Microsoft Wordで書類を作成していると、**「表紙や目次にはページ番号を付けたくないけど、本編からは番号を振りたい」**という場面があります。しかし、いざやろうとすると、なかなか思い通りにいかないものです。
本記事では、「Wordでページ番号を途中から付ける方法」について、初心者にもわかりやすく解説します。
なぜ途中からページ番号を振る必要があるのか?

ビジネス文書での一般的な構成
ビジネス文書や報告書、論文などでは、表紙や目次にはページ番号を表示せず、本編からページ1としてスタートするのが一般的です。これは、読み手の利便性を高めるための配慮です。
よくある文書構成パターン
ビジネス報告書:
- 表紙(会社名、タイトル、作成日)
- 目次(章立てとページ参照)
- 要約・概要(エグゼクティブサマリー)
- 本文(第1章から開始、ページ番号1~)
- 付録・参考資料
学術論文:
- 表紙(タイトル、著者、所属)
- 要旨・アブストラクト
- 目次
- 本文(序論から開始、ページ番号1~)
- 参考文献・付録
提案書・企画書:
- 表紙(提案タイトル、提案者)
- 目次
- 本文(背景・課題から開始、ページ番号1~)
- 見積もり・スケジュール
ページ番号管理の重要性
読み手にとってのメリット
ナビゲーションの向上:
- 目次との連動:本文ページと目次の番号が正確に対応
- 参照の簡便性:「5ページを参照」などの指示が正確
- 印刷時の利便性:必要なページ範囲の指定が容易
- 配布時の管理:ページ数の把握と管理が簡単
プロフェッショナルな印象:
- 体裁の統一:業界標準に準拠した文書構成
- 信頼性の向上:丁寧に作成された印象を与える
- 使いやすさ:受け手が情報を探しやすい構成
作成者にとってのメリット
文書管理の効率化:
- 修正作業の簡素化:ページ挿入・削除時の自動調整
- 目次の自動更新:ページ番号変更に伴う目次の自動修正
- 印刷設定の簡便性:本文のみの印刷指定が容易
- ファイル管理:複数バージョンでのページ数管理
Wordのセクション機能を理解しよう
セクションとは何か
Wordの「セクション」は、文書を論理的な単位に分割する機能です。各セクションは独立した書式設定を持つことができ、ページ番号、ヘッダー・フッター、ページの向き、余白などを個別に設定できます。
セクションでできること
独立した書式設定:
- ページ番号:セクションごとに異なる番号体系
- ヘッダー・フッター:セクション固有の内容設定
- ページ設定:用紙サイズ、向き、余白の個別設定
- 段組み設定:セクションごとの段数変更
柔軟な文書構成:
- 前付け部分:表紙、目次、要約など(ページ番号なしまたはローマ数字)
- 本文部分:章立ての内容(アラビア数字1から開始)
- 後付け部分:付録、参考文献など(独立した番号体系)
セクション区切りの種類
次のページから開始
用途:新しいページからセクションを開始 効果:
- 改ページが自動的に挿入される
- 新しいセクションが次のページから始まる
- ページ番号や書式を独立して設定可能
現在の位置から開始
用途:同じページ内でセクションを変更 効果:
- 改ページは挿入されない
- 段組みや余白設定のみ変更したい場合に使用
偶数ページから開始・奇数ページから開始
用途:印刷時の製本を考慮した構成 効果:
- 指定したページ(偶数または奇数)からセクション開始
- 必要に応じて空白ページが自動挿入
詳細な設定手順
ステップ1:セクション区切りの挿入
準備作業
- カーソル位置の確認
- ページ番号を開始したい直前のページの最後にカーソルを配置
- 例:目次の最後の行の末尾
- 文書構成の確認
- 表紙、目次、本文の境界を明確に把握
- どこからページ番号を開始するかを決定
セクション区切りの挿入手順
- レイアウトタブを選択
- リボンの「レイアウト」タブをクリック
- 区切りオプションの選択
- 「ページ設定」グループの「区切り」をクリック
- ドロップダウンメニューが表示される
- セクション区切りの挿入
- 「セクション区切り」から「次のページから開始」を選択
- この操作により、改ページとセクション区切りが同時に挿入される
区切りの確認方法
表示方法の変更:
- 「ホーム」タブ→「編集記号の表示/非表示」
- ¶ボタンをクリック
- セクション区切りが「===セクション区切り(次のページから開始)===」として表示
- ステータスバーでの確認
- 画面下部のステータスバーに「セクション1」「セクション2」の表示
ステップ2:ヘッダー・フッターの独立設定
リンク解除の重要性
セクション区切りを挿入した直後は、前のセクションとリンクした状態です。このリンクを解除することで、セクションごとに独立した設定が可能になります。
詳細手順
- ヘッダー・フッター編集モードへ移行
- ページ番号を表示したいセクションのページをクリック
- ヘッダーまたはフッター領域をダブルクリック
- 「ヘッダー・フッターツール」が表示される
- リンク状態の確認
- 「ヘッダー・フッターツール」の「デザイン」タブを確認
- 「前と同じヘッダー/フッター」ボタンの状態を確認
- リンクの解除
