広大なロシアの森で、親戚の声に呼ばれてついていったら、いつの間にか道に迷っていた…。
それは森の精霊レーシーの仕業かもしれません。
森を守る番人でありながら、人間を迷わせることを楽しむ不思議な存在。でも、対処法を知っていれば大丈夫なんです。
この記事では、スラヴ神話に登場する森の精霊レーシーの正体と、人間との奇妙な関係について詳しくご紹介します。
概要

レーシー(ロシア語:леший)は、スラヴ神話に伝わる森の精霊です。
ロシアやチェコスロバキアなどスラヴ圏の森に住み、森の守護者として植物や動物を守っています。各森に必ず一人のレーシーがいるといわれ、その森の主として君臨しているんです。
でもレーシーは単なる守護者じゃありません。
人間を森の奥へ誘い込んで道に迷わせることを楽しむ、いたずら好きな一面も持っています。
親戚や知り合いの声を真似て呼びかけ、ついてきた人を迷子にしてしまうんです。
名前の「レーシー」は、ロシア語で「森」を意味する「レス」から来ています。他にも「レスノイ」(森の人)、「レシャーク」など様々な呼び名があるんです。
姿・見た目
レーシーの最大の特徴は、自在に姿を変えられることです。
基本的な姿
レーシーの外見
- 血が青いため、顔や耳が青白い
- 緑色の長い髪とひげ(体を覆うほど長い)
- 動物のような毛皮に覆われている
- 骨のように痩せた手足
- 赤い帽子や服を着ることもある
変身能力
レーシーは状況に応じて様々な姿に変身します。
変身パターン
- 巨人(樹木より高く、3〜4メートル以上)
- 小人(木の葉の下に隠れられるサイズ)
- 人間の姿(親戚や知人そっくりに化ける)
- 植物人間(全身がモミの木でできている)
特に恐ろしいのは、死んだ親戚や知人の姿で現れることです。懐かしい声で「さあ、出かけようか!」と呼びかけてくるので、つい信じてしまうんです。
特徴

レーシーには、森の精霊ならではの独特な習性があります。
人を迷わせる能力
レーシーの最も有名な能力は、人を森で迷子にさせることです。
迷わせる手口
- 親戚や友人の声を完璧に真似る
- 道しるべを隠したり移動させる
- 見えない壁を作って道を塞ぐ
- 同じ場所をぐるぐる回らせる
迷った人は、すぐ近くに出口があるのに見つけられなくなります。レーシーの呪術にかかると、いくら歩いても同じ場所に戻ってきてしまうんです。
森の番人としての役割
一方で、レーシーは森の守護者でもあります。
守護者としての仕事
- 森の動物たちの世話
- 植物を守る
- 森を荒らす悪人を懲らしめる
- 動物たちの移動を管理(トランプで賭けることも)
レーシーは特に10月頃に活発になります。冬が近づくと一時的に死ななければならないため、不機嫌になって人間へのいたずらが増えるんです。春になると蘇って、また森の番を始めます。
伝承

レーシーと人間の関わりには、様々な伝承があります。
実際の遭遇談
ソ連時代の作家が記録した農婦の体験談があります。
森でいちごを摘んでいた農婦のもとに、女性の姿をしたレーシーが現れました。親戚そっくりの声で「さあ、出かけようか!」と誘いましたが、農婦は白樺の皮の袋を持っていることからレーシーだと見破り、なんとか逃げることができたんです。
レーシーから逃れる方法
レーシーの呪術を解く方法が、民間伝承として伝わっています。
対処法
- 上着を裏返しに着る
- 靴を左右逆に履く
- 塩とパンを供物として捧げる
- ヒイラギやアザミの茂みに逃げ込む
- 十字を切って祈る
これらの方法でレーシーを混乱させると、呪術が解けて正しい道に戻れるといわれています。
羊飼いや狩人との契約
興味深いことに、レーシーと契約を結ぶ人々もいました。
羊飼いは季節の始めに、塩とパン、時には牛を捧げてレーシーと契約を結びます。すると、レーシーが家畜の世話をしてくれるんです。ただし、契約を破ると恐ろしい報復が待っています。
狩人も同様に、最初の獲物や血を捧げることで、レーシーから狩りの成功を約束してもらうことがありました。
月を愛でる習性
レーシーには意外な一面もあります。
夜中に木々のまばらな場所で、切り株に座って月を眺めるのが大好きなんです。雲が月を隠すと「お月さん光ってくれ」と呼びかけるという、なんとも詩的な姿も目撃されています。
まとめ
レーシーは、森の守護者と迷わせ屋の二つの顔を持つ不思議な精霊です。
重要なポイント
- スラヴ神話の森の精霊・守護者
- 自在に姿を変える(巨人から小人、人間まで)
- 親戚の声で呼びかけて人を迷子にする
- 靴を左右逆に履くと呪術が解ける
- 冬は死に、春に蘇るサイクル
- 森の動物と植物を守る責任を負う
広大なロシアの森で道に迷ったとき、それは方向音痴のせいじゃないかもしれません。
もしかしたら、レーシーがあなたと遊んでいるのかも。
でも大丈夫、靴を履き替えて上着を裏返せば、きっと道は開けるはずです。
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