「いつも同じような文章を何度も入力している」「お礼メールのテンプレートを保存したい」「もっと効率的にメールを書きたい」
そんな悩みを解決してくれるのが、クイックテキスト(QuickText)というアドオンです。
クイックテキストを使えば、よく使う文章をテンプレートとして登録し、ショートカットキー一つで呼び出せるようになります。毎日大量のメールを処理するビジネスパーソンには、必須のツールと言えるでしょう。
この記事では、クイックテキストの基本的な使い方から、ビジネスシーンでの活用法まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
クイックテキスト(QuickText)とは?

まずは基本を理解しましょう。
クイックテキストの概要
クイックテキストは、Thunderbird用のアドオン(拡張機能)です。
主な機能:
- よく使う文章をテンプレートとして保存
- ショートカットキーで素早く挿入
- 日時や名前などの変数を自動入力
- グループ分けして整理できる
別名:
- QuickText
- テンプレート機能
- 定型文挿入
- スニペット
なぜクイックテキストが必要なのか
メール作成の時間短縮:
毎日のメール業務で、同じような文章を繰り返し入力していませんか?
例えば:
- 「お世話になっております」
- 「ご確認のほどよろしくお願いいたします」
- 会議の日程調整メール
- お礼のメール
これらをテンプレート化すれば、入力時間が大幅に削減できます。
ミスの防止:
手入力だと、誤字脱字のリスクがあります。テンプレートを使えば、正確な文章を毎回挿入できるんです。
署名との違い
署名:
- メールの最後に自動的に挿入される
- 連絡先情報などの固定情報
- アカウントごとに1つ
クイックテキスト:
- 好きな位置に挿入できる
- 様々な種類のテンプレート
- 複数のテンプレートを使い分け可能
署名は「誰からのメールか」を示すもの、クイックテキストは「本文を効率化する」ツールです。
クイックテキストのインストール方法
まずはアドオンをインストールしましょう。
ステップ1:アドオン管理画面を開く
方法1:メニューから
- 画面右上の「三本線メニュー」をクリック
- 「アドオンとテーマ」を選択
方法2:ショートカットキー
- Windows:
Ctrl + Shift + A
- Mac:
Command + Shift + A
ステップ2:QuickTextを検索
- 検索ボックスに「QuickText」と入力
- 検索結果から「Quicktext」を探す
- 開発者名も確認(信頼できる開発元か)
注意点:
似た名前のアドオンがあるかもしれません。レビュー数や評価を確認しましょう。
ステップ3:インストール
- 「Thunderbirdに追加」ボタンをクリック
- 確認画面が表示されたら「追加」をクリック
- インストール完了を待つ
ステップ4:Thunderbirdを再起動
- Thunderbirdを完全に終了
- もう一度起動
- アドオンが有効になっているか確認
確認方法:
メール作成ウィンドウを開いて、新しいボタンやメニューが追加されていれば成功です。
基本的な使い方
インストールできたら、実際に使ってみましょう。
テンプレートを作成する
手順:
- メニューから「ツール」を選択
- 「QuickText」または「クイックテキスト」をクリック
- 設定ウィンドウが開きます
設定画面の構成:
- 左側:テンプレート一覧
- 右側:テンプレートの内容編集エリア
- 下部:ボタン類(追加、削除、保存など)
最初のテンプレートを作る
例:お礼メールのテンプレート
- 「新規」または「追加」ボタンをクリック
- テンプレート名を入力:「お礼メール」
- 本文欄に以下を入力:
お世話になっております。
この度はご協力いただき、誠にありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。
- 「保存」ボタンをクリック
テンプレートを挿入する
方法1:メニューから挿入
- メール作成ウィンドウを開く
- 挿入したい位置にカーソルを置く
- メニューから「挿入」→「QuickText」を選択
- 使いたいテンプレートをクリック
方法2:ショートカットキーを使用
設定したショートカットキーを押すだけで挿入できます(後述)。
方法3:ツールバーのボタン
ツールバーにQuickTextボタンが追加されていれば、それをクリックして選択できます。
ショートカットキーの設定
素早く挿入するための重要な機能です。
ショートカットキーとは
特定のキーの組み合わせで、テンプレートを呼び出す機能のこと。
例:
Ctrl + 1
で「お礼メール」を挿入Ctrl + 2
で「日程調整」を挿入
ショートカットキーを設定する方法
手順:
- QuickTextの設定画面を開く
- ショートカットを設定したいテンプレートを選択
- 「ショートカットキー」欄を探す
- 好きなキーの組み合わせを入力
- 保存
推奨するショートカット:
Ctrl + 数字
またはAlt + 数字
Ctrl + Shift + 文字
避けるべきショートカット:
既存の機能と重複するキー(Ctrl + C
、Ctrl + V
など)
頻度別のショートカット配置
使用頻度が高い:
Ctrl + 1
、Ctrl + 2
など押しやすいキー
中程度の頻度:
Ctrl + Shift + 文字
たまに使う:
- メニューから選択でOK
変数(プレースホルダー)の活用
クイックテキストの真髄とも言える機能です。
変数とは?
