iPhoneのデータ移行は以前よりも格段に簡単かつ確実になりました。
特にiOS 17.2以降では移行プロセスの信頼性が向上しています。
iOS 18ではUSB-Cケーブルを使った有線転送にも対応しました。
本ガイドでは、iCloudを活用した3つの主要な移行方法と、データの種類別対処法、トラブルシューティングまで、15の重要ポイントを網羅的に解説します。
- iCloudを使った新しいiPhoneへのデータ移行手順
- 2. クイックスタート機能を使った移行方法と手順
- 3. iCloudバックアップからの復元方法
- 4. 移行できるデータの種類と移行できないデータ
- 5. 移行にかかる時間の目安とデータ容量別の所要時間
- 6. 移行前の準備と注意事項
- 7. よくあるトラブルと解決方法
- 8. iCloudストレージが不足している場合の対処法
- 9. 写真、連絡先、アプリデータなど個別データの移行方法
- 10. eSIM、Apple Pay、認証アプリなど特殊なデータの移行
- 11. 移行後の確認事項とトラブルシューティング
- 12. 無料のiCloud容量(5GB)での移行のコツ
- 13. Wi-Fi環境とモバイルデータでの移行の違い
- 14. 古いiPhoneから新しいiPhoneへの直接転送との比較
- 15. 2024-2025年の最新のiOS機能や変更点
- まとめ
iCloudを使った新しいiPhoneへのデータ移行手順

方法A:古いデバイスが手元にある場合(iOS 17.2以降推奨)
準備段階
古いiPhoneでの準備:
- 「設定」→「Wi-Fi」から安定したWi-Fiネットワークに接続
- Bluetoothをオンにする
- 両方のデバイスを電源に接続しておく
新しいiPhoneでの設定
- 新しいiPhoneの電源を入れる
- 「こんにちは」画面が表示されたら、指示に従って「クイックスタート」画面まで進む
- 古いiPhoneを新しいiPhoneの隣に置く(自動的に検出される)
- 古いデバイスのカメラで新しいiPhoneに表示されるアニメーションをスキャン
- 「iCloudからダウンロード」を選択
方法B:古いデバイスが手元にない場合
- 新しいiPhoneを起動
- Wi-Fiに接続
- 「Appとデータ」画面で「iCloudバックアップから復元」を選択
- Apple IDでサインイン
- 最新のバックアップを選択して復元を開始
- デバイスをWi-Fiと電源に接続したまま、復元プロセスが完了するまで待つ
2. クイックスタート機能を使った移行方法と手順
クイックスタートの要件
- 現在のデバイス:iOS 11以降
- デバイス間直接転送:iOS 12.4以降が必要
- 両方のデバイスを近くに配置
- BluetoothとWi-Fiを有効にする
移行プロセス
- 新しいiPhoneを起動し、現在のデバイスの近くに置く
- 「クイックスタート」画面が自動的に表示される
- Apple IDを確認して「続ける」をタップ
- 新しいデバイスに表示されるアニメーションを現在のデバイスのカメラで読み取る
- 現在のデバイスのパスコードを新しいデバイスに入力
- 「iPhoneから転送」または「iCloudからダウンロード」を選択
iOS 18の新機能:USB-C有線接続
iPhone 15以降同士の場合:
- USB-Cケーブルを使用
iPhone 14以前からiPhone 15以降への移行:
- USB-CからLightningケーブルを使用
無線転送よりも高速な転送が可能になりました。
3. iCloudバックアップからの復元方法
バックアップの作成
手動バックアップ:
- 「設定」→「[あなたの名前]」→「iCloud」を開く
- 「iCloudバックアップ」を選択
- 「今すぐバックアップを作成」をタップ
自動バックアップを有効にしておけば、以下の条件で毎日自動的にバックアップが作成されます:
- デバイスが電源に接続されている
- Wi-Fiに接続されている
- 画面がロックされている
復元プロセス
- 新しいiPhoneの初期設定中に「Appとデータを転送」画面を表示
- 「iCloudバックアップから」を選択
- Apple IDでサインイン
- バックアップを選択
- ソフトウェアアップデートが必要な場合は自動的に更新
- 復元後も、Wi-Fiと電源に接続したまま待つ
アプリ、写真、音楽のダウンロードが完了するまで接続を維持してください。
4. 移行できるデータの種類と移行できないデータ
移行可能なデータ
システム設定とアプリデータ
完全に移行されるもの:
- ホーム画面のレイアウト
- 壁紙
- 通知設定
- Bluetooth/Wi-Fi設定(パスワードはキーチェーン経由)
