森の中から聞こえてくる、すすり泣くような音を聞いたことはありますか?
もしかしたら、それは自分の醜い姿を恥じて泣き続ける幻獣「スクォンク」の声かもしれません。
あまりにも悲しくて、最後には自分の涙で溶けて消えてしまうという、世界一切ない生き物なんです。
この記事では、アメリカの森に住む涙の幻獣「スクォンク」について、その悲しい姿や特徴、興味深い伝承を分かりやすくご紹介します。
概要

スクォンクは、アメリカのペンシルバニア州北部の森に住むといわれる伝説の生き物です。
20世紀初頭、木こりたちの間で語られた幻獣の一つで、常に泣いているという特徴を持っています。自分の醜い姿を恥じて、涙を流し続けているんですね。
最も驚くべき特徴は、追い詰められたり、恐怖を感じたりすると、自分の涙で体が溶けて消えてしまうこと。まさに悲しみの極致といえる存在です。
フィアサム・クリッター(恐ろしい生き物)と呼ばれる北米の幻獣群の中でも、特に哀愁を帯びた存在として知られています。
姿・見た目
スクォンクの姿は、とにかく醜いと伝えられています。
スクォンクの外見的特徴
- 体表:全身がイボとほくろ、アザで覆われている
- 皮膚:しわだらけでたるんでいる
- 大きさ:シカくらいの大きさ
- 足:左足に水かきがついている(1939年の記述)
- 体型:4本足で歩く獣のような姿
その醜さは尋常ではなく、スクォンク自身が一番よく分かっているといいます。特に月明かりの夜は、水面に映る自分の姿を見ないように必死で避けて歩くんだとか。
まるで皮膚が体に合っていないような、不格好な見た目をしているため、動きも鈍いそうです。
特徴
スクォンクには、他の幻獣にはない悲しい特徴があります。
主な特徴と習性
- 常に泣いている:自分の醜さを恥じて絶えず涙を流す
- 夜行性:主に夕暮れや明け方に活動
- 引っ込み思案:極度に内気で人前に姿を現さない
- 涙の跡:通った道には涙の跡が残る
- 溶けて消える:恐怖や絶望を感じると涙になって溶ける
スクォンクの弱点
スクォンクは精神的にとても弱い生き物です。驚いたり、怖がったり、追い詰められたりすると、体中から涙があふれ出して、ついには全身が涙になって溶けてしまうんです。
後に残るのは、濡れた地面と泡だけ。まるで最初から存在しなかったかのように消えてしまいます。
伝承

スクォンクにまつわる最も有名な伝説は、ある猟師の体験談です。
猟師とスクォンクの物語
ペンシルバニアに住むある猟師が、スクォンクを捕まえようと考えました。彼はスクォンクの泣き声をまねして、うまくおびき寄せることに成功したんです。
スクォンクを袋に入れて、意気揚々と家に持ち帰る猟師。ところが、歩いているうちに急に袋が軽くなり、泣き声も聞こえなくなりました。
不思議に思って袋を開けてみると、そこには涙と泡しか残っていなかったというのです。スクォンクは袋の中で恐怖のあまり、涙になって溶けてしまったんですね。
森での目撃談
木こりたちの間では、ツガの森で涙の跡を見つけることがあると言われています。その跡をたどっていくと、時々すすり泣く声が聞こえるけれど、決して姿を見ることはできないそうです。
森で働く人々は、不気味な音や説明のつかない現象があると、「きっとスクォンクの仕業だ」と語り合ったといいます。
起源
スクォンクという幻獣が生まれた背景には、アメリカの林業文化があります。
文献への登場
スクォンクが初めて文献に登場したのは、1910年のことです。林業に携わっていたウィリアム・トーマス・コックスが書いた『木こりの森の恐ろしい動物たち』という本に記録されました。
その後、1939年にヘンリー・トライオンが『恐ろしい生き物たち』で再び取り上げ、より詳しい描写を加えたんです。
名前の由来
スクォンクには「Lacrimacorpus dissolvens」という学名がつけられています。これはラテン語で、以下の意味があります:
- Lacrima = 涙
- Corpus = 体
- Dissolvens = 溶ける
つまり「涙で溶ける体」という意味なんですね。
木こり文化との関係
20世紀初頭のアメリカでは、木こりたちが伐採キャンプを転々としながら働いていました。夜のキャンプファイヤーを囲んで、様々な幻獣の話で盛り上がったそうです。
スクォンクは、そんな木こりたちが創り出した「フィアサム・クリッター」の一種。森で聞こえる不思議な音や、説明のつかない現象を、ユーモアを交えて説明するための存在だったんです。
まとめ
スクォンクは、世界一悲しい幻獣といえるでしょう。
重要なポイント
- アメリカ・ペンシルバニア州の森に住む伝説の生き物
- 全身がイボとアザで覆われた醜い姿
- 自分の醜さを恥じて常に泣いている
- 恐怖を感じると涙で溶けて消えてしまう
- 1910年に初めて文献に登場
- 木こりたちが生み出したフィアサム・クリッター
- 学名は「涙で溶ける体」という意味
- 捕まえようとしても涙になって消える
もし森で涙の跡を見つけたら、それはスクォンクが通った道かもしれません。でも、追いかけないであげてください。この悲しい生き物は、そっとしておくのが一番なのですから。
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