「UbuntuでもOneDriveを使いたいけど、公式アプリがない…」「LinuxでMicrosoftのサービスって使えるの?」
そんな疑問をお持ちのUbuntuユーザーの方は多いのではないでしょうか?
実は、Ubuntuでも工夫次第でOneDriveを快適に利用できるんです。非公式のクライアントアプリやブラウザ版を活用すれば、WindowsやMacとほぼ同じように使えるようになります。
この記事では、UbuntuでOneDriveを使う様々な方法を初心者にもわかりやすく解説していきます。インストール方法から日常的な使い方まで、あなたに最適な方法が見つかるはずです。
UbuntuでOneDriveを使う方法の概要

利用可能な方法
UbuntuでOneDriveを使うには、主に4つの方法があります。
1. Webブラウザ版
- 最も簡単で安全
- インストール不要
- 機能は限定的
2. 非公式クライアント(OneDrive Client for Linux)
- コマンドライン操作
- 同期機能が充実
- 設定にやや手間がかかる
3. rcloneを使った同期
- 多数のクラウドサービスに対応
- 高度なカスタマイズが可能
- 技術的な知識が必要
4. Wine経由でWindowsアプリを動作
- Windows版OneDriveを使用
- 動作が不安定な場合がある
- 設定が複雑
推奨する方法
初心者の方には「Webブラウザ版」と「非公式クライアント」の組み合わせがおすすめです。日常的な作業はブラウザで行い、大量ファイルの同期は専用クライアントを使うという使い分けが効果的です。
この章では利用方法の概要を説明しました。次に、最も簡単なブラウザ版の使い方から見ていきましょう。
ブラウザ版OneDriveの活用
基本的な使い方
ブラウザ版は最もシンプルで確実な方法です。
アクセス方法:
- Firefoxやchromiumなどのブラウザを開く
- onedrive.live.com にアクセス
- Microsoftアカウントでログイン
- OneDriveの画面が表示される
主な機能:
- ファイルのアップロード・ダウンロード
- フォルダの作成・整理
- ファイルの共有設定
- オフィス文書の編集(Word、Excel、PowerPoint)
ファイル操作の基本
アップロード:
- 「アップロード」ボタンをクリック
- 「ファイル」または「フォルダー」を選択
- アップロードしたいファイルを選択
- 進行状況を確認して完了を待つ
ダウンロード:
- ダウンロードしたいファイルを選択
- 上部メニューの「ダウンロード」をクリック
- ブラウザのダウンロードフォルダに保存される
ブラウザ固有の設定
Firefox での最適化:
- アドオン「uBlock Origin」でOneDriveサイトを除外
- プライベートブラウジングモードは避ける
- Cookieの削除設定でOneDriveを除外
Chromium での調整:
- 通知許可設定でOneDriveを有効化
- パスワード保存機能を活用
- 同期機能でブックマークを管理
制限事項と対処法
ファイルサイズの制限:
- 単一ファイル:最大250GB
- 一度にアップロード:最大300ファイル
対処法:
- 大きなファイルは分割してアップロード
- 一括アップロードは小分けにして実行
この章ではブラウザ版の使い方を説明しました。続いて、より高機能な非公式クライアントについて解説します。
OneDrive Client for Linuxのインストール
事前準備
非公式クライアントをインストールする前に、必要なパッケージを準備しましょう。
システム更新:
sudo apt update
sudo apt upgrade
必要なパッケージのインストール:
sudo apt install curl gpg lsb-release
OneDrive Client for Linuxのインストール
方法1:OpenSuSEのリポジトリから(推奨)
- リポジトリキーの追加:
wget -qO - https://download.opensuse.org/repositories/home:/noreply/xUbuntu_22.04/Release.key | sudo apt-key add -
- リポジトリの追加:
echo 'deb https://download.opensuse.org/repositories/home:/noreply/xUbuntu_22.04/ /' | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/home:noreply.list
- パッケージリストの更新とインストール:
sudo apt update
sudo apt install onedrive
方法2:snapパッケージから
sudo snap install onedrive-abraunegg
インストールの確認
onedrive --version
バージョン情報が表示されれば、インストール成功です。
初期設定
認証の実行:
- OneDriveとの接続開始:
onedrive
- 表示されたURLをブラウザで開く
- Microsoftアカウントでログイン
- 認証コードをターミナルに入力
設定ファイルの確認:
ls ~/.config/onedrive/
認証が成功すると、設定ファイルが作成されます。
この章では基本的なインストール方法を説明しました。次に、詳しい設定とカスタマイズについて見ていきます。
詳細設定とカスタマイズ
同期フォルダの設定
同期ディレクトリの変更:
デフォルトでは ~/OneDrive
フォルダに同期されますが、変更可能です。
- 設定ファイルの作成:
mkdir -p ~/.config/onedrive
cp /usr/share/onedrive/config ~/.config/onedrive/
- 設定ファイルの編集:
nano ~/.config/onedrive/config
- 同期ディレクトリの変更:
