Linux環境でネットワーク設定や接続トラブルの調査をする際に、ローカルIPアドレスの確認は最初に行うべき基本操作です。
しかし、Linuxディストリビューションやバージョンによって使うコマンドが異なる場合もあり、初心者にとっては少し混乱しがちです。
この記事では、LinuxでローカルIPアドレスを確認する方法を複数パターンで紹介し、それぞれの違いと使いどころも解説します。
ローカルIPアドレスとは?

基本的な概念
まず、ローカルIPアドレスとは何かを理解しておきましょう。
ローカルIPアドレス(プライベートIPアドレス)
- 家庭や会社などの内部ネットワークで使われるIPアドレス
- インターネット上では直接使えない、内部専用のアドレス
- ルーターが自動的に割り当てることが多い
よく使われるローカルIPの範囲
192.168.0.1
〜192.168.255.254
10.0.0.1
〜10.255.255.254
172.16.0.1
〜172.31.255.254
なぜローカルIPを確認する必要があるの?
ローカルIPアドレスを知ることで、以下のようなことができます:
- ネットワーク設定の確認:正しくネットワークに接続されているかチェック
- トラブルシューティング:接続問題の原因を調べる
- サーバー設定:Webサーバーやファイルサーバーを立てる時のアドレス設定
- セキュリティ確認:どのネットワークに接続されているかを把握
基本のコマンド:ip a(推奨)
このコマンドの特徴
ip a
は、最新のLinuxディストリビューションで推奨されているIPアドレスの確認コマンドです。
なぜ推奨されるのか?
- 最新のLinuxシステムに標準搭載されている
- 詳細な情報を見やすく表示してくれる
- 将来的にも使い続けられる
基本的な使い方
# IPアドレスを確認する基本コマンド
ip a
# より詳細な情報を表示(aはaddressの省略形)
ip address
# 特定のインターフェースのみ表示
ip a show eth0
出力結果の見方
# 実際の出力例
1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN group default qlen 1000
link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
inet 127.0.0.1/8 scope host lo
valid_lft forever preferred_lft forever
2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP group default qlen 1000
link/ether 08:00:27:12:34:56 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
inet 192.168.1.100/24 brd 192.168.1.255 scope global dynamic eth0
valid_lft 86396sec preferred_lft 86396sec
重要な部分の説明
lo
:ループバックインターフェース(127.0.0.1)eth0
:有線ネットワークインターフェースwlan0
:無線ネットワークインターフェース(WiFi接続時)inet 192.168.1.100
:これがローカルIPアドレス
インターフェース名の意味
従来の命名規則
eth0
,eth1
:有線ネットワークwlan0
,wlan1
:無線ネットワーク
新しい命名規則
ens33
,ens34
:有線ネットワークwlp2s0
:無線ネットワーク
この章のまとめ:ip a
は現在の主流で、見やすく汎用性の高いコマンドです。次に旧式の確認方法も紹介します。
旧式の確認方法:ifconfig(古い環境向け)
このコマンドの特徴
ifconfig
はかつて広く使われていたコマンドですが、現在は非推奨です。しかし、古いシステムではまだ使われていることがあります。
注意点
- 新しいLinuxディストリビューションでは標準でインストールされていない
- セキュリティ上の理由で非推奨とされている
- 古いシステムとの互換性のためにのみ使用
基本的な使い方
# すべてのネットワークインターフェースを表示
ifconfig
# 特定のインターフェースのみ表示
ifconfig eth0
# アクティブなインターフェースのみ表示
ifconfig -a
インストールが必要な場合
# Ubuntu/Debianの場合
sudo apt update
sudo apt install net-tools
# CentOS/RHELの場合
sudo yum install net-tools
# Fedoraの場合
sudo dnf install net-tools
出力結果の見方
# 実際の出力例
eth0: flags=4163<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST> mtu 1500
inet 192.168.1.100 netmask 255.255.255.0 broadcast 192.168.1.255
inet6 fe80::a00:27ff:fe12:3456 prefixlen 64 scopeid 0x20<link>
ether 08:00:27:12:34:56 txqueuelen 1000 (Ethernet)
RX packets 1234 bytes 123456 (120.5 KiB)
TX packets 567 bytes 56789 (55.4 KiB)
重要な部分の説明
inet 192.168.1.100
:ローカルIPアドレスnetmask 255.255.255.0
:サブネットマスクbroadcast 192.168.1.255
:ブロードキャストアドレス
ifconfigが使えない場合
# ifconfigコマンドが見つからない場合のエラー
bash: ifconfig: command not found
このエラーが出た場合は、上記のインストールコマンドを実行するか、ip a
コマンドを使用してください。
この章のまとめ:ifconfig
は古い環境には有効ですが、現代的な環境ではip
コマンドを使う方が安全です。次の章では、必要な情報だけを抽出する簡単な方法を紹介します。
目的の情報だけ取得:hostname -I や ip route

