ExcelのシートパスワードをVBAで解除する方法|編集を復活させる裏ワザ

Excel

Excel(エクセル)でシートにパスワードを設定しておくと、誤操作や意図しない編集を防げて便利です。

ただ、パスワードを忘れてしまったときや、他の人から引き継いだファイルで編集が必要なのにロックがかかっていると困ることもあります。

そんなときに役立つのが、VBA(マクロ)を使ってシート保護を解除する方法です。

この記事では、以下について分かりやすく解説します:

  • VBAでシート保護パスワードを解除するコード
  • 実際の手順と操作方法
  • 重要な注意点とリスク
  • 法的・倫理的な配慮

ただし、この方法は自分が作成したファイルまたは正当な権限を持つファイルに対してのみ使用してください。

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VBAで解除できるパスワードの種類

Excelのパスワード保護は2種類

Excelには大きく分けて2種類のパスワード保護があります。VBAで解除できるのは、そのうちの一つだけです。

解除可能:シート保護・ブック保護パスワード

  • シート保護: セルの編集やフォーマット変更を防ぐ
  • ブック保護: ワークシートの追加・削除・名前変更を防ぐ
  • 特徴: 軽い保護、VBAで解除可能
  • 用途: 誤操作防止、データ構造の保護

解除不可:ファイル暗号化パスワード

  • ファイル暗号化: ファイル自体を開けなくする
  • 特徴: 強力な暗号化(AES)、VBAでは解除不可
  • 用途: 機密情報の保護、アクセス制限

見分け方のポイント

どちらのパスワードか分からない場合の判別方法:

  • ファイルをダブルクリックした瞬間にパスワード入力画面が出る → 暗号化パスワード(VBA解除不可)
  • ファイルは開けるが、セルを編集しようとするとエラーが出る → シート保護(VBA解除可能)

VBAによる解除の仕組み

なぜVBAで解除できるのか

シート保護のパスワードは、以下の理由で比較的簡単に解除できます:

弱い暗号化方式

  • 簡単なハッシュ値: 古い暗号化方式を使用
  • 短いパスワード: 実際には数文字程度の保護
  • 総当たり攻撃に弱い: 短時間で解除可能

VBAの特権

  • 内部API使用: Excelの内部機能を直接呼び出し
  • 保護機能の迂回: 通常のユーザー操作を経由しない
  • システム権限: マクロ実行時の特別な権限

解除に必要な時間

VBAによる解除は、一般的に以下の時間で完了します:

  • 簡単なパスワード: 数秒から数分
  • 複雑なパスワード: 数分から数時間
  • 非常に強固なパスワード: 数時間から数日

シート保護を解除するVBAコード

基本的な解除コード

以下は、最も一般的なシート保護解除コードです:

Sub UnprotectSheet()
    Dim i As Integer, j As Integer, k As Integer
    Dim l As Integer, m As Integer, n As Integer
    Dim i1 As Integer, i2 As Integer, i3 As Integer
    Dim i4 As Integer, i5 As Integer, i6 As Integer
    
    On Error Resume Next
    
    For i = 65 To 66: For j = 65 To 66: For k = 65 To 66
    For l = 65 To 66: For m = 65 To 66: For i1 = 65 To 66
    For i2 = 65 To 66: For i3 = 65 To 66: For i4 = 65 To 66
    For i5 = 65 To 66: For i6 = 65 To 66
        ActiveSheet.Unprotect Chr(i) & Chr(j) & Chr(k) & _
        Chr(l) & Chr(m) & Chr(i1) & Chr(i2) & Chr(i3) & _
        Chr(i4) & Chr(i5) & Chr(i6)
        
        If ActiveSheet.ProtectContents = False Then
            MsgBox "シート保護を解除しました!"
            Exit Sub
        End If
    Next: Next: Next: Next: Next: Next
    Next: Next: Next: Next: Next: Next
    
    MsgBox "パスワードを解除できませんでした。"
End Sub

改良版の解除コード

より効率的で読みやすい改良版コードです:

Sub UnprotectSheetAdvanced()
    Dim password As String
    Dim i As Long
    
    ' よく使われるパスワードを先に試す
    Dim commonPasswords As Variant
    commonPasswords = Array("123456", "password", "excel", "admin", "1234", "")
    
    On Error Resume Next
    
    ' 一般的なパスワードを試す
    For i = LBound(commonPasswords) To UBound(commonPasswords)
        ActiveSheet.Unprotect commonPasswords(i)
        If ActiveSheet.ProtectContents = False Then
            MsgBox "シート保護を解除しました!使用されたパスワード: " & commonPasswords(i)
            Exit Sub
        End If
    Next i
    
    ' 総当たり攻撃(A-Z、0-9の1-3文字)
    For i = 65 To 90  ' A-Z
        password = Chr(i)
        ActiveSheet.Unprotect password
        If ActiveSheet.ProtectContents = False Then
            MsgBox "シート保護を解除しました!使用されたパスワード: " & password
            Exit Sub
        End If
    Next i
    
