回帰モデルとは?身長から体重を予測する数学の魔法

「明日の気温が分かれば、アイスの仕入れ数を決められるのに」 「この広告にいくら使えば、売上がどれくらい増えるんだろう」 「身長170cmの人の体重って、だいたいどのくらい?」

こんな風に、何かのデータから別の何かを予測したいことってありますよね。 実は、これを可能にする数学の道具があるんです。

それが「回帰モデル(かいきモデル)」です。

難しそうな名前ですが、考え方はとてもシンプル。 過去のデータからパターンを見つけて、未来や知らないことを予測する方法なんです。

この記事を読み終わる頃には、あなたも予測の達人への第一歩を踏み出せますよ。


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回帰モデルって何?中学生でも分かる説明

一番簡単な例で考えてみよう

クラスの友達の身長と体重のデータがあるとします。

  • Aさん:身長150cm、体重45kg
  • Bさん:身長160cm、体重52kg
  • Cさん:身長170cm、体重60kg
  • Dさん:身長180cm、体重70kg

このデータを見ると、なんとなく「身長が高い人ほど体重も重い」という傾向が見えますよね。

では、身長165cmの人の体重はどのくらいでしょうか?

回帰モデルは、このパターンを数式にして、「たぶん56kgくらい」と予測してくれるんです。 データの点と点の間を、うまくつなぐ線を引いてくれる、そんなイメージです。

回帰の名前の由来

「回帰」という言葉、ちょっと不思議ですよね。 英語では「Regression(リグレッション)」といいます。

これは「平均に戻る」という意味から来ています。 背の高い親の子供は親より少し低く、背の低い親の子供は親より少し高くなる傾向がある。 つまり、極端な値は平均に向かって「戻る」んです。

この現象を発見した統計学者が「回帰」と名付けました。 今では、予測全般に使われる言葉になっています。


回帰モデルの種類を知ろう

1. 単回帰分析(一番シンプル)

1つのデータから1つの結果を予測します。

例:

  • 気温 → アイスの売上
  • 勉強時間 → テストの点数
  • 広告費 → 売上高

グラフにすると、点の集まりに1本の線を引くイメージです。 中学校で習う「y = ax + b」の式、覚えていますか? これが単回帰分析の基本形なんです。

2. 重回帰分析(複数の要因を考慮)

複数のデータから1つの結果を予測します。 現実世界では、こちらの方がよく使われます。

例:家の価格を予測する場合

  • 広さ + 駅からの距離 + 築年数 → 家の価格

1つの要因だけでなく、いろいろな要因を組み合わせて予測するので、より正確になります。

3. その他の回帰モデル

他にもいろいろありますが、基本的な考え方は同じです。

  • ロジスティック回帰:合格・不合格のような2択を予測
  • 多項式回帰:直線じゃなくて曲線で予測
  • リッジ回帰・ラッソ回帰:より高度な予測手法

名前は覚えなくても大丈夫。 「いろんな種類がある」ということだけ知っておけばOKです。


身近な活用例で理解を深めよう

ビジネスでの活用

売上予測

コンビニでは、気温、曜日、イベントなどのデータから、商品の売上を予測しています。

  • 気温30度以上 → おにぎりより冷やし中華が売れる
  • 金曜日の夜 → お酒とおつまみが売れる
  • 運動会の前日 → お弁当材料が売れる

この予測により、無駄な在庫を減らし、品切れも防げます。

価格設定

ホテルや航空会社は、需要を予測して価格を決めています。

  • 連休 + 人気観光地 + 予約率 → 高い価格設定
  • 平日 + オフシーズン + 空室多い → 安い価格設定

これをダイナミックプライシングといいます。

日常生活での活用

不動産の査定

マンションの価格査定も回帰モデルです。

  • 駅徒歩5分(プラス要因)
  • 築20年(マイナス要因)
  • 南向き(プラス要因)
  • 3階(どちらでもない)

これらを総合して、適正価格を算出します。

スマートウォッチの消費カロリー計算

運動時の消費カロリーも回帰モデルで計算されています。

  • 心拍数 + 運動時間 + 体重 + 年齢 → 消費カロリー

過去の研究データを基に、あなたの消費カロリーを予測しているんです。


回帰モデルの作り方(概念だけ理解しよう)

ステップ1:データを集める

まず、予測したいものに関係するデータを集めます。 たとえば、アイスの売上を予測したいなら:

