Steamクラウドの基本機能と仕組み
Steamクラウドは、ゲームのセーブデータ、設定ファイル、その他のゲームデータを自動的にリモートファイルストレージに保存するValveのクラウドサービスです。
2024年に導入されたDynamic Cloud Sync機能により、Steam Deckのサスペンド/レジューム時にもシームレスな同期が可能になりました。複数デバイス間でのゲーム体験が大幅に向上しています。
自動同期の仕組み
自動同期は二段階のプロセスで動作します。
- ゲーム起動前:クラウドからファイルをダウンロード
- ゲーム終了後:クラウドへアップロード
Steamクライアントの起動・終了時にも自動的に同期が実行され、ユーザーの介入なく透過的に機能します。
2024年3月のアップデートにより、ライブラリ内で同期進行状況がパーセンテージ表示されるようになりました。視覚的に同期状態を確認できるようになっています。
手動同期の方法
手動同期は「同期エラー」や「Out of sync」状態が発生した場合に利用できます。
手順:
- ライブラリ→ゲーム→プロパティを開く
- クラウドステータス→「同期を再試行」を選択
競合が発生した場合は、ローカル版とクラウド版のどちらを使用するか選択できます。
新UIでは、ゲーム詳細画面に表示されるクラウドアイコンをクリックすることで、直接同期を再試行できるようになりました。
Steamクラウドの設定方法
グローバル設定の有効化
Steamクラウドのグローバル設定は以下の手順で行います。
- Steam→設定→クラウドタブを開く
- 「アプリケーションでSteamクラウドの同期を有効にする」にチェック
- Steamクライアントを再起動
設定変更後はSteamクライアントの再起動が必要です。これで対応するすべてのゲームでクラウド同期が有効になります。
ゲーム別設定の調整
個別のゲーム設定方法:
- ライブラリ内でゲームを右クリック
- プロパティ→一般タブを選択
- 「[ゲーム名]のゲームセーブをSteamクラウドに保存する」のチェックボックスで制御
2024年の新UIでは、ゲーム詳細画面でクラウドステータスが直接表示されます。
ステータスアイコンの色:
- 緑:同期済み
- 黄色:同期中
- 赤:エラー
- グレー:無効
Steam Deckでの設定
Steam Deckでの設定方法:
- Steamボタン→設定→クラウドからグローバル設定を行う
デスクトップモードでのファイル保存場所:
- ローカルクラウドファイル:
/home/deck/.steam/steam/userdata/
- Proton Windowsゲーム:
/home/deck/.steam/steam/steamapps/compatdata/[APPID]/pfx/drive_c/users/steamuser/Documents/
容量制限と使用状況の確認
ストレージ容量の仕様
2024年の大幅な容量増加により、ユーザーアカウントごとのスクリーンショット・アートワーク用ストレージが16GB増加しました。合計で約18-20GBが利用可能です。
ゲームごとの容量配分:
- 小規模インディーゲーム:50-100MB
- 中規模ゲーム:200-500MB
- 大規模ゲーム:953MB-1GB
- Factorioなど一部のゲーム:最大25GBまで拡張(2024年)
使用状況の確認方法
使用状況は以下の方法で確認できます。
Webインターフェース
https://store.steampowered.com/account/remotestorage
にアクセスすると:
- クラウドデータを持つすべてのゲームが表示
- 個別のファイルサイズとタイムスタンプを確認
- 必要に応じて個別ファイルをダウンロード可能
Steamクライアント内
ゲームのプロパティ→一般タブでゲームごとのストレージ使用状況を確認できます。
ファイルサイズの制限
単一ファイルの制限:
- 最大サイズ:ISteamRemoteStorage::FileWrite操作で100MB
- 推奨サイズ:100MB未満(最適なパフォーマンス)
- 注意:256MBを超えるファイルはパフォーマンスに影響
対応ゲームと非対応ゲームの見分け方
視覚的な識別方法
対応ゲームの確認方法:
- Steamライブラリでクラウドアイコンが表示されている
- ストアページの右側カラムに「Steamクラウド」アイコンがある
- ゲームのプロパティ→一般タブに「ゲームセーブをSteamクラウドに保存する」オプションがある
クラウドステータスアイコンの意味
- 実線のクラウドアイコン:Steamクラウドをサポートし使用中
- クエスチョンマーク付きクラウド:同期状態が不明で確認が必要
- 打ち消し線付きクラウド:クラウド同期が無効化されている
- アイコンなし:Steamクラウドに対応していない
確認用リソース
- PCGamingWiki:包括的なゲーム別クラウドサポートリスト
- SteamDB:ゲーム情報と機能追跡
- Steamコンソール:
steam://open/console
