VPN(Virtual Private Network)とは、「仮想的な専用回線」という意味で、インターネット上に安全な通信トンネルを作る技術のことです。
まるで高速道路の専用レーンのように、あなたの通信データを暗号化して保護しながら送信します。
普通のインターネット接続では、データが丸見えの状態で送られますが、VPNを使うことで、データを特別な箱に入れて鍵をかけた状態で送ることができるのです。
VPNが必要になる場面

リモートワークでの会社接続
在宅勤務での安全な接続
自宅から会社のサーバーやシステムに安全にアクセスするために使用します。普通のインターネット回線では会社の機密情報が漏れる危険がありますが、VPNを使うことで安全に接続できます。
外出先からの業務
カフェやホテルなど、公共のWi-Fiを使って会社の資料にアクセスする際にも、VPNが必要になることが多いです。
プライバシーの保護
個人情報の暗号化
ショッピングサイトでクレジットカード情報を入力する際や、重要なメールを送信する際に、第三者に情報を盗み見されるリスクを減らせます。
閲覧履歴の保護
どのサイトを見ているかという情報を、プロバイダーや第三者から隠すことができます。
地域制限の回避
海外サービスへのアクセス
日本では見られない海外の動画サービスや、海外限定のウェブサイトにアクセスできるようになる場合があります。
検閲の回避
一部の国や地域でブロックされているサイトやサービスにアクセスできるようになります。
VPNの種類と特徴

企業向けVPN
サイト間VPN 本社と支社など、拠点同士を安全に接続するために使用されます。
リモートアクセスVPN 個人のパソコンから会社のネットワークに接続するために使用されます。在宅勤務で最もよく使われるタイプです。
個人向けVPN
商用VPNサービス NordVPN、ExpressVPN、Surfsharkなど、月額料金を支払って利用するサービスです。
無料VPNサービス ProtonVPN、TunnelBearなど、無料で利用できるサービスもありますが、通信速度や利用可能な国が制限される場合があります。
Windows 10/11でのVPN設定方法
事前準備
VPNを設定する前に、以下の情報を準備しておく必要があります:
VPNサーバーの情報
- サーバーのアドレス(IPアドレスまたはドメイン名)
- 使用するVPNプロトコルの種類
- 接続用のユーザー名とパスワード
- 必要に応じて、証明書ファイル
これらの情報は、会社のシステム管理者や、利用するVPNサービスから提供されます。
ステップバイステップの設定手順
ステップ1:設定画面を開く スタートメニューをクリックして、歯車のアイコン(設定)を選択します。キーボードの「Windows」キー + 「I」キーを同時に押すことでも開けます。
ステップ2:ネットワーク設定にアクセス 設定画面が開いたら、「ネットワークとインターネット」をクリックします。
ステップ3:VPN設定を選択 左側のメニューから「VPN」を選択します。現在設定されているVPN接続がある場合は、ここに一覧で表示されます。
ステップ4:新しいVPN接続を追加 「VPN接続を追加する」ボタンをクリックして、新しい接続の設定を開始します。
接続情報の詳細設定
VPNプロバイダーの選択 ほとんどの場合、「Windows(ビルトイン)」を選択します。特別なVPNソフトウェアを使用する場合のみ、他のオプションを選択してください。
接続名の設定 後で見分けやすいように、わかりやすい名前を付けます。例:
- 「会社VPN」
- 「東京オフィス」
- 「営業部サーバー」
サーバー情報の入力 VPNサーバーのアドレスを入力します。以下のような形式があります:
- IPアドレス:192.168.1.100
- ドメイン名:vpn.company.com
- FQDN:server.vpn.example.co.jp
VPNの種類(プロトコル)の選択 使用するVPNプロトコルを選択します:
- 自動:Windowsが最適なプロトコルを自動選択(推奨)
- PPTP:古い方式で、設定は簡単ですがセキュリティが低い
- L2TP/IPsec:セキュリティが高く、企業でよく使用される
- SSTP:Windowsが開発したプロトコルで、ファイアウォールを通りやすい
- IKEv2:モバイル環境に適しており、接続の切り替えに強い
サインイン情報の種類 認証方法を選択します:
- ユーザー名とパスワード:最も一般的な方法
- スマートカード:企業の高セキュリティ環境で使用
- ワンタイムパスワード:セキュリティを高めたい場合
- 証明書:デジタル証明書を使用する高セキュリティ環境
高度な設定オプション
詳細オプションの設定 「詳細オプション」をクリックすると、以下の設定ができます:
プロキシ設定 VPN接続時に使用するプロキシサーバーの設定ができます。
自動接続の設定 特定のネットワークに接続した時に自動でVPNに接続する設定ができます。
接続テストと確認方法

