「Excelファイルにパスワードをかけたけど、解除したい」
「パスワードを忘れたファイルをどうにか開きたい」。
こういう悩みを抱えて調べていると、「zipにすればパスワードが外せる」という情報を目にしたことはありませんか?
結論からいうと、この方法には正しく使えるケースと、まったく使えないケースがあります。
この記事では、以下について分かりやすく説明します:
- Excelのパスワードの種類と違い
- ZIP操作で解除できる仕組みと限界
- 安全にパスワードを管理するポイント
間違った情報に惑わされないよう、正確な知識を身につけましょう。
Excelのパスワードは2種類ある

まず、Excelのパスワードには大きく分けて2種類あります。それぞれの特徴を理解することが重要です。
ファイルを開くときのパスワード(ブックパスワード)
ファイルを開こうとすると最初に入力を求められるパスワードです。これは以下の特徴があります:
- 強固な暗号化:AES暗号化により保護されている
- ZIP解除不可:ZIP形式に変換しても解除できない
- データ全体を保護:ファイル内容全体が暗号化される
シート保護・編集制限のパスワード
Excelの中のシートやブックの構造を守るパスワードです。こちらの特徴は:
- 軽い保護:XMLファイル内に保存される
- ZIP解除可能:ファイル構造を直接編集できる
- 編集権限を制限:セルの編集や数式の変更を防ぐ
見分け方のポイント
どちらのパスワードか分からない場合は、以下で判断できます:
- ファイルをダブルクリックした瞬間にパスワード入力画面が出る → ブックパスワード
- ファイルは開けるが、セルを編集しようとするとエラーが出る → シート保護
ZIPで解除できるのは「シート保護」のパスワードのみ
なぜZIP操作で解除できるのか
実は、Excelファイル(.xlsxや.xlsm)は中身がZIP形式でまとめられたXMLファイル群です。この仕組みを利用して解除できます。
Excelファイルの内部構造
- .xlsxファイル = 複数のXMLファイルをZIP圧縮したもの
- シート情報は
xl/worksheets/sheet1.xml
などに保存 - 保護設定もXMLタグとして記録
具体的な解除手順
以下の手順でシート保護を解除できます:
ステップ1:ファイル形式を変更
- 対象のExcelファイル(例:
test.xlsx
)を右クリック - 「名前の変更」で拡張子を
.zip
に変更(例:test.zip
) - 警告が出ても「はい」を選択
ステップ2:ZIPファイルを解凍
- ZIP解凍ソフト(Windows標準機能や7-Zipなど)で解凍
- フォルダ内に
xl
フォルダが作成される xl/worksheets/
フォルダを開く
ステップ3:XMLファイルを編集
sheet1.xml
をテキストエディタ(メモ帳など)で開く<sheetProtection
で始まる行を探す- その行全体を削除して保存
ステップ4:ファイルを復元
- 編集したファイル群をZIP形式で再圧縮
- 拡張子を
.xlsx
に戻す - Excelで開くとシート保護が解除されている
実際のXMLコード例
削除する行の例:
<sheetProtection password="CC1A" sheet="1" objects="1" scenarios="1"/>
この行を削除することで、シート保護が解除されます。
ZIPで解除できないパスワードの注意点
ブックパスワードは暗号化レベルが違う
Excelの「ファイルを開くとき」のパスワードは、強力な暗号化(AES-128またはAES-256)で守られています。
なぜ解除できないのか
- データ全体が暗号化:XMLファイル自体が読めない状態
- 解凍しても無意味:文字化けしたデータしか出てこない
- 専用ツールが必要:パスワード解析ソフトでも時間がかかる
よくある誤解と正しい情報
間違った情報
「ExcelはZIPにすればパスワードが消える」という情報をよく見かけますが、これはシート保護に限った話です。
正しい理解
- ZIPで解除可能:シート保護、ブック保護
- ZIPで解除不可能:ファイルを開くパスワード
- 解除方法が異なる:用途によって保護レベルが違う
セキュリティ上の注意点
悪意のあるソフトウェアに注意
「パスワード解除ツール」として配布されているソフトには、以下のリスクがあります:
- ウイルス感染:マルウェアが仕込まれている可能性
- 情報漏洩:ファイル内容が外部に送信される危険
- システム破損:不正なプログラムでPCが不安定になる
安全な解除方法
- 手動でのXML編集:上記の手順で自分で行う
- 正規ソフトウェア:マイクロソフト公式ツールを使用
- 専門業者への依頼:重要なファイルは専門家に相談
パスワード管理のベストプラクティス

忘れない仕組みを作る
パスワードを忘れると解除は非常に困難です。以下の管理方法がおすすめです:
デジタル管理
- パスワード管理ソフト:1Password、Bitwarden、LastPassなど
- クラウド同期:複数デバイスで共有可能
- 暗号化保存:マスターパスワード一つで管理
チーム・組織での管理
- アクセス権限管理:SharePointやGoogleドライブの機能を活用
- 共有パスワード管理:チーム用のパスワード管理ツールを使用
- バックアップ体制:複数人でパスワードを管理
物理的な管理
- 紙に記録:金庫や鍵付きキャビネットで保管
- 複数箇所に保存:リスク分散のため複数の場所に保管
- 定期的な確認:パスワードが正しく保存されているかチェック
トラブルを避けるための対策
事前の準備
- バックアップ作成:パスワードを設定する前にファイルをコピー
- テスト実行:パスワード設定後、正常に開けることを確認
- 記録の徹底:設定したパスワードをすぐに安全な場所に記録
定期的なメンテナンス
- パスワードの見直し:古いパスワードの更新
- アクセス権限の確認:不要な保護設定の削除
- ファイル整理:重要度に応じた保護レベルの調整
代替案とおすすめの対処法
シート保護を忘れた場合
手動解除(推奨)
- 上記のZIP解除手順を実行
- XMLファイルを直接編集
- 安全で確実な方法
VBAを使った解除
マクロを使って自動的に解除する方法もありますが、セキュリティ設定により実行できない場合があります。
ブックパスワードを忘れた場合
正規ソフトウェアの利用
- Microsoft公式ツール:限定的だが安全
- 商用パスワード解析ソフト:高価だが信頼性が高い
- 専門業者への依頼:重要なファイルに適している
注意すべきこと
- 無料ツールは避ける:セキュリティリスクが高い
- 時間がかかる:強固なパスワードは解除に数日〜数週間
- 成功率は低い:復元できない可能性もある
まとめ
ExcelのパスワードをZIP操作で解除できるのは、シート保護やブック保護のみであり、ファイルを開くパスワードにはまったく効果がないことを覚えておきましょう。
重要なポイント
- 保護の種類を理解:ブックパスワードとシート保護は別物
- 適切な解除方法を選択:ZIP解除は万能ではない
- セキュリティリスクに注意:怪しいソフトウェアは使わない
- 予防が最重要:パスワード管理を徹底する
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