「どこが変更されたのか分からない」 「最新版と前のバージョンを見比べたい」
文書のやり取りが多い仕事や論文作成では、こうした悩みがつきものです。そんなときに便利なのが、Wordに標準搭載されている「比較機能」です。
この記事では、Wordの比較機能で2つの文書の違いを自動的に見つけ、効率よく確認・編集する方法をわかりやすく解説します。この機能を覚えると、変更点の見落としがなくなり、文書管理がぐっと楽になります。
Wordの比較機能とは何か

基本的な仕組み
比較機能とは、2つのWord文書を自動で照合し、差分(追加・削除・変更)を明確に表示してくれる便利な機能です。
人間の目では見つけにくい細かな変更も、コンピューターが正確に検出して教えてくれます。
どんな違いを見つけてくれるのか
検出できる変更の種類
- 文字の追加:新しく入力された文字
 - 文字の削除:消された文字
 - 文字の変更:置き換えられた文字
 - 書式の変更:太字、色、フォントサイズなど
 - 段落の変更:改行や段落の追加・削除
 - 図表の変更:画像や表の追加・削除・移動
 
見落としやすい変更も検出
- スペースの追加・削除
 - 改行の変更
 - 句読点の修正
 - 数字の変更(「10」→「100」など)
 
どんな場面で活用できるか
仕事での活用場面
- 報告書の校正:上司の修正内容を確認
 - 契約書の確認:法務部門の変更点をチェック
 - 提案書の改訂:クライアントの要望を反映した部分を特定
 - マニュアルの更新:改訂版での変更点を把握
 
学習・研究での活用
- 論文の推敲:指導教員の添削内容を確認
 - レポートの修正:友人からの指摘事項をチェック
 - 卒業論文の管理:章ごとの修正履歴を追跡
 
チーム作業での活用
- 共同執筆:メンバーの追加・修正内容を把握
 - 資料の共有:複数人での編集結果を統合
 - バージョン管理:最新版と過去版の違いを明確化
 
基本的な比較操作の手順
事前準備:比較する文書を用意
必要なファイル
- 元の文書:比較のベースとなるファイル(古いバージョン)
 - 変更された文書:新しいバージョンのファイル
 
ファイルの保存場所
- 両方のファイルがパソコンに保存されている必要がある
 - OneDriveやDropboxからでも比較可能
 - 開いている文書同士でも比較できる
 
ステップバイステップの操作方法
Windows・Mac共通の手順
ステップ1:校閲タブを開く
- Wordを起動
 - 上部リボンから「校閲」タブをクリック
 - 「比較」グループを確認
 
ステップ2:比較機能を起動
- 「比較」ボタンをクリック
 - ドロップダウンメニューから「比較」を選択
 - 「文書の比較」ダイアログボックスが表示される
 
ステップ3:文書を選択
- 「元の文書」欄:
- ファイルアイコンをクリック
 - 古いバージョンのファイルを選択
 - ファイル名が表示されることを確認
 
 - 「変更された文書」欄:
- ファイルアイコンをクリック
 - 新しいバージョンのファイルを選択
 - ファイル名が表示されることを確認
 
 
ステップ4:詳細設定(オプション)
- 「詳細設定」ボタンをクリック(必要に応じて)
 - 比較対象を選択:
- 書式の変更も含める
 - コメントの変更も含める
 - ヘッダー・フッターも含める
 
 
ステップ5:比較を実行
- 「OK」ボタンをクリック
 - 処理が開始される(大きなファイルは時間がかかる場合がある)
 - 比較結果が新しいウィンドウで表示される
 
比較結果の画面構成
3つのペインで構成される表示
- 左側:「すべての変更点」一覧
 - 中央:比較済み文書(変更箇所が色付きで表示)
 - 右側:元文書と変更後文書が並列表示
 
変更点一覧の活用方法
- クリックすると該当箇所にジャンプ
 - 変更の種類(追加・削除・書式変更)が表示
 - 変更者の名前も表示される(変更履歴が有効な場合)
 
比較結果の見方と理解
変更箇所の表示方法
色分けによる識別
- 赤色:削除された内容
 - 青色:追加された内容
 - 緑色:移動された内容
 - 紫色:書式が変更された内容
 
