デザインの仕事や印刷の入稿データでよく使われるEPSファイル。
Macでダウンロードしたはいいものの、いざ開こうとすると困ってしまった経験はありませんか?
よくある悩みとして、
- 「ダブルクリックしても正しく表示されない」
- 「プレビューで開けるけど、これで大丈夫?」
- 「無料でEPSを編集できるアプリはある?」
- 「仕事で使うデータだから、正確に開きたい」
そんな疑問を持つ人は多いはずです。
EPSは特殊な画像ファイル形式なので、普通のプレビューや画像ビューアではうまく表示できない場合があります。
この記事では、Mac初心者の方にもわかりやすく、EPSファイルを開く方法を目的別に詳しく解説します。
そもそもEPSファイルとは?

EPSの基本知識
EPS(イーピーエス)はEncapsulated PostScriptの略で、印刷やDTP(デスクトップパブリッシング)で多く使われるベクター形式のファイルです。
EPSファイルの特徴
メリット:
- 拡大縮小しても画質が劣化しない:ベクターデータのため
- 印刷品質が高い:高解像度での出力に対応
- カラーモード保持:CMYK、RGB、特色などの情報を保持
- フォント情報も含む:テキストのレイアウトが正確
- プラットフォーム非依存:WindowsでもMacでも使用可能
デメリット:
- ファイルサイズが大きい:詳細な情報を含むため
- 専用ソフトが必要:一般的な画像ビューアでは完全に表示できない
- 編集の制限:適切なソフトがないと編集困難
EPSファイルはどんな場面で使われる?
印刷・出版業界
- ロゴデータ:会社のロゴや商品ロゴ
- イラスト:書籍や雑誌の挿絵
- 地図・図表:技術書や学術論文の図版
デザイン業界
- 名刺・チラシ:印刷用のデザインデータ
- パッケージデザイン:商品パッケージの展開図
- 看板・サイン:大型印刷物のデザイン
Web・デジタル
- アイコン:拡大縮小が必要なUI素材
- ロゴ:さまざまなサイズで使用するブランドロゴ
なぜEPSファイルは開きにくいのか?
EPSファイルが開きにくい理由は以下の通りです:
- PostScript言語:プリンター制御言語で記述されている
- 複雑な構造:ベクター情報、フォント、色情報などが複合
- 専用解釈:PostScriptを理解できるソフトが必要
- セキュリティ:実行可能コードを含む場合がある
Macでの標準的な開き方

プレビュー.appで開く方法
Macには標準で「プレビュー.app」が入っており、多くのEPSファイルをダブルクリックするとこれで開くことができます。
開く手順
- FinderでEPSファイルを見つける
- ダブルクリックするか、右クリック→「このアプリケーションで開く」→「プレビュー」
- しばらく待つと画像として表示される
プレビューでの表示の特徴
できること:
- 基本的な確認:画像の内容を確認
- 拡大・縮小:表示サイズの変更
- 回転:90度単位での回転
- 簡単な注釈:テキストや図形の追加
できないこと:
- ベクター編集:線やパスの編集
- レイヤー操作:レイヤーの表示・非表示
- フォント編集:テキストの内容変更
- 色分解:CMYK分解での確認
表示される品質について
プレビューでは、EPSファイルが**ラスタライズ(画像化)**されて表示されます:
- 解像度:通常72〜150dpiで表示
- 品質:画面確認には十分、印刷には不向き
- 色再現:RGB変換されるため、印刷色と異なる場合あり
プレビューで開けない場合の対処法
エラーメッセージ別の対処法
「ファイルが破損しているか、プレビューで認識できません」
- 原因:複雑なPostScriptコードが含まれている
- 対処:他のアプリケーションで開く
「ファイルを開けませんでした」
- 原因:ファイル形式が正しくない、または破損
- 対処:ファイルの再ダウンロード、または送信元に確認
真っ白に表示される
- 原因:リンク画像が見つからない、フォント不足
- 対処:必要なフォントのインストール、画像ファイルの確認
代替手段
- 他のアプリケーションで開く
- ファイル形式を変換する
- 作成者に別形式での提供を依頼
無料でEPSファイルを開く方法

