「デザインツールって高額なソフトが必要でしょ?」そんな常識を覆したのがFigma(フィグマ)です。
Figmaは、Webブラウザだけで動作する革新的なデザインツール。インストール不要、しかも無料で始められるのに、プロ級のデザインが作れるんです。Adobe XDやSketchといった有名ツールを追い抜いて、今や世界中のデザイナーが愛用しています。
最大の魅力は「リアルタイムコラボレーション」機能。Google Docsのように、複数人が同時に同じデザインファイルを編集できるんですよ。デザイナーとエンジニアが一緒に作業したり、クライアントがその場でフィードバックを書き込んだり、まさに新時代のデザインワークフローを実現しています。
この記事では、Figmaの基本操作から実践的なテクニック、チーム開発での活用方法まで、初心者でもすぐに使えるように詳しく解説していきます。
1. Figmaの基礎知識:他のツールとどう違う?

Figmaの革命的な3つの特徴
1. ブラウザベースで動作
従来のデザインツールは重いソフトをインストールする必要がありました。でもFigmaは違います。ChromeやFirefoxなどのブラウザがあれば、すぐに使い始められるんです。
従来のツール:
- インストールに30分
- アップデートの手間
- PCスペックに依存
- OSの制限あり
Figma:
- アカウント作成だけで即スタート
- 自動アップデート
- クラウド処理で軽快動作
- Windows、Mac、Linux対応
2. 完全なリアルタイムコラボレーション
複数人が同時に作業できるのは、Figmaだけの強みです。
- カーソルの動きがリアルタイムで見える
- 変更が即座に全員に反映
- コメント機能で議論が可能
- バージョン管理が自動
3. 無料プランが充実
個人利用なら、ほぼすべての機能が無料で使えます。
他のデザインツールとの比較
Figma vs Adobe XD:
Figma:
✓ ブラウザで動作
✓ 無料プランが充実
✓ リアルタイムコラボレーション
✓ プラグインが豊富
Adobe XD:
✓ Creative Cloudとの連携
✓ 音声プロトタイプ対応
△ 有料(単体で月額1,298円)
△ デスクトップアプリ必須
Figma vs Sketch:
Figma:
✓ クロスプラットフォーム
✓ チーム作業に最適
✓ 自動保存
Sketch:
△ Macのみ対応
✓ 豊富なプラグイン
△ 年額$99
Figmaが向いている人・プロジェクト
特に向いている:
- チームでのデザイン作業
- Webサイト・アプリのUI設計
- デザインシステムの構築
- クライアントとの共同作業
- 初めてデザインツールを使う人
やや不向き:
- 複雑なイラスト制作
- 印刷物のデザイン(CMYKサポートなし)
- 大量の画像編集
2. Figmaを始めよう:アカウント作成から基本操作まで
アカウント作成とセットアップ
手順:
- figma.comにアクセス
- 「Sign up」をクリック
- メールアドレスまたはGoogleアカウントで登録
- 用途を選択(個人/チーム/教育)
- チュートリアルを完了
初回ログイン時のチュートリアルは必ず実施しましょう。5分程度で基本操作が身につきます。
画面構成を理解する
Figmaの画面は大きく5つのエリアに分かれています。
┌─────────────────────────────────────┐
│ ツールバー(ファイル操作・共有) │
├────┬────────────────────┬────┤
│左 │ │右 │
│サ │ キャンバス │サ │
│イ │ (作業エリア) │イ │
│ド │ │ド │
│バ │ │バ │
│| │ │| │
└────┴────────────────────┴────┘
各エリアの役割:
- ツールバー:ツール選択、表示設定
- 左サイドバー(レイヤー):要素の階層管理
- キャンバス:実際のデザイン作業スペース
- 右サイドバー(プロパティ):選択要素の詳細設定
基本的なショートカットキー
作業効率を劇的に上げる必須ショートカットです。
図形・テキスト:
R:長方形ツール
O:円形ツール
L:線ツール
T:テキストツール
F:フレーム作成
V:選択ツール(移動)
編集操作:
Ctrl/Cmd + C:コピー
Ctrl/Cmd + V:ペースト
Ctrl/Cmd + D:複製
Ctrl/Cmd + G:グループ化
Ctrl/Cmd + Shift + G:グループ解除
Delete:削除