sync_dir = "~/Documents/MyOneDrive"
選択的同期の設定
すべてのファイルを同期する必要がない場合は、選択的同期を設定しましょう。
sync_listファイルの作成:
nano ~/.config/onedrive/sync_list
同期したいフォルダを指定:
Documents/
Pictures/
Work/
除外ファイルの設定:
nano ~/.config/onedrive/skip_file
除外パターンの例:
*.tmp
*~
.DS_Store
Thumbs.db
自動起動の設定
systemdサービスの作成:
- サービスファイルの作成:
systemctl --user enable onedrive
systemctl --user start onedrive
- サービス状態の確認:
systemctl --user status onedrive
手動での自動起動設定:
Ubuntu の「自動起動するアプリケーション」に追加:
- アプリケーションメニューから「自動起動するアプリケーション」を開く
- 「追加」をクリック
- 名前:OneDrive
- コマンド:
onedrive --monitor
ログとモニタリング
同期状況の確認:
onedrive --monitor --verbose
ログファイルの場所:
~/.config/onedrive/logs/
リアルタイムログの表示:
tail -f ~/.config/onedrive/logs/onedrive.log
この章では詳細設定について説明しました。次に、より高度なツールであるrcloneの使用方法をご紹介します。
rcloneを使った同期設定

rcloneとは
rcloneは「rsync for cloud storage」と呼ばれる、様々なクラウドストレージに対応した同期ツールです。OneDriveにも対応しており、柔軟な同期設定が可能です。
rcloneのインストール
Ubuntuパッケージからのインストール:
sudo apt install rclone
最新版の直接ダウンロード:
curl https://rclone.org/install.sh | sudo bash
OneDriveの設定
rclone設定の開始:
rclone config
設定手順:
- 新しいリモートの作成を選択(n)
- 名前を入力(例:myonedrive)
- ストレージタイプでMicrosoft OneDriveを選択(番号で指定)
- client_idは空のまま Enter
- client_secretも空のまま Enter
- 認証タイプの選択(通常は1)
- ブラウザで認証を実行
基本的な同期コマンド
ダウンロード(OneDrive → ローカル):
rclone sync myonedrive: ~/OneDrive/
アップロード(ローカル → OneDrive):
rclone sync ~/Documents/ myonedrive:Documents/
双方向同期(注意して使用):
rclone bisync myonedrive: ~/OneDrive/ --resync
高度な機能
帯域制限付き同期:
rclone sync ~/Documents/ myonedrive:Documents/ --bwlimit 1M
除外パターンの指定:
rclone sync ~/Documents/ myonedrive:Documents/ --exclude "*.tmp"
差分チェック:
rclone check ~/Documents/ myonedrive:Documents/
自動同期スクリプト
同期スクリプトの作成:
nano ~/scripts/onedrive_sync.sh
スクリプト内容:
#!/bin/bash
# OneDrive 自動同期スクリプト
LOG_FILE="$HOME/.config/rclone/sync.log"
echo "$(date): 同期開始" >> $LOG_FILE
# ドキュメントフォルダの同期
rclone sync ~/Documents/ myonedrive:Documents/ --log-file $LOG_FILE
# 写真フォルダの同期
rclone sync ~/Pictures/ myonedrive:Pictures/ --log-file $LOG_FILE
echo "$(date): 同期完了" >> $LOG_FILE
実行権限の付与:
chmod +x ~/scripts/onedrive_sync.sh
この章ではrcloneの使用方法を説明しました。次に、日常的な運用での注意点について見ていきます。
日常使用での最適化と注意点
パフォーマンスの最適化
同期頻度の調整
頻繁な同期はシステムリソースを消費します。適切な間隔を設定しましょう。
OneDrive Client の場合:
- 設定ファイルで
monitor_interval
を調整 - 推奨値:300秒(5分)〜1800秒(30分)
rclone の場合:
- cronで定期実行を設定
- 一般的な間隔:1時間〜4時間
ネットワーク帯域の管理
帯域制限の設定:
# OneDrive Client の場合
onedrive --monitor --upload-only --rate-limit 1000
# rclone の場合
rclone sync ~/Documents/ myonedrive:Documents/ --bwlimit 2M
セキュリティ対策
認証情報の保護
設定ファイルには重要な認証情報が含まれています。
ファイル権限の確認:
chmod 600 ~/.config/onedrive/refresh_token
chmod 600 ~/.config/rclone/rclone.conf
暗号化の活用
rcloneでは暗号化機能を利用できます。
暗号化リモートの設定:
rclone config
