Ubuntuを使っていて、こんな困った経験はありませんか?
- 大きなファイルをダウンロード中に勝手にスリープして止まってしまった
- リモートで作業中にパソコンがスリープに入って接続が切れた
- 長時間の処理をしているのに途中でスリープしてしまう
こんなとき、スリープ機能を一時的に止めることができれば、安心して作業を続けられますよね。
この記事では、Ubuntuでスリープを無効にする方法を、初心者の方でもわかりやすく解説します。
コマンドを使った簡単な方法から、しっかりとした設定変更まで、状況に応じて使い分けられるように説明していきます。
スリープを無効にする前に知っておきたいこと

スリープとはなに?
スリープとは、パソコンの電力消費を抑えるために、画面を暗くしたり、ハードディスクを止めたりする機能です。
しばらく操作しないと自動的にスリープ状態になります。
スリープが起こるタイミング
- 一定時間操作がないとき(通常15分〜30分)
- ノートパソコンの蓋を閉じたとき
- 電源ボタンやスリープキーを押したとき
- バッテリー残量が少なくなったとき
スリープを無効にしたい場面
- 大容量ファイルのダウンロード: 数時間かかるダウンロード中
- リモート作業: SSH接続やリモートデスクトップ使用中
- 長時間の処理: 動画変換、データベース処理、バックアップなど
- サーバー運用: 24時間稼働させたいとき
方法1: 一時的にスリープを防ぐ(おすすめ)
最も簡単で安全な方法です。必要なときだけスリープを防ぎ、作業が終わったら元に戻ります。
systemd-inhibit コマンドを使う
手順:
ステップ1: ターミナルを開く
Ctrl + Alt + T
でターミナルを起動
ステップ2: コマンドを実行
systemd-inhibit bash
ステップ3: 確認
- コマンドを実行すると、新しいターミナル画面が表示されます
- この状態でいる限り、Ubuntuはスリープしません
ステップ4: 作業終了後
exit
と入力してEnterを押す- または、ターミナルを閉じる
- これでスリープ防止が解除されます
実際の使用例
例1: 大きなファイルをダウンロードする場合
# スリープを防ぐ
systemd-inhibit bash
# ダウンロードを開始
wget https://example.com/bigfile.zip
# ダウンロード完了後、スリープ防止を解除
exit
例2: 長時間の処理をする場合
# スリープを防ぐ
systemd-inhibit bash
# 動画変換など長時間の処理を実行
ffmpeg -i input.mp4 output.mp4
# 処理完了後、スリープ防止を解除
exit
この方法のメリット・デメリット
メリット:
- 操作が簡単
- 一時的なので安全
- 作業が終われば自動的に元に戻る
デメリット:
- ターミナルを閉じると効果がなくなる
- 毎回コマンドを実行する必要がある
方法2: スリープを完全に無効にする(上級者向け)

システムの設定を変更して、スリープ機能を完全に無効にします。サーバー用途などで使います。
設定ファイルを編集する方法
ステップ1: 設定ファイルを開く
sudo nano /etc/systemd/logind.conf
注意: sudo
を使うため、パスワードの入力が求められます。
ステップ2: 設定を変更する ファイルが開いたら、以下の行を探してください:
#HandleLidSwitch=suspend
#HandleSuspendKey=suspend
#HandleHibernateKey=hibernate
これらを以下のように変更します:
HandleLidSwitch=ignore
HandleSuspendKey=ignore
HandleHibernateKey=hibernate=ignore
変更のポイント:
- 行の先頭の
#
を削除する suspend
やhibernate
をignore
に変更する
ステップ3: ファイルを保存する
Ctrl + X
で終了Y
で保存を確認Enter
で確定
ステップ4: 設定を反映する
sudo systemctl restart systemd-logind
設定の意味
設定項目 | 意味 | 変更後の動作 |
---|---|---|
HandleLidSwitch | ノートPCの蓋を閉じたとき | 何もしない |
HandleSuspendKey | スリープキーを押したとき | 何もしない |
HandleHibernateKey | 休止状態キーを押したとき | 何もしない |
方法3: デスクトップ環境の設定を変更する
GUIの電源設定を直接変更する方法です。Ubuntu Desktopを使っている方向けです。
gsettings コマンドを使う
AC電源(コンセント)接続時:
gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type 'nothing'
バッテリー使用時:
gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-battery-type 'nothing'
設定を元に戻す方法
AC電源接続時:
gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type 'suspend'
バッテリー使用時:
gsettings set org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-battery-type 'suspend'
具体的な活用例