表示操作:
Space + ドラッグ:画面移動
Ctrl/Cmd + マウスホイール:ズーム
Shift + 1:全体表示
Shift + 2:選択要素にズーム
3. 実践!Webサイトのデザインを作ってみよう
フレームの作成(画面サイズの設定)
まず、デザインの土台となるフレームを作成します。
よく使うフレームサイズ:
デスクトップ:
- Desktop:1440 × 1024
- MacBook Pro:1440 × 900
タブレット:
- iPad Pro:1024 × 1366
- iPad:768 × 1024
スマートフォン:
- iPhone 14 Pro:393 × 852
- Android Large:360 × 800
フレームツール(F)を選択し、右サイドバーからデバイスを選ぶだけで適切なサイズが設定されます。
グリッドとレイアウト
整ったデザインの秘訣は、グリッドシステムの活用です。
グリッドの設定方法:
- フレームを選択
- 右サイドバーの「Layout Grid」をクリック
- 「+」ボタンで追加
推奨設定:
Webデザイン(12カラムグリッド):
- Type:Columns
- Count:12
- Margin:20px
- Gutter:20px
モバイル(4カラムグリッド):
- Type:Columns
- Count:4
- Margin:16px
- Gutter:16px
コンポーネント化で効率アップ
ボタンやカードなど、繰り返し使う要素はコンポーネント化しましょう。
コンポーネントの作成:
- 要素を選択
Ctrl/Cmd + Alt + K
でコンポーネント化- 名前を付けて管理
メリット:
- 一箇所変更すれば全体に反映
- デザインの一貫性を保てる
- 作業時間の大幅短縮
Auto Layoutで柔軟なレイアウト
Auto Layoutは、要素の配置を自動調整する強力な機能です。
使い方:
1. 複数要素を選択
2. Shift + Aでオートレイアウト適用
3. 右サイドバーで詳細設定
- 方向(縦/横)
- 間隔(Spacing)
- パディング(Padding)
活用例:ナビゲーションバー
[ロゴ] [自動スペース] [メニュー1] [8px] [メニュー2] [8px] [メニュー3]
Auto Layoutを使えば、メニュー項目を追加しても
自動的に間隔が調整される
4. プロトタイプ機能:動くデザインを作る
画面遷移の設定
静的なデザインに動きを付けて、実際のアプリのような体験を作れます。
基本的な遷移の作り方:
- 「Prototype」タブに切り替え
- 遷移元の要素を選択
- 青い矢印を遷移先フレームにドラッグ
- アニメーション設定を選択
トリガーの種類:
On Click:クリック時
On Hover:マウスオーバー時
On Press:押している間
After Delay:指定時間後
アニメーションの種類:
Instant:瞬間移動
Dissolve:フェード
Smart Animate:自動補間(おすすめ)
Move In/Out:スライド
Push:押し出し
インタラクティブコンポーネント
ボタンのホバー効果など、状態変化を持つコンポーネントを作成できます。
例:ボタンの3状態
1. Default(通常状態)
2. Hover(マウスオーバー)
3. Pressed(クリック中)
これらをバリアントとして設定し、
プロトタイプで状態遷移を定義
プレゼンテーションモード
完成したプロトタイプは、実機のように動作確認できます。
プレビュー方法:
- 右上の「▶」ボタンをクリック
- または
Ctrl/Cmd + Alt + Enter
共有リンクの生成:
- 「Share」ボタンをクリック
- 「Copy link」で共有用URLを取得
- クライアントや開発者に送信
5. チーム開発でのFigma活用術
プロジェクトとファイルの整理
推奨フォルダ構成:
プロジェクト名/
├── 📁 Design System
│ ├── Colors & Typography
│ ├── Components
│ └── Icons
├── 📁 Wireframes
│ ├── Desktop
│ └── Mobile
├── 📁 High-Fidelity Designs
│ ├── Version 1.0
│ ├── Version 2.0
│ └── Latest
└── 📁 Prototypes
└── User Testing
命名規則とレイヤー管理
統一された命名規則で、チーム全体の効率が向上します。
