Windowsで複数のユーザーアカウントを使い分けていると、「コマンドプロンプトから別ユーザーで操作したい」という場面があります。
普通の画面からの切り替えは簡単ですが、コマンドラインでの切り替え方法は意外と知られていません。
この記事では、Windowsのコマンドプロンプトでユーザーを切り替える実用的な方法を、初心者にもわかりやすく解説します。
システム管理者やプログラマーだけでなく、普段パソコンを使う人にも役立つ情報をお届けします。
コマンドプロンプトを使った効率的な作業方法を身につけて、もっとスマートにWindowsを使いこなしましょう。
コマンドプロンプトでのユーザー切り替えの基本

Windowsには、現在のユーザーセッションを維持したまま、別のユーザー権限でコマンドを実行する方法があります。
それがrunas
コマンドです。
runasコマンドとは
runas
は「Run as(〜として実行する)」という意味で、指定したユーザー権限でプログラムやコマンドを実行できます。
基本的な構文
runas /user:ユーザー名 コマンド
パラメータの説明
/user:
:実行するユーザーを指定ユーザー名
:切り替え先のユーザーアカウント名コマンド
:実行したいプログラムやコマンド
実際の使用例
管理者権限でコマンドプロンプトを開く
runas /user:AdminUser "cmd.exe"
別ユーザーでメモ帳を開く
runas /user:TestUser "notepad.exe"
管理ツールを管理者権限で起動
runas /user:Administrator "mmc.exe"
実行時の流れ
- コマンドを入力してEnterキーを押す
- 指定したユーザーのパスワード入力を求められる
- 正しいパスワードを入力すると、そのユーザー権限でプログラムが起動
なぜrunasが便利なのか
セッションを切り替えずに済む
- 現在の作業を中断する必要がない
- 複数のユーザー権限を同時に使える
- 効率的な作業が可能
特定の操作だけに限定
- 必要な操作だけを別ユーザーで実行
- セキュリティリスクを最小限に抑制
- 権限の誤用を防止
runas
を使えば、コマンドラインからユーザー権限を効率的に切り替えることができます。次は、普通のユーザー切り替えとの違いを詳しく見てみましょう。
普通のユーザー切り替えとの違いと使いどころ

普通の画面でのユーザー切り替えと、runas
コマンドにはどのような違いがあるのでしょうか。
普通のユーザー切り替え(GUI)
操作方法
Ctrl + Alt + Del
を押す- 「ユーザーの切り替え」をクリック
- 別のユーザーでログイン
特徴
- ユーザーセッション全体が切り替わる
- デスクトップ環境が完全に変わる
- 元のユーザーの作業は一時停止
runasコマンドでの切り替え
特徴
- セッションは切り替わらない
- 特定のプログラムだけを別ユーザーで実行
- 元のユーザーの作業は継続可能
- 複数の権限を同時に使用可能
runasの具体的な活用場面
システム管理作業
runas /user:Administrator "services.msc"
- サービス管理画面を管理者権限で開く
- 普通のユーザーのまま特定の管理作業が可能
ソフトウェアのインストール
runas /user:AdminUser "setup.exe"
- インストーラーを管理者権限で実行
- 作業中のファイルを閉じる必要がない
権限の異なるスクリプト実行
runas /user:PowerUser "powershell.exe -ExecutionPolicy Bypass -File script.ps1"
- 特定の権限でスクリプトを実行
- バッチ処理や自動化に便利
レジストリエディタの起動
runas /user:Administrator "regedit.exe"
- システム設定の変更が必要な場合
- 安全にレジストリを編集
どちらを使うべきか
runasを使う場面
- 短時間の管理作業
- 特定のプログラムだけ権限が必要
- 作業の中断を避けたい場合
- スクリプトでの自動化
GUI切り替えを使う場面
- 長時間別ユーザーで作業する
- デスクトップ環境全体を変更したい
- 完全にユーザーを切り替えたい場合
runas
は普通の切り替えと違い、効率的なユーザー権限管理に最適です。次は、実行時の注意点と制限について解説します。
実行時の注意点と制限事項