- 「前と同じヘッダー/フッター」ボタンをクリックして無効化
- ボタンがグレーアウトしていることを確認
- ヘッダー・フッター内の「前と同じ」表示が消去される
トラブルシューティング
よくある問題と解決策:
問題1:リンク解除ボタンが見つからない
- 解決策:ヘッダー・フッター編集モードに入っているか確認
- 確認方法:リボンに「ヘッダー・フッターツール」が表示されているか
問題2:リンク解除しても前のセクションと同じ表示
- 解決策:リンク解除後に新しい設定を適用
- 注意点:リンク解除は即座に反映されない場合がある
ステップ3:ページ番号の挿入と書式設定
ページ番号の挿入
- 挿入位置の選択
- 「挿入」タブ→「ヘッダーとフッター」グループ→「ページ番号」
- 表示位置の決定
- ページの上部:ヘッダー領域への配置
- 左側、中央、右側から選択
- ページの下部:フッター領域への配置
- 左側、中央、右側から選択
- ページの余白:余白領域への配置
- 現在の位置:カーソル位置への挿入
- ページの上部:ヘッダー領域への配置
- 番号スタイルの選択
- シンプルな番号、装飾付き番号、カスタムスタイルから選択
開始番号の設定
- 書式設定画面へのアクセス
- 「ページ番号」→「ページ番号の書式設定」
- または既存のページ番号を右クリック→「ページ番号の書式設定」
- 番号書式の選択
- アラビア数字:1, 2, 3…(最も一般的)
- ローマ数字(大文字):I, II, III…(序章用)
- ローマ数字(小文字):i, ii, iii…(前付け用)
- 英字(大文字):A, B, C…(付録用)
- 英字(小文字):a, b, c…(補助資料用)
- 開始番号の指定
- 「ページ番号の開始番号」で「1」を指定
- または任意の番号を設定
高度な番号設定
章番号を含むページ番号:
- 「ページ番号の書式設定」で「章番号を含める」をチェック
- 章の開始スタイルを選択(見出し1、見出し2など)
- 区切り文字を選択(ハイフン、ピリオドなど)
- 結果例:1-1, 1-2, 2-1, 2-2…
複雑な番号体系:
- 前付け:i, ii, iii…(ローマ数字)
- 本文:1, 2, 3…(アラビア数字)
- 付録:A-1, A-2, B-1, B-2…(英字-数字)
実践的な応用例

学術論文での活用
一般的な論文構成
構成 ページ番号設定
─────────────────────────────────────
表紙 番号なし
要旨 番号なし
目次 ローマ数字 i, ii, iii...
─── セクション区切り ───
序論 アラビア数字 1から開始
本論 アラビア数字 続き番号
結論 アラビア数字 続き番号
─── セクション区切り ───
参考文献 独立した番号または続き番号
付録 A-1, A-2形式
詳細設定手順
セクション1:前付け部分(目次)
- 目次の最後にセクション区切りを挿入
- ページ番号をローマ数字(i, ii, iii)で設定
- 開始番号を「i」に設定
セクション2:本文部分
- リンクを解除
- ページ番号をアラビア数字(1, 2, 3)で設定
- 開始番号を「1」に設定
セクション3:付録部分
- 本文最後にセクション区切りを挿入
- リンクを解除
- 章番号を含むページ番号設定(A-1, A-2形式)
ビジネス報告書での活用
月次売上報告書の例
構成 ページ番号設定
─────────────────────────────────────
表紙 番号なし
(会社ロゴ、タイトル)
─── セクション区切り ───
目次 番号なし
エグゼクティブサマリー 番号なし
─── セクション区切り ───
売上分析 1から開始
市場動向 続き番号
今後の戦略 続き番号
─── セクション区切り ───
詳細データ 別途A-1から開始
実装のポイント
表紙と目次の扱い:
- 表紙:完全にページ番号なし
- 目次:ページ番号なしだが、ページ参照は本文の番号
本文の開始:
- 明確にページ1から開始
- 目次での参照番号と一致
付録の管理:
- 本文とは独立した番号体系
- A-1, A-2, B-1, B-2形式で整理
技術文書での活用
システム仕様書の例
構成 ページ番号設定
─────────────────────────────────────
表紙 番号なし
改版履歴 ローマ数字 i, ii
目次 ローマ数字 続き
─── セクション区切り ───
概要 1から開始
システム構成 続き番号
機能仕様 続き番号
─── セクション区切り ───
API仕様書 API-1から開始
データベース設計 DB-1から開始
よくある問題と解決策
設定時の一般的な問題
問題1:セクション区切りがうまく挿入できない
症状:
- セクション区切りを挿入しても効果がない
- ページ番号が全体に影響してしまう
原因と解決策:
- 改ページとセクション区切りの混同
- 原因:「改ページ」を使用している
- 解決策:「セクション区切り(次のページから開始)」を使用
- 挿入位置の間違い
- 原因:途中の段落内に挿入している
- 解決策:ページの最後(段落の終わり)に挿入
- 複数のセクション区切りの重複
- 原因:同じ場所に複数の区切りが存在
