「ゲーミングPCのゲームをノートPCで遊びたい」
「リビングのテレビで快適にPCゲームをプレイしたい」
「外出先からも自宅のゲームを楽しみたい!」
そんな願いを叶えてくれるのが、Steamの「リモートプレイ」機能です。
Steam Remote Play(旧称:In-Home Streaming)を使えば、高性能なゲーミングPCで動作するゲームを、別のパソコンやスマートフォン、さらにはテレビでもプレイできるようになります。ゲームの処理は元のPCで行い、映像と音声をストリーミングする仕組みなので、受信側のデバイスは高性能でなくても大丈夫なんです。
でも「設定が難しそう」「遅延が心配」「うまく接続できない」など、不安に感じる方も多いでしょう。
この記事では、Steamリモートプレイの設定方法から、快適にプレイするための最適化まで、初心者の方でも迷わないように詳しく解説していきます。
あなたのゲーム環境を、もっと自由に、もっと快適にアップグレードしましょう!
Steam Remote Playとは?

リモートプレイの仕組み
Steam Remote Playがどのように動作するか理解しておきましょう。
基本的な仕組み:
- ホストPC(ゲームを実行)
- ゲームを実際に処理・実行
- 映像と音声をエンコード
- ネットワーク経由で送信
- クライアント(プレイする側)
- 映像と音声を受信・デコード
- コントローラーやキーボードの入力を送信
- 画面に表示
- データの流れ
ホストPC → [映像・音声] → クライアント
クライアント → [操作入力] → ホストPC
つまり、重い処理はすべてホストPCが行い、クライアントは映像を表示するだけなんです。
できることとメリット
リモートプレイで実現できることを確認しましょう。
主な機能:
- 家庭内LANでの高速ストリーミング
- インターネット経由での外部接続
- 複数デバイスへの同時配信(Remote Play Together)
- ローカル協力プレイのオンライン化
- 非Steamゲームのストリーミング
メリット:
- 高性能PCが1台あれば十分
- どこでもゲームが楽しめる
- 静かな部屋でプレイ可能(PCを別室に設置)
- 大画面テレビでPCゲームを楽しめる
- 電気代の節約(クライアント側は低消費電力)
必要な環境と推奨スペック
快適にプレイするための要件を確認します。
最小要件:
項目 | ホストPC | クライアント |
---|---|---|
OS | Windows 7以降 / macOS 10.13以降 / Linux | Windows 7以降 / macOS 10.13以降 / Linux / Android 5.0以降 / iOS 11以降 |
CPU | クアッドコア以上 | デュアルコア以上 |
メモリ | 4GB以上 | 2GB以上 |
GPU | DirectX 10対応 | ハードウェアデコード対応 |
ネットワーク | 15Mbps以上(アップロード) | 15Mbps以上(ダウンロード) |
推奨環境:
- ホストPC: ゲーミングPC相当のスペック
- ネットワーク: 有線LAN接続(5GHz Wi-Fiも可)
- 回線速度: 50Mbps以上
- 遅延: 30ms以下
環境が整っていれば、驚くほど快適にプレイできます。
ホストPC側の設定
Steamの基本設定
まず、ゲームを配信する側(ホストPC)の設定を行います。
設定手順:
- Steamを起動してログイン
- 最新版にアップデート
- 管理者権限で実行を推奨
- リモートプレイを有効化
- Steam → 設定 → Remote Play
- 「Remote Playを有効にする」にチェック
- 詳細設定
設定項目:
☑ Remote Playを有効にする
☑ ペアリングされたコンピュータからの接続を許可
☐ その他のユーザーからの接続を許可(必要に応じて)
- ホストオプションの設定
- 「詳細なホストオプション」をクリック
- ハードウェアエンコーディングを有効化(GPU使用)
- 優先度を「バランス」または「美しい」に設定
これで基本的な配信準備は完了です。
ネットワーク設定の最適化
スムーズなストリーミングのためのネットワーク設定です。
ルーター設定:
- QoS(Quality of Service)設定
- ホストPCに優先度を設定