- コントロールセンターのカスタマイズ
- アクセシビリティ設定
写真とビデオ
iCloud写真を有効にしていれば、フル解像度ですべて同期されます。
メッセージ
iCloudメッセージを使用していれば、すべてのiMessage、SMS、MMSメッセージが自動的に同期されます。
移行できないデータ
セキュリティ上の理由から、以下は移行されません:
- Touch ID/Face IDの設定
- Apple Payのカード情報
これらは新しいデバイスで手動で再設定する必要があります。
その他、再設定が必要なもの:
- iTunesで購入した音楽のダウンロード
- オフラインの音楽ファイル
- 二要素認証アプリのトークン
- 銀行アプリの生体認証設定
5. 移行にかかる時間の目安とデータ容量別の所要時間
Wi-Fi転送の時間目安
- 10GB:約15〜30分
- 50GB:1.5〜2時間
- 100GB:3〜4時間
- 128GB:最大6〜16時間
これらの時間は以下の要因によって変動します:
- Wi-Fi信号の強度
- ルーターからの距離
- ネットワークの混雑状況
- インターネットサービスプロバイダーの帯域幅制限
有線転送(iOS 18以降)
USB-Cケーブルを使用した場合:
- 10GB:5〜10分
- 50GB:30〜45分
- 100GB:1〜1.5時間
無線転送よりも大幅に高速です。
クイックスタートとiCloud復元の比較
クイックスタート(デバイス間直接転送)
メリット:
- 最新のデータを転送できる
- 大容量データの場合により高速
デメリット:
- 転送中は両方のデバイスが使用できない
iCloud復元
メリット:
- 古いデバイスが不要
- いつでも実行できる
デメリット:
- 最後のバックアップ時点のデータしか復元できない
- ネットワーク速度に依存
6. 移行前の準備と注意事項

iOS バージョンの確認
2024年12月以降、iOS 8以前のデバイスはiCloudバックアップをサポートしなくなりました。
要件:
- 最低でもiOS 9以降が必要
- 最適な互換性のためには最新のiOS 17/18へのアップデートを推奨
iCloudストレージの準備
無料の5GBプランでは多くのユーザーにとって不十分です。
新しいデバイスを購入した場合、21日間の無料一時ストレージが利用可能です。
ストレージ確認方法:
- 「設定」→「[あなたの名前]」→「iCloud」を開く
- 「ストレージを管理」で使用状況を確認
- 必要に応じてプランをアップグレード
二要素認証の設定(必須)
iOS 16.3以降、iCloudバックアップとiCloud Driveには二要素認証が必須となっています。
設定方法:
- 「設定」→「[あなたの名前]」を開く
- 「サインインとセキュリティ」を選択
- 「二ファクタ認証をオンにする」から設定
データのクリーンアップ
移行前に実施すること:
- 不要な写真の削除
- 使用していないアプリの削除
- デバイスの再起動によるキャッシュのクリア
これによりバックアップサイズを削減できます。
7. よくあるトラブルと解決方法
「転送の準備中」で止まる問題
対処法:
- 両方のiPhoneを5〜15フィート(約1.5〜4.5メートル)以内に配置
- 両方のデバイスを強制再起動
- iPhone X以降:音量アップ→音量ダウン→サイドボタン長押し
- 同じ安定したWi-Fiネットワークに接続されていることを確認
- 可能であれば有線接続に切り替える
iPhone 16のiOS 18固有のバグ
新しいiPhone 16で「別のiPhoneから転送」を選択すると画面がフリーズする場合があります。
対処法:
- まずiOS 18.1にアップデート
- それから、データ転送を試みる
- 直接転送が失敗する場合はiCloudバックアップ復元方法を使用
データが見つからない場合の対処
確認事項:
- アプリがApp Storeから再ダウンロードされているか
- 認証が必要なアプリに再度サインインしているか
- Apple Payカードはウォレットの設定から手動で再追加する
8. iCloudストレージが不足している場合の対処法
一時的な無料ストレージの活用
iOS 15以降では、デバイス移行時に21日間の無料無制限ストレージが提供されます。
利用方法:
- 「設定」→「一般」→「転送またはiPhoneをリセット」を開く
- 「開始」を選択
- 「アプリとデータを移動するための追加のiCloud」を選択
ストレージの最適化
古いバックアップの削除
- 「設定」→「[あなたの名前]」→「iCloud」を開く
- 「ストレージを管理」→「バックアップ」を選択
- 古いデバイスのバックアップを削除
通常2〜8GBの容量を確保できます。