でtestappcloudpaths <AppId>
コマンドを使用
セーブデータの保存場所と同期ファイルの種類
Windows環境の保存場所
ローカルのSteamクラウドストレージ: C:\Program Files (x86)\Steam\userdata\<SteamUserID>\<AppID>\remote\
一般的なゲームセーブの場所:
%USERPROFILE%\Documents\My Games\
%USERPROFILE%\Saved Games\
%USERPROFILE%\AppData\Local\
%USERPROFILE%\AppData\Roaming\
macOSとLinuxの保存場所
macOS: ~/Library/Application Support/Steam/userdata/<SteamUserID>/<AppID>/remote/
Linux:
~/.local/share/Steam/userdata/<SteamUserID>/<AppID>/remote/
~/.steam/steam/userdata/<SteamUserID>/<AppID>/remote/
同期されるファイルの種類
同期されるファイル
- セーブファイル:
.sav
、.dat
、.save
、.slot
、.bin
- 設定ファイル:
.cfg
、.ini
、.conf
、.txt
- ユーザープロファイルデータ
- ゲーム固有のバイナリフォーマット
同期されないファイル
- マシン固有の設定(ビデオ設定、ハードウェア構成)
- 大規模なアセットファイルやMOD
- 一時ファイルやキャッシュ
複数PCでのセーブデータ同期の詳細
同期プロセスの流れ
複数PCでの同期は4段階のプロセスで動作します。
- ゲーム起動前:クラウドファイルをローカルマシンにダウンロード
- ゲームプレイ中:ローカルでファイルを変更
- ゲーム終了後:変更されたファイルをSteamサーバーにアップロード
- 他のデバイス:自動的にファイルが利用可能になる
Dynamic Cloud Sync機能(2024年新機能)
新機能の特徴:
- Steam Deckがスリープモードに入る際にファイルが同期
- アクティブセッション中にデバイス間で変更がリアルタイムで同期
- ISteamRemoteStorageコールバックを介してアプリケーションが動的なファイル変更に応答
- クラウドアップデートからローカルファイルが変更された際にアプリケーションに通知
競合の解決方法
競合が発生する状況:
- 複数デバイスで同時にプレイした場合
- 不適切なゲーム終了により同期が妨げられた場合
- 同期プロセス中のネットワーク中断時
解決オプション:
- 「このマシンにダウンロード」(クラウド版を使用)
- 「クラウドにアップロード」(ローカル版を使用)
- 手動選択(タイムスタンプと知識に基づいて選択)
Steam Deckとの同期方法と注意点
Steam Deck固有の考慮事項
重要な点:
- すべての検証済みゲームがSteamクラウドをサポートしているわけではない
- クラウドセーブの欠如はDeck Verifiedステータスに影響しない
- ProtonゲームのセーブファイルはWindowsゲームとは異なる場所に保存
- 一部のゲームはネイティブLinux版があってもデフォルトでProtonを使用
Steam Deck用の同期設定
グローバル設定:
- Steamボタン→設定→クラウド
ゲーム別設定:
- ライブラリ→ゲームを右クリック→プロパティ
デスクトップモードでは手動でセーブファイルにアクセスできます。隠しフォルダを表示するにはCtrl+Hを使用します。
プラットフォーム固有の問題
複数デバイス間での競合を避ける方法:
- ゲームを適切に終了する(Alt+F4を使用しない)
- デバイスを切り替える前に同期完了を待つ
Steam Deckがスリープから復帰する際の同期エラーの回避策: 「PCからストリーム」オプションを選択してから「PCでプレイ」を選択し直す
同期エラーと競合の解決方法
一般的なエラーメッセージと対処法
「SteamがSteamクラウドとファイルを同期できませんでした」
原因:
- ファイルの競合
- ネットワークの問題
- クラウド同期の無効化
対処法:
- 「同期を再試行」をクリック
- クラウドステータスを確認
「同期不可」または「Out of sync」状態
意味:ローカルとクラウド間でセーブバージョンが異なる
対処法:クラウドステータスを右クリック→同期を再試行
強制再同期の手順
- ライブラリでゲームを選択
- 「クラウドステータス」を確認
- 「Out of sync」と表示されている場合はダブルクリック
- ポップアップウィンドウで「同期を再試行」をクリック
- 「最新」ステータスになるまで待つ
それでも解決しない場合:
- 設定→クラウド→Steamクラウドを無効化
- Steam再起動
- 再度有効化
ネットワーク関連の問題解決
IPv6プロトコルが原因の場合:
