パソコンを使っていて、「なんか勝手にプログラムが動いている?」と感じたことはありませんか?ウイルスチェックが自動で行われたり、印刷の準備が裏で進んだりと、見えないところでたくさんのプログラムが動いています。
「これって止めても大丈夫?」「どうやって管理するの?」そんな疑問をかかえている人も多いでしょう。
Linuxでは「デーモン(daemon)」とよばれるこれらの常駐プログラムが、Windowsでは「サービス(Service)」という名前で同じような役割を担っています。
この記事では、Windowsのサービスについて、初心者でもわかりやすく操作方法を解説します。
Windowsサービスってなに?|見えないところで働く便利な仕組み

サービスの基本的な役割
Windowsサービスは、ユーザーがログインしていなくても動作できるバックグラウンドプロセスです。
つまり、パソコンの電源が入っていれば、誰もパソコンを使っていない状態でも働き続けるプログラムのことです。
サービスの特徴
特徴 | 説明 | メリット |
---|---|---|
自動起動 | パソコンの電源を入れると自動で始まる | 操作する必要がない |
バックグラウンド動作 | 見えないところで動く | パソコンの使用を邪魔しない |
常時稼働 | 電源が入っている限り動き続ける | いつでも必要なときに機能する |
管理者権限 | システムレベルで動作する | 重要な機能を安全に実行できる |
よく見るサービスの例
Windows Update
- 自動でWindowsの更新をチェックして、インストールする
- セキュリティを最新の状態に保つ
Print Spooler(印刷管理)
- 印刷の準備や管理を行う
- 複数の印刷を順番に処理する
Windows Defender
- ウイルスやマルウェアを常時監視する
- 危険なファイルを自動で検出・削除する
Windows Audio
- 音声の再生を管理する
- スピーカーやヘッドフォンとの通信を行う
サービスとふつうのプログラムの違い
特徴 | ふつうのプログラム | サービス |
---|---|---|
起動方法 | ユーザーがクリックして起動 | 自動で起動 |
見た目 | ウィンドウやアイコンがある | 見えない |
動作条件 | ユーザーがログインしている間 | 常時動作 |
停止方法 | ×ボタンで終了 | 専用の管理画面で操作 |
サービスの役割を理解することで、パソコンのトラブル対応やカスタマイズに役立ちます。
次は、実際のサービス操作方法を見ていきましょう。
画面操作でサービスを管理する方法|初心者におすすめの管理方法

サービス管理画面の開き方
方法1:ファイル名を指定して実行
Windowsキー + R
を押す- 「ファイル名を指定して実行」のダイアログが開く
services.msc
と入力Enter
キーを押すか「OK」をクリック
方法2:スタートメニューから
Windowsキー
を押してスタートメニューを開く- 「サービス」と入力して検索
- 「サービス」アプリをクリック
方法3:コントロールパネルから
- コントロールパネルを開く
- 「システムとセキュリティ」をクリック
- 「管理ツール」をクリック
- 「サービス」をダブルクリック
サービス管理画面の見方
サービス管理画面には、以下の情報が表示されます:
項目 | 説明 |
---|---|
名前 | サービスの名前 |
説明 | そのサービスがなにをするかの説明 |
状態 | 「実行中」「停止」など、今の動作状況 |
スタートアップの種類 | 「自動」「手動」「無効」の設定 |
ログオン | どのユーザー権限で動くかの設定 |
基本的なサービス操作
サービスを開始する
- 開始したいサービスを一覧から選ぶ
- 右クリックしてメニューを表示
- 「開始」をクリック
サービスを停止する
- 停止したいサービスを一覧から選ぶ
- 右クリックしてメニューを表示
- 「停止」をクリック
サービスを再起動する
- 再起動したいサービスを一覧から選ぶ
- 右クリックしてメニューを表示
- 「再起動」をクリック
スタートアップの種類の設定
設定変更の手順
- 設定を変更したいサービスをダブルクリック
- 「プロパティ」画面が開く
- 「スタートアップの種類」のプルダウンメニューをクリック
- 希望する設定を選択
- 「OK」をクリック
スタートアップの種類の説明
設定 | 動作 | 使用場面 |
---|---|---|
自動 | パソコン起動時に自動で開始 | 常に必要なサービス |
自動(遅延開始) | パソコン起動後、少し待ってから開始 | 重要だが急がないサービス |
手動 | 必要なときだけ手動で開始 | たまに使うサービス |
無効 | 完全に動作を停止 | 不要なサービス |
実際の操作例