例1: 夜通しダウンロードしたい
状況: 大容量のファイルを夜間にダウンロードしたい
解決方法:
# スリープを防ぐ
systemd-inhibit bash
# ダウンロード開始(例:Ubuntu ISOファイル)
wget https://releases.ubuntu.com/22.04/ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso
# 朝起きたら exit でスリープ防止を解除
例2: SSH接続を維持したい
状況: 外出先からSSHでサーバーにアクセス中、途中でスリープされると困る
解決方法:
# SSH接続前にスリープを防ぐ
systemd-inhibit bash
# SSH接続
ssh user@server.example.com
# 作業終了後、SSH接続を切ってからexit
例3: サーバーとして24時間稼働させたい
状況: Ubuntu機をサーバーとして使い、常に稼働させたい
解決方法: 方法2の設定ファイル編集を使用
注意点と対策
バッテリー消費について
問題: スリープを無効にすると、ノートPCのバッテリーが早く減ります
対策:
- 可能な限りAC電源(コンセント)に接続して使用
- 必要な時だけスリープを無効にする
- 作業終了後は設定を元に戻す
熱の問題について
問題: ノートPCの蓋を閉じてもスリープしないと、熱がこもることがあります
対策:
- 蓋を閉じた状態で長時間使用しない
- 通気の良い場所に置く
- CPU使用率の高い処理は避ける
セキュリティについて
問題: スリープしないと、画面がつけっぱなしになることがあります
対策:
- 画面ロックを設定する
- 離席時は手動でロックをかける
トラブルシューティング

コマンドが見つからないエラー
エラー例:
systemd-inhibit: command not found
解決方法:
# systemdが動いているか確認
systemctl status
# 古いUbuntuの場合は別の方法を使用
sudo service gdm stop
設定が反映されない
症状: 設定を変更したのにスリープしてしまう
確認方法:
# 現在の設定を確認
systemctl show-environment
# ログを確認
journalctl -u systemd-logind
元の設定がわからなくなった
解決方法:
# 設定ファイルを初期状態に戻す
sudo cp /etc/systemd/logind.conf.bak /etc/systemd/logind.conf
# または、すべての設定をコメントアウト(#をつける)して再起動
sudo systemctl restart systemd-logind
よくある質問

Q1: スリープと休止状態の違いは?
A:
- スリープ: メモリに内容を保持し、すぐに復帰できる
- 休止状態: ハードディスクに内容を保存し、完全に電源を切る
Q2: 一時的にスリープを防ぐ他の方法は?
A:
- 動画を再生し続ける
- マウスを定期的に動かすスクリプトを使う
caffeine
というアプリを使う
Q3: 設定を変更したらUbuntuが起動しなくなった
A:
- リカバリーモードで起動
- 設定ファイルを元に戻す
- 最悪の場合は再インストール
おすすめの使い分け
初心者の方
一時的な作業: 方法1の systemd-inhibit
を使用
- 操作が簡単
- 安全性が高い
- 元に戻すのが簡単
中級者の方
定期的な長時間作業: 方法3の gsettings
を使用
- GUIで設定した内容と同じ
- 元に戻すのも簡単
上級者・サーバー管理者
常時稼働: 方法2の設定ファイル編集を使用
- 最も確実
- 細かい設定が可能
- サーバー用途に適している
まとめ
Ubuntuでスリープを無効にする方法をまとめると:
最もおすすめの方法
一時的な作業:
systemd-inhibit bash
# 作業をする
exit # 終了後
状況別の使い分け
目的 | 方法 | コマンド例 |
---|---|---|
一時的に防ぐ | systemd-inhibit | systemd-inhibit bash |
デスクトップ設定変更 | gsettings | gsettings set... |
完全に無効化 | 設定ファイル編集 | sudo nano /etc/systemd/logind.conf |
覚えておきたいポイント
- 安全性重視: まずは一時的な方法から試す
- 必要最小限: 本当に必要なときだけ無効にする
- 元に戻す: 作業終了後は設定を戻す
- バッテリー注意: ノートPCでは電源管理に注意
コメント