夜中にふと目が覚めて、枕元に長く伸びた女性の首があったとしたら…想像しただけでもゾッとしますよね。
「ろくろ首」は、そんな恐怖を体現した日本で最も有名な妖怪の一つです。
時代劇や昔話でもおなじみの存在で、多くの人が一度は耳にしたことがあるでしょう。
しかし、ろくろ首の真の恐ろしさは、単に首が伸びるという見た目の奇怪さだけではありません。
この記事では、日本全国に伝承が残る代表的妖怪「ろくろ首」について、その驚きの姿から恐ろしい特徴、全国に残る興味深い伝承、そして現代的な解釈まで、詳しくご紹介します。
ろくろ首ってどんな妖怪なの?
「ろくろ首(ろくろくび)」は、日本の妖怪の中でも特に有名で、昔話や時代劇でもよく登場する存在なんです。
ろくろ首の基本情報
- 夜になると首が飛んだり伸びたりする妖怪
- 主に女性の姿で描かれることが多い
- 日本全国に伝承が残っている
ろくろ首は、夜になると首が飛んで行ったり伸びたりする女性の妖怪です。
姿・見た目
ろくろ首の姿には2つのタイプがあります。
- 胴体から首だけが離れて飛んでいるタイプ
- 首がにゅ〜っと伸びるタイプ
元々は体と頭が別々になって、首が飛んでいる妖怪でした。
そこから首と胴体が繋がるようになり、首が伸びる妖怪となりました。
また、女性が一般的だが、男の姿でも描かれることがあります。
特徴
ろくろ首の「怖さ」は、ただ首が伸びるだけではありません。
- 夜な夜な首を飛ばしたり伸ばしたりする
- 人を襲ったり精気(せいき)を吸ったりする
- 首が飛ぶ場合、飛ばしている間に体を隠せば対処できる
- 時に、首に筋がある
- 時に、母から娘に遺伝するともいわれる
伝承
ろくろ首にまつわる話は、日本各地に伝わっています。
基本的に夜に伸びたり飛んだりする首を目撃したという話が多くあります。
『曽呂利物語』
ある夜のこと、一人の男が夜道を歩いていると、薄暗い中に奇妙なものを見つけました。それは鶏の首のようでもあり、女の首のようでもある、宙に浮いた生首だったのです。
男はその異様な光景に驚き、刀を抜いてその首を追いかけました。首は慌てたように宙を舞いながら、ある家へと逃げ込んでいきました。
男が家の外で様子を窺っていると、中から女の声が聞こえてきました。
「ああ、恐ろしい夢を見ました。刀を持った男に追いかけられて、必死に家まで逃げて、やっと目が覚めました」
その時、男は悟ったのです。あの宙に浮いていた首は、家の中で眠っている女性の魂が、夢の中で体から抜け出したものだったのだと。
『蕉斎筆記』
ある山里のお寺で、住職さんが夜中にぐっすりと眠っていました。すると突然、胸の辺りに何やら重いものがのしかかってきました。
驚いて目を覚ますと、なんと人の生首がそこにあるではありませんか。住職さんは思わずその首を手で掴み、力いっぱい投げ飛ばしました。首はどこかへ飛んでいってしまいました。
翌朝のこと、お寺で働いている下男が住職さんのところにやって来て、「申し訳ございませんが、お暇をいただきたく存じます」と頭を下げました。
住職さんが理由を尋ねると、下男は恥ずかしそうに言いました。
「昨晩、私の首がこちらに参りませんでしたでしょうか」
住職さんが「確かに来たが、投げ飛ばしてしまった」と答えると、下男は深くため息をつきました。
「実は私には抜け首の病気があるのです。眠っている間に首が体から抜け出してしまい、あちこちを飛び回ってしまいます。これ以上は皆様にご迷惑をおかけいたします」
そう言って下男は、故郷の下総国(今の千葉県辺り)へと帰っていきました。
その他の伝承
- 夜な夜な馬の精気を吸ったという話
- 添い寝した遊女が首を伸ばして油を舐めていたという話
- 何度も妻の変わる商人がろくろ首だったという話
正体
ろくろ首の正体については諸説あります。
- 魂が肉体から離れてしまう離魂病だという説:飛んでいる頭を魂だと考えています。また、エクトプラズムの類似形とも考えられています
- 首が伸びやすい生まれつきの異常体質だという説(例えば、寝て気が緩んだ時に首がだらんと伸びたりという性質など)
- 元々は飛頭蛮であったという説:飛頭蛮は、夜になると頭が耳を翼にして飛んでいく妖怪
- 特定の疾患による幻覚説
飛頭蛮は例外として、大別すれば頭を魂として捉えるものと、人間の体の異常によるものだと考えられています。
まとめ
ろくろ首は、日本の妖怪文化を代表する存在として、長い間人々に愛され、恐れられ続けてきました。
重要なポイント
- 首が飛んだり伸びたりする日本最有名の妖怪
- 人の精気を吸い取る恐ろしい能力
- 全国各地に豊富な伝承が残っている
- 魂の分離や体質異常など複数の解釈が存在
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