例1:Print Spoolerサービスの再起動 印刷がうまくいかないときに試す方法です。
- サービス管理画面を開く
- 「Print Spooler」を探す
- 右クリックして「再起動」を選択
- しばらく待って、印刷を再試行
例2:Windows Updateサービスの手動開始 更新がうまくいかないときに試す方法です。
- サービス管理画面を開く
- 「Windows Update」を探す
- 状態が「停止」なら、右クリックして「開始」を選択
- Windows Updateを再実行
画面操作は直感的で初心者にも扱いやすい方法です。次は、より柔軟なコントロールが可能なコマンド操作を紹介します。
コマンドでサービスを操作する方法|上級者向けの効率的な管理
コマンドプロンプトでの操作(scコマンド)
コマンドプロンプトの開き方
Windowsキー + R
を押すcmd
と入力してEnter- 管理者権限が必要な場合は、
Windowsキー + X
を押して「Windows PowerShell(管理者)」を選択
基本的なscコマンド
サービスの開始
sc start サービス名
使用例
sc start Spooler
→ Print Spoolerサービスを開始
サービスの停止
sc stop サービス名
使用例
sc stop Spooler
→ Print Spoolerサービスを停止
サービスの状態確認
sc query サービス名
使用例
sc query Spooler
→ Print Spoolerサービスの現在の状態を表示
すべてのサービス一覧表示
sc query
PowerShellでの操作
PowerShellはより新しく、より強力なコマンド環境です。
PowerShellの開き方
Windowsキー + X
を押す- 「Windows PowerShell」または「Windows PowerShell(管理者)」を選択
基本的なPowerShellコマンド
すべてのサービス一覧表示
Get-Service
特定のサービスの状態確認
Get-Service -Name "Spooler"
名前で検索
Get-Service -Name "*update*"
→ 名前に「update」が含まれるサービスを検索
サービスの開始
Start-Service -Name "Spooler"
サービスの停止
Stop-Service -Name "Spooler"
サービスの再起動
Restart-Service -Name "Spooler"
実用的なコマンド例
例1:複数のサービスを一度に操作
# 複数のサービスを同時に停止
Stop-Service -Name "Spooler", "Fax"
# 複数のサービスを同時に開始
Start-Service -Name "Spooler", "Fax"
例2:状態でフィルタリング
# 実行中のサービスのみ表示
Get-Service | Where-Object {$_.Status -eq "Running"}
# 停止中のサービスのみ表示
Get-Service | Where-Object {$_.Status -eq "Stopped"}
例3:結果をファイルに保存
# サービス一覧をテキストファイルに保存
Get-Service | Out-File -FilePath "C:\temp\services.txt"
よく使うサービス名一覧
サービス名 | 表示名 | 説明 |
---|---|---|
Spooler | Print Spooler | 印刷管理 |
wuauserv | Windows Update | Windows更新 |
WinDefend | Windows Defender Antivirus Service | ウイルス対策 |
AudioSrv | Windows Audio | 音声サービス |
BITS | Background Intelligent Transfer Service | バックグラウンドファイル転送 |
Themes | Themes | デスクトップテーマ |
コマンド操作は自動化やスクリプト化に便利で、上級者におすすめです。次は、カスタムサービスの登録とトラブル対応について解説します。
自分のプログラムをサービスにする方法|カスタムサービスの作成と管理

サービスとして登録できるプログラム
すべてのプログラムがサービスになれるわけではありません。サービスになるには、特別な作り方をする必要があります。
サービス向きのプログラム
- バックグラウンドで動作するプログラム
- ユーザーの操作を必要としないプログラム
- 定期的に実行される処理
- ネットワーク監視やファイル同期など
サービスに向かないプログラム
- ウィンドウを表示するプログラム
- ユーザーの入力を待つプログラム
