レポートや技術資料に**プログラムコード(ソースコード)**を貼り付けたいとき、「フォントがバラバラになってしまう」「インデントや改行が崩れる」「読みづらくて困っている」と感じたことはありませんか?
プログラミングの授業レポート、システム開発の提案書、操作マニュアルなど、コードを含む文書を作成する機会は意外と多いものです。しかし、Wordは文書作成に優れていますが、プログラムコードの見た目を保つためには、適切な方法を知っておく必要があります。
この記事では、Wordにプログラムコードをきれいに貼り付ける実用的な方法を3つ紹介し、それぞれの手順と使い分けのコツをわかりやすく解説します。読みやすく、プロフェッショナルな技術文書を作成できるようになります。
プログラムコードを貼り付ける際によくある問題

フォントの不統一問題
症状 コピー元のエディタのフォント情報がWordに持ち込まれ、文書内で複数のフォントが混在してしまいます。
具体例
def hello_world():    # このコメント部分だけ異なるフォント
    print("Hello")    # この部分も別のフォント
インデント(字下げ)の崩れ
症状 プログラムの階層構造を表すインデントが正しく表示されず、コードの構造が分からなくなります。
問題のある表示例
if condition:
print("True")     # 本来はインデントされるべき
else:
print("False")    # この行も同様
改行位置のずれ
症状 長いコード行が勝手に折り返されたり、意図しない場所で改行されたりします。
これらの問題を解決する3つの方法を、詳しく見ていきましょう。
方法1:テキストエディタ経由でのクリーンな貼り付け
この方法が適している場面
レポートや論文 学術的な文書で、コードの構造を正確に表示したい場合に最適です。
技術仕様書 システムの仕様を説明する際に、正確なコード表示が求められる場合に適しています。
社内マニュアル 開発チームが使用する手順書や操作マニュアルでの使用に向いています。
具体的な操作手順
1. プログラムコードの準備
まず、貼り付けたいプログラムコードを元のエディタからコピーします。Visual Studio Code、PyCharm、Eclipse、メモ帳など、どのエディタからでも構いません。
コピーの例
def calculate_average(numbers):
    if not numbers:
        return 0
    total = sum(numbers)
    return total / len(numbers)
# 使用例
data = [10, 20, 30, 40, 50]
result = calculate_average(data)
print(f"平均値: {result}")
2. テキストエディタでの中継作業
コピーしたコードを、いったんメモ帳やVisual Studio Codeなどのプレーンテキストエディタに貼り付けます。この作業により、元のエディタが持つ独自の書式情報が除去されます。
メモ帳を使う場合
- Windowsの「スタート」メニューから「メモ帳」を起動
 - Ctrl + V でコードを貼り付け
 - コード全体を再度選択してコピー(Ctrl + A → Ctrl + C)
 
Visual Studio Codeを使う場合
- 新しいファイルを作成(Ctrl + N)
 - 言語モードを「Plain Text」に設定
 - コードを貼り付けて再度コピー
 
3. Wordへの貼り付けと調整
テキストエディタでクリーンになったコードを、Wordに貼り付けます。
- Wordの貼り付け位置を決める コードを挿入したい場所にカーソルを置きます
 - プレーンテキストとして貼り付け Ctrl + V で貼り付けた後、表示される貼り付けオプションから「テキストのみ保持」を選択します
 - フォントの統一 貼り付けたコード全体を選択し、等幅フォントに変更します
 
4. 等幅フォントの設定
プログラムコードには等幅フォントを使用することが重要です。
推奨フォント
- Consolas:Windows標準で、読みやすく人気
 - Courier New:クラシックな等幅フォント、どの環境でも利用可能
 - MS ゴシック:日本語コメントがある場合に適している
 
フォント変更手順
- コード部分を選択(Ctrl + A で全選択も可能)
 - 「ホーム」タブの「フォント」ドロップダウンから選択
 - フォントサイズは10pt~11ptが読みやすい
 
この方法のメリット・デメリット
メリット
- 書式の混在を完全に防げる
 - インデントが正確に保たれる
 - どんなプログラミング言語でも対応可能
 - ファイルサイズが軽い
 
