日本語文書を縦書きで書くとき、Wordを使えば簡単に縦書き形式に切り替えられます。
しかし、「回転表示」との違いや「数字・英字・縦中横」の扱いなど、意外と戸惑うポイントもあります。
この記事では、縦書き設定の基本から応用までを網羅的に解説します。
方法

方法1:レイアウトタブからの設定
最も簡単で直感的な方法です:
手順:
- 「レイアウト」タブをクリック
- 「ページ設定」グループの「文字列の方向」を選択
- 「縦書き」をクリック
詳細な操作説明:
- 文字列の方向ボタンは、ABCが縦に並んだアイコンで表示されます
- クリックすると即座に文書全体が縦書きに変換されます
- 用紙の向きも自動的に最適化されます
方法2:ページ設定ダイアログからの詳細設定
より細かな設定が可能な方法です:
手順:
- 「レイアウト」タブ→「ページ設定」グループの右下の矢印をクリック
- 「ページ設定」ダイアログが開く
- 「文字数と行数」タブをクリック
- 「文字方向:縦書き」にチェックを入れる
- 「OK」をクリック
この方法の利点:
- 文字数や行数を同時に設定できる
- 用紙サイズや余白も一緒に調整可能
- より詳細なレイアウト制御ができる
用紙の向きの調整
重要なポイント:
縦書き設定により、用紙が自動で横向き(Landscape)になることがあります。
日本の縦書き文書では通常、用紙は縦向き(Portrait)を使用するため、必要に応じて調整しましょう。
用紙向きの変更手順:
- 「レイアウト」タブ→「ページ設定」グループ
- 「印刷の向き」をクリック
- 「縦」を選択
縦書き文書の基本設定
推奨される設定値:
文字数:40文字
行数:35行
余白:上下 35mm、左右 30mm
フォント:明朝体(MS明朝、游明朝など)
文字サイズ:10.5pt または 12pt
行間:1.5倍または固定値18pt
設定のコツ:
- 文字数は読みやすさを考慮して40文字程度に設定
- 行数は用紙サイズに応じて調整
- 余白は製本を考慮した設定にする
- フォントは読みやすい明朝体を選択
文字列の方向
またはページ設定
から縦書きに切り替えることができ、用紙向きのチェックも忘れずに行いましょう。次に、部分的な縦書き設定の方法を詳しく見ていきます。
一部だけを縦書きにする方法

方法A:範囲選択での部分縦書き
特定の段落や文章だけを縦書きにしたい場合に使用します:
手順:
- 縦書きにしたい文字範囲をドラッグして選択
- 選択範囲を右クリック
- メニューから「縦書きと横書き」を選択
- 縦書きの文字の向きをクリック
この方法の特徴:
- 既存の文書の一部だけを変更できる
- 段落単位での適用が基本
- 横書きと縦書きが混在する文書を作成可能
注意点:
- 選択範囲は段落全体が対象になる
- レイアウトが大きく変わる可能性がある
- 前後の段落との整合性を確認する必要がある
方法B:テキストボックスを使った自由配置
より柔軟なレイアウトが可能な方法です:
手順:
- 「挿入」タブをクリック
- 「テキストボックス」を選択
- 「縦書きテキストボックス」をクリック
- 文書上でドラッグしてボックスを作成
- テキストボックス内に文字を入力
テキストボックスの調整:
枠線:なし(線の色を「枠線なし」に設定)
塗りつぶし:なし(塗りつぶしを「塗りつぶしなし」に設定)
配置:文字列の折り返しを「前面」に設定
活用例:
- 横書き文書内での縦書き引用文
- タイトルや見出しの装飾的配置
- 図表の説明文
- サイドバーでの補足情報
複数の縦書きテキストボックスの配置
雑誌風のレイアウト例:
- メインコンテンツ用の大きな縦書きテキストボックス
- サイドバー用の細い縦書きテキストボックス
- タイトル用の装飾的な縦書きテキストボックス
配置のコツ:
- グリッドを表示して整列させる
- 文字の流れを意識した配置にする
- 読み順が自然になるように工夫する
範囲選択で一部だけ縦書きにできるほか、テキストボックスなら配置やスタイルが自由自在になります。次は、数字や英語を美しく表示する縦中横機能を学びましょう。
数字・英字を縦書きで美しく表示する(縦中横)

縦中横とは
縦書きでも数字や横文字を縦に並べて読みやすくする機能です。
通常、縦書きで数字を入力すると横に寝た状態で表示されますが、縦中横を使うことで縦書きに適した美しい表示ができます。
縦中横が必要になる場面:
