「論文を探しているけど、信頼できる情報が見つからない」 「自分の研究分野で重要な論文を見逃したくない」 「世界でどんな研究が注目されているか知りたい」
そんなあなたに必要なのが、**Web of Science(ウェブ・オブ・サイエンス)**です。
これは単なる論文検索サイトではありません。世界中の優れた研究を厳選し、研究の「つながり」まで見せてくれる、まさに研究界のGoogleといえる存在なんです。
この記事を読めば、Web of Scienceがなぜ世界中の研究者に愛用されているのか、そしてあなたの研究や学習にどう役立つのかが、すべて分かります!
Web of Scienceって何?基本をわかりやすく解説

一言で説明すると
Web of Scienceは、世界で最も権威のある学術論文データベースです。
1900年から現在までの、厳選された学術雑誌の論文情報を収録。ただ論文を集めているだけでなく、「どの論文がどの論文を引用しているか」という引用ネットワークも分かるのが最大の特徴です。
Google Scholarとは何が違うの?
【Google Scholar】
- 無料で誰でも使える
- あらゆる学術情報を収集(質のばらつきあり)
- 引用数は概算値
- プレプリント(査読前論文)も含む
【Web of Science】
- 有料(主に大学・研究機関が契約)
- 厳選された学術誌のみ収録
- 引用数は正確にカウント
- 査読済み論文が中心
つまり、Web of Scienceは質重視、Google Scholarは量重視といえます。
なぜWeb of Scienceが重要なの?5つの理由
1. 信頼性が段違い
収録される雑誌は、厳しい審査をクリアしたトップジャーナルのみ。
【収録基準】
- 定期的な出版実績
- 査読制度の確立
- 国際的な編集委員会
- 英文抄録の掲載
- 引用文献の正確性
怪しい論文に騙される心配がありません!
2. 引用情報で研究の影響力が分かる
【見える化される情報】
- この論文は何回引用されたか
- どんな研究者が引用しているか
- 引用している論文の分野は何か
- 時系列での引用推移
研究のインパクトが数値で分かります。
3. 研究トレンドを把握できる
【トレンド分析機能】
- ホットな研究テーマの発見
- 急成長している研究分野の特定
- 注目研究者の動向把握
- 国別・機関別の研究力比較
世界の研究動向を俯瞰できるんです。
4. インパクトファクターの情報源
学術雑誌の影響力を示す**インパクトファクター(IF)**は、Web of Scienceのデータから算出されています。
【IFの計算式】
IF = 過去2年間の論文の被引用数 ÷ 過去2年間の論文掲載数
研究者にとって、どの雑誌に投稿するかの重要な指標です。
5. 研究評価の世界標準
【利用される場面】
- 大学ランキングの算出
- 研究費申請の業績評価
- 昇進・採用の判断材料
- 国の科学技術政策立案
つまり、研究の世界では避けて通れない存在なんです。
Web of Scienceの構成:6つのデータベース
1. Science Citation Index Expanded (SCIE)
【自然科学分野】
- 収録誌数:約9,500誌
- 分野:物理、化学、生物、医学、工学など
- 1900年から現在まで
理系研究者の必須ツールです。
2. Social Sciences Citation Index (SSCI)
【社会科学分野】
- 収録誌数:約3,500誌
- 分野:経済学、社会学、心理学、教育学など
- 1900年から現在まで
3. Arts & Humanities Citation Index (AHCI)
【人文科学分野】
- 収録誌数:約1,800誌
- 分野:文学、歴史、哲学、芸術など
- 1975年から現在まで
4. Emerging Sources Citation Index (ESCI)
【新興分野】
- 将来有望な新しい学術誌
- 地域的に重要な雑誌
- 2015年から収録開始
5. Conference Proceedings Citation Index
【会議録】
- 国際会議の発表論文
- 理工系と社会科学系の両方
- 最新研究がいち早く発表される場
6. Book Citation Index
【学術書】
- 単行本、編著書の章
- 2005年から収録
- 人文社会系で特に重要
実際の使い方:基本検索から高度な分析まで