  • 過去の気温データ
  • 過去の売上データ
  • 曜日や季節の情報

データは多ければ多いほど、正確な予測ができます。 でも、関係ないデータを入れても意味がないので注意。

ステップ2:パターンを見つける

集めたデータから、関係性のパターンを見つけます。

「気温が1度上がると、アイスが10個多く売れる」 こんなパターンが見つかれば、予測の準備完了です。

ステップ3:式を作る

見つけたパターンを数式にします。

アイスの売上 = 気温 × 10 + 100

この式ができれば、明日の気温が分かれば売上が予測できます。 気温25度なら:25 × 10 + 100 = 350個

ステップ4:精度を確認する

作った式が本当に当たるか、別のデータで確認します。 予測と実際の差が小さければ、良いモデルの完成です。


回帰モデルの良さを判断する方法

決定係数(R²)を見てみよう

回帰モデルの「当たり具合」を表す数値があります。 決定係数(けっていけいすう)、R²(アールスクエア)と呼ばれます。

  • 1に近い(0.8以上):とても良く当たる
  • 0.5〜0.8:まあまあ当たる
  • 0.5未満:あまり当たらない
  • 0に近い:全然当たらない

天気予報の的中率みたいなものですね。

実際の例

  • 身長から体重を予測:R² = 0.7(まあまあ当たる)
  • 気温からアイスの売上を予測:R² = 0.6(そこそこ)
  • 血液型から性格を予測:R² = 0.01(全然当たらない)

科学的な根拠がないものは、やっぱり予測できないんです。


回帰モデルの注意点と限界

注意点1:過去のパターンが未来も続くとは限らない

回帰モデルは過去のデータに基づいています。 でも、世の中は変わっていきます。

例:コロナ前のデータで作った通勤電車の混雑予測モデル → リモートワークが普及して、全然当たらなくなった

大きな変化があったときは、モデルを作り直す必要があります。

注意点2:相関関係と因果関係は違う

「アイスが売れる日は溺れる人が多い」 というデータがあっても、アイスを規制すれば水難事故が減るわけではありません。

両方とも「暑い日」が真の原因です。 回帰モデルは相関を見つけるだけで、原因までは教えてくれません。

注意点3:予測には必ず誤差がある

どんなに優秀なモデルでも、100%当たることはありません。 天気予報だって外れることがありますよね。

予測は「だいたいこのくらい」という目安として使うのが正解です。 過信は禁物です。

注意点4:データの範囲外は予測できない

0度〜35度のデータで作ったモデルで、50度の時を予測するのは危険です。 経験したことのない範囲の予測は、大きく外れる可能性があります。


ExcelやGoogleスプレッドシートで試してみよう

Excelでの簡単な方法

  1. データを2列に入力(例:A列に気温、B列に売上)
  2. データを選択してグラフを作成(散布図)
  3. グラフ上で右クリック→「近似曲線の追加」
  4. 「線形」を選んで、「グラフに数式を表示」にチェック

これだけで、回帰式が表示されます!

Googleスプレッドシートなら

FORECAST関数を使えば、予測値が簡単に計算できます。

=FORECAST(予測したい値, 既知のyデータ, 既知のxデータ)

例:気温30度の時の売上を予測

=FORECAST(30, B2:B100, A2:A100)

プログラミングができなくても、これなら誰でもできますね。


よくある質問

Q:回帰分析と回帰モデルは違うの?

A:ほぼ同じ意味で使われます。分析は「方法」、モデルは「できあがった式」というニュアンスの違いはありますが、気にしなくて大丈夫です。

Q:どのくらいのデータがあれば予測できる?

A:最低でも20〜30個は欲しいところ。100個以上あれば、かなり信頼できる予測ができます。ただし、質の悪いデータをたくさん集めても意味がありません。

Q:AIの予測と回帰モデルは違うの?

A:AIの多くも、基本は回帰モデルの発展形です。ディープラーニングも、とても複雑な回帰モデルと考えることができます。基本は同じなんです。

Q:数学が苦手でも使える?

A:もちろん!今は便利なツールがたくさんあります。Excelでボタンを押すだけでも、立派な回帰分析ができます。大切なのは、結果の意味を理解することです。

Q:間違った予測をしたら責任は?

A:予測はあくまで参考情報です。最終的な判断は人間がすべきもの。予測を過信せず、常識と経験も大切にしましょう。


まとめ:回帰モデルは未来を読む道具

回帰モデルについて、かなり詳しくなったのではないでしょうか。

重要なポイントをまとめると:

  1. 過去のデータからパターンを見つけて予測する方法
  2. 単回帰(1つの要因)と重回帰(複数の要因)がある
  3. ビジネスから日常生活まで幅広く活用されている
  4. 完璧ではないが、とても便利な道具
  5. ExcelやGoogleスプレッドシートで簡単に使える

データサイエンスというと難しそうですが、基本的な考え方は「パターンを見つけて予測する」というシンプルなもの。

明日の売上、来月の需要、将来の傾向。 回帰モデルを使えば、少しだけ未来が見えるようになります。

もちろん、水晶玉のように完璧な予測はできません。 でも、勘に頼るより、ずっと科学的で信頼できる判断ができるようになります。

今日から、あなたもデータで未来を予測する、そんな視点を持ってみませんか? きっと、世界の見え方が変わってくるはずです。

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