テンプレート内に入れる「空欄」のようなものです。
挿入時に、自動的に現在の情報(日付、名前など)に置き換わります。
よく使う変数一覧
日時関連:
[[DATE]]
– 今日の日付[[DATE=YYYY年MM月DD日]]
– 書式指定の日付[[TIME]]
– 現在の時刻
差出人情報:
[[FROM:FIRSTNAME]]
– 差出人の名[[FROM:LASTNAME]]
– 差出人の姓[[FROM:EMAIL]]
– 差出人のメールアドレス
宛先情報:
[[TO:FIRSTNAME]]
– 宛先の名[[TO:LASTNAME]]
– 宛先の姓[[TO:EMAIL]]
– 宛先のメールアドレス
その他:
[[SUBJECT]]
– 件名[[CURSOR]]
– カーソル位置(挿入後、ここにカーソルが移動)
変数を使ったテンプレート例
例1:個別対応のお礼メール
[[TO:LASTNAME]]様
お世話になっております。
[[FROM:FIRSTNAME]]です。
[[DATE]]はありがとうございました。
[[CURSOR]]
引き続きよろしくお願いいたします。
[[FROM:FIRSTNAME]] [[FROM:LASTNAME]]
挿入すると:
田中様
お世話になっております。
山田です。
2025年10月2日はありがとうございました。
[ここにカーソルが移動]
引き続きよろしくお願いいたします。
山田 太郎
例2:会議の日程調整
件名:[[DATE=MM月DD日]]の会議について
お疲れ様です。
下記日程で会議を開催したいと思います。
日時:[[DATE=YYYY年MM月DD日]]
時間:[[CURSOR]]
場所:
ご都合はいかがでしょうか。
グループ分けと整理
テンプレートが増えてきたら、整理が重要です。
グループの作成
手順:
- QuickText設定画面を開く
- 「新しいグループ」ボタンをクリック
- グループ名を入力(例:「社内向け」「顧客向け」)
- 保存
グループ分けの例
用途別:
- 挨拶文
- お礼メール
- お詫びメール
- 依頼メール
- 日程調整
- 会議設定
- 打ち合わせ依頼
- 社内連絡
- 休暇申請
- 報告メール
相手別:
- 顧客向け
- 社内向け
- パートナー企業向け
プロジェクト別:
- プロジェクトA
- プロジェクトB
- 定常業務
グループ内の並び替え
方法:
ドラッグ&ドロップで順番を変更できます(バージョンにより異なる)。
よく使うテンプレートを上に配置すると便利です。
ビジネスシーンでの活用例
実際の業務で使えるテンプレート集です。
1. 基本的な挨拶文
朝の挨拶:
おはようございます。
[[FROM:FIRSTNAME]]です。
[[CURSOR]]
本日もよろしくお願いいたします。
お疲れ様メール:
お疲れ様です。
[[CURSOR]]
よろしくお願いいたします。
2. 依頼メール
確認依頼:
[[TO:LASTNAME]]様
お世話になっております。
下記の件につきまして、ご確認をお願いできますでしょうか。
[[CURSOR]]
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
資料送付:
[[TO:LASTNAME]]様
お世話になっております。
ご依頼いただいておりました資料をお送りいたします。
添付ファイルをご確認ください。
[[CURSOR]]
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
3. 日程調整
会議設定:
件名:[[DATE=MM月DD日]]会議のご案内
お疲れ様です。
下記の通り、会議を開催いたします。
■日時
[[DATE=YYYY年MM月DD日(ddd)]]
[[CURSOR]]
■場所
■議題
ご出席のほど、よろしくお願いいたします。
日程調整依頼:
お疲れ様です。
下記の件でお打ち合わせをさせていただきたく、
ご都合をお伺いできますでしょうか。
【候補日程】
1. [[CURSOR]]
2.