写真の最適化
「写真」→「iPhoneのストレージを最適化」を有効にすると、ローカルの写真バックアップサイズを50〜80%削減できます。
選択的バックアップ
後で再ダウンロードできるアプリをバックアップから除外:
- 大型ゲーム
- ソーシャルメディアアプリ
- 音楽アプリ
8GBのバックアップを1〜2GBに削減できます。
9. 写真、連絡先、アプリデータなど個別データの移行方法
写真の移行
最も推奨される方法:
- 古いデバイスでiCloud写真を有効にする
- 「設定」→「Apple ID」→「iCloud」→「写真」→「iCloud写真」
- 完全な同期を待つ
- 新しいiPhoneで同じApple IDでサインイン
- iCloud写真を有効にする
WhatsAppとメッセージングアプリ
WhatsApp:
- 自動的にiCloudにバックアップされる(有効にしている場合)
その他のアプリ:
- Telegram、Signal:独自のクラウドサービス経由で同期
- 個別のアプリ設定を確認する必要がある
ゲームの進行状況とアプリデータ
- Game Center使用ゲーム:自動的に進行状況が同期
- iCloud統合アプリ:シームレスにデータを転送
- 一部のゲーム:FacebookやGoogleアカウントへの手動リンクが必要
10. eSIM、Apple Pay、認証アプリなど特殊なデータの移行
eSIMの転送
iOS 16以降の「eSIMクイック転送」機能により、セットアップ中にiPhoneが以前のeSIMを検出し、自動転送を促します。
要件:
- 両方のデバイスがiOS 16以降
- 同じApple ID
- Bluetoothが有効
- 近くに配置
Apple Payカードの再追加
セキュリティ上の理由から、Apple Payカードは自動的に転送されません。
再追加手順:
- ウォレットアプリを開く
- 手動でカードを再追加
- 銀行の再確認(SMS/メールコード)を行う
二要素認証アプリの移行
Google Authenticator
iOS 16以降でQRコード経由でアカウントをエクスポート/インポート
Authy
クラウド同期により、同じアカウントにログインすればシームレスに転送
Microsoft Authenticator
設定でバックアップを有効にしてから、Microsoftアカウントで復元
11. 移行後の確認事項とトラブルシューティング
必須データの確認チェックリスト
移行直後に確認すること:
- 写真アプリ:最近の写真が存在するか
- 連絡先アプリ:重要な連絡先をスポットチェック
- メッセージアプリ:最近の会話を確認
- カレンダーアプリ:今後の予定を確認
- ノートアプリ:最近のメモと添付ファイルにアクセスできるか
アプリの機能確認
各重要アプリを個別に開き、以下を確認:
- ログインが必要か
- 銀行や金融アプリの再認証
- Face ID/Touch IDの再設定
データが不足している場合の対処
- 「設定」→「[あなたの名前]」→「iCloud」を開く
- 特定のデータタイプのトグルをオフにしてからオンにして同期を強制
- 解決しない場合は、デバイスを消去して最新のバックアップから復元
12. 無料のiCloud容量(5GB)での移行のコツ
5GBで現実的に収まるデータ
収まるもの:
- 設定と環境設定(約50〜200MB)
- 連絡先(約1〜10MB)
- メモ(約10〜100MB)
- キーチェーン/パスワード(約1〜5MB)
- ヘルスデータ(約10〜50MB)
- 小さなアプリデータ(約100MB〜1GB)
収まらないもの:
- 写真/ビデオ(通常3〜8GB)
- 大型ゲーム(各500MB〜4GB)
- 添付ファイル付きメッセージ(1〜5GB)
選択的バックアップ戦略
バックアップから除外する方法:
- 「設定」→「[あなたの名前]」→「iCloud」を開く
- 「ストレージを管理」→「バックアップ」→「[デバイス]」を選択
- 「すべてのAppを表示」から不要なアプリのトグルをオフ
除外対象:
- ソーシャルメディア
- ストリーミングアプリ
- ゲーム
- 大型生産性アプリ
8GBのバックアップを2GB未満に削減できます。
代替クラウドサービスの併用
無料ストレージの組み合わせ:
- Google Drive:15GB無料
- Dropbox:2GB無料
- OneDrive:5GB無料
合計22GBの無料ストレージを確保できます。データを分散させることで効率的に管理できます。
13. Wi-Fi環境とモバイルデータでの移行の違い
Wi-Fi速度要件
推奨速度:
- 最小推奨:25Mbps
- 50GB以上の大容量バックアップ:100Mbps以上
