿や特徴、興味深い伝承を分かりやすくご紹介します。
概要

ペナンガラン(Penanggalan)は、マレー半島やボルネオ島に伝わる吸血鬼の一種です。
マレー語で「取り外す」を意味する「タンガル」という言葉から生まれた名前で、まさに頭を体から「取り外す」という恐ろしい特徴を持っています。ペナンガルとも呼ばれ、東南アジア各地に似たような妖怪が存在するんです。
タイの「クラスー」、カンボジアの「アープ」、ベトナムの「マライ」など、国によって名前は違いますが、どれも頭と内臓だけで飛び回る女性の姿をしています。これらは地域を超えて共通する恐怖の象徴なんですね。
姿・見た目
ペナンガランの姿は、まさに悪夢そのものです。
ペナンガランの恐ろしい外見
- 頭部:美しい女性の頭(昼間の姿)
- 首から下:胃袋、腸、内臓がぶら下がっている
- 飛行時の様子:内臓が蛍のように光る
- 大きさ:頭部は普通の人間サイズ
- 臭い:酢のような強烈な臭いを放つ
昼と夜で変わる姿
実はペナンガランには二つの姿があるんです。昼間は普通の女性として生活し、多くは助産婦として働いています。しかし夜になると、頭が体から離れて飛び回る恐ろしい姿に変身。
内臓をぶら下げた状態では大きすぎて体に戻れないため、定期的に酢に浸して縮める必要があるとか。だからペナンガランは常に酢の臭いがするといわれています。
特徴と習性

ペナンガランには、他の吸血鬼とは違う独特な特徴があります。
主な能力と行動
狙う対象が決まっている
ペナンガランが狙うのは主に妊婦と新生児です。特に出産直後の女性の血を好み、高床式住居の床下に潜んで長い舌で血を舐めるという恐ろしい習性があります。
触れただけで病気になる
ペナンガランの内臓から垂れる血や体液に触れると、治らない傷や重い病気になってしまいます。たとえ血を吸われなくても、内臓が触れただけで危険なんです。
昼間は普通の人間
昼間は普通の女性として生活し、助産婦として働くことが多いといわれています。でも、妊婦を見ると唇を舐める癖があるため、注意深い人なら見分けることができるとか。
弱点もある
ペナンガランにも弱点があります。とげのある植物「メンクアン」の葉を家の周りに撒いておくと、内臓が引っかかって動けなくなるんです。また、ガラスの破片を壁の上に置いたり、ハサミを枕の下に置くことも効果的だといわれています。
伝承と起源

ペナンガランがどうして生まれたのか、いくつかの伝説があります。
悪魔との契約説
最も有名な話では、元は普通の助産婦だった女性が力を得るために悪魔と契約したというもの。「40日間肉を食べない」という約束を破ったため、呪われて今の姿になってしまったんです。
事故説
別の伝承では、酢の入った桶で瞑想していた女性が、突然入ってきた男に驚いて急に頭を上げたところ、勢いあまって首が千切れてしまったという話も。怒り狂った女性は、そのまま飛び回る妖怪になったといわれています。
退治の方法
ペナンガランを完全に倒すには、体が空っぽになっている間に行動する必要があります。
ペナンガラン退治法
- 空の首にガラスの破片を詰める(戻ったとき内臓が切れる)
- 体を聖別して火葬する
- 体をひっくり返しておく(頭が逆さまについてしまう)
- 日の出前に体に戻れないようにする
東南アジア共通の恐怖
興味深いことに、ペナンガランのような「首と内臓だけの妖怪」は東南アジア全域に存在します。これは地域を超えた共通の恐怖心から生まれた存在かもしれません。
日本の「ろくろ首」や「飛頭蛮」、南米の「チョンチョン」など、世界各地に似た妖怪がいることも、人間の持つ普遍的な恐怖を表しているのかもしれませんね。
まとめ
ペナンガランは、東南アジアが生んだ恐ろしくも魅力的な吸血鬼です。
重要なポイント
- マレー半島の伝承に登場する吸血鬼
- 女性の頭に内臓がぶら下がった恐ろしい姿
- 昼は助産婦、夜は吸血鬼という二重生活
- 妊婦と新生児の血を狙う
- 内臓が光りながら空を飛ぶ
- 酢の臭いがする(内臓を縮めるため)
- とげのある植物が弱点
- 東南アジア各地に似た妖怪が存在
ペナンガランは単なる怪物ではなく、出産という命の誕生の場に潜む恐怖を象徴する存在です。
助産婦として命を助ける立場の者が、夜には命を奪う存在になるという皮肉。
この二面性が、ペナンガランの物語をより恐ろしく、そして興味深いものにしているのかもしれませんね。
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