runas
コマンドは便利ですが、いくつかの注意点と制限があります。
パスワード入力の制限
必須のパスワード入力
- 実行時に毎回パスワード入力が必要
- スクリプトでの自動化には不向き
- セキュリティ上、パスワードを保存できない
対処法の例
runas /savecred /user:AdminUser "cmd.exe"
/savecred
オプションで資格情報を保存- 初回のみパスワード入力が必要
- セキュリティリスクがあるため注意が必要
GUIアプリケーションの制限
起動に制限があるアプリ
- エクスプローラー(explorer.exe)
- タスクマネージャー
- 一部のシステムアプリ
制限の理由
- セキュリティ上の制約
- セッション分離の仕組み
- Windowsのアーキテクチャ制限
解決策
runas /user:AdminUser "cmd.exe /c start explorer.exe"
- コマンドプロンプト経由で起動
- 完全ではないが一部回避可能
ドメイン環境での設定
ドメインユーザーの指定方法
runas /user:DOMAIN\admin "mmc.exe"
runas /user:admin@domain.com "cmd.exe"
注意点
- ドメイン名の正確な指定が必要
- ネットワーク接続が必要
- ドメインコントローラーとの通信が発生
ネットワークドライブの制限
アクセスできない場合
runas /user:AdminUser /netonly "cmd.exe"
/netonly
オプションでネットワーク資格情報のみ使用- ローカル権限は変更されない
- ネットワークリソースへのアクセスが改善
エラーの対処法
よくあるエラーと対処法
「ユーザー名またはパスワードが正しくありません」
- ユーザー名のスペルチェック
- ドメイン名の確認
- パスワードの有効期限確認
「要求された操作にはユーザー対話が必要です」
- GUIアプリの制限に該当
- コマンドライン版を使用
- 別の方法を検討
PowerShellでの代替方法
より柔軟な方法
$credential = Get-Credential
Start-Process "notepad.exe" -Credential $credential
メリット
- より詳細な制御が可能
- GUIでの資格情報入力
- エラーハンドリングが充実
サードパーティツールの活用
RunAsTool
- GUI付きのrunas代替ツール
- パスワード保存機能
- より使いやすいインターフェース
PsExec(Sysinternals)
psexec -u AdminUser -p password cmd.exe
- より高度な機能
- リモート実行も可能
- システム管理者向け
runas
の制限を理解することで、より適切なツールや方法を選択できます。次は、これまでの内容をまとめて、実践的な活用方法をご紹介します。
まとめ:コマンドプロンプトからのユーザー切り替えを活用しよう
この記事では、Windowsのコマンドプロンプトでユーザーを切り替える方法について詳しく解説しました。
重要なポイント
runasコマンドの基本
runas /user:ユーザー名 コマンド
で別ユーザーとして実行- セッションを切り替えずに特定の操作だけを別権限で実行可能
- 管理者権限が必要な作業に特に有効
普通の切り替えとの違い
- セッション全体ではなく、プログラム単位での権限切り替え
- 作業の中断なしに管理作業が可能
- 効率的なマルチユーザー環境の実現
制限事項の把握
- パスワード入力が毎回必要(自動化に制限)
- 一部のGUIアプリは起動に制限あり
- ドメイン環境では適切な形式でユーザー指定が必要
実践的な活用例
日常的な管理作業
runas /user:Administrator "services.msc"
runas /user:Administrator "eventvwr.msc"
runas /user:Administrator "compmgmt.msc"
開発・テスト環境
runas /user:TestUser "cmd.exe"
runas /user:DeveloperAccount "visual_studio.exe"
トラブルシューティング
runas /user:Administrator "sfc /scannow"
runas /user:Administrator "chkdsk C: /f"
さらなるステップアップ
PowerShellとの組み合わせ
- より柔軟なスクリプト作成
- エラーハンドリングの充実
- 自動化の可能性拡大
グループポリシーとの連携
- 企業環境での統一的な運用
- セキュリティポリシーの適用
- 監査ログの活用
他のツールとの使い分け
- PsExecによるリモート実行
- RunAsToolでのGUI操作
- タスクスケジューラとの組み合わせ
セキュリティの考慮事項
ベストプラクティス
- 必要最小限の権限での実行
- パスワードの適切な管理
- 作業ログの記録と監査
注意すべき点
/savecred
オプションの慎重な使用- 権限昇格の適切な管理
- 不要な権限の早期削除
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