「面積が9㎠の正方形の一辺の長さは?」
答えは3cmですよね。 なぜなら、3 × 3 = 9 だから。
では、「面積が2㎠の正方形の一辺の長さは?」
これ、困りませんか? 1 × 1 = 1 で小さすぎる。 2 × 2 = 4 で大きすぎる。
この「ちょうどいい数」を表すために生まれたのが、平方根(へいほうこん)という考え方です。 そして、その記号が「√」(ルート)なんです。
「√なんて実生活で使わない」と思うかもしれません。 でも実は、建築、デザイン、スマホのGPS、ゲームの距離計算など、見えないところで大活躍しています。
この記事では、平方根が何なのか、どう計算するのか、そして何の役に立つのかを、数学が苦手な人でも分かるように解説していきます。
一緒に、√(ルート)の世界を探検してみましょう!
平方根の基本:2乗の逆を考える
平方根って何?
平方根を一言で説明すると、こうなります。
平方根とは: 「2乗したら、ある数になる数」のこと
具体例で見てみましょう:
9の平方根は?
- 3 × 3 = 9 なので、3
- (-3) × (-3) = 9 なので、-3も正解
- つまり、9の平方根は「3と-3」
16の平方根は?
- 4 × 4 = 16 なので、4
- (-4) × (-4) = 16 なので、-4
- 答え:「4と-4」
ポイント: 平方根は必ず「プラスとマイナスの2つ」存在します。
(0の平方根だけは0の1つだけ)
ルート(√)記号の登場
では、2の平方根は?
困りましたね。
ピッタリな整数がありません。
そこで登場するのが「√」(ルート)記号です。
√の使い方:
- √2 = 「2乗したら2になる正の数」
- -√2 = 「2乗したら2になる負の数」
つまり:
- 2の平方根 = ±√2(プラスマイナス ルート2)
√2の値: 約1.414…(永遠に続く小数)
覚え方:「ひとよひとよに(1414)ひとみごろ」
平方と平方根の関係
平方と平方根は「逆」の関係です。
平方(2乗):
- 3 → 3² = 9
- 5 → 5² = 25
- 数を2乗する操作
平方根:
- 9 → ±3
- 25 → ±5
- 2乗したらその数になる数を探す操作
つまり:
- 平方は「掛け算」の世界
- 平方根は「その逆」を探す世界
録画と再生に例えると:
- 平方 = 録画(3を9に変換)
- 平方根 = 逆再生(9から3を復元)
この章のポイント:平方根は「2乗したらその数になる数」。
整数で表せない時は√記号を使う。平方根は必ずプラスとマイナスの2つある(0以外)。
ルート(√)の性質と計算ルール
基本的な性質
√には、知っておくと便利な性質があります。
性質1:2乗すると√が消える
- (√2)² = 2
- (√5)² = 5
- (√a)² = a
性質2:√の中身は正の数
- √(-4) は存在しない(実数では)
- √の中は0以上の数だけ
性質3:整数の2乗は外に出せる
- √4 = 2(4は2²だから)
- √9 = 3(9は3²だから)
- √16 = 4(16は4²だから)
掛け算と割り算
√の掛け算・割り算には便利なルールがあります。
掛け算のルール: √a × √b = √(a × b)
例:
- √2 × √3 = √6
- √5 × √5 = √25 = 5
割り算のルール: √a ÷ √b = √(a ÷ b)
例:
- √6 ÷ √2 = √3
- √20 ÷ √5 = √4 = 2
足し算と引き算の注意点
ここが要注意! √の足し算・引き算は、普通の数とは違います。
できない計算:
- √2 + √3 ≠ √5(これは間違い!)
- √9 – √4 ≠ √5(これも間違い!)
できる計算(同じ√だけ):
- 2√3 + 3√3 = 5√3
- 5√2 – 2√2 = 3√2
つまり:
- 同じ√なら、係数だけ計算
- 違う√は、そのまま残す
りんごとみかんに例えると:
- りんご2個 + りんご3個 = りんご5個(OK)
- りんご2個 + みかん3個 = ?(まとめられない)
有理化:分母の√を消す
分母に√があると不便なので、消す技があります。
有理化の方法: 分母と分子に同じ√を掛ける
例:1/√2 を有理化
- 分母と分子に√2を掛ける
- (1 × √2)/(√2 × √2) = √2/2
- 答え:√2/2
なぜ有理化するの?
- 計算しやすくなる
- 値を比較しやすくなる
- 見た目がスッキリする
この章のポイント:√の掛け算・割り算は中身で計算。
足し算・引き算は同じ√だけ。分母の√は有理化で消す。ルールを覚えれば計算は簡単!