VPN接続の実行
接続の開始 設定が完了したら、VPN一覧から作成した接続を選択して「接続」ボタンをクリックします。
認証情報の入力 ユーザー名とパスワードの入力画面が表示された場合は、正確に入力してください。「接続情報を保存する」にチェックを入れると、次回から自動で認証されます。
接続状態の確認 接続が成功すると、「接続済み」と表示され、VPNアイコンがシステムトレイに表示されます。
接続確認の方法
IPアドレスの確認 ブラウザで「確認くん」や「What Is My IP Address」などのサイトにアクセスして、表示されるIPアドレスがVPNサーバーのものになっているか確認します。
DNS設定の確認 VPN接続時に、会社や組織のDNSサーバーが使用されているか確認します。これにより、社内サイトに正しくアクセスできるかがわかります。
よくある問題と解決方法
接続できない場合の対処法
認証エラー ユーザー名やパスワードが間違っている可能性があります。大文字小文字の区別や、全角半角の違いに注意してください。
サーバーアドレスのエラー VPNサーバーのアドレスが間違っているか、サーバーが停止している可能性があります。ネットワーク管理者に確認してください。
ファイアウォールの問題 Windowsファイアウォールや、ウイルス対策ソフトがVPN接続をブロックしている可能性があります。VPNアプリケーションを許可リストに追加してください。
接続は成功するが使えない場合
ルーティングの問題 VPNに接続できても、社内サイトにアクセスできない場合は、ルーティング設定に問題がある可能性があります。
DNS設定の問題 社内のサーバー名で接続できない場合は、DNS設定を確認してください。
通信速度が遅い場合
VPNプロトコルの変更 使用しているVPNプロトコルを変更することで、速度が改善する場合があります。
サーバーの変更 複数のVPNサーバーが利用可能な場合は、別のサーバーに接続してみてください。
セキュリティ上の注意点
安全なVPNサービスの選択
信頼できるプロバイダーの利用 無料VPNサービスの中には、ユーザーの通信データを収集・販売するものもあります。企業が提供する有料サービスや、評判の良いサービスを選択してください。
ログ保持ポリシーの確認 VPNプロバイダーがアクセスログを保持するかどうかを確認してください。プライバシーを重視する場合は、ノーログポリシーを採用しているサービスを選択しましょう。
パスワード管理
強固なパスワードの使用 VPN接続用のパスワードは、推測されにくい強力なものを使用してください。
定期的な変更 セキュリティを保つため、パスワードは定期的に変更することをおすすめします。
企業向けVPNの設定

Active Directoryとの連携
ドメイン認証 企業環境では、Active DirectoryのユーザーアカウントでVPN認証を行うことが一般的です。
グループポリシーでの制御 VPN設定をグループポリシーで一括管理することで、多数のパソコンに効率的に設定を配布できます。
証明書認証の設定
デジタル証明書の使用 より高いセキュリティが求められる環境では、デジタル証明書を使用した認証を行います。
証明書の配布と管理 企業の証明機関(CA)から発行された証明書を、各ユーザーのパソコンにインストールする必要があります。
VPN接続の管理と運用
複数のVPN接続の管理
接続の優先順位 複数のVPN接続を設定している場合は、使用頻度に応じて優先順位を決めておくと便利です。
自動接続の設定 特定のネットワーク環境(例:自宅のWi-Fi)で自動的にVPNに接続するよう設定できます。
ログとモニタリング
接続ログの確認 VPN接続の履歴は、イベントビューアーで確認できます。問題が発生した際の調査に役立ちます。
帯域幅の監視 VPN接続時の通信量を監視して、ネットワークの使用状況を把握することが重要です。
トラブルシューティングのコマンド

ネットワーク診断コマンド
接続確認
ping [VPNサーバーのアドレス]
ルーティングテーブルの確認
route print
DNS設定の確認
nslookup [サーバー名]
VPN接続のリセット
ネットワーク設定のリセット
netsh winsock reset
netsh int ip reset
これらのコマンドを管理者権限で実行後、パソコンを再起動してください。
まとめ
WindowsでのVPN設定は、標準機能を使用することで比較的簡単に行うことができます。リモートワークの普及により、VPNは現代の働き方に欠かせないツールとなっています。
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