デメリット
- 構文ハイライト(色分け)は失われる
 - 手順がやや多い
 - 長いコードの場合は作業時間がかかる
 
方法2:Wordスタイル機能を使った統一的な整形
スタイル機能の活用メリット
Wordのスタイル機能を使えば、一度設定するだけで文書内のすべてのコード部分を統一的に整形できます。また、後から一括で変更することも可能です。
カスタムスタイルの作成手順
1. サンプルコードでスタイルを作成
まず、1つのコード例を使ってスタイルを設定します。
例として使用するコード
function greetUser(name) {
    const message = `こんにちは、${name}さん!`;
    return message;
}
2. スタイルの詳細設定
- コード部分を選択 スタイルを適用したいコード全体を選択します
 - スタイルパネルを開く 「ホーム」タブの「スタイル」グループで、右下の小さな矢印をクリックしてスタイルパネルを表示します
 - 新しいスタイルを作成 スタイルパネル下部の「新しいスタイル」ボタンをクリックします
 
3. スタイルの詳細設定
基本設定
- スタイル名:「プログラムコード」または「ソースコード」
 - スタイルの種類:「段落」
 - 基準:「標準」
 
フォント設定
- フォント:Consolas または Courier New
 - サイズ:10pt または 11pt
 - 色:黒(または濃いグレー)
 
段落設定
- 行間:1行または1.15行
 - 段落前後:6pt程度の余白
 - インデント:必要に応じて左インデント2~4pt
 
境界線と網かけ
- 背景色:薄いグレー(RGB 245, 245, 245)
 - 境界線:薄いグレーの枠線(任意)
 
4. スタイルの適用と活用
新しいコードへの適用
- コードを貼り付け
 - コード部分を選択
 - 作成した「プログラムコード」スタイルを適用
 
既存コードの一括変更 スタイルの設定を変更すると、そのスタイルを適用したすべてのコードが自動的に更新されます。
高度なスタイル設定のコツ
タブストップの設定
プログラムコードでは、タブによるインデントが重要です。
- スタイル設定の「書式」→「タブ」を選択
 - タブストップ位置を0.5cmまたは1cm間隔で設定
 - 「種類」は「左揃え」に設定
 
改ページの制御
長いコードが不適切な位置で改ページされるのを防ぐため、「段落」設定で「段落を分離しない」をチェックします。
スタイル機能のメリット・デメリット
メリット
- 文書内の統一性が保たれる
 - 後からの一括変更が簡単
 - テンプレート化して再利用可能
 - プロフェッショナルな見た目
 
デメリット
- 初期設定に時間がかかる
 - Wordの操作に慣れている必要がある
 - 構文ハイライトは実現できない
 
方法3:構文ハイライト付きオンラインツールの活用

構文ハイライトの重要性
プログラミング言語では、キーワード、変数、コメントなどを色分けして表示する「構文ハイライト」により、コードの理解が大幅に向上します。
構文ハイライトの例
- キーワード(if、for、defなど):青色
 - 文字列:”Hello World”:緑色
 - コメント:# これはコメント:グレー色
 - 数値:123、3.14:オレンジ色
 
推奨オンラインツール
Carbon(https://carbon.now.sh)
特徴
- 美しいコードスクリーンショットを生成
 - 多彩なテーマとカスタマイズオプション
 - SNS投稿にも適したデザイン
 
使用手順
- Carbon.now.shにアクセス
 - コードを入力エリアに貼り付け
 - 言語を選択(Python、JavaScript、Javaなど)
 - テーマと外観を調整
 - PNG画像としてダウンロード
 - Wordに画像として挿入
 
おすすめ設定
- テーマ:「One Light」(印刷に適している)
 - フォント:「Fira Code」または「Source Code Pro」
 - 背景:白または薄いグレー
 
Hilite.me(https://hilite.me)
特徴
- RTF(リッチテキスト)形式での出力が可能
 - シンプルで軽量
 - コピー&ペーストで使用可能
 
使用手順
- Hilite.meにアクセス
 - コードを入力
 - 言語とスタイルを選択
 - 「Highlight!」をクリック
 - 生成されたHTMLまたはRTFをコピー
 - Wordに貼り付け
 