hostname -I コマンド
このコマンドの特徴
- ローカルIPアドレスのみを表示
- 余計な情報が表示されないためシンプル
- スクリプトでの処理に最適
基本的な使い方
# ローカルIPアドレスのみを表示
hostname -I
# 出力例
192.168.1.100
オプションの使い方
# IPv4アドレスのみ表示
hostname -i
# すべてのIPアドレス(IPv4とIPv6)を表示
hostname -I
ip route コマンド
このコマンドの特徴
- ルーティング情報からIPアドレスを確認
- 実際に使用されているアクティブなIPアドレスがわかる
- デフォルトゲートウェイの情報も取得可能
基本的な使い方
# デフォルトルートの情報を表示
ip route
# 特定の宛先へのルートを確認(推奨)
ip route get 1.1.1.1
# 出力例
1.1.1.1 via 192.168.1.1 dev eth0 src 192.168.1.100 uid 1000
出力結果の見方
src 192.168.1.100
:ここがローカルIPアドレスvia 192.168.1.1
:デフォルトゲートウェイ(ルーターのIP)dev eth0
:使用しているネットワークインターフェース
実用的な応用例
スクリプトでIPアドレスを取得
# IPアドレスを変数に格納
LOCAL_IP=$(hostname -I | awk '{print $1}')
echo "このマシンのIPアドレス: $LOCAL_IP"
複数のIPアドレスがある場合
# すべてのIPアドレスを表示
hostname -I | tr ' ' '\n'
IPv4アドレスのみを抽出
# IPv4アドレスのみを取得(IPv6を除外)
hostname -I | grep -oE '([0-9]{1,3}\.){3}[0-9]{1,3}'
この章のまとめ:情報を絞って確認したい場合は、hostname -I
やip route
がシンプルかつ実用的です。最後にまとめをチェックしましょう。
実践的な使い分けとトラブルシューティング
状況別の使い分け
日常的な確認には
# 最も推奨される方法
ip a
スクリプトや自動化には
# シンプルな出力が必要な場合
hostname -I
詳細な調査には
# ルーティング情報も含めて確認
ip route
ip a show
古いシステムでは
# やむを得ない場合のみ
ifconfig
よくあるトラブルと解決方法
IPアドレスが表示されない場合
# ネットワークインターフェースの状態を確認
ip link show
# インターフェースが down の場合は up にする
sudo ip link set eth0 up
ループバック(127.0.0.1)しか表示されない場合
# DHCPクライアントを再起動
sudo dhclient eth0
# または NetworkManager を再起動
sudo systemctl restart NetworkManager
複数のIPアドレスが表示される場合
# アクティブなIPアドレスのみを確認
ip route get 8.8.8.8 | grep src
セキュリティ上の注意点
IPアドレス情報の取り扱い
- IPアドレスは機密情報として扱う
- ログファイルや設定ファイルに記録する際は注意
- 外部との通信では不要な情報を送信しない
権限について
- 基本的なIP確認には管理者権限は不要
- ネットワーク設定の変更には
sudo
が必要 - セキュリティログを確認する習慣をつける
その他の便利なコマンド

ネットワーク接続の確認
# インターネット接続をテスト
ping -c 4 8.8.8.8
# ローカルネットワーク内の他のデバイスをテスト
ping -c 4 192.168.1.1
ネットワーク統計情報
# ネットワークの統計情報を表示
ip -s link
# より詳細な統計
cat /proc/net/dev
DNS設定の確認
# DNSサーバーの設定を確認
cat /etc/resolv.conf
# 名前解決のテスト
nslookup google.com
まとめ
LinuxでローカルIPアドレスを確認するには、以下の方法があります:
コマンド比較表
コマンド | 特徴 | 推奨度 | 用途 |
---|---|---|---|
ip a | 最新環境向け、詳細情報あり | ◎ | 日常的な確認 |
ifconfig | 古い環境用、要インストール | △ | 古いシステムのみ |
hostname -I | IPだけ簡単に確認 | ○ | スクリプト処理 |
ip route get | 使用中のアドレス確認 | ○ | ルーティング調査 |
推奨される使い方
基本的な確認:ip a
コマンドを使用 自動化・スクリプト:hostname -I
を使用 トラブルシューティング:ip route
とip a
を組み合わせ
重要なポイント
- 説明と例を分けて理解:まずコマンドの意味を理解してから実行
- 環境に応じた選択:使用しているLinuxディストリビューションに適したコマンドを選ぶ
- セキュリティ意識:IPアドレス情報は適切に管理する
- トラブル対応力:複数の方法を知っておくことで問題解決力が向上
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