Inkscape(インクスケープ)
Inkscapeは無料で使えるベクター編集ソフトで、EPSファイルの読み込みと編集が可能です。
インストール方法
- 公式サイトからMac版をダウンロード
- DMGファイルをマウントしてApplicationsフォルダにドラッグ
- 初回起動時:「開発元が未確認」の警告が出る場合は、「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」で許可
使用方法
- Inkscapeを起動
- **「ファイル」→「開く」**からEPSファイルを選択
- インポート設定で解像度やページサイズを指定
- **「OK」**をクリックして読み込み
Inkscapeでできること
- ベクター編集:パスの編集、ノードの操作
- テキスト編集:文字の変更、フォントの変更
- 色変更:塗りや線の色の変更
- レイヤー管理:レイヤーの表示・非表示
- 形式変換:SVG、PDF、PNGなどへの変換
注意点
- フォント:元のフォントがない場合は代替フォントに置き換わる
- 複雑な効果:一部の効果は正しく表示されない場合がある
- 日本語対応:日本語フォントの扱いに注意が必要
GIMP
GIMPはフォトレタッチソフトですが、EPSを画像として開くことが可能です。
インストール方法
- 公式サイトからMac版をダウンロード
- DMGファイルをマウントしてインストール
- Ghostscriptも必要(EPSファイル処理のため)
使用方法
- GIMPを起動
- **「ファイル」→「開く」**からEPSファイルを選択
- インポート設定で解像度とサイズを指定
- **「インポート」**をクリック
GIMPでできること
- 画像編集:色調補正、レタッチ
- フィルター効果:ぼかし、シャープなど
- レイヤー編集:レイヤーの追加・削除
- 形式変換:JPEG、PNG、TIFFなどへの変換
制限事項
- ベクター情報の消失:画像化されるため、後からベクター編集不可
- 解像度の制限:インポート時に決定され、後から変更困難
- テキストの編集不可:文字は画像として扱われる
LibreOffice Draw
LibreOffice Drawは無料のドロー系ソフトで、EPSファイルの読み込みが可能です。
インストール方法
- LibreOffice公式サイトからダウンロード
- 日本語版を選択してインストール
- Drawを選択して起動
使用方法
- LibreOffice Drawを起動
- **「ファイル」→「開く」**からEPSファイルを選択
- フィルターで「EPS」を選択
- **「開く」**をクリック
特徴
- ビジネス文書:プレゼンテーション資料への挿入に便利
- 基本的な編集:移動、回転、サイズ変更
- 日本語対応:メニューが日本語で使いやすい
本格的な編集:Adobe Illustrator

Illustratorが最適な理由
EPSファイルは本来Adobe Illustratorで開くことを前提としたデータ形式です。
Illustratorの優位性
- 完全互換性:EPSファイルを100%正確に表示
- フォント管理:不足フォントの警告と代替
- レイヤー保持:レイヤー構造をそのまま維持
- 印刷対応:CMYK、特色、オーバープリントなどの設定
- プロ仕様:商用印刷での標準ソフト
利用方法
- Creative Cloudに登録
- Illustratorを選択してインストール
- EPSファイルをダブルクリックまたは「ファイル」→「開く」
料金体系
- 単体プラン:月額2,728円(年間契約)
- Creative Cloud:月額6,248円(全アプリ利用可能)
- 学生割引:大幅な割引あり
- 無料体験:7日間の無料トライアル
Illustratorでの作業の流れ
基本的な開き方
- Illustratorを起動
- **「ファイル」→「開く」**からEPSファイルを選択
- フォント警告が出た場合は適切に対処
- リンク画像の確認と再リンク
編集作業
- オブジェクトの選択:ダイレクト選択ツール
- 色の変更:スウォッチパネルで色調整
- テキスト編集:文字ツールで直接編集
- レイヤー管理:レイヤーパネルで表示制御
保存・書き出し
- AI形式:編集可能な形式で保存
- PDF:印刷用データとして書き出し
- SVG:Web用ベクターとして書き出し
- PNG/JPEG:画像として書き出し
EPSファイルを他の形式に変換する方法

