「ベクトル」という言葉、聞いたことありますか?
難しそうに聞こえるかもしれませんが、実はあなたの日常生活のあちこちに隠れているんです。
- スマホのGPSナビ:「北に500m進む」
- ゲームの操作:キャラを斜め右上に動かす
- ボールを投げる:強さと方向を決める
この記事では、中学3年生でも理解できるように、ベクトルの基本から応用まで、わかりやすく解説していきます。
最初は少し難しく感じるかもしれません。でも大丈夫!一つずつ理解していけば、きっと「なるほど!」と思える瞬間が来ますよ。
ベクトルって何?スカラーとの違いを理解しよう

🎯 ベクトルは「矢印」で表せる量
ベクトルを一言で説明すると:
「大きさ」と「向き」の両方を持つ量
こんな場面を想像してみてください。
友達:「駅まで歩いて!」 あなた:「え?どのくらい?どっちに?」
そう、距離だけじゃダメ。方向も必要ですよね。
- 「500メートル」(大きさ)
- 「北向き」(向き)
この2つをセットにしたものがベクトルなんです!
矢印で表現すると…
ベクトルは矢印で表せます:
- 矢印の長さ = 大きさ
- 矢印の向き = 方向
数学では、こんな風に書きます:
- 文字の上に矢印:→v
- 太文字:v
- 座標表示:(3, 4) ← 「右に3、上に4」
📊 スカラーは「大きさだけ」の普通の数
一方、スカラーは普段使っている普通の数。大きさだけを持ちます。
スカラーの例:
- 体温:36.5℃(向きなし)
- お小遣い:1000円(向きなし)
- テストの点数:85点(向きなし)
でも、こうすると…
- 速さ:時速60km → スカラー
- 速度:時速60kmで北へ → ベクトル!
違い、わかりましたか?
ベクトルの基本的な計算方法
➕ ベクトルの足し算:二つの移動を合わせる
ベクトルの足し算は、二つの移動を続けて行うことと同じ。
例:コンビニ経由で学校へ
家→コンビニ:東に3ブロック a = (3, 0)
コンビニ→学校:北に4ブロック b = (0, 4)
合計の移動は?
a + b = (3, 0) + (0, 4) = (3, 4)
つまり、x成分同士、y成分同士を足すだけ!簡単でしょ?
図で考える2つの方法
方法1:三角形の法則
- 最初のベクトルを描く
- その先端から次のベクトルを描く
- スタートからゴールまでが答え
方法2:平行四辺形の法則
- 同じ始点から2つのベクトルを描く
- 平行四辺形を作る
- 対角線が答え
➖ ベクトルの引き算:どれだけ移動したか
ベクトルの引き算は、二つの位置の差を表します。
例:家から学校への移動
家の位置:A(2, 1)
学校の位置:B(5, 3)
移動ベクトルは?
AB = B – A = (5, 3) – (2, 1) = (3, 2)
「右に3、上に2移動した」という意味になります。
✖️ スカラー倍:ベクトルを伸ばしたり縮めたり
ベクトルに数をかけることをスカラー倍といいます。
ベクトル v = (2, 3) の場合:
- 3v = (6, 9) → 3倍に伸ばす
- 0.5v = (1, 1.5) → 半分に縮める
- -v = (-2, -3) → 反対向きに!
ポイント:マイナスをかけると180度回転!
ベクトルの大きさを求める公式
📐 ピタゴラスの定理を使った計算
ベクトルの大きさ(長さ)は、おなじみのピタゴラスの定理で計算できます。
2次元ベクトル v = (x, y) の大きさ:
|v| = √(x² + y²)
3次元ベクトル v = (x, y, z) の大きさ:
|v| = √(x² + y² + z²)
例題:ベクトル (3, 4) の大きさは?
|v| = √(3² + 4²) = √(9 + 16) = √25 = 5
これ、「3-4-5の直角三角形」として有名ですね!
🎯 単位ベクトル:向きだけを表す
単位ベクトル = 大きさが1のベクトル
作り方は簡単:
û = v/|v|
例:(3, 4) の単位ベクトル
û = (3, 4)/5 = (0.6, 0.8)
「向きは同じで、大きさだけ1にした」ベクトルです。
ベクトルの内積(ドット積):どれだけ同じ向きか