# cryptタイプを選択してOneDriveリモートを暗号化
ファイル競合の対処
競合ファイルの識別
同じファイルが複数の場所で編集された場合、競合が発生します。
競合ファイルの命名規則:
document.docx
(元ファイル)document-conflict-2024-01-15.docx
(競合ファイル)
競合解決の手順:
- 両方のファイル内容を確認
- 必要な変更を統合
- 不要な競合ファイルを削除
バックアップ戦略
3-2-1 バックアップルール
重要なデータは以下のように保護しましょう:
- 3つのコピー(元データ + 2つのバックアップ)
- 2つの異なる媒体(OneDrive + ローカル)
- 1つのオフサイト保存(外部ハードディスク等)
自動バックアップスクリプト:
#!/bin/bash
# 重要ファイルのバックアップ
# タイムスタンプ付きバックアップ
DATE=$(date +%Y%m%d_%H%M%S)
BACKUP_DIR="~/Backups/onedrive_$DATE"
# OneDriveからローカルにバックアップ
rclone copy myonedrive:Important/ $BACKUP_DIR/
# 古いバックアップを削除(30日より古いもの)
find ~/Backups/ -name "onedrive_*" -mtime +30 -exec rm -rf {} \;
この章では運用面での最適化を説明しました。次に、よくあるトラブルとその解決方法をご紹介します。
トラブルシューティング
認証エラーの解決
症状:ログインできない、認証が失敗する
解決方法:
- 認証情報のリセット:
# OneDrive Client の場合
rm ~/.config/onedrive/refresh_token
onedrive --logout
onedrive
# rclone の場合
rclone config reconnect myonedrive:
- ブラウザのキャッシュクリア:
- ブラウザの設定から Cookie とキャッシュを削除
- OneDrive.com に再ログイン
同期が停止する問題
症状:ファイルの同期が途中で止まる
診断コマンド:
# プロセスの確認
ps aux | grep onedrive
# ログの確認
journalctl --user -u onedrive -f
解決方法:
- サービスの再起動:
systemctl --user restart onedrive
- 手動での強制同期:
onedrive --synchronize --verbose
- ロックファイルの削除:
rm ~/.config/onedrive/*.lock
大容量ファイルの問題
症状:大きなファイルのアップロードに失敗する
対処法:
- チャンクサイズの調整:
# rclone の場合
rclone sync ~/large_files/ myonedrive:files/ --onedrive-chunk-size 32M
- リトライ設定の調整:
rclone sync ~/large_files/ myonedrive:files/ --retries 10 --low-level-retries 10
ディスク容量不足
症状:OneDriveの容量が不足している
対処手順:
- 使用量の確認:
rclone about myonedrive:
- 不要ファイルの削除:
# 古いファイルの検索
rclone lsf myonedrive: --max-age 365d
# ゴミ箱の確認と削除
rclone delete myonedrive:/$RECYCLE.BIN --dry-run
文字化けの問題
症状:日本語ファイル名が正しく表示されない
解決方法:
- ロケール設定の確認:
locale
export LC_ALL=ja_JP.UTF-8
- OneDriveクライアントの再起動:
systemctl --user restart onedrive
- rcloneの文字コード設定:
rclone config set myonedrive encoding "Slash,LtGt,DoubleQuote,Colon,Question,Asterisk,Pipe,BackSlash,Ctl,RightSpace,RightPeriod,InvalidUtf8,Dot"
この章ではトラブル対処法を説明しました。最後に、今回の内容をまとめます。
まとめ
UbuntuでOneDriveを使用する方法は複数ありますが、用途に応じて最適な方法を選択することが重要です。
利用方法の比較:
方法 | 難易度 | 機能 | 推奨用途 |
---|---|---|---|
ブラウザ版 | ★☆☆ | 基本機能 | 軽作業・緊急時 |
OneDrive Client | ★★☆ | 自動同期 | 日常的な同期 |
rclone | ★★★ | 高機能 | 高度なカスタマイズ |
初心者向け推奨手順:
- まずブラウザ版で基本操作を習得
- OneDrive Client for Linuxで自動同期を設定
- 必要に応じてrcloneで高度な機能を活用
重要なポイント:
- 認証情報のセキュリティ管理を徹底する
- 定期的なバックアップを忘れずに実行
- ログを確認してトラブルの早期発見を心がける
- システムリソースを考慮した同期間隔の設定
今後の活用に向けて:
- 自動化スクリプトの作成で効率化
- 他のクラウドサービスとの使い分け
- チーム作業での共有機能の活用
UbuntuでのOneDrive活用は、最初の設定こそ手間がかかりますが、一度環境を整えればとても便利に使えます。あなたの作業スタイルに合った方法を見つけて、効率的なファイル管理を実現してくださいね。
LinuxでもMicrosoftのサービスを十分活用できることがお分かりいただけたと思います。快適なUbuntu + OneDriveライフをお楽しみください!
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