- ゲームや画像編集ソフトなど
scコマンドでサービスを作成
基本的な作成コマンド
sc create サービス名 binPath= "C:\path\to\your_app.exe"
重要な注意点
binPath=
の後には必ずスペースが必要- パスはフルパス(完全なファイルの場所)で指定
- 管理者権限でコマンドプロンプトを実行する必要がある
実際の使用例
sc create MyCustomService binPath= "C:\MyApp\MyService.exe"
サービス作成時のオプション設定
より詳細な設定での作成
sc create MyService binPath= "C:\MyApp\service.exe" start= auto DisplayName= "私のカスタムサービス" type= own
オプションの説明
オプション | 設定値 | 説明 |
---|---|---|
start | auto / demand / disabled | 自動開始 / 手動開始 / 無効 |
DisplayName | “表示名” | サービス管理画面での表示名 |
type | own / share | 独立プロセス / 共有プロセス |
depend | “依存サービス名” | 依存するサービスを指定 |
サービスの詳細設定変更
設定変更のコマンド
sc config サービス名 start= auto
sc config サービス名 DisplayName= "新しい表示名"
説明の追加
sc description MyService "このサービスは○○を行います"
サービスの削除
サービスを削除するコマンド
sc delete サービス名
削除前の注意点
- サービスを停止してから削除する
- 削除前にサービスの状態を確認する
- 依存関係があるサービスがないか確認する
安全な削除手順
# 1. サービスを停止
sc stop MyService
# 2. 状態確認
sc query MyService
# 3. 削除実行
sc delete MyService
実用的なサービス作成例
例1:定期バックアップサービス
sc create BackupService binPath= "C:\Tools\backup.exe" start= auto DisplayName= "自動バックアップサービス"
sc description BackupService "重要なファイルを定期的にバックアップします"
例2:ログ監視サービス
sc create LogMonitor binPath= "C:\Monitor\logwatch.exe" start= demand DisplayName= "ログ監視サービス"
sc description LogMonitor "システムログを監視して異常を検出します"
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法
問題:「指定されたサービスは既に存在します」
# 既存のサービスを確認
sc query MyService
# 必要に応じて削除
sc delete MyService
問題:「アクセスが拒否されました」
- 管理者権限でコマンドプロンプトを実行していない
- コマンドプロンプトを右クリック→「管理者として実行」で開き直す
問題:サービスが開始できない
# 詳細なエラー情報を確認
sc query MyService
# イベントログを確認
# スタートメニュー → "イベントビューアー" で検索
独自のプログラムをサービスとして登録することで、バックグラウンドでの自動動作が可能になります。最後に、サービス管理でよくある注意点を見てみましょう。
サービス管理の注意点とベストプラクティス|安全に操作するために知っておくこと

絶対に注意すべきポイント
管理者権限が必要
- サービスの操作には管理者権限が必要です
- 「アクセスが拒否されました」と表示される場合は、管理者として実行してください
システムに影響するサービスがある
- 重要なシステムサービスを停止すると、Windowsが正常に動作しなくなる可能性があります
- よくわからないサービスは安易に停止しないでください
停止・無効化する前にチェックすること
依存関係の確認 あるサービスが他のサービスに依存している場合があります。
確認方法
- サービスのプロパティを開く
- 「依存関係」タブをクリック
- 「このサービスが依存するサービス」と「このサービスに依存するサービス」を確認
安全に停止できるサービスの例
サービス名 | 説明 | 停止の影響 |
---|---|---|
Fax | ファックス機能 | ファックスを使わない場合は問題なし |
Windows Search | ファイル検索の高速化 | 検索が少し遅くなる程度 |
