Excelを使っていると、
「ここは編集されたくない」
「スクロールしてもこの行は見えるようにしたい」
と思ったことはありませんか?
それを実現するのが、セルをロック(保護)する機能とセルを固定(ウィンドウ枠固定)する機能です。
似ているようで役割が全く違うこの2つについて、初心者の方にもわかりやすく、何が違うのか、どうやって設定するのか、注意点は何かを順番に解説します。
これを読めば、Excelの資料作成や共有がぐっと安全で効率的になりますよ。
セルロックと固定の違いを理解しよう

まず最初に、この2つの機能の違いを明確にしておきましょう。
セルロック(保護)の目的
- 誤入力や上書きを防ぐ
- 計算式を守る
- 重要なデータを保護する
- 共有ファイルでの編集制限
セル固定(ウィンドウ枠固定)の目的
- 見出し行を常に表示
- スクロール時の視認性向上
- 大量データの作業効率アップ
- データの位置関係を把握しやすくする
どちらも「セル」という言葉が使われますが、機能は全く別物です。
セルのロック(保護)機能

セルロックとは何か
Excelでいう「セルのロック」は、特定のセルを編集できないようにする機能です。
例えば、計算式を入れている部分や、見積書の単価欄などをロックしておくことで、間違って上書きされるのを防げます。
セルロックの具体的な活用例
ビジネスシーンでの活用
- 見積書作成:合計金額のセルをロックし、入力担当者には数量や単価だけを入力してもらう
- 売上管理表:計算式が入った合計欄をロックして、データ入力者が誤って削除するのを防ぐ
- 請求書テンプレート:税率や計算式をロックして、金額計算の間違いを防ぐ
教育現場での活用
- 成績表:平均点や順位の計算セルをロックして、学生が変更できないようにする
- 課題テンプレート:問題文や採点基準をロックして、回答欄だけを編集可能にする
セルをロックする手順
セルのロックは少し複雑な手順が必要です。
なぜなら、Excelではデフォルトですべてのセルが「ロック対象」に設定されているからです。
手順1:全体のロックを解除する
- すべてのセルを選択
Ctrl + A
を押してシート全体を選択- または左上の行番号と列番号が交わる部分をクリック
- セルの書式設定を開く
- 右クリックして「セルの書式設定」を選択
- または
Ctrl + 1
を押す
- 保護タブでロックを解除
- 「保護」タブをクリック
- 「ロック」のチェックを外す
- 「OK」をクリック
手順2:ロックしたいセルを設定する
- ロックしたいセルを選択
- 計算式が入っているセルや、変更されたくないセルを選択
- 複数範囲を選択する場合は
Ctrl
を押しながらクリック
- 再度ロック設定をする
- 右クリック→「セルの書式設定」
- 「保護」タブ→「ロック」にチェックを入れる
- 「OK」をクリック
手順3:シート保護を有効化する
- 校閲タブを開く
- リボンの「校閲」タブをクリック
- シートの保護を実行
- 「シートの保護」ボタンをクリック
- パスワードを設定(任意ですが推奨)
- 必要に応じて許可する操作を選択
- 「OK」をクリック
ロック機能の詳細設定
パスワード設定のコツ
- 覚えやすく、推測されにくいものを選ぶ
- 英数字を組み合わせる(例:Excel2024!)
- パスワードは安全な場所に記録しておく
許可する操作の選択
シート保護時に以下の操作を個別に許可できます:
- セルの選択:ロックされたセルを選択可能にする
- セルの書式設定:フォントや色の変更を許可
- 行の挿入・削除:データ行の追加・削除を許可
- 列の挿入・削除:列の追加・削除を許可
- オートフィルター:フィルター機能の使用を許可
セルロック解除の方法
通常の解除手順
- 「校閲」タブ→「シート保護の解除」をクリック
- パスワードを入力(設定している場合)
- 「OK」をクリック
パスワードを忘れた場合
残念ながら、Excelのパスワードを忘れた場合の公式な回復方法はありません。事前にパスワードの記録・管理を徹底しましょう。
セルの固定(ウィンドウ枠固定)機能