有理数と無理数:√が生み出す新しい数
有理数と無理数の違い
√を学ぶと、新しい数の世界が広がります。
有理数(ゆうりすう)とは:
- 分数で表せる数
- 例:1/2、3/4、5(= 5/1)
- 小数にすると、終わるか繰り返す
無理数(むりすう)とは:
- 分数で表せない数
- 例:√2、√3、π(円周率)
- 小数にすると、永遠に続いて繰り返さない
√2が無理数である理由:
- √2 = 1.41421356…
- どこまでいっても規則性がない
- 分数では絶対に表せない
よく使う平方根の値
覚えておくと便利な値があります。
整数になる√:
- √1 = 1
- √4 = 2
- √9 = 3
- √16 = 4
- √25 = 5
- √36 = 6
- √49 = 7
- √64 = 8
- √81 = 9
- √100 = 10
よく出る無理数:
- √2 ≈ 1.414(ひとよひとよ)
- √3 ≈ 1.732(ひとなみに)
- √5 ≈ 2.236(ふじさんろく)
大小関係の比較
√の大小を比べる方法です。
基本ルール: 中身が大きいほど、√も大きい
例:
- √2 < √3 < √5
- √10 < √15 < √20
2乗して比較: √2と1.5、どっちが大きい?
- 両方を2乗
- 2と2.25を比較
- 2 < 2.25なので、√2 < 1.5
この章のポイント:√が作る数の多くは無理数(分数で表せない)。
でも、それも立派な数。
大小比較は中身を見ればOK。
実生活での平方根:意外と身近な√
建築・工事での活用
対角線の長さを求めるときに必須です。
例:正方形の部屋の対角線
一辺4mの正方形の部屋:
- 対角線² = 4² + 4²(ピタゴラスの定理)
- 対角線² = 32
- 対角線 = √32 = 4√2 ≈ 5.66m
用途:
- 配管を斜めに通すとき
- 家具が通るか確認するとき
- ケーブルの必要な長さを計算
スマホのGPSと距離計算
2点間の距離も平方根で計算します。
地図上の2地点の距離:
- 東に3km、北に4km離れた場所
- 直線距離² = 3² + 4²
- 直線距離 = √25 = 5km
GPSアプリでは:
- 常に平方根を計算
- 最短距離を表示
- ナビゲーションに活用
テレビのサイズ表記
テレビのインチ数は対角線の長さです。
32インチテレビの実際のサイズ:
- 対角線が32インチ(約81cm)
- 横:縦 = 16:9 の場合
- 実際の計算に√が必要
画面サイズの関係:
- 対角線² = 横² + 縦²
- この計算で実寸が分かる
統計での標準偏差
データのばらつきを表す重要な指標です。
標準偏差の計算:
- 平均からのズレを2乗
- その平均を取る(分散)
- √を取る → 標準偏差
使用例:
- テストの成績分析
- 商品の品質管理
- 株価の変動幅
音楽での平均律
音階の周波数も√が関係しています。
半音の周波数比:
- 12√2(2の12乗根)≈ 1.059
- これで1オクターブを12等分
ギターのフレット:
- この比率で配置
- だから均等な間隔じゃない
この章のポイント:平方根は建築、GPS、統計など、見えないところで大活躍。距離や対角線を求めるときは特に重要。
よくある間違いと攻略法
間違い1:平方根を1つしか答えない
「4の平方根は?」→「2」だけ答える
正解:
- 4の平方根は「±2」
- プラスとマイナス両方必要
ただし注意:
- 「√4は?」→「2」(これは正の平方根のみ)
- 問題文をよく読もう
間違い2:√の足し算を間違える
よくあるミス:
- √2 + √3 = √5 ✕
- √9 + √16 = √25 ✕
正しい計算:
- √2 + √3 = √2 + √3(そのまま)
- √9 + √16 = 3 + 4 = 7
覚え方: 「√は足し算の壁を越えられない」
間違い3:マイナスの数の平方根
「-4の平方根は?」
答え:
- 実数の範囲では「存在しない」
- √の中身は0以上のみ
でも注意:
- 「-4は何の平方根?」なら
- (-2)² = 4 なので「4の平方根の1つ」
間違い4:2乗と平方根の混同
混同しやすい例:
- (√3)² = 3(√が消える)
- √(3²) = 3(2乗が消える)
でも:
- √3² と書いたら?
- 計算の順番:3² = 9 → √9 = 3
この章のポイント:平方根は±を忘れずに。
√の足し算は要注意。マ
イナスの平方根は実数では存在しない。練習あるのみ!
まとめ:平方根は数の世界を広げる扉
ここまで、平方根について詳しく見てきました。
平方根の重要ポイント:
- 平方根は「2乗したらその数になる数」
- 整数で表せないときは√記号を使う
- 平方根は必ず±の2つ(0以外)
- √の計算にはルールがある
- 無理数という新しい数の世界が広がる
平方根を学ぶ意味:
- 正確な長さや距離が計算できる
- ピタゴラスの定理が使える
- データ分析(標準偏差)ができる
- 高校数学の基礎になる
日常生活での平方根:
- 建築での対角線計算
- GPSでの距離測定
- テレビサイズの理解
- 統計データの分析
- 音楽の音階計算
コメント