コインを10回投げたら、表が8回も出た…「このコイン、おかしくない?」
でも、1000回投げたら、表はほぼ500回前後になります。不思議ですよね。
これこそが大数の法則の力です。
「たくさん試せば、本当の確率に近づく」というシンプルだけど強力な法則。
カジノが必ず利益を出せる理由、保険会社が成り立つ理由、そして天気予報が当たる理由…すべてこの法則のおかげなんです。
今回は、この大数の法則を身近な例とグラフのイメージで、誰でも納得できるまで解説します!
大数の法則とは:確率の「本当の姿」

基本の定義
大数の法則とは、試行回数を増やすほど、実際の結果が理論的な確率(期待値)に近づくという法則です。
もっと簡単に言うと:
「たくさんやれば、だんだん予想通りになる」
具体例で理解しよう
サイコロを投げる例
理論上、1の目が出る確率は1/6(約16.7%)ですよね。
でも実際に投げてみると:
🎲 6回投げた場合
- 1が0回:よくある
- 1が3回:たまにある
- 確率:0%〜50%でバラバラ
🎲 60回投げた場合
- 1が10回前後:だいたいこうなる
- 確率:約15%〜18%
🎲 6000回投げた場合
- 1が1000回前後:ほぼ確実
- 確率:16.5%〜17%(ほぼ理論値!)
回数が増えるほど、16.7%に近づいていきます!
大数の法則の2つの種類
弱法則(よく使う方)
試行回数を増やすと、平均値が期待値に「近づく確率」が高くなる。
強法則(数学的に厳密)
試行回数を無限に増やすと、平均値は期待値に「必ず」収束する。
普段使うのは「弱法則」で十分です!
コイン投げで実感:表と裏の不思議

10回投げた場合
実際にありえる結果
結果1:表表裏表裏裏表表裏表(表6回、60%)
結果2:裏裏裏表裏表裏裏表裏(表3回、30%)
結果3:表裏表表裏表表裏表表(表7回、70%)
理論値は50%なのに、30%〜70%とバラバラ!
100回投げた場合
よくある結果
表:45〜55回(45%〜55%)
だいぶ50%に近づいてきました。
10000回投げた場合
ほぼ確実な結果
表:4900〜5100回(49%〜51%)
もうほとんど50%ですね!
グラフで見るイメージ
確率
100%│
│ ╱\
75%│ ╱ \ ╱\
│╱ \╱ \
50%│━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (理論値)
│ \ ╱\ ╱
25%│ \╱ \╱
│
0%└──────────────────────→ 試行回数
10 100 1000 10000
振れ幅がどんどん小さくなっていくのが分かります!
身近な例で見る大数の法則
例1:ガチャゲームの確率
SSRキャラの出現率3%の場合
🎮 10連ガチャ
- 0個:よくある(約74%)
- 1個:たまに(約23%)
- 2個以上:レア(約3%)
🎮 100連ガチャ
- 2〜4個:だいたいこの範囲
- 平均3個に近づく
🎮 1000連ガチャ
- 28〜32個:ほぼこの範囲
- 確実に3%前後になる
例2:野球の打率
3割バッターの成績
⚾ 10打席
- 0安打〜6安打までバラバラ
- 打率.000〜.600
⚾ 100打席
- 25安打〜35安打くらい
- 打率.250〜.350
⚾ 500打席(1シーズン)
- 140安打〜160安打くらい
- 打率.280〜.320
シーズン終盤になるほど、本来の実力(3割)に収束します!
例3:商品の不良品率
不良品率1%の工場
📦 100個検査
- 不良品0〜3個(バラつく)
📦 10000個検査
- 不良品95〜105個(1%前後)
📦 100万個検査
- 不良品9900〜10100個(ほぼ1%)
品質管理はこの法則を使っています!
なぜ大数の法則が成り立つ?

直感的な理解
偶然のバランス
最初は「たまたま」表が多く出ても、続けていくうちに「たまたま」裏が多く出る時期も来ます。
これらが打ち消し合って、最終的にバランスが取れるんです。
誤差の相対的な縮小
絶対的な差と相対的な割合
コイン1000回投げて:
- 表510回、裏490回
- 差は20回(大きい?)
- でも割合は51% vs 49%(ほぼ半々!)
コイン10000回投げて:
- 表5050回、裏4950回
- 差は100回(もっと大きい!)
- でも割合は50.5% vs 49.5%(さらに半々に近い!)
重要な洞察
絶対的な差は大きくなっても、相対的な割合は理論値に近づく!
大数の法則が支える世界

