【改心した鬼の夫婦】前鬼・後鬼(ぜんき・ごき)とは?修験道の開祖に仕えた護法鬼をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

悪い鬼が改心して、人間の味方になる。そんな物語があるって知っていますか?

実は日本の修験道(山で修行をする宗教)には、「前鬼・後鬼(ぜんき・ごき)」という夫婦の鬼がいるんです。最初は人々を困らせる悪い鬼だったのに、役小角(えんのおづぬ)という修験道の開祖に出会って改心し、忠実な家来になったという感動的な物語があります。

しかも、その子孫は今でも奈良県の山奥で宿坊を営んでいるというから驚きですよね。

この記事では、悪から善へと生まれ変わった鬼の夫婦、前鬼と後鬼について、その姿や特徴、感動的な改心の物語をわかりやすくご紹介します。

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概要

前鬼・後鬼は、修験道の開祖である役小角(えんのおづぬ/役行者とも)が従えていたとされる夫婦の鬼です。

前鬼が夫で、後鬼が妻という関係なんです。
ちょっと意外かもしれませんが、「前」が男性で、「後」が女性なんですね。

前鬼・後鬼の基本情報

  • 種族:鬼(元は人間を襲う悪鬼)
  • 関係:夫婦
  • 別名:善童鬼(前鬼)、妙童鬼(後鬼)
  • 俗名:義覚または義学(前鬼)、義玄または義賢(後鬼)
  • 出身地:前鬼は奈良県下北山村、後鬼は奈良県天川村
  • 主人:役小角(修験道の開祖)
  • 活動時期:飛鳥時代(592~710年)

元は生駒山地に住んで人々に災いをもたらしていた悪い鬼でしたが、役小角との出会いによって改心し、以後は忠実な従者として修験道の発展に貢献したんです。

姿・見た目

前鬼と後鬼は、役小角の彫像や絵画では必ずといっていいほど左右に従う形で描かれています。

前鬼(夫)の姿

  • 赤鬼の姿(陽を表す)
  • 鉄の斧を手に持つ
  • 笈(おい)を背負っている
  • 役小角より一回り小さい小鬼
  • 口を開けている(阿の形)

前鬼は赤い体で、まさに「赤鬼」という感じです。手に持った斧で、役小角の行く道を切り開く役割があったんですね。

後鬼(妻)の姿

  • 青鬼の姿(陰を表す/青緑にも描かれる)
  • 水瓶を手に持つ(霊力のある水が入っている)
  • 種を入れた笈を背負っている
  • 役小角より一回り小さい小鬼
  • 口を閉じている(吽の形)

後鬼は青い体で、水や種といった生命に関わるものを持っています。夫婦で陰陽のバランスを表しているんです。

二人合わせて「阿吽(あうん)の関係」を表現していて、まるで神社の狛犬のような存在といえるでしょう。

特徴

前鬼と後鬼の最大の特徴は、悪鬼から護法鬼へと変化したことです。

改心前の姿

  • 人間の子どもをさらう
  • 財宝を盗む
  • 旅人を襲う
  • 生駒山地で暴れまわる乱暴者

まさに典型的な悪い鬼だったんですね。

改心後の役割

改心した後は、役小角の忠実な従者として様々な仕事をこなしました。

前鬼の仕事

  • 役小角の前を進んで道を切り開く
  • 邪魔をするものを斧で排除
  • 荷物を運ぶ

後鬼の仕事

  • 薬袋と食料を背負う
  • 霊水を管理
  • 種(食料の元)を管理

二人共通の仕事

  • 花や薬草を採取
  • 水を汲む
  • 祈祷の時には飛んで偵察
  • 役小角の身の回りの世話

まるで最高の秘書のような働きぶりです。悪さをしていた頃の力を、今度は人々を守るために使うようになったんですね。

伝承と起源

前鬼と後鬼の改心には、感動的な物語があります。

改心のきっかけ

生駒山地で暴れていた前鬼と後鬼を、役小角が退治しにやってきました。

パターン1:不動明王の秘法

役小角は不動明王の秘法で二人を捕縛したという説があります。圧倒的な法力で屈服させたんですね。

パターン2:子どもを使った教え

もう一つの説では、役小角は二人の5人の子どものうち末っ子を鉄釜に隠して、親に「子どもを失った悲しみ」を体験させたといいます。

「お前たちがさらった人間の親も、同じ悲しみを味わっているんだ」

この言葉に二人は深く反省し、涙を流して改心したそうです。

五鬼(ごき)という子どもたち

前鬼と後鬼には5人の子どもがいました。彼らは「五鬼」または「五坊」と呼ばれています。

五鬼の名前と宿坊

  • 真義(行者坊)
  • 義継(森本坊)
  • 義上(中之坊)
  • 義達(小仲坊)
  • 義元(不動坊)

この5人の子どもたちは、奈良県下北山村前鬼に修行者のための宿坊を開きました。そして驚くことに、その子孫は現在も宿坊を営んでいるんです!

現在まで続く子孫

五鬼の子孫は、それぞれ五鬼継、五鬼熊、五鬼上、五鬼助、五鬼童という5つの家系となりました。

明治時代の修験道禁止令で多くの家が廃業しましたが、小仲坊の五鬼助家だけは今も宿坊を開いています。

2025年現在は61代目の五鬼助義之さんが当主を務めているというから、1400年以上も続いている計算になります。

天狗への変化

さらに興味深いことに、前鬼は後に天狗となり、大峰山前鬼坊という日本八天狗の一尊になったという伝説もあります。

まとめ

前鬼・後鬼は、悪から善へと劇的に変化した、日本でも珍しい「改心した鬼」の物語です。

前鬼・後鬼の重要ポイント

  • 元は悪さをしていた夫婦の鬼
  • 役小角との出会いで改心
  • 赤鬼(前鬼)と青鬼(後鬼)で陰陽を表す
  • 修験道の発展に大きく貢献
  • 子孫は現在も奈良県で宿坊を営む

人を襲っていた鬼が、人を助ける存在に生まれ変わる。

この物語は、誰でも心を入れ替えれば新しい人生を歩めるという希望のメッセージかもしれません。

役小角の像を見る機会があったら、ぜひその左右に控える小さな鬼たちにも注目してみてください。

そこには、1400年前に改心して以来、今も修験道を支え続ける前鬼と後鬼の姿があるはずです。

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