- 年号や日付(例:2025年、12月31日)
- 数量や順序(例:第3章、100個)
- 英単語や略語(例:CD、DVD、URL)
- 電話番号や住所の番地
基本的な縦中横の設定方法
手順:
- 対象の文字(例:「2025」や「DVD」)を選択
- 「ホーム」タブをクリック
- 「段落」グループの**「拡張書式」**ボタン(「あ」のようなアイコン)をクリック
- **「縦中横」**を選択
- 「縦中横」ダイアログで**「行の幅に合わせる」**にチェック
- **「OK」**をクリック
縦中横の詳細設定
「縦中横」ダイアログでの設定項目:
設定項目 | 説明 | 推奨設定 |
---|---|---|
行の幅に合わせる | 文字を行の幅に合わせて調整 | ✅ チェック推奨 |
フォントサイズを自動調整 | 長い文字列を自動で小さく | ✅ チェック推奨 |
字間を調整 | 文字間隔の微調整 | 必要に応じて |
効果的な縦中横の使用例
日付の表示:
通常の縦書き:
2025年1月1日
↓(見にくい)
縦中横適用後:
2025年1月1日
↓(読みやすい)
章番号や項目番号:
第12章 → 第12章
3-1節 → 3-1節
100ページ → 100ページ
英単語や略語:
CD → CD
DVD → DVD
URL → URL
CEO → CEO
自動的な縦中横の設定
自動縦中横機能の活用:
- 「ファイル」→「オプション」→「文章校正」
- **「オートコレクトのオプション」**をクリック
- 「入力オートフォーマット」タブ
- **「縦中横を自動的に設定する」**にチェック
この設定により自動適用される文字:
- 2桁の数字(10〜99)
- 英字2文字(AB、CDなど)
- 日時の表記(午前10時など)
縦中横の微調整テクニック
長い文字列の処理:
- 4文字以上の場合は分割を検討
- 「2025年1月」→「2025」「年」「1月」に分けて個別に縦中横設定
- 読みやすさを優先して適切な区切りを選択
フォントサイズの調整:
- 縦中横部分のフォントサイズを手動で微調整
- 本文との調和を考慮した大きさに設定
- 必要に応じて太字や色を変更
数字やアルファベットが縦に読みやすく整列し、日付や序数などに便利な機能です。次は、表の中での縦書き設定について学びましょう。
表内での縦書き設定と高度なレイアウト
表のセル内縦書き設定
表の中でも縦書きを使用することで、和風の文書や特殊なレイアウトを実現できます。
基本的な設定手順:
- 縦書きにしたいセルを選択
- 「レイアウト」タブ(表ツール)をクリック
- 「配置」グループの**「文字列の方向」**をクリック
- **「縦書き」**を選択
表全体の縦書き設定
表全体を縦書きにする場合:
- 表全体を選択(表の左上の十字マークをクリック)
- 上記と同じ手順で「文字列の方向」を縦書きに変更
- 必要に応じて列幅や行の高さを調整
表での縦書きレイアウト例
名簿や席次表:
| 役職 | 氏名 | 所属 |
|------|------|------|
| 会 | 田 | 営 |
| 長 | 中 | 業 |
| | 太 | 部 |
| | 郎 | |
月間カレンダー:
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|----|----|----|----|----|----|----|
| 曜 | 曜 | 曜 | 曜 | 曜 | 曜 | 曜 |
| 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 | 日 |
表と縦書きの組み合わせテクニック
セルの高さ調整:
- 縦書きテキストに合わせて行の高さを調整
- 「表のプロパティ」で最小の高さを設定
- 文字数に応じた適切な高さを計算
セル内での文字配置:
- 上下中央揃え、左右中央揃えの設定
- セル内余白の調整
- 文字の回転角度の微調整
よくある問題と解決策

問題1:縦書きが正しく表示されない
症状と原因:
- 文字が横向きに回転しただけに見える
- 日本語の文字が正しく縦に並ばない
- 英数字が意図した通りに表示されない
解決策:
- 日本語編集機能の確認
- 「ファイル」→「オプション」→「言語」
- 日本語が編集言語として設定されているか確認
- 必要に応じて言語パックを追加インストール
- 正しい縦書き設定の使用