- コントロールパネル→ネットワーク→アダプター設定の変更
- 「インターネットプロトコルバージョン6(TCP/IPv6)」のチェックを外す
その他の対処法:
- Steamのダウンロードキャッシュをクリア(設定→ダウンロード→ダウンロードキャッシュをクリア)
セーブデータのバックアップと復元方法
手動バックアップの実行
Steam Deckでのバックアップスクリプト
#!/bin/bash
date > '/run/media/deck/SDCARD/Saves Backup/LastBackup.txt'
rsync -rltv --delete --progress '/home/deck/.steam/steam/steamapps/compatdata/[APPID]/pfx/drive_c/users/steamuser/AppData/Local/[GAME]/' '/run/media/deck/SDCARD/Saves Backup/[GAME]/'
Windowsでのバックアップ
C:\Program Files (x86)\Steam\userdata\
フォルダ全体をバックアップすることで、すべてのゲームのクラウドデータを保存できます。
自動バックアップツール
Ludusavi(2024年推奨ツール)
特徴:
- クロスプラットフォームのセーブバックアップツール
- Steam DeckのDiscoverストアから入手可能
- ProtonとネイティブLinuxゲームをサポート
- PCGamingWikiデータベースを使用して自動的にゲームを検出
DeckyCloudプラグイン
機能:
- Google Drive、Dropbox、OneDriveと同期
- ゲームモードで動作
注意:最新のSteam Deckアップデートで動作しない場合があります。
復元手順
- Steamクラウドファイルの復元
store.steampowered.com/account/remotestorage
から個別にダウンロード
- ローカルバックアップからの復元
- バックアップしたファイルを元の場所にコピー
- ゲームの整合性を確認
- 競合解決ダイアログで適切なオプションを選択
オフラインモードでの動作と制限
オフライン時の動作仕様
動作の特徴:
- Steamクラウドファイルはインターネット接続が利用可能な時にローカルにキャッシュ
- 接続が復旧した際に同期される
- オフライン中はリアルタイム同期ができない
- すべての同期はオンライン復帰時に行われる
ゲーム起動時に「同期できません」という警告が表示されます。これはクラウド同期が無効でも表示される既知のバグです。
オフラインプレイのベストプラクティス
推奨事項:
- オフラインになる前に最新の同期を確認
- オンラインに戻った際は必ずローカルセーブを選択
- 長期間のオフラインプレイの場合はSteamクラウドを一時的に無効化
- 手動でセーブファイルをバックアップ
制限事項
オフラインモードでできないこと:
- Workshop MODの同期
- 新規デバイスへのゲームデータのダウンロード
- クラウドベースの実績やスクリーンショットのアップロード
リスク:競合解決時に誤ったオプションを選択すると、オフラインで行った進行状況が失われる可能性があります。
Steamクラウドのセキュリティとプライバシー
暗号化プロトコル
セキュリティ機能:
- SteamクライアントとSteamサーバー間のすべての接続は暗号化
- テキストチャットメッセージはSSL/TLSなどの業界標準プロトコルを使用
- 音声チャットにはエンドツーエンド暗号化が実装(2024年の新機能)
- ダウンロードされたゲームは海賊版防止のため、最初は暗号化された形式で保存
データ保護対策
実装されている保護機能:
- Steam Guard 2FAによる二要素認証
- 強力なパスワードとセキュリティ慣行に関する公式ガイダンス
- Cloud APIを通じた個々のSteamユーザーファイルの分離
Valveはクラウドデータストレージに使用される特定の暗号化方法を公開していませんが、業界標準のセキュリティプラクティスに従っています。
プライバシーの考慮事項
注意点:
- Steamサーバーに保存されたセーブデータはエンドツーエンド暗号化されていない可能性
- ユーザーはSteamクラウドストレージに直接アクセスまたは管理することはできない
- Valveはデータ保持ポリシーやサーバー側の暗号化に関する詳細情報を提供していない
ゲーム設定の同期
同期される設定
同期対象:
- セーブゲームファイル
- キーバインディングやグラフィック設定を含む設定ファイル
- 開発者が指定したカスタム設定ファイル
- 適切に構成されている場合は異なるOS間でのクロスプラットフォームデータ
ローカル専用設定
同期されない設定:
- ビデオ品質設定やディスプレイ構成などのマシン固有の設定
- オーディオデバイス構成やコントローラーマッピングなどのハードウェア依存設定
- 特定のハードウェア機能に関連するパフォーマンス設定
技術的実装