Tablet PC Input Service | タブレット入力 | タブレットを使わない場合は問題なし |
停止すると問題になるサービスの例
サービス名 | 説明 | 停止の影響 |
---|---|---|
Windows Audio | 音声機能 | 音が出なくなる |
DHCP Client | ネットワーク設定 | インターネットに接続できなくなる |
Windows Security Center | セキュリティ機能 | セキュリティ警告が機能しなくなる |
トラブル発生時の対処法
サービスが開始できない場合
ステップ1:エラーメッセージを確認
sc start サービス名
エラーメッセージをよく読んで、原因を特定します。
ステップ2:イベントログを確認
Windowsキー + R
を押すeventvwr.msc
と入力してEnter- 「Windowsログ」→「システム」でエラー情報を確認
ステップ3:依存関係を確認 依存するサービスが動いているかチェックします。
サービスが応答しない場合
強制停止の方法
# プロセスIDを確認
sc queryex サービス名
# プロセスを強制終了(最後の手段)
taskkill /PID プロセスID /F
監視とメンテナンス
定期的なチェック項目
重要なサービスの状態確認
# 重要なサービスの状態を一括確認
Get-Service -Name "Spooler", "wuauserv", "WinDefend", "AudioSrv" | Format-Table -AutoSize
イベントログの確認
- 週に1回程度、システムログをチェック
- エラーや警告がないか確認
- 特に「サービス コントロール マネージャー」のイベントに注意
パフォーマンスの監視
- タスクマネージャーを開く(
Ctrl + Shift + Esc
) - 「サービス」タブで各サービスのCPUやメモリ使用量を確認
- 異常にリソースを消費しているサービスがないかチェック
バックアップと復元
サービス設定のバックアップ
# サービス一覧をファイルに保存
sc query > services_backup.txt
レジストリのバックアップ サービスの設定はレジストリに保存されているため、重要な変更前にはレジストリのバックアップを取ることをおすすめします。
Windowsキー + R
を押すregedit
と入力してEnterHKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services
を選択- 右クリック→「エクスポート」でバックアップ
自動化のベストプラクティス
スクリプト化の例
# 重要なサービスの状態をチェックするスクリプト
$services = @("Spooler", "wuauserv", "WinDefend")
foreach ($service in $services) {
$status = Get-Service -Name $service
if ($status.Status -ne "Running") {
Write-Host "$service is not running!" -ForegroundColor Red
# 必要に応じて自動復旧処理を追加
}
}
定期実行の設定
- タスクスケジューラを開く
- 基本タスクを作成
- 上記スクリプトを定期実行するよう設定
まとめ
覚えておきたい重要なポイント
基本的なサービス管理
- GUI操作:初心者は
services.msc
での操作から始める - コマンド操作:効率化や自動化には
sc
コマンドやPowerShellを活用 - 安全な操作:依存関係を確認してから停止・変更を実行
実用的な活用方法
- トラブルシューティング(印刷問題、更新問題など)
- システムの最適化(不要なサービスの無効化)
- カスタムサービスの作成(自動化プログラムの常駐)
注意すべきポイント
- 管理者権限での操作が必要
- 重要なシステムサービスは安易に停止しない
- 変更前には現在の状態をバックアップ
よくある質問(FAQ)
Q: サービスを停止しても安全かどうか判断する方法は?
A: サービスの説明を読み、依存関係を確認してから判断しましょう。わからない場合は「手動」に設定して様子を見るのが安全です。
Q: サービスが勝手に停止してしまいます
A: イベントログでエラーの原因を確認し、必要に応じて「回復」タブで自動再起動の設定をしましょう。
Q: 無効にしたサービスをもとに戻したいです
A: サービスのプロパティで「スタートアップの種類」を「自動」または「手動」に戻せば復旧できます。
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