基本検索の手順
【ステップ1:アクセス】
- 所属機関のネットワークから接続
- または図書館のPCを使用
- VPN接続で自宅からもOK
【ステップ2:検索画面】
- トピック検索:キーワードで検索
- 著者検索:研究者名で検索
- 出版物名検索:雑誌名で検索
- 詳細検索:複数条件を組み合わせ
検索のコツとテクニック
【効果的な検索式】
# AND検索(両方含む)
"machine learning" AND healthcare
# OR検索(どちらか含む)
AI OR "artificial intelligence"
# NOT検索(除外)
cancer NOT lung
# ワイルドカード
nano* → nanotechnology, nanomaterial等
# フレーズ検索
"climate change" → この順番で並んだ語句
引用分析の活用法
【Citation Report(引用レポート)】
- h-index(研究者の影響力指標)
- 被引用数の推移グラフ
- 引用している論文リスト
- 自己引用を除いた分析
研究者の実力が一目瞭然!
Analyze Results(結果分析)機能
検索結果を様々な角度から分析できます。
【分析できる項目】
- 著者別の論文数
- 所属機関ランキング
- 国別分布
- 出版年の推移
- 研究分野の内訳
- 研究費助成機関
データをグラフ化して、レポートに使えます。
便利な追加機能
EndNote Web(文献管理)
【できること】
- 検索結果を保存・整理
- 参考文献リストの自動作成
- 投稿規定に合わせた引用形式
- 共同研究者との共有
論文執筆が格段に楽になります!
Journal Citation Reports(JCR)
【雑誌の詳細情報】
- インパクトファクター
- 5年インパクトファクター
- 即時性指標
- 被引用半減期
- 分野内ランキング
投稿先選びの強い味方です。
Essential Science Indicators(ESI)
【研究評価ツール】
- 高被引用論文(Top 1%)
- ホットペーパー(直近2ヶ月で注目)
- 研究フロント(最先端テーマ)
- 国際共同研究の分析
世界レベルの研究が分かります。
活用事例:こんな時に使える!
卒論・修論を書く学生
【使い方】
- 研究テーマの先行研究を網羅的に検索
- 重要論文を引用数で判断
- 最新の研究動向を確認
- 参考文献リストを自動作成
指導教員も納得の文献調査ができます。
研究者・大学教員
【活用場面】
- 研究費申請書の業績欄作成
- 共同研究者探し
- 投稿先ジャーナルの選定
- 競合研究のモニタリング
企業の研究開発部門
【ビジネス活用】
- 技術トレンドの把握
- 競合他社の研究動向調査
- 産学連携パートナー探し
- 特許出願の先行技術調査
大学の研究戦略部門
【組織評価】
- 研究力の定量的評価
- ベンチマーキング
- 強み・弱み分野の特定
- 国際共同研究の推進
料金と利用方法

個人での利用は難しい?
【価格の目安】
- 機関契約:年間数百万円〜
- 個人契約:基本的に不可
残念ながら、個人で契約するには高額すぎます。
利用できる場所
【主な利用方法】
- 大学・研究機関
- 所属者は無料で使い放題
- 学内ネットワークまたはVPN接続
- 公共図書館
- 一部の大型図書館で利用可能
- 館内のPCから検索
- 国立国会図書館
- 登録利用者は使用可能
- 東京本館・関西館で利用
- 試用版
- 機関向けトライアル(期間限定)
- 一部機能の制限あり
代替ツールとの比較
無料で使える類似サービス
【Google Scholar】
- メリット:無料、網羅的
- デメリット:質のばらつき、広告
【PubMed】
- メリット:医学系に特化、無料
- デメリット:生命科学以外は弱い
【J-STAGE】
- メリット:日本の論文に強い、無料
- デメリット:国際的な論文は少ない
【Microsoft Academic】
- メリット:AI による分析、無料
- デメリット:2021年にサービス終了
Web of Scienceの代替にはなりませんが、補完的に使うと効果的です。
よくある質問
Q:学生でも使えますか?
A:所属大学が契約していれば使えます
多くの大学が契約しているので、図書館のWebサイトで確認してみましょう。学生証でログインできるはずです。
Q:引用数が多い論文は良い論文?
A:必ずしもそうとは限りません
- 批判的に引用されることもある
- 分野によって引用文化が違う
- 新しい論文は引用数が少ない
引用数は「注目度」の指標と考えましょう。
Q:自分の論文を載せるには?
A:Web of Science収録誌に投稿
収録誌のリストは「Master Journal List」で確認できます。査読を通過すれば、自動的に収録されます。
まとめ:研究の羅針盤を手に入れよう
Web of Scienceは、研究の世界を航海するための最強の羅針盤です。
【Web of Scienceでできること】
- 信頼できる論文の効率的な検索
- 研究の影響力を定量的に評価
- 世界の研究トレンドを把握
- 引用ネットワークで知識のつながりを理解
【こんな人におすすめ】
- 卒論・修論に取り組む学生
- 最新研究を追いかけたい研究者
- 技術動向を知りたい企業人
- 研究評価に関わる職員
【今すぐできること】
- 所属機関の図書館サイトをチェック
- 利用講習会への参加
- 無料のGoogle Scholarから始めてみる
最初は使い方に戸惑うかもしれません。でも、一度マスターすれば、研究活動が劇的に効率化します。
世界中の知識にアクセスできるWeb of Science。あなたの研究を、次のレベルへ導いてくれるはずです!
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