「数値を分かりやすく伝えたい」「表では伝わりにくい」――そんな時に役立つのが「グラフ」です。実はWordでも、Excelのように本格的なグラフを作成できます。資料やレポートに視覚的な説得力を加えるために、グラフ作成は欠かせないスキルです。本記事では、Wordでグラフを作成する手順と、編集・応用のコツを初心者向けにわかりやすく解説します。
グラフが必要な場面

ビジネスシーンでの活用
報告書・プレゼン資料
- 売上推移:月別・年別の数値変化を視覚化
- 市場シェア:円グラフで競合他社との比較
- アンケート結果:顧客満足度や評価の分布
- 予算対実績:計画と実際の差を明確に表示
企画提案書
- 市場規模:業界の成長トレンドを示す
- 費用対効果:投資回収率の予測
- リスク分析:問題発生の確率と影響度
- 競合分析:他社との比較データ
学術・教育分野での活用
研究報告・論文
- 実験結果:データの傾向や相関関係
- 統計分析:調査結果の可視化
- 比較研究:複数条件での結果比較
- 時系列データ:変化の過程を追跡
教材・資料
- 学習効果:成績の向上を示す
- 人口統計:社会科学の説明
- 科学データ:理科実験の結果
- 歴史的変遷:時代ごとの変化
Wordでグラフを作成するメリット
一元管理の利点
- 文書とグラフの統合:一つのファイルで完結
- レイアウトの調整:文章との配置が簡単
- 書式の統一:文書全体のデザイン調和
- 印刷の最適化:ページ分割を考慮した配置
操作の簡便性
- 直感的な操作:Excelの知識がなくても使用可能
- 即座の反映:データ変更がすぐに表示
- テンプレート活用:定型グラフの再利用
- 共有の簡単さ:Word文書として送付可能
方法①:Wordでグラフを新規作成する
基本手順
- 「挿入」タブ →「グラフ」をクリック
- 「縦棒」「折れ線」「円」などからグラフの種類を選び、「OK」を押す
- Excel風の入力画面が表示されるので、データを入力または貼り付け
- 入力が完了すると、Wordにグラフが自動挿入される
詳細な操作手順
ステップ1:グラフの種類選択
利用可能なグラフタイプ:
縦棒グラフ:
- 集合縦棒:カテゴリー別の比較
- 積み上げ縦棒:構成要素の内訳表示
- 100%積み上げ:割合の比較
横棒グラフ:
- 集合横棒:項目名が長い場合に便利
- 積み上げ横棒:構成要素を横に表示
折れ線グラフ:
- 折れ線:時系列データの変化
- マーカー付き:データポイントを強調
- 面グラフ:量の変化を面積で表現
円グラフ:
- 円:全体に占める割合
- ドーナツ:中央に情報を追加可能
- 補助円付き:細かい項目を別円で表示
ステップ2:データ入力
データ入力画面の操作:
- 小型のExcel画面が表示される
- セルをクリックしてデータを入力
- 列・行のラベルも設定可能
- 範囲の拡張・縮小も可能
データ入力のコツ:
- 第1行:系列名(グラフの凡例になる)
- 第1列:カテゴリー名(X軸のラベル)
- 数値部分:実際のデータ値
- 空白セル:データ範囲から除外される
ステップ3:グラフの挿入確認
自動生成される要素:
- グラフエリア(背景)
- プロットエリア(データ表示部分)
- 凡例(系列の説明)
- 軸ラベル(X軸・Y軸の説明)
補足情報
データ編集の継続性
- 入力画面は小型のExcelとして動作
- グラフ挿入後も再編集可能
- 右クリック→「データの編集」で再表示
- リアルタイムでグラフに反映
データ範囲の調整
- データ入力画面で範囲の境界をドラッグ
- 不要な行・列を除外
- 新しいデータ追加も可能
方法②:既存のExcelグラフを貼り付ける

基本手順
- Excelでグラフを作成
- グラフを右クリック→「コピー」
- Wordに貼り付け
貼り付けオプションの詳細
連動ありの貼り付け
「元の書式を保持して埋め込み」:
- Excelとの連動を維持
- 元データ変更時にWord側も更新可能
- ファイルサイズが大きくなる
- 高度な編集機能が利用可能
設定手順:
- 貼り付け後の「貼り付けオプション」をクリック