3.
お手数ですが、ご都合の良い日時をお知らせください。
4. お礼・お詫び
お礼メール:
[[TO:LASTNAME]]様
お世話になっております。
この度は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
[[CURSOR]]
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
お詫びメール:
[[TO:LASTNAME]]様
お世話になっております。
この度は、[[CURSOR]]の件でご迷惑をおかけし、
誠に申し訳ございませんでした。
今後このようなことがないよう、十分注意してまいります。
何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
5. 報告メール
進捗報告:
お疲れ様です。
[[CURSOR]]の進捗を報告いたします。
【完了事項】
-
【進行中】
-
【次回予定】
-
引き続きよろしくお願いいたします。
トラブル報告:
お疲れ様です。
[[CURSOR]]について、以下の通り報告いたします。
【発生日時】
【現状】
【原因】
【対応状況】
【今後の予定】
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
HTMLメールでのクイックテキスト
見栄えの良いメールを作成する方法です。
HTMLテンプレートの作成
基本的なHTML構文:
<p>[[TO:LASTNAME]]様</p>
<p>お世話になっております。</p>
<p style="color: #003366; font-weight: bold;">
■ご連絡事項
</p>
<ul>
<li>[[CURSOR]]</li>
<li></li>
</ul>
<p>よろしくお願いいたします。</p>
よく使うHTMLタグ
太字:
<strong>重要な部分</strong>
色付き:
<span style="color: #FF0000;">赤い文字</span>
リンク:
<a href="https://example.com">リンクテキスト</a>
箇条書き:
<ul>
<li>項目1</li>
<li>項目2</li>
</ul>
区切り線:
<hr>
エクスポートとバックアップ
大切なテンプレートを守りましょう。
テンプレートのエクスポート
手順:
- QuickText設定画面を開く
- 「エクスポート」ボタンをクリック
- 保存場所を指定
- ファイル名を入力(例:quicktext_backup.json)
- 保存
保存されるファイル形式:
JSON形式(テキストファイル)で保存されます。
インポート方法
手順:
- QuickText設定画面を開く
- 「インポート」ボタンをクリック
- 保存したファイルを選択
- インポート完了
使用場面:
- 新しいパソコンへの移行
- Thunderbirdの再インストール後
- 別のアカウントでテンプレートを共有
定期的なバックアップ
推奨頻度:
- テンプレート追加・変更時
- 月に1回程度
保存先の例:
- クラウドストレージ(Dropbox、Google Driveなど)
- 外付けハードディスク
- ネットワークドライブ
よくある質問
Q1. クイックテキストが動作しません
A. 以下を確認してください:
チェック項目:
- アドオンが有効になっているか
- Thunderbirdを再起動したか
- 最新版のQuickTextか
- Thunderbirdのバージョンと互換性があるか
Q2. 変数が正しく置き換わりません
A. 変数の書式を確認してください。
正しい書式:
[[DATE]]
← これは正しい[DATE]
← 括弧が1つだけなので動作しない{{DATE}}
← 波括弧なので動作しない
大文字・小文字、括弧の数に注意しましょう。