記号による表示
- 取り消し線:削除されたテキスト
 - 下線:追加されたテキスト
 - 吹き出し:コメント形式での変更説明
 
詳細な変更内容の確認
文字レベルの変更
例:「会議は10時に開始」→「会議は9時に開始」
- 「10」に取り消し線
 - 「9」に下線
 - 変更箇所だけがハイライト表示
 
段落レベルの変更
- 段落全体の追加・削除
 - 段落の移動
 - 改行位置の変更
 
書式レベルの変更
- フォントサイズの変更
 - 太字・斜体の追加・削除
 - 色の変更
 - 段落の配置変更
 
変更点の詳細情報を確認する方法
吹き出しでの詳細表示
- 変更箇所にマウスを重ねる
 - 詳細情報が表示される:
- 変更者の名前
 - 変更日時
 - 変更の種類
 
 
変更履歴パネルでの確認
- 左側の「変更点」一覧を使用
 - 各項目をクリックして詳細を確認
 - 変更の受け入れ・拒否も可能
 
変更の承諾・拒否機能
個別の変更を処理する方法
変更を承諾する場合
- 承諾したい変更箇所をクリック
 - 右クリック→「変更の承諾」
 - または「校閲」タブ→「承諾」ボタン
 
変更を拒否する場合
- 拒否したい変更箇所をクリック
 - 右クリック→「変更の拒否」
 - または「校閲」タブ→「拒否」ボタン
 
一括処理の方法
すべての変更を承諾
- 「校閲」タブ→「承諾」ボタンの下矢印
 - 「すべての変更を承諾」をクリック
 - 確認ダイアログで「はい」
 
すべての変更を拒否
- 「校閲」タブ→「拒否」ボタンの下矢印
 - 「すべての変更を拒否」をクリック
 - 元の文書の状態に戻る
 
選択的な承諾・拒否
特定の種類の変更のみ処理
- 「変更点」一覧で種類別にフィルタ
 - 書式変更のみ、削除のみなど選択的に処理
 - 効率的な校正作業が可能
 
比較機能の詳細設定

比較対象の詳細設定
「詳細設定」で調整できる項目
- 挿入と削除:文字の追加・削除を検出
 - 移動:文章の移動を検出
 - 書式設定:フォントや段落書式の変更
 - 表:表の構造や内容の変更
 - ヘッダーとフッター:ページの上下の変更
 - 脚注と文末脚注:注釈の変更
 - フィールド:差し込み印刷などの変更
 - コメント:コメントの追加・削除
 
設定の使い分け
簡易チェック(文字のみ):
- 挿入と削除のみチェック
 - 処理速度が速い
 - 大まかな変更点を把握
 
詳細チェック(すべて):
- すべての項目をチェック
 - 完全な比較を実行
 - 時間はかかるが漏れがない
 
表示設定のカスタマイズ
変更点の表示方法を変更
- 「校閲」タブ→「変更履歴のオプション」
 - 表示方法を選択:
- 「すべてのマークアップ」:すべて表示
 - 「マークアップなし」:最終版のみ表示
 - 「元の文書」:変更前の状態
 
 
色やマークの変更
- 「変更履歴のオプション」→「詳細オプション」
 - 変更の種類別に色を設定
 - マークの種類を変更
 
実用的な活用テクニック
効率的なファイル管理方法
ファイル名の付け方のコツ
日付を入れた命名例:
- 報告書_20250715_初稿.docx
 - 報告書_20250720_修正版.docx
 - 報告書_20250725_最終版.docx
 
バージョン番号を使った例:
- 企画書_v1.0.docx
 - 企画書_v1.1.docx
 - 企画書_v2.0.docx
 
フォルダ構成の工夫
プロジェクト名/
├── 01_初稿/
├── 02_第1回修正/
├── 03_第2回修正/
└── 99_最終版/
大きな文書での比較のコツ
章ごとに分けて比較
- 長い文書は章ごとにファイルを分割
 - 各章を個別に比較
 - 変更が多い章を重点的にチェック
 