その他の便利ツール
Prism.js Live Demo
- 軽量で高速
 - カスタムテーマの作成が可能
 
GitHub Gist
- コードの管理と共有が同時にできる
 - 埋め込み用HTMLコードを生成
 
画像として貼り付ける場合の注意点
メリット
- 構文ハイライトが完璧に再現される
 - レイアウトが崩れない
 - 見た目が非常に美しい
 
デメリット
- コードの編集ができない
 - ファイルサイズが大きくなる
 - 拡大時に画質が劣化する可能性
 - テキスト検索の対象にならない
 
最適な使用場面
- 最終的な提出資料
 - プレゼンテーション用スライド
 - 印刷物での配布資料
 - コードの修正が不要な場合
 
用途別の使い分けガイド
学術レポート・論文
推奨方法:方法1(テキストエディタ経由)
- 正確性が最重要
 - 後から修正する可能性が高い
 - 印刷品質を重視
 
設定のコツ
- フォント:Courier New(多くの環境で利用可能)
 - サイズ:10pt(読みやすさと紙面効率のバランス)
 - 行間:1.15行(適度な余白)
 
ビジネス提案書・企画書
推奨方法:方法3(構文ハイライト付き)
- 視覚的インパクトを重視
 - 技術的な詳細より概要を伝えたい
 - プレゼンテーションでも使用予定
 
設定のコツ
- テーマ:明るい背景色
 - フォント:読みやすいサンセリフ体
 - サイズ:やや大きめ(11pt以上)
 
技術マニュアル・開発ドキュメント
推奨方法:方法2(Wordスタイル)
- 統一性が重要
 - 複数人での編集が予想される
 - 定期的な更新が必要
 
設定のコツ
- スタイルテンプレートの作成
 - バージョン管理の仕組み
 - 更新履歴の記録
 
プレゼンテーション資料
推奨方法:方法3(構文ハイライト付き)
- 聴衆への視認性が最優先
 - 詳細なコード分析は不要
 - インパクトのある見た目
 
設定のコツ
- 大きめのフォントサイズ
 - 高コントラストな色使い
 - 簡潔なコード例
 
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法
インデントが消えてしまう場合
原因 Wordの自動書式設定により、先頭の空白が削除される場合があります。
解決方法
- 「ファイル」→「オプション」→「文章校正」を選択
 - 「自動修正のオプション」をクリック
 - 「入力オートフォーマット」タブで「行の始まりのスペースを削除する」のチェックを外す
 
日本語コメントの文字化け
原因 等幅フォントが日本語に対応していない場合があります。
解決方法
- MS ゴシックまたはメイリオを使用
 - 英数字部分と日本語部分で異なるフォントを使い分け
 
印刷時にコードが切れる
原因 ページ幅を超える長いコード行があります。
解決方法
- 手動で改行を挿入
 - フォントサイズを小さくする
 - 用紙を横向きに設定
 - 余白を狭く設定
 
コピー&ペーストでレイアウトが崩れる
原因 コピー元の書式情報が干渉しています。
解決方法
- 「貼り付けのオプション」で「テキストのみ保持」を選択
 - 「形式を選択して貼り付け」で「テキスト」を選択
 - メモ帳経由での貼り付けを実行
 
より美しいコード表示のための応用テクニック
背景色と枠線の効果的な使用
背景色の選択指針
印刷物の場合
- 薄いグレー(RGB 248, 248, 248)
 - 印刷時にトナーを節約できる薄さ
 
画面表示の場合
- やや濃いめのグレー(RGB 240, 240, 240)
 - コードと本文の区別が明確
 
枠線の設定
シンプルな枠線
- 色:薄いグレー
 - 太さ:0.5pt
 - スタイル:実線
 
影付きの枠線
- プロフェッショナルな印象
 - ただし印刷時は重くなる可能性
 
行番号の追加
長いコードには行番号があると便利です。
手動での追加方法
1  def fibonacci(n):
2      if n <= 1:
3          return n
4      return fibonacci(n-1) + fibonacci(n-2)
テーブル機能の活用
- 2列のテーブルを作成
 - 左列:行番号
 - 右列:コード
 
コードブロックの見出し追加
ファイル名や説明の表示例
【ファイル名:sample.py】
def hello_world():
    print("Hello, World!")
まとめ:読みやすいプログラム資料を作成しよう
Wordにプログラムコードをきれいに貼り付けるためには、用途に応じた適切な方法選択が重要です。
手法別の特徴まとめ
テキストエディタ経由(方法1)
- 正確性重視の学術文書に最適
 - 手間はかかるが確実な結果
 - 修正や編集が容易
 
Wordスタイル(方法2)
- 統一性と効率性を両立
 - チーム作業に適している
 - 長期的な文書管理に有効
 
構文ハイライト(方法3)
- 視覚的インパクトが大きい
 - プレゼンや最終資料に最適
 - 技術的な美しさを追求
 
  
  
  
  
              
              
              
              
              

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