🤝 内積の公式と意味
内積は、二つのベクトルがどれだけ同じ向きを向いているかを測る計算。
成分での計算:
a·b = a₁b₁ + a₂b₂
角度を使った計算:
a·b = |a||b|cos(θ)
(θは二つのベクトルのなす角)
例:a = (3, 4) と b = (1, 2) の内積
a·b = 3×1 + 4×2 = 3 + 8 = 11
内積でわかること
内積の値から、ベクトルの関係が見えてきます:
- 内積 > 0:鋭角(仲良し方向)
- 内積 = 0:垂直(無関係)
- 内積 < 0:鈍角(反対気味)
垂直の例: a = (3, 0)「右向き」
b = (0, 4)「上向き」
a·b = 3×0 + 0×4 = 0
確かに90度で交わってますね!
ベクトルの外積(クロス積):3次元での回転
🌀 外積の基本(ちょっと難しいけど…)
外積は3次元空間でのみ定義される特別な計算。
二つのベクトルに垂直な新しいベクトルを作ります。
公式は複雑ですが…
a × b = (a₂b₃ – a₃b₂, a₃b₁ – a₁b₃, a₁b₂ – a₂b₁)
外積の大きさは:
|a × b| = |a||b|sin(θ)
これは二つのベクトルが作る平行四辺形の面積と同じ!
右手の法則
外積の向きは「右手の法則」で決まります:
- 右手の指を最初のベクトルの向きに
- 指を2番目のベクトルに曲げる
- 親指が指す向きが答え!
高校物理で大活躍する概念です。
重要な定理と条件の公式

平行になる条件
二つのベクトルが平行になるとき:
a ∥ b ⟺ a = kb(kは実数)
つまり、片方がもう片方の何倍かになっている。
垂直になる条件
二つのベクトルが垂直になるとき:
a ⊥ b ⟺ a·b = 0
内積がゼロ!これ、超重要。
分点の公式
線分ABをm:nに内分する点Pの位置:
p = (n×a + m×b)/(m + n)
特に中点(1:1)なら:
p = (a + b)/2
単純に平均するだけ!
三角形の重心
三角形ABCの重心Gの位置:
G = (A + B + C)/3
3つの頂点の平均です。
実生活でベクトルはこう使われている!
🎮 ゲーム開発での活用
あなたが遊んでいるゲーム、実はベクトルだらけ!
- キャラの移動:位置ベクトル+速度ベクトル
- 当たり判定:2点間の距離(ベクトルの大きさ)
- 3Dカメラ:視線ベクトルで制御
- 物理演算:重力や風もベクトル
マインクラフトでブロックを置くのも、実は3次元ベクトルの計算なんです。
📱 GPS とナビゲーション
スマホの地図アプリの裏側:
- 現在地→目的地の変位ベクトルを計算
- 「北東に2km」はまさにベクトル!
- 複数の衛星から3次元位置ベクトルを特定
飛行機や船は、風や海流のベクトルも計算に入れて進路を決めています。
⚽ スポーツでの応用
野球:
- ピッチャーの球速と角度
- 打球の初速度ベクトル+重力
サッカー:
- パスの強さと方向
- 選手の動きの速度ベクトル
テニス:
- サーブの威力(速度ベクトルの大きさ)
- スピンの回転ベクトル
最近のスポーツ分析では、全選手の動きをベクトルデータとして記録しているんです!
公式を覚えるコツと間違えやすいポイント
💡 覚え方のテクニック
1. 意味を理解する
- 「成分ごとの計算」→ 料理のレシピみたいなもの
- 内積の cos → 同じ向きなら1、垂直なら0
2. 図を描く習慣
- ベクトルの足し算 → 道順をつなげる
- ベクトルの引き算 → AからBへの近道
3. 身近な例と結びつける
- 内積 → 仲良し度チェック
- 外積 → ネジを回す向き
⚠️ よくある間違いと注意点
間違い①:大きさの足し算
- |a| + |b| ≠ |a + b|
- 3m + 4m の辺でも、斜辺は5m!
間違い②:マイナスの意味
- -v は「反対向き」
- 速度 -30km/h は「逆向きに30km/h」
間違い③:内積の結果
- 内積の結果はスカラー(普通の数)
- ベクトルじゃないよ!
📚 ベクトル用語集:日本語と英語
よく出てくる用語をまとめました:
日本語 | 英語 | 意味 |
---|---|---|
ベクトル | vector | 大きさと向きを持つ量 |
スカラー | scalar | 大きさだけの量 |
成分 | component | x, y, z方向の値 |
大きさ | magnitude | ベクトルの長さ |
向き | direction | 指す方向 |
内積 | dot product | 同じ向き度を測る |
外積 | cross product | 垂直なベクトルを作る |
平行 | parallel | 同じ向きか反対 |
垂直 | perpendicular | 90度で交わる |
単位ベクトル | unit vector | 大きさ1のベクトル |
まとめ:ベクトルは現実世界を数学で表現する道具
ベクトル、最初は難しく感じたかもしれません。
でも実は、私たちの身の回りにあふれている概念なんです。
🎯 覚えておくべき3つのポイント
- ベクトル = 大きさ + 向き 矢印でイメージしよう
- 計算は成分ごと x同士、y同士で計算すればOK
- 内積で垂直チェック 内積が0なら垂直!
これからの学習に向けて
今は公式を覚えることから始めて、少しずつその意味と応用を理解していってください。
高校に入ると、もっと深いベクトルの世界が待っています。物理での力学、数学での空間図形、さらには大学でのコンピュータグラフィックスや機械学習まで、ベクトルは大活躍!
数学は、世界を理解するための強力な道具。
今日学んだベクトルも、きっとあなたの未来に役立つはずです。
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