比較範囲を限定
- 「詳細設定」で不要な項目を除外
 - 処理時間を短縮
 - 重要な変更に集中
 
チーム作業での活用方法
変更者の識別
- 変更履歴機能と組み合わせて使用
 - 誰がどの部分を変更したかを把握
 - 疑問点を直接確認可能
 
統合版の作成
- 複数の人からの修正を順次比較
 - 必要な変更のみ承諾
 - 最終的な統合版を作成
 
比較結果の保存と共有
比較結果の保存方法
比較文書として保存
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」
 - ファイル名に「比較結果」を含める
 - 変更履歴付きで保存される
 
PDF形式での保存
- 「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPS形式で発行」
 - コメントとマークアップを含めるかを選択
 - 印刷用や配布用に便利
 
比較結果の共有方法
メールでの共有
- 比較結果をWordファイルで保存
 - 変更点の説明を添えてメール送信
 - 受信者は変更内容を確認可能
 
クラウドでの共有
- OneDriveやSharePointにアップロード
 - 共有リンクを作成
 - チームメンバーで同時確認
 
よくあるトラブルと解決方法
比較ができない場合
ファイル形式の問題
症状:比較ボタンが選択できない 原因:対応していないファイル形式 解決法:
- .docx形式で保存し直す
 - .doc形式の場合は変換が必要
 - PDFファイルは直接比較できない
 
ファイルが開けない場合
症状:「ファイルを開けません」エラー 原因:ファイルの破損や権限不足 解決法:
- ファイルの修復を試行
 - 別の場所にコピーして再試行
 - 読み取り専用を解除
 
比較結果が表示されない
変更点が検出されない
症状:「違いが見つかりません」と表示 原因:実際に違いがない、または設定の問題 解決法:
- 詳細設定で検出項目を増やす
 - ファイルを再確認
 - 変更履歴が無効になっている可能性をチェック
 
画面表示の問題
症状:比較結果の画面が崩れる 解決法:
- Wordを再起動
 - 表示倍率を調整
 - ウィンドウサイズを変更
 
処理が遅い・フリーズする
大容量ファイルの問題
症状:比較処理に時間がかかりすぎる 対策:
- ファイルサイズを確認(10MB以上は要注意)
 - 不要な画像や図を一時削除
 - 章ごとに分割して比較
 
メモリ不足
症状:Wordがフリーズする 対策:
- 他のアプリケーションを終了
 - パソコンを再起動
 - 必要に応じてメモリ増設を検討
 
応用的な活用方法
他の機能との組み合わせ
変更履歴機能との連携
- 日常的に変更履歴を有効にして編集
 - 定期的に比較機能で全体チェック
 - 最終的にすべての変更を承諾・拒否
 
コメント機能との組み合わせ
- 比較結果にコメントを追加
 - 変更理由や確認事項を記録
 - チーム内での情報共有を促進
 
バージョン管理システムとしての活用
定期的なバックアップと比較
- 週次・月次でバックアップを作成
 - 定期的に比較して変更量を把握
 - プロジェクトの進捗管理に活用
 
品質管理への活用
- 校正前後の比較で品質をチェック
 - 修正漏れや誤修正を防止
 - 文書の完成度を客観的に評価
 
まとめ
Wordの比較機能は、複数の文書の変更点を効率よく確認できる非常に便利なツールです。
覚えておきたい基本操作
- 校閲タブ→比較→文書を選択→実行
 - 変更箇所は色分けして表示される
 - 承諾・拒否で最終版を作成
 
活用のメリット
- 変更点の見落としを防止
 - 校正作業の効率化
 - チーム作業での情報共有促進
 - バージョン管理の自動化
 
成功のポイント
- ファイル名に日付やバージョンを入れる
 - 定期的なバックアップで比較基準を作る
 - 詳細設定を使い分けて効率化
 - チーム内でのルールを統一
 
特に、校正や資料のバージョン管理においては作業時間を大きく短縮できます。使い方はとてもシンプルなので、ぜひ一度活用してみてください。
この機能を使いこなせるようになると、文書管理が格段に楽になり、品質の高い文書を効率的に作成できるようになります。まずは小さな文書から試して、徐々に活用範囲を広げていきましょう。
  
  
  
  
              
              
              
              
              

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