- 「文字列の方向」機能を使用(回転機能ではない)
- ページ設定での文字方向を縦書きに設定
- フォントの確認
- 縦書き対応フォントを使用
- MS明朝、游明朝、ヒラギノ明朝などを推奨
問題2:数字や英字が読みにくい
症状:
- 数字が横に寝た状態で表示される
- 英単語が読みにくい配置になる
- 全角・半角の混在で見た目が悪い
解決策:
- 縦中横の適用
- 数字や英字を選択して縦中横を設定
- 自動縦中横機能を有効にする
- 全角文字への統一
- 英数字を全角に変換
- 「書式」→「文字の変換」→「全角」
- 適切な区切り
- 長い数字は意味のある単位で区切る
- 読みやすさを優先した配置にする
問題3:レイアウトが崩れる
症状:
- 用紙からはみ出る
- 行間隔が不自然
- ページ番号の位置がおかしい
解決策:
- ページ設定の見直し
- 余白の調整
- 文字数・行数の再設定
- 用紙サイズの確認
- 行間設定の調整
- 行間を固定値で設定
- 段落間隔の調整
- インデントの見直し
- ヘッダー・フッターの調整
- ページ番号の位置を縦書き用に調整
- ヘッダー・フッター内も縦書き設定
問題4:印刷時のトラブル
症状:
- 印刷向きが正しくない
- 文字が切れる
- ページの順序が意図と異なる
解決策:
- 印刷プレビューでの確認
- 印刷前に必ずプレビューで確認
- 用紙向きと実際の印刷設定を照合
- プリンター設定の調整
- プリンタードライバーの設定確認
- 両面印刷の設定調整
- PDF出力での確認
- 一度PDFに出力して確認
- PDF表示で問題ない場合はプリンター設定の問題
縦書き文書の応用テクニック
小説原稿の作成
プロの原稿用紙形式:
- 文字数・行数の設定
- 20文字×20行(400字詰め原稿用紙)
- または40文字×35行(1400字/ページ)
- 書式設定
- フォント:MS明朝 12pt
- 行間:固定値 18pt
- 段落間隔:0pt
- 原稿用紙罫線の表示
- 「レイアウト」→「原稿用紙設定」
- 罫線のスタイルを選択
論文・レポートでの縦書き
学術文書での縦書き設定:
- 参考文献の記載方法
- 縦書きでの著者名、書名の表記
- 発行年の縦中横設定
- 脚注の設定
- 縦書き用の脚注レイアウト
- 注番号の縦中横設定
- 図表の挿入
- 縦書き文書での図表配置
- キャプションの縦書き設定
和風デザインの文書作成
デザイン要素の活用:
- 罫線と装飾
- 和風の罫線スタイル
- ページ境界線の設定
- 透かし文字の活用
- フォントの使い分け
- 見出し:筆文字フォント
- 本文:明朝体
- 強調:ゴシック体
- 色彩の配慮
- 和の色合いの選択
- 読みやすさを重視した色設定
まとめ:縦書きマスターへの道
段階別習得プラン
初級レベル:基本操作の習得
- ページ全体の縦書き設定
- 基本的な文字入力と書式設定
- 用紙向きと余白の調整
中級レベル:部分的な縦書きとレイアウト
- テキストボックスでの自由配置
- 縦中横の効果的な使用
- 表での縦書き設定
上級レベル:プロフェッショナルな文書作成
- 複雑なレイアウトの実現
- 印刷・出版を考慮した設定
- 効率的な作業フローの確立
縦書き文書作成のチェックリスト
項目 | 確認内容 | 設定方法 |
---|---|---|
基本設定 | 文字方向が縦書きか | レイアウト → 文字列の方向 |
用紙設定 | 用紙向きは適切か | レイアウト → 印刷の向き |
文字数・行数 | 読みやすい設定か | ページ設定 → 文字数と行数 |
数字・英字 | 縦中横は適用済みか | 選択 → 拡張書式 → 縦中横 |
フォント | 縦書き対応フォントか | ホーム → フォント |
印刷確認 | プレビューで確認済みか | ファイル → 印刷プレビュー |
効率的な作業のコツ
テンプレートの活用:
- よく使う縦書き設定をテンプレートとして保存
- 文書の種類別にテンプレートを作成
- 共通の書式設定をスタイルとして登録
ショートカットキーの活用:
- 縦中横設定のショートカット(Alt+Shift+D)
- 書式のコピー・貼り付け(Ctrl+Shift+C, Ctrl+Shift+V)
- スタイルの適用(Ctrl+Shift+S)
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