- 「元の書式を保持して埋め込み(E)」を選択
- 右クリック→「データの編集」で元データを変更可能
連動なしの貼り付け
「図として貼り付け」:
- 画像として固定表示
- ファイルサイズが軽量
- データ編集は不可
- 表示速度が速い
設定手順:
- 「貼り付けオプション」で「図(U)」を選択
- 画像として扱われる
- 移動・サイズ変更のみ可能
リンク貼り付け
「リンクして貼り付け」:
- 元のExcelファイルとリンク
- 元ファイル更新時に自動反映
- 元ファイルが必要(共有時注意)
- ネットワーク環境での活用
用途別の選択指針
連動ありが適している場面
- データが頻繁に更新される
- 複数人での共同編集
- 詳細な分析が必要
- グラフの微調整が必要
連動なしが適している場面
- 最終版の固定表示
- ファイルサイズの制限
- 単独での配布
- 表示速度の重視
グラフの編集機能(Word内での詳細カスタマイズ)
基本的な編集操作
グラフ選択とツールバー
- グラフをクリックして選択
- 「グラフのデザイン」タブが表示
- 「書式」タブも利用可能
- 右クリックメニューでも詳細設定
デザインの変更
色やスタイルの変更
グラフスタイルの適用:
- 「グラフのデザイン」タブをクリック
- 「グラフのスタイル」から選択
- プリセットデザインを一括適用
色の変更:
- 「色の変更」ボタンをクリック
- カラーパレットから選択
- 系列ごとの個別色変更も可能
カスタム色の設定:
- 系列を選択(クリックで個別選択)
- 右クリック→「データ系列の書式設定」
- 塗りつぶし色を詳細設定
データ表示の改善
データラベルの追加
基本的な表示:
- 「グラフのデザイン」→「グラフ要素を追加」
- 「データラベル」を選択
- 表示位置を選択(内側、外側、中央など)
詳細なラベル設定:
- 値の表示:実際の数値
- パーセンテージ:全体に占める割合
- 系列名:データの名称
- カテゴリ名:項目の名称
凡例の調整
凡例の位置変更:
- 「グラフ要素を追加」→「凡例」
- 右、左、上、下から選択
- 「その他の凡例オプション」で詳細設定
凡例のカスタマイズ:
- フォントサイズの変更
- 色の調整
- 枠線の設定
- 背景色の変更
軸とタイトルの設定
軸タイトルの追加:
- 「グラフ要素を追加」→「軸タイトル」
- 主横軸、主縦軸を選択
- タイトルテキストを入力
軸の書式設定:
- 最小値・最大値の設定
- 目盛間隔の調整
- 数値の表示形式
- 軸の線の書式
高度な編集テクニック
系列の追加・削除
系列の追加:
- 「グラフのデザイン」→「データの編集」
- データ範囲を拡張
- 新しい列にデータを入力
- 自動的にグラフに反映
系列の削除:
- 削除したい系列をクリック
- Deleteキーで削除
- またはデータ範囲から除外
グラフタイプの変更
混合グラフの作成:
- 系列を選択
- 右クリック→「系列のグラフの種類の変更」
- 異なるグラフタイプを選択
- 例:売上は棒グラフ、利益率は折れ線
第2軸の追加
スケールの異なるデータ表示:
- 系列を選択
- 右クリック→「データ系列の書式設定」
- 「第2軸にプロット」を選択
- 右側にもう一つの軸が表示
グラフ種類別の活用方法

縦棒・横棒グラフ
効果的な使用場面
- 比較分析:複数項目の数値比較
- ランキング表示:売上順位など
- 時系列比較:年度別の変化
- カテゴリー分析:部門別実績
設定のコツ
- Y軸の範囲を適切に設定
- 棒の幅を調整して見やすく
- 色分けで情報を整理
- データラベルで正確な値を表示
折れ線グラフ
効果的な使用場面
- トレンド分析:時間経過による変化
- 予測表示:将来の予想値
- 相関関係:複数要素の関連性
- 周期性:季節変動の表示
設定のコツ
- マーカーでデータポイントを強調
- 線の太さや色で系列を区別
- 補助線で目標値を表示
- 範囲選択で特定期間を強調
円グラフ
効果的な使用場面
- 構成比率:市場シェア、予算配分
- 割合表示:アンケート結果
- 内訳分析:費用の内訳