開発者向け機能:
- Auto-Cloud構成で自動同期のファイルパスとパターンを指定
- ISteamRemoteStorage APIを使用して細かな制御
- Windows、macOS、Linux間で異なるセーブ場所をサポート
- Root Overridesを使用した開発者固有の構成でクロスプラットフォーム同期が可能
MODとワークショップアイテムの互換性
ワークショップの同期
同期の仕組み:
- Steamはデバイス間でサブスクライブしたワークショップアイテムを追跡
- 新しいデバイスでSteamにログインするとMODが自動的に再ダウンロード
- 実際のMODファイルではなくサブスクリプションのみが同期
- コンテンツは各デバイスで再ダウンロードする必要がある
多くのゲームでワークショップ機能を使用するにはSteamクラウドを有効にする必要があります。
制限事項と回避策
制限事項
- MODは新しいデバイスごとに再ダウンロードが必要(帯域幅を消費)
- オフライン時はワークショップMODが同期されない
- 非ワークショップMODは手動バックアップ/同期ソリューションが必要
回避策
- Dropboxなどのクラウドストレージサービスへのジャンクションリンク
- デバイス切り替え前のMODファイルの手動バックアップ
- 再インストール用のMOD名とリンクのリスト管理
ゲーム固有の実装
ワークショップ同期はゲームと開発者の実装によって異なります。
- 一部のゲーム:完全な自動同期をサポート
- 他のゲーム:手動介入が必要
開発者がワークショップコンテンツとSteamクラウドの統合をどのように実装したかによって、体験が大きく異なる場合があります。
よくあるトラブルと解決方法
同期が遅い問題
対処法:
- ネットワーク接続の安定性を確認
- 持続的な問題がある場合はIPv6プロトコルを無効化
- Steamのダウンロードキャッシュをクリア
- ExitLagなどのネットワーク最適化ツールを使用
注意:火曜日の定期メンテナンス中は一時的な問題が発生する可能性があります。
データ消失の防止
予防策:
- ゲームを適切に終了する(Alt+F4を使用しない)
- デバイスを切り替える前に同期完了を待つ
- steamstat.usまたはdowndetector.comでサーバーステータスを確認
- オフラインモードを有効にしてから無効にして強制同期
- 「とにかく起動」オプションは慎重に使用
- プラットフォームを切り替える前に手動バックアップを作成
失われたセーブの回復手順
store.steampowered.com/account/remotestorage
でSteamクラウドファイルを確認- ゲームがクラウドセーブをサポートしているか確認(ストアでクラウドアイコンを探す)
- Steamの競合解決ダイアログを通じて復元を試みる
Steam/userdata/[USERID]/
に移動- ゲームのApp IDに一致する番号付きフォルダを探す
- バックアップされたファイルをコピーして復元
2024-2025年の最新アップデートと変更点
Dynamic Cloud Sync(2024年の主要機能)
新機能の特徴:
- Steam Deckがサスペンドモードに入る際にセーブデータを自動同期
- Steam Deckでサスペンド後にPCでゲームを完全に終了せずに再開可能
- 新しいISteamRemoteStorageメソッドを使用した開発者統合が必要
- アプリケーションセッション中にローカルデバイスに変更をダウンロードするリアルタイム同期
Steam Families(2024年9月開始)
Family Sharingを置き換える新システムの特徴:
- 最大6人の家族メンバーがゲームを共有可能
- 共有ライブラリから異なるゲームを複数の家族メンバーが同時にプレイ可能
- 強化されたペアレンタルコントロール
- 改善された制限および監視機能
制限事項:
- 同じ世帯/地域にいる必要がある(以前のシステムより厳格)
- 家族を離れるとそのスロットが1年間ロック
その他の重要な変更
Windows 7/8サポート終了(2024年1月1日)
古いシステムでのクラウド同期に影響があります。
ストレージとUIの改善
- 16GBのストレージ増加(スクリーンショット/アートワーク用)
- 同期進行状況のパーセンテージ表示
- より良いエラーメッセージング
その他の機能強化
- MacとLinuxクライアントのハードウェアアクセラレーション有効化
- 音声チャットのエンドツーエンド暗号化実装
まとめ
この包括的なガイドは、2024-2025年のSteamクラウドの最新情報と実践的な使用方法を網羅しています。
複数デバイス間でのゲーム体験を最適化するための重要な情報を提供しました。定期的なバックアップの実施と適切な同期設定の管理により、データ損失のリスクを最小限に抑えながら、Steamクラウドの利便性を最大限に活用できます。
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