保険業界
生命保険の仕組み
1人の人がいつ亡くなるかは予測不可能。
でも、10万人いれば、1年間に亡くなる人数はかなり正確に予測できます。
- 30歳男性10万人→年間死亡者約60人
- 40歳男性10万人→年間死亡者約140人
- 50歳男性10万人→年間死亡者約400人
この予測可能性が保険料計算の基礎!
カジノ・ギャンブル
ルーレットの例
- 1回の勝負:カジノも客も運次第
- 1日(1000回):カジノがやや有利
- 1年(36万回):カジノが確実に利益
ハウスエッジ(カジノの取り分)
- ルーレット:約2.7%
- ブラックジャック:約0.5%
- スロット:約2〜15%
少しの有利でも、回数を重ねれば確実な利益に!
世論調査・統計調査
選挙の出口調査
- 100人に聞く:誤差±10%
- 1000人に聞く:誤差±3%
- 10000人に聞く:誤差±1%
だから、テレビの選挙速報は意外と正確なんです!
品質管理
工場の抜き取り検査
全数検査は無理でも、一定数を検査すれば全体の品質が分かります。
- 100個中1個不良→たまたまかも
- 10000個中100個不良→ほぼ確実に不良率1%
よくある誤解と注意点

誤解1:ギャンブラーの誤謬
間違った考え方
「赤が5回連続で出たから、次は黒が出やすい」
正しい理解
各回の試行は独立!前の結果は次に影響しません。
大数の法則は「長期的に」収束するだけで、「次の1回」は予測できません。
誤解2:少ない試行での期待
間違った考え方
「確率1/2なら、10回やれば必ず5回出る」
正しい理解
10回程度では大きくブレます。
数千回、数万回で初めて理論値に近づきます。
誤解3:逆転の期待
間違った考え方
「今まで負けが多いから、これから勝ちが増えるはず」
正しい理解
過去の負けは取り戻せません。
割合が理論値に近づくだけで、差が縮まるわけではないんです。
大数の法則を活用する方法
投資での活用
分散投資の原理
1つの株:大きく儲かるか損するか分からない
100銘柄に分散:平均的なリターンに収束
ドルコスト平均法
毎月定額投資することで、購入価格が平均化されます。
ビジネスでの活用
A/Bテスト
- 100人でテスト:結果が偶然かも
- 10000人でテスト:確実な傾向が分かる
顧客満足度調査
- アンケート数が多いほど正確
- 最低でも400件(誤差5%以内)が目安
日常生活での活用
習慣の効果
- 1日の勉強:効果は分からない
- 1年続ける:確実に実力がつく
健康管理
- 1回の測定:誤差が大きい
- 毎日測定して平均:本当の数値が分かる
中心極限定理との関係
もう一つの重要な法則
中心極限定理
多くのランダムな要因の合計は、正規分布(ベルカーブ)に従う。
大数の法則との違い
大数の法則
- 平均が理論値に近づく
- 「どこに収束するか」を示す
中心極限定理
- 平均の分布が正規分布になる
- 「どのように分布するか」を示す
この2つが統計学の土台です!
歴史と数学者たち

ヤコブ・ベルヌーイ(1655-1705)
大数の法則の発見者
スイスの数学者。著書『推測術』で初めて証明。
「神はサイコロを振らない」という言葉とは逆に、「サイコロも法則に従う」ことを示しました。
その後の発展
ポアソン(1781-1840) 「大数の法則」という名前をつけた
チェビシェフ(1821-1894) より一般的な形で証明
コルモゴロフ(1903-1987) 現代的な確率論の基礎を確立
よくある質問
Q1. どのくらいの回数で「大数」?
A. 目的によりますが、一般的な目安:
- 100回:大まかな傾向
- 1000回:かなり正確
- 10000回:ほぼ理論値
統計的には、誤差を半分にするには4倍の試行が必要です。
Q2. 宝くじは大数の法則で当たる?
A. いいえ、個人レベルでは無理です。
宝くじの当選確率は約1/1000万。
大数の法則が働くには、最低でも数百万回は買う必要があります。
でも、それだけ買ったら確実に大損します!
Q3. スポーツの「流れ」は迷信?
A. 短期的な「流れ」は存在します。
ただし、長期的には実力通りに収束します。
「今日は調子が良い」→ある程度本当 「ツキがずっと続く」→迷信
まとめ:大数の法則が教えてくれること
今回は大数の法則について詳しく解説しました。
押さえておきたいポイント
📌 大数の法則の本質
- 試行回数を増やすと理論値に近づく
- 「たくさんやれば予想通りになる」
- 偶然のブレが平均化される
📌 具体例での理解
- コイン投げ:50%に収束
- サイコロ:各目1/6に収束
- ガチャ:表示確率通りになる
📌 実社会での応用
- 保険:リスクの計算
- カジノ:確実な利益
- 品質管理:不良率の推定
- 投資:リスクの分散
📌 注意すべき誤解
- 次の1回は予測できない
- 過去の偏りは取り戻せない
- 少ない回数では働かない
大数の法則は、不確実な世界に秩序をもたらす素晴らしい法則です。
個々の出来事は予測できなくても、全体としては予測可能になる。
この法則を理解すれば、確率や統計がもっと身近に感じられるはずです。
そして何より、「継続は力なり」という言葉の数学的な裏付けでもあるんです。
小さな努力も、積み重ねれば確実な成果につながる…それが大数の法則の教えです!
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