「孫悟空って、もともとは中国の物語だよね?」
「でも、なんでサルの神様なんだろう?」
西遊記のヒーロー「孫悟空」は、日本でも漫画やアニメでおなじみの人気キャラクターです。
実は、この孫悟空のルーツがインド神話の猿神「ハヌマーン(Hanuman)」にあるということをご存じでしょうか?
この記事では、インドから中国へと伝わった神話の旅路を追いかけながら、ハヌマーンと孫悟空の共通点と違いをわかりやすく解説します。
遠く離れた国の物語が、どのようにして私たちの知る孫悟空になったのか、その謎を一緒にときあかしていきましょう。
ハヌマーンとは何者か?
ハヌマーンの基本情報
ハヌマーンは、インドの古い物語『ラーマーヤナ』に登場する猿の英雄です。
今から約2500年前に書かれたこの叙事詩で、ハヌマーンは主人公ラーマ王子の最も忠実な仲間として描かれています。
- 父親:風の神ヴァーユ(風の力を受け継いでいる)
- 外見:猿の姿をした神
- 性格:勇敢で忠実、そして知恵がある
- 能力:空を飛び、姿を自在に変える
ハヌマーンの特徴
- 超人的な身体能力
ハヌマーンは、山をも持ち上げる怪力の持ち主です。風の神の息子だけあって、空を自由に飛び回ることができます。また、体の大きさを自在に変えることもできました。 - 主君への忠誠心
ラーマ王子に対する忠誠心は絶対的で、どんな困難な任務でも喜んで引き受けます。この忠実さこそが、ハヌマーンの最大の美徳とされています。 - 知恵と勇気
単なる力持ちではなく、頭も良く、戦略を練るのも得意でした。ラーマ王子の妻シーターを救出する際には、敵の隙をついた巧妙な作戦を実行しています。
ラーマーヤナでの活躍
シーター姫の救出作戦
ハヌマーンの最も有名な活躍は、悪魔王ラーヴァナにさらわれたシーター姫を探し出すことでした。
- 海を跳び越える:インドから遠く離れたランカー島まで、一跳びで海を渡る
- 変身して潜入:小さな猿に姿を変えて、敵の城に忍び込む
- シーターとの接触:捕らわれのシーター姫を見つけ、ラーマからの伝言を伝える
- 敵地で大暴れ:正体がばれた後、ランカーの街を燃やして帰還
この冒険は、知恵と勇気、そして忠誠心がすべて込められた素晴らしい物語として、インドの人々に愛され続けています。
孫悟空のキャラクターと神通力

孫悟空の誕生と基本設定
中国の古典小説『西遊記』に登場する孫悟空は、石から生まれた不思議な猿です。
16世紀頃に完成されたこの物語で、孫悟空は三蔵法師の弟子として仏教の教えを学ぶ旅に出ます。
- 誕生:花果山の仙石から生まれた
- 性格:いたずら好きで自由奔放だが、物語とともに変化
- 目標:不老不死になること(最初は)、後に仏教の修行
- 師匠:三蔵法師
孫悟空の神通力
- 筋斗雲(きんとうん)
一番有名な能力は、雲に乗って空を飛ぶことです。一度のジャンプで10万8千里(約5万4千キロメートル)も飛ぶことができます。これは地球を一周以上する距離です! - 七十二変化
72種類の違う姿に変身できます。動物、人間、物など、なんにでも変われるのです。この能力を使って、敵をだましたり、困難な状況を切り抜けたりします。 - 分身の術 自分の毛を抜いて息を吹きかけると、その毛が自分の分身になります。一度に何百、何千という分身を作ることができました。
- 如意棒(にょいぼう)
思い通りの大きさに変わる魔法の棒を持っています。
普段は耳の中にしまっておき、戦うときには巨大な武器として使います。
孫悟空の性格の変化
最初の孫悟空
- わがままで自分勝手
- 天界で大暴れして問題を起こす
- 「斉天大聖」(天と同じくらい偉い)と名乗る
お釈迦様に負けた後
- 五行山に500年間封印される
- この間に反省し、少し大人になる
三蔵法師の弟子になってから
- 師匠を守るために戦う
- 仲間(猪八戒、沙悟浄)と協力するようになる
- 最終的に仏になる
仏教・道教・民間信仰の融合
孫悟空というキャラクターは、中国の様々な宗教や信仰が混ざり合って生まれました。
仏教の要素
- 三蔵法師への弟子入り
- 仏になることが最終目標
道教の要素
- 不老不死への憧れ
- 仙人のような神通力
ハヌマーンと孫悟空の共通点