コンポーネント命名例:
Button/Primary/Large
Button/Primary/Medium
Button/Secondary/Large
Card/Product/Default
Card/Product/Hover
Navigation/Header/Desktop
Navigation/Header/Mobile
レイヤー命名のコツ:
- 日本語は避ける(エクスポート時の文字化け防止)
- スラッシュ(/)で階層を表現
- 状態はサフィックスで表現(_hover、_active)
コメント機能の活用
デザインに直接フィードバックを残せる便利機能です。
コメントの使い方:
- ツールバーの💬アイコンをクリック
- コメントしたい箇所をクリック
- テキストを入力して投稿
効果的なコメントのコツ:
- 具体的な修正案を記載
- @メンションで担当者に通知
- 解決したらResolveでクローズ
- 重要度をラベルで表現
6. デザインシステムの構築
スタイルの登録と管理
色やテキストスタイルを一元管理できます。
カラースタイルの作成:
1. 要素の塗りを選択
2. 右サイドバーの「4つの点」アイコンをクリック
3. 「+」で新規スタイル作成
4. 名前を付けて保存
命名例:
- Primary/500
- Secondary/300
- Neutral/Gray/100
- Semantic/Error
- Semantic/Success
テキストスタイル:
見出し:
- H1:32px / Bold / 行高 40px
- H2:24px / Bold / 行高 32px
- H3:20px / SemiBold / 行高 28px
本文:
- Body:16px / Regular / 行高 24px
- Caption:14px / Regular / 行高 20px
ライブラリ機能
チーム全体でコンポーネントやスタイルを共有できます。
ライブラリの公開:
- ファイルを開く
- 右上の「Share」→「Publish Library」
- 変更内容を記載して公開
ライブラリの使用:
- 新規ファイルを作成
- Assets パネルでライブラリを有効化
- コンポーネントをドラッグ&ドロップ
デザイントークンの活用
開発との連携を考慮した、より詳細な定義です。
// デザイントークンの例
{
"color": {
"primary": {
"100": "#E3F2FD",
"500": "#2196F3",
"900": "#0D47A1"
}
},
"spacing": {
"xs": "4px",
"sm": "8px",
"md": "16px",
"lg": "24px",
"xl": "32px"
},
"borderRadius": {
"small": "4px",
"medium": "8px",
"large": "16px"
}
}
7. 開発者との連携機能
Dev Modeの活用
2023年に追加された開発者向けモードで、実装に必要な情報を簡単に取得できます。
Dev Modeでできること:
- CSSコードの自動生成
- 要素間の距離測定
- アセットのダウンロード
- コンポーネントの仕様確認
切り替え方法: 右上の「</>」アイコンをクリックするだけで、デザインモードとDev Modeを切り替えられます。
コードエクスポート
選択した要素のCSSを自動生成してくれます。
生成されるCSSの例:
/* ボタンのスタイル */
.button-primary {
width: 120px;
height: 48px;
background: #2196F3;
border-radius: 8px;
padding: 12px 24px;
/* テキストスタイル */
font-family: 'Inter';
font-weight: 600;
font-size: 16px;
line-height: 24px;
color: #FFFFFF;
}
アセットの書き出し
画像やアイコンを適切な形式で書き出せます。
エクスポート設定:
PNG:写真、複雑なグラフィック
- 1x, 2x, 3x(モバイル向け)
SVG:アイコン、ロゴ
- ベクター形式で拡大縮小自在
JPG:写真のみ
- ファイルサイズ重視の場合
PDF:印刷用、ドキュメント用
一括エクスポート:
- エクスポートしたい要素を選択
- 右サイドバーの「Export」セクション
- 「+」で設定追加