- ゲーミングモードがあれば有効化
- UPnP有効化
- 自動ポート開放のため
- セキュリティに注意
- ポート開放(必要な場合)
Steamリモートプレイ用ポート:
- TCP: 27036, 27037
- UDP: 27031, 27036
Windows設定:
1. ネットワークプロファイルを「プライベート」に
2. Windows Defenderの例外にSteamを追加
3. 省電力設定を「高パフォーマンス」に
ゲームごとの設定
特定のゲームで最適な設定を行います。
ゲーム内設定:
- 解像度の調整
- フルHD(1920×1080)が基本
- 4Kは回線速度次第
- フレームレート設定
- 60fps推奨
- 競技系は可能な限り高く
- グラフィック設定
- ホストPCの性能に合わせて調整
- ストリーミング品質とのバランス
非Steamゲームの追加:
1. Steamライブラリ → ゲームを追加
2. 「非Steamゲームを追加」を選択
3. 実行ファイルを選択
4. ライブラリに追加されたらリモートプレイ可能
クライアント側の設定
同じネットワーク内での接続
家庭内LANでの接続方法です。
Windows/Mac/Linuxの場合:
- Steamをインストール・起動
- 同じアカウントでログイン
- または招待を受ける
- 自動検出
- 同一ネットワーク内のPCを自動検出
- ライブラリにホストPCのゲームが表示
- ゲームをプレイ
- 「プレイ」ボタンをクリック
- 「[ホスト名]からストリーム」を選択
- 自動的に接続開始
接続品質の確認:
プレイ中にShift + Tab → 設定
- 現在のビットレート
- フレームレート
- 遅延(レイテンシ)
外部ネットワークからの接続
インターネット経由での接続設定です。
Steam Link Anywhereの設定:
- ホスト側の準備
- Remote Playで「他のコンピュータ」を有効化
- 十分なアップロード速度を確保(最低10Mbps)
- クライアント側での接続
方法1:自動接続
- 同じSteamアカウントでログイン
- ライブラリから直接プレイ
方法2:手動接続
- Steam → Remote Play → 他のコンピュータを追加
- ホストPCに表示されるPINを入力
- 接続テスト
- まずは軽いゲームで試す
- 徐々に設定を調整
注意点:
- 遅延が大きくなる可能性
- データ通信量に注意(1時間で約3-10GB)
Steam Linkアプリの使い方
スマートフォンやタブレットでプレイする方法です。
初期設定:
- アプリのインストール
- App Store / Google Playから「Steam Link」
- 無料でダウンロード
- ペアリング
初回起動時:
1. 「コンピュータをスキャン」をタップ
2. ホストPCを選択(同一ネットワーク必須)
3. PINコードを入力
4. ペアリング完了
- コントローラー設定
- タッチコントロール
- Bluetoothコントローラー対応
- キーボード・マウスも接続可能
モバイルでの最適設定:
設定 → ストリーミング
- 解像度:720p(モバイル回線時)
- ビットレート:自動または5-10Mbps
- フレームレート:30fps(バッテリー節約)
トラブルシューティング
接続できない時の対処法
よくある接続問題の解決方法です。
「コンピュータが見つかりません」エラー:
- 基本的な確認
- 両方のPCでSteamにログインしているか
- 同じネットワークに接続しているか
- Remote Playが有効になっているか
- ネットワーク設定
# Windowsファイアウォールの確認
Windows Defender ファイアウォール
→ Steamを例外に追加
# ネットワーク探索を有効化
ネットワークと共有センター
→ 共有の詳細設定
→ ネットワーク探索を有効にする
- Steam再起動
- 両方のPCでSteamを完全終了
- タスクマネージャーでプロセス確認
- 管理者権限で再起動
遅延(ラグ)を減らす方法
快適なプレイのための遅延対策です。
ネットワーク最適化:
- 有線接続に変更
- 可能な限り両方のPCを有線LAN接続
- Cat6以上のLANケーブル推奨
- Wi-Fi最適化(やむを得ない場合)
推奨設定:
- 5GHz帯を使用
