特別な夜に一人で外を歩いていて、遠くから何かが近づいてくる気配を感じたことはありませんか?
もしその夜が節分や大晦日のような日だったとしたら…それは夜行さん(やぎょうさん)という恐ろしい妖怪かもしれません。
夜行さんは、四国地方を中心に語り継がれてきた、特別な夜にだけ現れる妖怪です。
この記事では、夜行さんの正体から驚きの見た目、その危険な特徴、そして古代から続く特別な夜との深い関係まで、詳しくご紹介します。
夜行さんってどんな妖怪?

夜行さんとは、四国地方(特に徳島県)を中心に伝わる、特別な夜に現れる恐ろしい妖怪です。
特定の日の夜にだけ活動する妖怪として知られています。
基本的な外見の特徴
- 1つ目の鬼
- ひげが生えている
- 首なし馬に乗っている
姿は見えず杖の音だけが鳴るとされることもあります。
また、1つ目の鬼と首なし馬はセットというわけではありません。むしろ、首なし馬だけが現れる伝承の方が多いとされています。
特徴
夜行さんの最も特徴的な点は、特定の日の夜にだけ活動することです。
- 夜行日(陰陽道における忌み日)
- 大晦日(12月31日)
- 節分(2月3日頃)
- 庚申の日(60日に一度)
上記の日は妖怪たちが活動する日とされています。
そんな危ない日に夜行さんは道を徘徊し、出会った人間を投げて蹴殺します。これによって人間が夜に歩くのを戒めるそうです。
しかし、草履を頭の上に乗せて、地に伏せれば許してくれます。
また、食事のおかずについて話していると、夜行さんがにゅ〜っと手を出してくるそうです。
由来
元々、夜行日は、祭りの際の神のお出ましのことを指していたそうです。
神のお出ましは普通の人には見せられないので、関係者以外は家にこもり物忌をしました。この習慣が夜行さんの由来なのではないかという説があります。
八王子の姫

夜行さんの伝承の中でも特殊なのが八王子の話です。
昔々、八王子の滝山の丘に高月城という立派なお城がありました。
ある日のこと、敵の軍勢がこの城を攻めてきました。城は激しい戦いに包まれ、もはやこれまでと思われた時、城主の美しい姫君は愛馬にまたがって城から逃げ出しました。
しかし、敵の兵士たちに見つかってしまい、馬は無情にも首を切り落とされてしまいました。
ところが不思議なことに、首を失った馬は倒れることなく、姫君を乗せたまま風のように駆け続けました。そして天高く舞い上がり、雲の彼方へと消えていったのです。
それからというもの、満月の夜になると、首のない馬に乗った姫君の姿が八王子の空を駆け回るようになりました。
この姫の姿を見てしまった者は、必ず不幸に見舞われると言い伝えられています。
まとめ
夜行さんは、単なる恐ろしい妖怪ではなく、古来から続く日本の暦や信仰と深く結びついた存在です。
重要なポイント
- 特定の日の夜にだけ現れる妖怪
- 1つ目の鬼や首なし馬として現れる
- 四国地方を中心とした地域的な妖怪
- 夜間外出の戒めとしての役割
- 古代の神事・物忌の習慣との関連性
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