- 5GHz Wi-Fiは2.4GHzよりも高速で推奨
注意:多くのユーザーが150Mbpsのインターネットプランでも実際には最大18Mbpsしか出ないと報告しています。
モバイルデータの制限
重要な制限事項:
- iCloudバックアップからの復元にはWi-Fiが必須
- モバイルデータでは復元できない
- クイックスタートはモバイルデータでも動作するが、大容量転送には推奨されない
1GB以上の移行には常にWi-Fiの使用を推奨します。
接続中断時の対処
クイックスタート:
- 接続が失われると完全に再起動が必要
iCloud復元:
- 中断点から再開できる場合もあるが、多くの場合再起動
安定した接続を維持するために:
- 自動Wi-Fi切り替えを無効にする
- モバイルデータをオフにしてWi-Fi使用を強制
- デバイスをルーターの近くに電源接続したまま配置
14. 古いiPhoneから新しいiPhoneへの直接転送との比較
転送速度の比較
- 直接転送(無線):約25〜50MB/秒、128GBで45〜90分
- 直接転送(USB-C/iOS 18):約60〜100MB/秒、20〜40分
- iCloud復元:約15〜30MB/秒、60〜120分
- コンピュータバックアップ/復元:約80〜150MB/秒、15〜30分
データ完全性の比較
直接転送の利点
- アプリのログイン状態をより保持しやすい
- 複雑なアプリ設定もより完全に保存
- 最新のデータを転送できる
iCloud復元の利点
- バックグラウンドダウンロードによりすぐにデバイスの使用を開始できる
- 中断に対してより信頼性が高い
- 複数のデバイスに復元可能
- 過去のバックアップから復元できる
使い分けの推奨
直接転送を選択する場合:
- アプリのログイン状態の保持が重要
- インターネット接続が限定的または遅い
- 大量のデータ(200GB以上)がある
- 即座に完全な機能が必要
iCloud復元を選択する場合:
- 古いデバイスが破損または利用不可
- 新しいデバイスをすぐに使い始めたい
- 安定した高速インターネットが利用可能
- 複数のデバイスに復元する必要がある
15. 2024-2025年の最新のiOS機能や変更点
iOS 17の移行改善点(2023年リリース、2024年現在)
主な改善:
- AirDropがインターネット経由で継続可能に(範囲外に出ても転送が完了)
- Journal アプリがiCloud同期に対応
- Advanced Data Protectionによるエンドツーエンド暗号化
iOS 18の新機能(2024年9月リリース)
USB-C有線移行
互換性のあるデバイス間(iPhone 15以降)でUSB-Cケーブルによる移行がサポートされました。
Apple Intelligence統合
iOS 18.1以降、互換性のあるデバイスでApple Intelligence機能が移行中に保持されます。
対応デバイス:
- iPhone 15 Pro/Pro Max
- iPhone 16シリーズ
プライバシー強化
- 転送中のデータに対するより強力な暗号化
- 移行プロセス中のAppleとの情報共有の削減
2025年に向けた展望
iOS 19について:
- 2025年6月9日のWWDC 2025でプレビュー予定
- 移行機能の強化が期待
Apple Intelligenceの拡大:
- 2025年を通じて段階的に言語サポートが拡大
- 対応言語:中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語
iOS、iPadOS、macOS間の移行プロセスのより良い統合も計画されています。
iCloud+の最新料金体系
2024年現在の米国での料金:
- 50GB:月額$0.99
- 200GB:$2.99
- 2TB:$9.99
- 6TB:$29.99
- 12TB:$59.99
日本を含む10カ国で2024年に価格が改定され、地域によって価格差があります。
新しいデバイス購入時の21日間無料一時ストレージは、大容量データの移行に特に有用です。
まとめ
2024-2025年のiPhone移行は、iOS 17/18の改善により以前よりも簡単で確実になりました。
適切な準備と正しい方法の選択により、データの損失なくスムーズな移行が可能です。
特に重要なポイント:
- 二要素認証の設定
- 十分なiCloudストレージの確保
- 安定したWi-Fi接続の確保
移行方法は、利用可能なデバイス、データ量、時間的制約に応じて選択してください。トラブルが発生した場合は本ガイドのトラブルシューティングセクションを参照してください。
最新のiOS機能を活用することで、より速く、より安全に、より確実なデータ移行が実現できます。
コメント