- チャンネル幅:80MHz
- 他の機器との干渉を避ける
- ルーターとの距離を近く
- 品質設定の調整
- ビットレートを下げる(10-15Mbps)
- 解像度を720pに
- ハードウェアエンコーディング確認
システム最適化:
ホストPC:
- 他のアプリを終了
- Windows Game Modeを有効化
- NVIDIAのGameStream設定を確認
クライアント:
- ハードウェアデコードを有効化
- 省電力モードを解除
画質が悪い場合の改善策
ストリーミング品質を向上させる方法です。
ビットレート調整:
- 自動から手動設定へ
Steam設定 → Remote Play → 詳細なクライアントオプション
- ビットレート制限:無制限または50Mbps
- 解像度:デスクトップ解像度に合わせる
- エンコーダー設定
- NVIDIAユーザー:NVENC使用
- AMDユーザー:AMF使用
- ソフトウェアエンコードは避ける
- ネットワーク帯域の確保
- 他のストリーミングサービスを停止
- QoS設定でSteamを優先
音声の問題
音が出ない、途切れる場合の対処法です。
音声設定の確認:
- ホストPC側
サウンド設定 → 再生デバイス
- 既定のデバイスを確認
- Steamストリーミングスピーカーが有効か
- クライアント側
- 音量設定の確認
- オーディオドライバーの更新
- Steam設定
Remote Play → オーディオ
- スピーカー設定:自動検出
- オーディオチャンネル:ステレオ
パフォーマンスの最適化
最適な設定の見つけ方
環境に合わせた最適設定を見つけるコツです。
段階的な調整方法:
- まず低設定から始める
初期設定:
- 解像度:720p
- ビットレート:10Mbps
- フレームレート:30fps
- 徐々に品質を上げる
- 問題なければ1080p/30fpsへ
- さらに1080p/60fpsへ
- 最終的に希望の設定へ
- ゲームジャンル別の推奨設定
ジャンル | 解像度 | FPS | ビットレート | 優先事項 |
---|---|---|---|---|
アクション・FPS | 720p-1080p | 60fps | 15-30Mbps | 低遅延 |
RPG・アドベンチャー | 1080p-4K | 30-60fps | 20-50Mbps | 画質 |
パズル・カード | 1080p | 30fps | 10-20Mbps | 安定性 |
ハードウェアエンコーディングの活用
GPUを使った高速エンコーディングの設定です。
NVIDIA(NVENC)の設定:
- GeForce Experienceの設定
- GameStreamを有効化
- 品質設定を調整
- Steamでの確認
設定 → Remote Play → 詳細なホストオプション
☑ ハードウェアエンコーディングを有効化
☑ NVENCを優先的に使用
AMD(AMF)の設定:
- Radeon Softwareで設定
- 同様にハードウェアエンコーディングを有効化
Intel(Quick Sync)の活用:
- 内蔵GPUがある場合に利用可能
- CPUの負荷を大幅に軽減
ネットワーク帯域の管理
効率的な帯域使用のテクニックです。
動的ビットレート調整:
- 自動調整を活用
- ネットワーク状況に応じて自動調整
- 安定性を重視する場合に有効
- 固定ビットレート設定
安定した環境での推奨値:
- 家庭内LAN:30-50Mbps
- 5GHz Wi-Fi:15-30Mbps
- インターネット:5-15Mbps
- 帯域制限の設定
- 他の機器への影響を考慮
- 家族との共有を考えた設定
Remote Play Togetherの活用
ローカル協力プレイをオンラインで
友達と一緒にローカル協力ゲームを楽しむ機能です。
Remote Play Togetherとは:
- ローカルマルチプレイ対応ゲームをオンラインで
- ゲームを持っていない友達も参加可能
- 最大4人まで同時プレイ
使い方:
- ホストがゲームを起動
- Remote Play Together対応ゲームを起動
- フレンドを招待
- フレンドを招待
Shift + Tab → フレンドリスト
→ 右クリック → Remote Playに招待
- フレンドが参加
- 招待を受諾
- 自動的にストリーミング開始