- 解決策:編集記号を表示して重複を削除
問題2:リンク解除が正しく動作しない
症状:
- リンクを解除してもページ番号が前のセクションと同じ
- 設定変更が反映されない
解決策:
- 正しいセクションでの作業確認
- ステータスバーでセクション番号を確認
- 目的のセクション内で作業していることを確認
- 段階的なリンク解除
- ヘッダーとフッターを個別に解除
- 「前と同じヘッダー/フッター」ボタンを確実にクリック
- 設定の再適用
- リンク解除後に新しいページ番号設定を適用
- 既存の番号を削除してから再挿入
問題3:ページ番号が意図した番号から始まらない
症状:
- 「1」から始まらない
- 前のセクションからの続き番号になってしまう
解決策:
- 書式設定の確認
- 「ページ番号の書式設定」で開始番号を確認
- 「前のセクションから継続」ではなく「開始番号」を選択
- セクション設定の見直し
- セクション区切りが正しく挿入されているか確認
- リンクが確実に解除されているか再確認
編集時の問題
問題4:後からページを追加・削除した際の番号ずれ
対策:
- 自動更新の活用:F9キーでフィールド更新
- 目次の更新:目次を右クリック→「フィールドの更新」
- 相互参照の確認:ページ参照が正しく更新されているか確認
問題5:印刷時にページ番号が表示されない
原因と対策:
- 印刷設定の確認
- ヘッダー・フッターの印刷設定が有効か確認
- 「ファイル」→「オプション」→「表示」で印刷オプションを確認
- 余白設定の確認
- ヘッダー・フッターの余白が十分か確認
- プリンターの印刷可能領域との整合性確認
複雑な文書での問題
問題6:複数セクションでの番号管理
複雑な構成例:
セクション1:表紙(番号なし)
セクション2:目次(ローマ数字)
セクション3:本文第1部(1から開始)
セクション4:本文第2部(続き番号)
セクション5:付録A(A-1から開始)
セクション6:付録B(B-1から開始)
管理のポイント:
- 設計段階での計画
- 全体構成と番号体系を事前に設計
- セクション分割の位置を明確化
- 段階的な実装
- 一つずつセクションを設定
- 各段階での動作確認
- 文書化
- セクション構成をメモとして記録
- 修正時の参考資料として活用
高度なテクニックと応用

奇数・偶数ページでの異なる設定
見開き印刷での配慮
設定方法:
- ページ設定で「見開きページ」を有効化
- 「レイアウト」→「ページ設定」→「余白」→「見開きページ」
- 奇数・偶数で異なるヘッダー・フッター
- 「ヘッダー・フッターツール」→「奇数・偶数ページ別指定」
- ページ番号の配置調整
- 奇数ページ:右側にページ番号
- 偶数ページ:左側にページ番号
冊子印刷での最適化
ページ番号の配置:
- 外側配置:製本時に見やすい位置
- 内側配置:のど部分を避けた配置
- 上下の使い分け:用途に応じた配置選択
自動目次との連携
目次の自動生成と更新
設定手順:
- 見出しスタイルの適用
- 本文の章・節にスタイル設定(見出し1、見出し2など)
- 目次の挿入
- 「参考資料」→「目次」→「自動作成の目次」
- ページ番号の自動反映
- 目次内のページ番号は本文のページ番号と自動連動
- 内容変更時は目次を右クリック→「フィールドの更新」
高度な目次設定
複数レベルの目次:
- 章レベル(見出し1)のみの簡易目次
- 節レベル(見出し2)まで含む詳細目次
- 項レベル(見出し3)まで含む完全目次
カスタム目次:
- 特定のスタイルのみを目次に含める
- ページ番号の表示形式をカスタマイズ
- タブとリーダーの設定
マクロを使った自動化
繰り返し作業の自動化
基本的なマクロ例:
Sub SetupSections()
' セクション区切りの自動挿入
' ページ番号の自動設定
' リンク解除の自動実行
End Sub
マクロの活用場面:
- 定型文書での標準設定適用
- 複数文書での一括設定変更
- 設定ミスの防止
まとめ
Wordでページ番号を途中から付けるには、セクション機能を正しく理解し活用することが鍵となります。
重要なポイント
基本的な手順の確実な実行
- セクション区切りの正しい挿入
- ヘッダー・フッターリンクの確実な解除
- ページ番号書式の適切な設定
文書設計の重要性
- 全体構成の事前計画:セクション分割位置の決定
- 番号体系の統一:一貫した番号ルールの適用
- 読み手への配慮:分かりやすい構成と参照
トラブル回避のコツ
- 段階的な設定:一つずつ確実に設定を進める
- 定期的な確認:各段階での動作確認
- バックアップ:重要な設定前のファイル保存
用途別推奨アプローチ
学術論文
- 前付け:ローマ数字での目次番号
- 本文:アラビア数字1からの開始
- 後付け:独立した番号体系
ビジネス文書
- 表紙・目次:番号なし
- 本文:1からの明確な開始
- 付録:別途A-1形式での管理
技術文書
- 複数セクション:機能ごとの独立番号
- 参照管理:自動目次との連携
- 更新対応:フィールド更新による自動調整
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