    MsgBox "パスワードを解除できませんでした。より複雑なパスワードが使用されている可能性があります。"
End Sub

実際の使用手順

ステップ1:VBAエディタを開く

  1. 保護されたExcelファイルを開く
  2. Alt + F11 を押してVBAエディタを起動
  3. VBAエディタの画面が表示されることを確認

ステップ2:標準モジュールを作成

  1. **メニューの「挿入」→「標準モジュール」**を選択
  2. 新しいモジュールウィンドウが表示される
  3. Module1などの名前が自動的に付けられる

ステップ3:コードを貼り付け

  1. 上記のVBAコードをコピー
  2. モジュールウィンドウに貼り付け
  3. コードが正しく表示されることを確認

ステップ4:マクロを実行

  1. F5キーを押すまたは「実行」→「Sub/ユーザーフォームの実行」を選択
  2. マクロが実行され、解除処理が開始される
  3. 成功すると「シート保護を解除しました!」のメッセージが表示

ステップ5:結果を確認

  1. Excelに戻る(Alt + F11で切り替え)
  2. 保護されていたセルの編集を試す
  3. 編集できれば解除成功

トラブルシューティング

よくある問題と解決法

マクロが実行されない

原因: マクロのセキュリティ設定が無効になっている

解決法:

  1. 「ファイル」→「オプション」→「セキュリティセンター」
  2. 「セキュリティセンターの設定」をクリック
  3. 「マクロの設定」で「すべてのマクロを有効にする」を選択

エラーメッセージが表示される

原因: VBAコードの記述ミスまたは対象シートの問題

解決法:

  1. コードを再度確認し、正確にコピー&ペースト
  2. 対象のシートがアクティブになっていることを確認
  3. Excelを再起動してから再実行

解除に時間がかかりすぎる

原因: 複雑なパスワードが設定されている

解決法:

  1. 改良版コードを使用する
  2. より高性能なコンピューターで実行
  3. 専用のパスワード解除ソフトを検討

法的・倫理的な注意点

使用が許可される場面

正当な使用ケース

  • 自分が作成したファイルのパスワードを忘れた場合
  • 会社で正式に編集権限を与えられたファイル
  • チームメンバーが退職して引き継いだファイル
  • 上司から明示的に許可を得た場合

使用が禁止される場面

不正使用となるケース

  • 他人の許可なくパスワードを解除する行為
  • 機密情報にアクセスする目的での使用
  • 著作権や知的財産権を侵害する行為
  • 会社の情報セキュリティポリシーに違反する行為

推奨される対応手順

  1. まずは正当な手段を試す: 作成者やファイル管理者に連絡
  2. 上司や管理者に相談: 業務上必要な場合は正式な許可を取る
  3. 使用記録を残す: 誰が、いつ、なぜ解除したかを記録
  4. セキュリティ部門に報告: 企業の場合は適切な部門に報告

セキュリティ対策とベストプラクティス

パスワード管理の改善

個人レベルでの対策

  • パスワード管理ソフトを使用: 1Password、Bitwardenなど
  • 定期的なバックアップ: 重要なファイルは複数箇所に保存
  • パスワードのドキュメント化: 安全な場所に記録を保管

組織レベルでの対策

  • アクセス権限管理: SharePointやOneDriveの権限機能を活用
  • パスワードポリシーの策定: 強固なパスワード使用を義務化
  • 定期的な監査: ファイル保護状況の確認

より強固な保護方法

暗号化パスワードの使用

シート保護ではなく、ファイル暗号化パスワードを使用することで、より強固な保護が可能です。

デジタル署名の活用

Excel 2016以降では、デジタル署名によるファイル保護も可能です。

代替手段と専用ツール

市販のパスワード解除ソフト

有名なソフトウェア

  • PassFab for Excel: 高い成功率を誇る商用ソフト
  • Excel Password Recovery: 多機能なパスワード解除ツール
  • Accent Excel Password Recovery: 企業向けの高性能ソフト

選択の基準

  • 成功率: 解除できるパスワードの種類と確率
  • 安全性: ウイルスやマルウェアの心配がない
  • サポート: 日本語対応や技術サポートの充実

オンラインサービス

注意点

  • セキュリティリスク: ファイルを外部サーバーにアップロード
  • 料金体系: 成功報酬制や月額制など様々
  • 信頼性: 運営会社の信頼性を確認

まとめ

ExcelのVBAを使えば、シート保護パスワードを効率的に解除できる場合があります。しかし、この方法には重要な制限と注意点があります。

重要なポイント

技術的な制限

  • シート保護のみ有効: ファイル暗号化パスワードには効果なし
  • 成功率に差: パスワードの複雑さによって解除時間が変わる
  • バージョン依存: Excel版によって動作が異なる場合あり

法的・倫理的な配慮

  • 正当な権限が必要: 他人のファイルを勝手に解除してはいけない
  • セキュリティポリシー遵守: 組織のルールに従う
  • 責任を持った使用: 解除後の情報管理にも注意

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