- コントローラーで操作
おすすめゲーム:
- Overcooked! シリーズ
- Moving Out
- Human Fall Flat
- Cuphead
- Streets of Rage 4
設定と注意点
Remote Play Together利用時の設定です。
パフォーマンス設定:
複数人接続時の推奨:
- ビットレート:各5-10Mbps
- 合計帯域:人数×10Mbps以上
- 解像度:720p推奨
注意事項:
- ホストPCの負荷が大きい
- アップロード速度が重要
- 全員の遅延を考慮した設定
代替ツールとの比較
他のリモートプレイサービス
Steam以外の選択肢も確認しておきましょう。
主要サービス比較:
サービス | 特徴 | 料金 | 対応デバイス |
---|---|---|---|
Steam Remote Play | Steamゲーム特化 | 無料 | 全プラットフォーム |
Parsec | 低遅延、高品質 | 基本無料 | 全プラットフォーム |
Moonlight | NVIDIA GPU必須 | 無料 | 全プラットフォーム |
Xbox Cloud Gaming | クラウドゲーミング | Game Pass必要 | 限定的 |
GeForce NOW | クラウドゲーミング | 有料 | 全プラットフォーム |
使い分けの指針:
- Steamゲーム中心:Steam Remote Play
- 最高品質を求める:Parsec
- NVIDIA GPU所有:Moonlight
- ハードウェア不要:クラウドサービス
よくある質問
Q: 4K解像度でもプレイできる?
A: はい、可能ですが高速回線が必要です。
4Kストリーミングには最低50Mbps、理想的には100Mbps以上の帯域が必要です。また、ホストPCが4Kでゲームを動作させる性能も必要です。家庭内LANなら実現可能ですが、インターネット経由では現実的ではありません。
Q: コントローラーは何が使える?
A: ほぼすべての主要コントローラーが使用可能です。
Xbox、PlayStation、Switch Proコントローラーなど、Steamが対応しているコントローラーはすべて使えます。クライアント側に接続したコントローラーの入力が、そのままホストPCに送信されます。
Q: データ通信量はどのくらい?
A: 設定により大きく変わります。
目安として:
- 720p/30fps:約1.5GB/時間
- 1080p/60fps:約4-6GB/時間
- 4K/60fps:約15-20GB/時間
モバイル回線使用時は要注意です。
Q: VPNを使っても大丈夫?
A: 技術的には可能ですが、遅延が増加します。
VPN経由でも接続できますが、追加の遅延が発生するため、アクションゲームには向きません。ターン制のゲームなら問題ないでしょう。
Q: 複数のPCから同時にストリーミングできる?
A: 基本的に1対1の接続です。
通常のRemote Playは1つのホストに1つのクライアントのみ接続可能です。ただし、Remote Play Togetherなら最大4人まで同時接続できます。
まとめ
Steam Remote Playは、適切に設定すれば驚くほど快適にゲームをストリーミングできる素晴らしい機能です。
成功のポイント:
- 環境を整える
- 有線LAN接続が理想
- 十分な回線速度を確保
- ハードウェアエンコーディング活用
- 段階的に設定
- 低設定から始める
- 徐々に品質を上げる
- 最適なバランスを見つける
- 用途に応じた使い分け
- 家庭内:高品質設定
- 外出先:安定性重視
- 協力プレイ:Remote Play Together
- トラブル対策
- ファイアウォール設定確認
- ネットワーク最適化
- 定期的な設定見直し
- 楽しみ方を広げる
- リビングでPCゲーム
- ベッドでゆったりプレイ
- 友達と協力プレイ
リモートプレイを活用することで、ゲーム体験の自由度が大きく広がります。
この記事を参考に、あなたも快適なリモートゲーミング環境を構築してください。高性能PCの力を、家中どこでも、さらには外出先でも楽しめる。それがSteam Remote Playの魅力です!
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