Q3. テンプレートが多すぎて探しにくいです
A. グループ分けと命名規則を見直しましょう。
対策:
- 用途別にグループ化
- 名前の先頭に番号を付ける(01_お礼、02_依頼など)
- 使わないテンプレートは削除または別グループに移動
Q4. ショートカットキーが反応しません
A. 既存の機能と重複していないか確認してください。
対策:
- 別のキーの組み合わせに変更
- Thunderbirdを再起動
- 他のアドオンとの競合を確認
Q5. 複数のパソコンで同じテンプレートを使いたいです
A. エクスポート・インポート機能を使いましょう。
手順:
- 最初のパソコンでエクスポート
- ファイルをクラウドストレージに保存
- 他のパソコンでインポート
定期的に同期すれば、常に最新の状態を保てます。
代替アドオンとの比較
QuickText以外の選択肢もあります。
Clippings
特徴:
- シンプルな定型文管理
- フォルダ構造で整理
- 軽量で動作が速い
QuickTextとの違い:
- 変数機能が限定的
- よりシンプルな操作
SmartTemplate4
特徴:
- 返信・転送時のテンプレート
- より高度なカスタマイズ
- 条件分岐が可能
QuickTextとの違い:
- 主に返信・転送に特化
- 新規メールには向かない
選び方のポイント
QuickTextがおすすめ:
- 多様なテンプレートを使いたい
- 変数機能を活用したい
- 新規メールの作成が多い
他のアドオンがおすすめ:
- シンプルな機能で十分
- 返信・転送中心の業務
- 軽量さを重視
トラブルシューティング
問題が起きた時のチェックリストです。
問題1:アドオンが見つからない
原因:
- Thunderbirdのバージョンが古い
- アドオンの提供が終了している
解決方法:
- Thunderbirdを最新版に更新
- 別のアドオンを検討
- 公式サイトで情報を確認
問題2:テンプレートが消えた
原因:
- プロファイルの破損
- アドオンの更新時の不具合
解決方法:
- バックアップから復元
- エクスポートファイルをインポート
- 最悪の場合、再作成
予防策:
定期的なバックアップが重要です。
問題3:日本語が文字化けする
原因:
- エンコードの問題
- HTMLメールの設定
解決方法:
- メール形式を確認(UTF-8推奨)
- テンプレートを再作成
- Thunderbirdのエンコード設定を確認
まとめ:クイックテキストで業務を効率化
クイックテキストは、メール業務を大幅に効率化できる強力なツールです。
この記事のポイント:
✅ クイックテキストの導入
アドオンをインストールして設定画面を開く
✅ テンプレートを作成
よく使う文章をテンプレート化
✅ ショートカットキーで時短
キー1つで素早く挿入
✅ 変数で自動化
日付や名前を自動入力
✅ グループで整理
用途別に分類して管理
✅ ビジネスで活用
お礼、依頼、日程調整などの定型文
✅ 定期的にバックアップ
大切なテンプレートを保護
効率化のポイント:
- 頻度の高いメールから始める
毎日使う文章を優先的にテンプレート化 - 変数を積極的に活用
手動入力を最小限に - 定期的に見直す
使わないテンプレートは削除、新しいニーズに対応 - チーム内で共有
エクスポート機能で標準化 - 習慣化が重要
最初は手間でも、使い続けることで効果を実感
導入効果の例:
- メール作成時間が50%削減
- 誤字脱字が激減
- 対応品質の均一化
- ストレス軽減
1日に10通のメールを書く人なら、1通あたり1分短縮できるだけで、1日10分、1ヶ月で3時間以上の時間が節約できます。
ぜひクイックテキストを導入して、快適なメール環境を手に入れてください。最初は設定に少し時間がかかりますが、その投資は必ず回収できますよ!
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