【桃太郎伝説の原型】温羅(うら)とは?岡山に伝わる最強クラスの鬼をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

桃太郎のお話に出てくる鬼って、実は元になった伝説があるって知っていましたか?

その鬼の名前は「温羅(うら)」。岡山県の吉備地方に伝わる、身長4メートルを超える巨大な鬼なんです。

しかも、ただの悪い鬼じゃないんです。

製鉄技術を持った渡来人だったという説もあり、地域に文化をもたらした存在だったかもしれないという、複雑な背景を持つ鬼なんですよ。

この記事では、桃太郎伝説の原型とされる温羅について、その恐ろしくも興味深い姿や特徴、壮大な退治伝説をわかりやすくご紹介します。

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概要

温羅(うら)は、古代の岡山県南部・吉備地方に伝わる伝説上の鬼です。

「おんら」と読むこともあり、吉備冠者(きびのかじゃ)や鬼神という異名も持っています。

つまり「吉備国の王者」を名乗るほどの強大な存在だったんですね。

温羅の基本情報

  • 出身:百済(朝鮮半島)の王子という説が有力
  • 拠点:鬼ノ城(きのじょう/現在の岡山県総社市)
  • 種族:悪鬼・鬼神
  • 活動時期:古代(崇神天皇の時代)
  • 最期:吉備津彦命に退治される

温羅の伝説は室町時代末期にはすでに現在の形で成立していたとされ、まさに桃太郎伝説の原型になったといわれています。

姿・見た目

温羅の姿は、まさに鬼の中の鬼といった感じで圧倒的な存在感があったんです。

温羅の外見的特徴

  • 身長は1丈4尺(約4.2メートル)という巨体
  • 赤く縮れた髪の毛
  • 長い髭
  • 獣のように輝く目
  • 頭にコブのような角

想像してみてください。普通の人の2倍以上の身長で、真っ赤な髪を持ち、獣のような目で睨まれたら……それはもう恐怖でしかありませんよね。

特徴

温羅の特徴は、その圧倒的な能力の多さにあります。

普通の鬼とは格が違うんです。

温羅の驚異的な能力

  • 怪力無双:とてつもない怪力の持ち主
  • 火を吐く:山を焼くほどの激しい炎
  • 空を飛ぶ:自由自在に空中を移動
  • 変身能力:人間、鳥(雉や鷲)、魚(鯉)などに変化
  • 呪法使い:さまざまな魔法を使える
  • 矢を防ぐ技:飛んできた矢に岩をぶつけて撃ち落とす

これだけの能力があれば、朝廷から派遣された軍隊を何度も撃退できたのも納得です。

まさに最強クラスの鬼といえるでしょう。

温羅の恐ろしい行い

  • 貢ぎ物を奪う:赤い扇で船を引き寄せて略奪
  • 美女をさらう:村から女性を連れ去る
  • 人を食べる:捕まえた人を釜で煮て食べていた

でも、別の見方をすれば、温羅は製鉄技術を持った渡来人で、吉備地方に鉄文化をもたらした功労者だったという説もあるんです。

伝承と起源

温羅の物語は、単なる鬼退治ではなく、古代日本の歴史を反映した壮大な伝説なんです。

温羅の来歴

温羅は百済の王子だったという説が有力です。悪事を働きながら各国を渡り歩き、ついに日本の吉備地方にたどり着きました。

最初は新山に仮住まいをし、その後、岩屋山の山頂に鬼ノ城という鉄の城を築いて本拠地としたんです。

この城は朝鮮式の山城で、実際に遺跡が残っています。

吉備津彦命との壮絶な戦い

温羅があまりに強すぎて、朝廷は何度も討伐軍を送りましたが、すべて失敗に終わります。

そこで崇神天皇は、四道将軍の一人である五十狭芹彦命(いさせりひこのみこと)を派遣しました。

伝説の戦いの流れ

  1. 矢合戦
    • 吉備津彦命が矢を放つが、温羅は岩を投げて撃ち落とす
    • 2本同時に矢を放ったところ、1本が温羅の左目に命中
  2. 変身合戦
    • 温羅がに変身 → 吉備津彦命はに変身して追跡
    • 温羅がに変身 → 吉備津彦命はに変身して捕獲
  3. 首になっても唸り続ける
    • 首を切られてもなお唸り声を上げ続けた
    • 犬に食わせて骨にしても静まらず
    • 吉備津神社の釜殿に埋めても13年間唸り続けた

鳴釜神事の誕生

ある日、吉備津彦命の夢に温羅が現れ、「妻の阿曽媛(あそひめ)に神饌を炊かせれば静まる」と告げました。

その通りにすると、ついに唸り声は止まったんです。

それ以来、温羅は吉凶を占う存在となり、現在も吉備津神社では「鳴釜神事」として受け継がれています。

釜から聞こえる音で吉凶を占うこの神事は、江戸時代の『雨月物語』にも登場するほど有名になりました。

桃太郎伝説との関係

この温羅退治伝説が、後の桃太郎伝説の原型になったといわれています。

対応関係

  • 桃太郎 → 吉備津彦命
  • → 温羅
  • → 犬飼健命(いぬかいたけるのみこと)
  • → 楽々森彦命(ささもりひこのみこと)
  • → 留玉臣命(とめたまおみのみこと)

面白いことに、犬飼健命の子孫は「犬養」姓を名乗り、5・15事件で暗殺された犬養毅首相もその一族だという説があるんです。

まとめ

温羅は、単なる悪い鬼ではなく、古代吉備地方の複雑な歴史を物語る重要な存在です。

温羅の重要ポイント

  • 身長4メートル超の巨大な鬼
  • 火を吐き、空を飛び、変身できる最強クラスの能力
  • 百済出身の渡来人で製鉄技術を持っていた可能性
  • 吉備津彦命との壮絶な戦いの末に退治される
  • 桃太郎伝説の原型となった
  • 現在も吉備津神社の鳴釜神事として祀られている

恐ろしい鬼として退治されながらも、地域に文化をもたらし、今なお神事として大切に祀られている温羅。

その複雑な存在は、古代日本と渡来文化の関係を今に伝える貴重な伝承といえるでしょう。

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