PDFに変換する方法
ターミナルを使った変換
Macには標準でpstopdfコマンドが入っています。
手順:
- **「アプリケーション」→「ユーティリティ」→「ターミナル」**を起動
- cdコマンドでEPSファイルのあるフォルダに移動
cd /Users/ユーザー名/Desktop
- pstopdfコマンドで変換
pstopdf input.eps -o output.pdf
メリット:
- 無料:追加ソフト不要
- 高品質:ベクター情報を保持
- 簡単:コマンド一つで変換
デメリット:
- コマンドライン:初心者には難しい
- エラー対応:問題が起きた時の対処が困難
GUI アプリケーションでの変換
Automator を使った方法:
- **「アプリケーション」→「Automator」**を起動
- **「アプリケーション」**を選択
- **「PDFとして保存」**アクションを追加
- 保存してアプリケーション化
SVGに変換する方法
Inkscapeを使った変換
- InkscapeでEPSファイルを開く
- 「ファイル」→「名前を付けて保存」
- 形式で「SVG」を選択
- **「保存」**をクリック
オンライン変換サービス
- CloudConvert:高品質な変換
- Convertio:操作が簡単
- Online-Convert:多様な形式に対応
注意点:
- セキュリティ:機密データは避ける
- 品質:変換品質にばらつきがある
- ファイルサイズ:制限がある場合がある
画像形式(PNG、JPEG)への変換
プレビューアプリでの変換
- プレビューでEPSファイルを開く
- 「ファイル」→「書き出す」
- 形式でPNGまたはJPEGを選択
- 品質設定を調整して保存
注意点
- 解像度:用途に応じて適切に設定
- 透明度:PNGは透明度対応、JPEGは非対応
- 色空間:RGB変換されるため印刷色と異なる
よくあるトラブルと解決法

開けない場合の対処法
ファイルが破損している場合
症状:
- どのアプリケーションでも開けない
- エラーメッセージが表示される
対処法:
- ファイルの再ダウンロード
- 送信元に確認
- 別の形式での提供依頼
フォントが不足している場合
症状:
- 文字が□や別のフォントに置き換わる
- 「フォントが見つかりません」警告
対処法:
- 必要フォントのインストール
- 代替フォントの選択
- フォント埋め込み版の依頼
色が正しく表示されない場合
症状:
- 色が薄い、または濃い
- 全体的にくすんでいる
原因と対処:
- 色空間の違い:CMYK→RGB変換による色の変化
- モニターの設定:カラープロファイルの確認
- 印刷用データ:印刷時の色で確認が必要
パフォーマンスの問題
開くのに時間がかかる場合
原因:
- ファイルサイズが大きい
- 複雑な図形が多い
- MacのスペックPCが不足
対処法:
- メモリの増設
- 不要なアプリケーションの終了
- 簡略化された版の依頼
表示が重い場合
対処法:
- 表示品質を下げる
- 一部のレイヤーを非表示
- 作業用の軽いファイルを作成
セキュリティの注意点
PostScriptの実行リスク
注意点:
- 実行可能コード:EPSファイルにはコードが含まれる場合がある
- セキュリティホール:古いソフトでは脆弱性のリスク
対策:
- 信頼できるソースからのファイルのみ開く
- ソフトウェアの更新:最新版を使用
- ウイルスチェック:セキュリティソフトでスキャン
目的別:最適な方法の選び方

確認だけしたい場合
おすすめの方法
- プレビューアプリ:最も簡単
- PDF変換:より高品質で確認
- オンライン変換:ソフトのインストール不要
選び方のポイント
- 時間:すぐに確認したい→プレビュー
- 品質:正確に確認したい→PDF変換
- 環境:ソフトを入れたくない→オンライン
簡単な編集をしたい場合
おすすめの方法
- Inkscape:無料で本格的
- LibreOffice Draw:簡単な操作
- GIMP:画像として編集
編集内容別の選択
- 色の変更:Inkscape
- テキストの修正:Inkscape
- 画像の合成:GIMP
- レイアウト調整:LibreOffice Draw
本格的な編集・印刷用途
必要なソフトウェア
- Adobe Illustrator:業界標準
- Affinity Designer:買い切り版の代替
- CorelDRAW:Windows互換性重視
選び方のポイント
- 予算:Illustratorは高価だが最も確実
- 用途:印刷用途なら Illustrator が必須
- 継続性:長期利用するかどうか
まとめ:自分に合った方法を選ぼう
用途別おすすめ方法
用途 | おすすめアプリ | 料金 | 難易度 |
---|---|---|---|
内容確認 | プレビュー | 無料 | ★☆☆ |
簡単編集 | Inkscape | 無料 | ★★☆ |
本格編集 | Illustrator | 有料 | ★★★ |
形式変換 | ターミナル | 無料 | ★★☆ |
重要なポイント
無料で始めるなら
- プレビューアプリで内容確認
- 必要に応じてInkscapeで編集
- PDF変換で高品質確認
仕事で使うなら
- Adobe Illustratorの導入を検討
- フォント管理を徹底
- 印刷会社との連携を重視
トラブル回避のために
- 事前のファイル確認
- 必要ソフトの準備
- バックアップの作成
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