もしあなたが夜の神社で、突然頭上から砂がバラバラと降ってきたら、どう思うでしょうか?
関西地方の人々にとって、それは恐ろしい妖怪の仕業でした。
それは姿を見せずに人を驚かす「砂かけ婆(すなかけばばあ)」という妖怪の悪戯だったのです。
この記事では、日本全国で愛される謎の妖怪「砂かけ婆」について詳しくご紹介します。
基本情報

砂かけ婆(すなかけばばあ) は、奈良県や兵庫県、滋賀県に古くから伝わる妖怪です。
人に砂を振りかけて驚かす妖怪として知られ、現代では水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』で全国的に有名になりました。
砂かけ婆の基本情報
- 分類:砂をかける妖怪
- 主な出現地域:奈良県、兵庫県、滋賀県
- 出典:柳田國男『妖怪談義』、沢田四郎作『大和昔譚』
- 別名:砂ない婆(福岡県)、砂ほうり婆(滋賀県)
- 関連妖怪:砂撒き狸、砂ふらし
砂かけ婆の最大の特徴は、誰も姿を見たことがない という点です。
これは日本の妖怪の中でも珍しく、古典の絵巻にも描かれていないため、長い間その姿は謎に包まれていました。
この不思議な妖怪がどんな見た目をしているのか、詳しく見ていきましょう。
姿・見た目
砂かけ婆の姿については、非常に興味深い謎があります。
古典での姿の記録
古い文献での記述
- 誰も姿を見たことがない
- 古典の絵巻にも描かれていない
- 姿形は完全に不明
- 姿を持たない妖怪とも言われる
現代でのイメージ
水木しげるの漫画『ゲゲゲの鬼太郎』によって、現在の砂かけ婆のイメージが作られました。
水木しげる版の特徴
- 和服を着た老婆の姿
- しわくちゃな顔
- 白髪で小柄な体型
- 優しそうだが時に厳しい表情
正体についての説
古くから砂かけ婆の正体については、様々な説があります。
正体として考えられるもの
- タヌキ:最も有力な説
- イタチ:一部地域での説
- 老婆の霊:滋賀県の一部での説
- 鳥が落とす砂:現実的な解釈
この謎めいた姿こそが、砂かけ婆の最大の魅力なんですね。
それでは、この妖怪がどのような行動を取るのか見ていきましょう。
特徴
砂かけ婆には、他の妖怪とは違う独特な行動パターンがあります。
基本的な行動
砂かけ婆の最も特徴的な行動は、もちろん砂をかけることです。
典型的な行動パターン
- 人気のない場所で待機
- 人が通りかかるのを待つ
- 突然砂をバラバラとかける
- 人が驚いて振り返ると姿は見えない
- 音だけ聞こえることもある
出現場所の特徴
砂かけ婆は特定の場所に現れることが多いです。
よく現れる場所
- 神社の境内や周辺
- 人通りの少ない森の中
- 寂しい竹藪
- 古い松の木の上
- 夜道や山道
時間と季節
砂かけ婆の活動時間には一定のパターンがあります。
活動時間
- 夜間が圧倒的に多い
- 薄暗い夕方から明け方
- 特に真夜中の目撃が多い
- 季節を問わず一年中出現
砂かけの方法
地域によって、砂のかけ方に違いがあります。
砂撒き狸の場合
- 砂場で寝転んで体中に砂をつける
- 木に登って人が来るのを待つ
- 人が木の下に来ると体をふるわせる
- 体についた砂をパラパラと落とす
人への影響
砂かけ婆に遭遇した人の反応も興味深いです。
遭遇者の体験
- 驚いて振り返るが誰もいない
- ゾッとする恐怖感を味わう
- 一部では体調が悪くなることも
- 足がたたなくなるという話もある
これらの特徴から、砂かけ婆がただのいたずら好きな妖怪だということが分かりますね。
それでは、具体的にどのような伝承があるのか見ていきましょう。
伝承
砂かけ婆については、日本各地に興味深い伝承が残されています。
柳田國男の記録
民俗学者・柳田國男の『妖怪談義』に、砂かけ婆の重要な記録があります。
『大和昔譚』からの引用
- 「人淋しき森のかげ、神社のかげを通れば、砂をバラバラふりかけておどろかすといふもの」
- 「その姿見たる人なし」
- 奈良県での古い記録として貴重
関西地方の現代目撃例
京都市在住の読者から報告された興味深い体験談があります。
お宮参りでの遭遇
- お宮参りの帰りに突然砂をあびせられる
- 勇敢にも竹の棒を持って藪に飛び込む
- 「砂をかけたのは、どこのどいつやあ」と叫ぶ
- 辺りはシーンとして人の気配なし
- 足元に直径1メートルの石だけが横たわる
滋賀県草津市の「砂ほりばばあ」
草津市の追分町には、具体的な老婆の話があります。
竹藪の老婆の伝説
- 竹薮の一角に老婆が住み着く
- 通る村人に砂を投げつける
- 子どもたちが「砂ほりばばあがおるわいなぁ」と言いながら遊ぶ
- 笹を千切っては投げ合う遊びが生まれる
佐渡島の心温まる話
新潟県佐渡島には、美しい砂撒き狸の話があります。
順徳天皇と忠子内親王の話
- 妙照寺に住む老いた砂撒き狸
- 信心深く優しい性格
- 配流された順徳天皇を気遣う
- 忠子内親王が父に会いに来る時、荒れた道に砂を撒いて整える
- 砂撒きを見た人は「今日は内親王様がいらっしゃる日だ」と知る
まとめ
砂かけ婆は、日本の妖怪の中でも特に親しまれている存在です。
砂かけ婆の重要ポイント
基本情報
- 関西地方(奈良県、兵庫県、滋賀県)に伝わる砂をかける妖怪
- 古典では誰も姿を見たことがないとされる謎の存在
- 水木しげるの作品で全国的に有名になった
特徴的な行動
- 夜間に神社や森で人に砂をかけて驚かす
- 姿は見えないが音だけ聞こえることもある
- 正体はタヌキやイタチなどの小動物とする説が有力
コメント