概要

真っ黒な小さい影が、赤い目を光らせながらクスクス笑っている…そんな不気味な存在を見たことはありませんか?
ヨーロッパの古い伝承に登場する「インプ」は、いたずら好きな小悪魔として知られています。もともとは妖精の仲間だったのに、16世紀頃から悪魔の手下として扱われるようになった、ちょっと不思議な存在なんです。
魔女の使い魔として人間から物を盗んだり、スパイ活動をしたりする一方で、寂しがり屋で人間の友達を求めることもある。そんな複雑な性格を持つ小さな悪魔がインプです。
この記事では、妖精と悪魔の中間にいる不思議な存在「インプ」について詳しくご紹介します。
姿・見た目
インプの姿は、とにかく小さくて真っ黒なのが特徴です。
インプの外見
- 体の大きさ:10センチから子供くらい(最大でも1メートル程度)
- 肌の色:全身真っ黒
- 目:充血したような赤い目
- 耳:コウモリのようにピンと尖っている
- 体型:ぽっこり出たお腹
- 尻尾:先端が鉤(かぎ)型になった長い尻尾
- その他:小さな角、コウモリのような翼(後から追加された特徴)
面白いことに、時代とともに姿が変化しているんです。最初は単なる黒い小人だったのが、悪魔扱いされるようになってから、角や翼が描き足されるようになりました。
特徴
インプには、他の妖精や悪魔とは違う独特な性質があります。
インプの性格と行動
基本的な性格
- いたずら好きで悪戯ばかり
- 意地悪だが、完全な悪魔ほど邪悪ではない
- 寂しがり屋で人間の友達を求める
- ゴブリンより悪質とされることも
得意な悪事
- 窃盗(物を盗む)
- スパイ活動
- 赤ちゃんのすり替え
- 旅人を迷わせる
特殊な能力
- 魔力を持っている
- どんな姿にも変身可能
- 魔術で召喚されると術者に従う
インプの二面性
インプの面白いところは、悪魔と妖精の中間にいることです。
完全な悪ではなく、時には人助けをすることもあります。でも、その裏では必ず何か企んでいる。友達になったとしても、退屈になるといたずらを仕掛けてくる。そんな予測不能な性格が「インプっぽい(impish)」という言葉の由来になったんですよ。
伝承

インプにまつわる伝説は、イギリスを中心にヨーロッパ各地に残っています。
リンカーン大聖堂の石化したインプ
14世紀のイングランド、リンカーン大聖堂での出来事です。
悪魔が二匹のインプを連れて大聖堂にやってきました。インプたちは聖堂の中で大暴れ。天使が現れて「やめなさい!」と命じると、一匹のインプが天使に石を投げつけようとしました。その瞬間、インプは石に変えられてしまったんです。
今でもリンカーン大聖堂の東端には、この石化したインプの像が残っていて、街のシンボルになっています。地元のサッカーチーム「リンカーン・シティFC」のエンブレムにも使われているんですよ。
トム・ティット・トットの物語
イギリスの民話に登場する、狡猾(こうかつ)なインプの話です。
大食いの娘が困っているところに、黒いインプ(インペット)が現れます。「糸を紡いでやる代わりに、1か月以内に俺の名前を当てろ。できなければお前は俺のものだ」という条件を出しました。
娘は必死に名前を探し、最後の日に森で「俺の名はトム・ティット・トット!」と歌うインプを発見。名前を言い当てられたインプは、叫び声を上げて逃げ去り、二度と現れませんでした。
この話は、人間の知恵が小悪魔に勝つという教訓を含んでいます。
魔女裁判とインプ
16〜17世紀の魔女狩りの時代、インプは魔女の使い魔として恐れられました。
実際には黒猫やトカゲ、ヒキガエルなどのペットが「インプだ!」と言いがかりをつけられることが多かったんです。魔女の証拠として、これらの小動物が裁判で証拠品にされたという悲しい歴史もあります。
まとめ
インプは、妖精から悪魔へと変化した不思議な存在です。
重要なポイント
- ヨーロッパの民間伝承の小悪魔
- 10センチから子供サイズの真っ黒な姿
- 赤い目と尖った耳、鉤型の尻尾が特徴
- もともと妖精だったが16世紀に悪魔に分類
- いたずら好きだが完全な悪ではない
- 寂しがり屋で人間の友達を求める面も
- リンカーン大聖堂の石化したインプが有名
- 「インプ」の語源は「挿し木」
小さくて悪戯好き、でも完全な悪魔ではない。
そんなインプは、人間と超自然的存在の間にある複雑な関係を象徴する、とても興味深い存在なんですね。
コメント