- 「Export ○ layers」で一括ダウンロード
8. 便利なプラグイン10選
必須プラグイン
1. Unsplash
- 高品質な無料写真を直接挿入
- 商用利用可能
2. Lorem ipsum
- ダミーテキストを自動生成
- 日本語にも対応
3. Iconify
- 10万以上のアイコンから検索
- Material Icons、Font Awesomeなど
4. Remove BG
- 画像の背景を自動削除
- AIによる高精度な切り抜き
5. Figma to Code (HTML, Tailwind, Flutter)
- デザインをコードに自動変換
- 各種フレームワーク対応
効率化プラグイン
6. Rename It
- レイヤー名を一括変更
- 連番付けや置換が簡単
7. Content Reel
- テキストや画像を一括置換
- ダミーデータの挿入
8. Auto Layout Grid
- グリッドレイアウトを自動生成
- レスポンシブ対応
9. Stark
- アクセシビリティチェック
- 色覚シミュレーション
10. Design Lint
- デザインの不整合を検出
- スタイルガイド準拠チェック
9. よくあるトラブルと解決方法
パフォーマンスの問題
Q: Figmaが重い、動作が遅い
解決策:
1. 画像の最適化
- 大きすぎる画像は事前にリサイズ
- 不要な画像は削除
2. レイヤーの整理
- 非表示レイヤーを削除
- グループ化で階層を整理
3. ブラウザの設定
- ハードウェアアクセラレーションを有効化
- キャッシュをクリア
4. メモリ解放
- 使用していないタブを閉じる
- ブラウザを再起動
共同作業のトラブル
Q: 同時編集で競合が発生
対策:
- ページやセクションを分けて作業
- ブランチ機能を活用(有料プラン)
- 作業前にコメントで宣言
Q: 変更履歴を戻したい
手順:
- 右クリック→「Show version history」
- 戻したいバージョンを選択
- 「Restore this version」をクリック
エクスポートの問題
Q: 日本語が文字化けする
解決策:
- フォントを「Noto Sans JP」に変更
- テキストをアウトライン化
- PDFエクスポートを使用
10. 料金プランと選び方
各プランの比較
無料プラン(Starter):
✓ 3ファイルまで
✓ 無制限の個人ファイル
✓ 基本機能すべて
✓ 2人までの編集者
△ 30日間のバージョン履歴
Professional(月額$15/編集者):
✓ 無制限のファイル
✓ 無制限のバージョン履歴
✓ チームライブラリ
✓ プライベートプロジェクト
✓ 音声通話機能
Organization(月額$45/編集者):
✓ Professionalの全機能
✓ デザインシステム分析
✓ ブランチ機能
✓ SSO(シングルサインオン)
✓ 高度な管理機能
プラン選択の目安
個人・勉強用 → 無料プラン
フリーランス → 無料〜Professional
小規模チーム → Professional
大企業 → Organization
教育機関向けプラン
学生や教員は、無料でProfessionalプランが使えます。
申請方法:
- 学校のメールアドレスで登録
- Education planに申請
- 承認後、2年間無料
まとめ:Figmaで変わるデザインワークフロー
Figmaは単なるデザインツールではありません。チーム全体のコミュニケーションを改善し、デザインから開発までのワークフローを革新するプラットフォームです。
Figmaを使いこなすための3つのポイント:
- 基本をしっかりマスター
- ショートカットキーを覚える
- コンポーネント化を習慣にする
- Auto Layoutを活用する
- チーム機能を最大限活用
- コメント機能でコミュニケーション
- ライブラリで一貫性確保
- Dev Modeで開発連携
- 継続的な学習
- 新機能を積極的に試す
- プラグインを活用
- コミュニティから学ぶ
無料で始められるFigma。まずはアカウントを作って、実際に触ってみることが上達への第一歩です。
最初は戸惑うかもしれませんが、使い込むほどにその便利さが実感できるはず。この記事を参考に、ぜひFigmaでのデザイン制作を楽しんでください!
デザインの民主化を実現したFigma。あなたのクリエイティビティを解放する最高のパートナーになることでしょう。
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