見た目と能力の類似性
猿の姿 :両者とも猿の姿をしています。
空を飛ぶ能力
- ハヌマーン:風の神の息子として生まれつき飛行能力を持つ
- 孫悟空:筋斗雲に乗って空を駆け巡る
どちらも、人間には不可能な「空を飛ぶ」という夢を実現しています。
変身能力
- ハヌマーン:体の大きさを自在に変える
- 孫悟空:72通りの姿に変身できる
精神的な共通点
忠誠心
- ハヌマーン:ラーマ王子への絶対的な忠誠
- 孫悟空:三蔵法師を守り抜く決意
どちらも、自分より大切な存在のために命をかけて戦います。
正義感
- ハヌマーン:悪魔王ラーヴァナと戦う
- 孫悟空:妖怪や悪者から人々を守る
孫悟空は最初はいたずら好きの問題児だが、三蔵法師の弟子になってからは正義感あふれるヒーローとなっています。
こうした共通点から孫悟空のモデルはハヌマーンではないかと考えられている。
両者の違いと文化的背景

根本的な違い
宗教的位置づけ
ハヌマーン:神として信仰される存在
- ヒンドゥー教の正式な神の一柱
- 現代でも寺院で祈りを捧げられている
- 実際に神通力があると信じられている
孫悟空:文学作品のキャラクター
- 小説の登場人物として創造された
- エンターテイメントとしての要素が強い
- フィクションとして楽しまれている
物語の役割
ハヌマーンの場合
- 『ラーマーヤナ』では脇役(重要だが主人公ではない)
- ラーマ王子を支える忠実な家来
- 神話の中で一貫して善良な存在
孫悟空の場合
- 『西遊記』の主人公の一人
- 複雑な性格を持ち、成長していく
- 最初は問題児、最後は悟りを開く
文化的な受容のされ方
インドでのハヌマーン
- 子どもから大人まで誰もが知っている
- 日常生活の中で祈りの対象
- 道徳的な手本として教えられる
中国・日本での孫悟空
- 娯楽作品の人気キャラクター
- 漫画、アニメ、映画で繰り返し描かれる
- 冒険とユーモアの象徴
現代への影響
ハヌマーンの現代的意義
- インドの国民的英雄として愛され続けている
- スポーツチームのマスコットになることも
- 政治的シンボルとしても使われることがある
孫悟空の現代的意義
- ポップカルチャーのアイコン
- 「ドラゴンボール」などの現代作品にも影響
- 世界中で知られるキャラクター
よくある質問

ハヌマーンと孫悟空は同じ神様なの?
いいえ、同じ神様ではありません。
ハヌマーンは実際に信仰されているヒンドゥー教の神様で、孫悟空は中国の小説に登場するキャラクターです。
ただし、孫悟空のキャラクター設定にハヌマーンの要素が少なからず影響していると考えられています。
他にも似たような猿の神話はあるの?
はい、世界各地に猿に関する神話があります:
- 東南アジア:各地に猿の英雄譚が存在
- 南米:かつて猿の神を祀る文化があった
- 日本:猿田彦命(古事記)、見ざる言わざる聞かざる(日光東照宮)
現代でもハヌマーンは信仰されているの?
はい、インドでは現在でも非常に人気の高い神様です。
まとめ
インド神話のハヌマーンと中国文学の孫悟空は、時代や文化を超えたつながりを持つ興味深い存在です。
二者は、見た目、能力、内面において共通点を持っています。
これらから孫悟空はハヌマーンがモデルではないか?と考えられているわけです。
モデルとまではいかなくても、何かしらの影響を受けている可能性は高そうです。
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