- 比較表示:複数の円グラフで比較
設定のコツ
- 項目数は7個以下に制限
- 大きい順に時計回りで配置
- 小さい項目は「その他」でまとめる
- パーセンテージ表示で明確化
面グラフ
効果的な使用場面
- 累積表示:積み重ねた量の変化
- 構成要素:全体に占める各要素の変化
- 範囲表示:最大値と最小値の範囲
- 密度表示:データの密集度
設定のコツ
- 透明度を調整して重なりを表現
- 色の濃淡で情報の重要度を表現
- 100%積み上げで割合の変化を表示
- 補助線で基準値を明示
よくある質問と対処法
Q:「挿入後にグラフのデータを修正したい」
A:グラフをクリック →「グラフのデザイン」→「データの編集」で再入力可能です。
詳細手順:
- グラフを1回クリックして選択
- 「グラフのデザイン」タブが表示される
- 「データの編集」ボタンをクリック
- Excel風の編集画面が開く
- データを修正して画面を閉じる
Q:「グラフのデザインが崩れてしまう」
A:Word内でサイズを変更した場合、文字が重なることがあります。グラフの縦横比に注意して調整しましょう。
対処法:
- 縦横比を維持:角をドラッグしてサイズ変更
- 要素の調整:フォントサイズを縮小
- レイアウト変更:凡例の位置を調整
- 余白の確保:グラフエリアを広げる
Q:「グラフが印刷で切れてしまう」
A:ページの余白設定とグラフのサイズを確認してください。
確認ポイント:
- 「レイアウト」→「余白」で印刷可能範囲を確認
- グラフのサイズを調整
- 印刷プレビューで事前確認
- 必要に応じてページの向きを変更
Q:「Excel連動グラフが更新されない」
A:元のExcelファイルが移動された可能性があります。リンクの再設定が必要です。
解決方法:
- グラフを右クリック
- 「リンクされたワークシートオブジェクト」→「リンク」
- ファイルのパスを修正
- 「今すぐ更新」で反映確認
効果的なグラフ作成のコツ
データの準備
適切なデータ構造
基本原則:
- 1行目に項目名(ヘッダー)
- 1列目にカテゴリー名
- 数値データは統一した単位
- 空白や文字列の混在を避ける
データ整理のポイント:
- 不要な小数点以下を丸める
- 単位を統一(万円、千個など)
- 異常値(外れ値)をチェック
- データの並び順を考慮
視覚的な工夫
色の効果的な使用
色選択の原則:
- コントラスト:背景との明確な区別
- 色数制限:5色以内で統一感
- 色の意味:赤=警告、青=安定など
- カラーユニバーサル:色覚に配慮
レイアウトの最適化
見やすさの向上:
- 適切なサイズ設定
- 余白の確保
- フォントサイズの統一
- 要素のバランス調整
説得力の向上
ストーリーテリング
グラフで伝える物語:
- 現状分析:現在の状況を示す
- 問題提起:課題や変化を明示
- 解決策:改善案や目標を表示
- 効果予測:期待される結果
補助情報の追加
理解を深める要素:
- タイトルで主要メッセージを表現
- サブタイトルで詳細説明
- 注釈で特記事項を明記
- 出典で信頼性を確保
応用テクニック
複合グラフの作成
異なるデータの組み合わせ
売上と利益率の表示例:
- 売上を棒グラフで表示
- 利益率を折れ線グラフで追加
- 第2軸で利益率のスケールを設定
- 両方の関係性を一目で把握
動的グラフの作成
データの自動更新
Excelとの連携活用:
- Excelでデータテーブルを作成
- 数式でデータを自動計算
- Wordにリンク貼り付け
- 元データ更新で自動反映
テンプレート化
再利用可能な設定
標準グラフの作成:
- 会社の色やフォントで統一
- よく使うグラフ形式を保存
- クイックパーツとして登録
- 今後の資料で簡単呼び出し
まとめ
操作方法の比較
操作内容 | 方法 | 補足 |
---|---|---|
新規作成 | 挿入 → グラフ | Word内でExcel風の編集が可能 |
Excelから挿入 | コピー&貼り付け | 連動/画像どちらも選べる |
編集・装飾 | グラフのデザインタブ | ラベル・色・系列追加も簡単 |
コメント