セル固定とは何か
Excelの「セル固定(ウィンドウ枠の固定)」は、シートをスクロールしても特定の行や列を常に表示させる機能です。
大量のデータを扱うときに、「今どの項目のデータを見ているのかわからない…」といったストレスをなくせます。
セル固定の具体的な活用例
データ分析での活用
- 売上データ:商品名の列を固定して、横スクロール時も商品が識別できる
- 顧客リスト:ヘッダー行を固定して、大量の顧客データでも項目名がわかる
- 在庫管理表:商品コードの列を固定して、在庫数をチェックしやすくする
報告書作成での活用
- 月次レポート:部署名の列を固定して、各部署の数値を比較しやすくする
- 予算管理表:費目の行を固定して、月別の予算執行状況を確認しやすくする
セル固定の種類と設定方法
先頭行の固定(最も一般的)
使用場面:1行目にヘッダー(項目名)がある場合
手順:
- 「表示」タブをクリック
- 「ウィンドウ枠の固定」をクリック
- 「先頭行の固定」を選択
先頭列の固定
使用場面:A列に重要な識別情報(商品名、顧客名など)がある場合
手順:
- 「表示」タブをクリック
- 「ウィンドウ枠の固定」をクリック
- 「先頭列の固定」を選択
複数行・複数列の固定(カスタム固定)
使用場面:複数の行や列を固定したい場合
手順:
- 固定したい範囲の右下のセルを選択
- 例:1〜2行目とA〜B列を固定したい場合は「C3」を選択
- 「表示」タブ→「ウィンドウ枠の固定」→「ウィンドウ枠の固定」
固定の解除方法
- 「表示」タブをクリック
- 「ウィンドウ枠の固定」をクリック
- 「ウィンドウ枠固定の解除」を選択
セル固定の効果的な使い方
データサイズに応じた使い分け
- 小さなデータ(50行以下):固定なしでも十分
- 中規模データ(50〜500行):先頭行の固定が効果的
- 大規模データ(500行以上):先頭行と先頭列の両方を固定
画面サイズを考慮した設定
- 大きなモニター:複数行・列の固定も有効
- 小さな画面(ノートPC):必要最小限の固定に留める
実践的な活用テクニック

セルロックと固定の組み合わせ使用
多くの場合、この2つの機能は一緒に使うと効果的です。
実用例:売上管理表の作成
- データ入力範囲以外をロック
- 計算式セル(合計、平均など)
- ヘッダー行(項目名)
- 固定値(税率、単価など)
- 見出しを固定
- 1行目のヘッダーを固定
- A列の商品名を固定
- 最終的な設定
- シート保護でロックを有効化
- パスワード設定で安全性を確保
段階的な設定手順(推奨方法)
ステップ1:データ構造の確認
- どの部分を編集可能にするか決める
- どの行・列を固定するか決める
ステップ2:固定設定から実施
- まずウィンドウ枠固定を設定
- 作業しながら調整
ステップ3:ロック設定を実施
- 編集不可部分をロック
- シート保護を有効化
よくある問題と解決方法

セルロック関連のトラブル
問題:ロックが効かない
原因:シート保護が有効になっていない 解決方法:「校閲」タブ→「シートの保護」を実行
問題:すべてのセルが編集できない
原因:全セルがロック状態でシート保護を有効化した 解決方法:シート保護を解除→全セルのロックを解除→必要部分のみロック→再度シート保護
問題:一部のセルだけロックできない
原因:結合セルや特殊書式が影響している 解決方法:セルの結合を解除してから再設定
セル固定関連のトラブル
問題:固定位置がずれる
原因:行や列の挿入・削除後に固定位置が変わった 解決方法:一度固定を解除してから再設定
問題:複数シートで固定が効かない
原因:ウィンドウ枠固定はシートごとの設定 解決方法:各シートで個別に設定が必要
問題:印刷時に固定が反映されない
原因:ウィンドウ枠固定は画面表示のみの機能 解決方法:印刷時は「ページレイアウト」→「印刷タイトル」を使用
その他のよくある質問
Q:ロックと固定は同時に使える?
**A:はい、問題なく併用できます。**ロックは編集制限、固定は表示位置の制御なので、同じシートで一緒に使うケースが多いです。
Q:他の人とファイル共有するときの注意点は?
A:以下の点に注意してください:
- パスワードを共有相手に伝える方法を決める
- 編集権限の範囲を事前に説明する
- バックアップファイルを作成しておく
Q:マクロ(VBA)でロック設定はできる?
**A:はい、VBAを使って自動化できます。**大量のファイルに同じ設定を適用する場合に有効です。
バージョン別の操作方法

Excel 2019 / 2021 / Microsoft 365
基本的な操作は本記事の手順と同じです。リボンの位置やデザインが若干異なる場合があります。
Excel 2016以前
「校閲」タブの名称が「レビュー」の場合があります。機能は同じです。
Excel for Mac
基本操作は同じですが、一部ショートカットキーが異なります:
- セルの書式設定:
Cmd + 1
- 全選択:
Cmd + A
まとめ
セルロック(保護)のポイント
- 目的:誤入力や数式破壊を防ぐ
- 設定手順:全ロック解除→個別ロック→シート保護
- 活用場面:共有ファイル、テンプレート作成、重要データ保護
セル固定(ウィンドウ枠固定)のポイント
- 目的:大量データでも見出しを見失わない
- 設定方法:表示タブ→ウィンドウ枠の固定
- 活用場面:データ分析、一覧表の閲覧、報告書作成
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