Windowsのコマンドプロンプトを使っていて、「毎回同じ長いコマンドを入力するのが面倒だな」と思ったことはありませんか?
Linuxにはalias
という便利な機能がありますが、Windowsのコマンドプロンプトには同じ機能がありません。
実は、Windowsでも「エイリアス(別名)」を設定する方法がいくつかあります。
エイリアスを使うと、長いコマンドを短い名前で呼び出せるようになり、作業効率が大幅にアップします。
この記事では、Windowsでエイリアスを設定する4つの方法を、初心者でもわかりやすく説明します。
「コマンドプロンプトは使えるけど、設定方法がわからない」という人でも、この記事を読めばすぐに実践できるようになります。
エイリアスってなに?なぜ便利なの?

エイリアスは「コマンドの短縮名」
エイリアス(alias)とは、長いコマンドや複雑なコマンドに「短い別名」をつける機能です。
例えば、dir /w /p
という長いコマンドを、ll
という短い名前で呼び出せるようになります。
エイリアスの例
# 通常のコマンド(長くて面倒)
dir /w /p /s
# エイリアスを設定後(短くて簡単)
ll
なぜエイリアスが便利なの?
作業効率が上がる理由
- 入力時間の短縮:長いコマンドを何度も入力する手間が省ける
- タイピングミスの減少:短い名前なので間違いが少なくなる
- 覚えやすい:自分の好きな名前をつけられる
- 作業の標準化:チーム内で同じエイリアスを使うことで、作業を統一できる
よくある活用例
ls
→dir
(Linuxユーザーに馴染みのあるコマンド名)ll
→dir /w
(詳細表示)cls
→clear
(画面クリア)backup
→ 複雑なバックアップコマンド
Windowsには4つの方法でエイリアスを設定できます。それぞれに特徴があるので、自分の使い方に合った方法を選びましょう。
方法1:doskeyコマンドで簡単設定

一番簡単な方法(ただし一時的)
doskey
コマンドは、Windowsに標準で入っている機能です。
コマンドプロンプトで簡単にエイリアスを設定できますが、コマンドプロンプトを閉じると設定が消えてしまいます。
基本的な使い方
doskey エイリアス名=実際のコマンド
具体例:よく使われるエイリアス
# Linuxのlsコマンドのように使える
doskey ls=dir
# 詳細表示のエイリアス
doskey ll=dir /w
# 隠しファイルも表示
doskey la=dir /a
# 今のディレクトリのフォルダだけ表示
doskey lf=dir /ad
引数を使ったエイリアス
エイリアスに引数(パラメータ)を渡すこともできます。$*
を使うと、エイリアス実行時に入力した引数をすべて渡せます。
引数を使った例
# ファイル検索のエイリアス
doskey find=dir /s /b $*
# 使い方
find *.txt # → dir /s /b *.txt が実行される
特定のフォルダに移動するエイリアス
# よく使うフォルダへの移動
doskey desk=cd C:\Users\%USERNAME%\Desktop
doskey docs=cd C:\Users\%USERNAME%\Documents
doskey dl=cd C:\Users\%USERNAME%\Downloads
設定したエイリアスを確認する方法
現在のエイリアス一覧を表示
doskey /macros
特定のエイリアスを削除
doskey エイリアス名=
# 例:lsエイリアスを削除
doskey ls=
doskeyの注意点
- コマンドプロンプトを閉じると設定が消える
- 新しいコマンドプロンプトウィンドウでは使えない
- テスト用や一時的な使用には最適
doskeyは簡単で便利ですが、毎回設定し直すのは面倒です。次は、設定を永続化する方法を見てみましょう。
方法2:マクロファイルで設定を永続化
設定ファイルを作って自動読み込み
doskeyの設定をファイルに保存して、コマンドプロンプト起動時に自動で読み込む方法です。一度設定すれば、いつでもエイリアスが使えるようになります。
手順1:マクロファイルを作成
メモ帳などのテキストエディタで、エイリアスを定義したファイルを作成します。
マクロファイルの例(C:\tools\macros.txt
)
# ファイル操作関連
ls=dir
ll=dir /w
la=dir /a
lf=dir /ad
# 移動関連
desk=cd C:\Users\%USERNAME%\Desktop
docs=cd C:\Users\%USERNAME%\Documents
proj=cd C:\work\projects
# 検索関連
find=dir /s /b $*
search=findstr /s /i $*
# システム関連
ps=tasklist
kill=taskkill /f /pid $*
netstat=netstat -an
# Git関連(Gitを使っている場合)
gs=git status
ga=git add $*
gc=git commit -m $*
gp=git push
手順2:コマンドプロンプトのショートカット作成
コマンドプロンプトのショートカットを作成して、起動時にマクロファイルを読み込むように設定します。
- デスクトップで右クリック→「新規作成」→「ショートカット」
- 「項目の場所を入力してください」に以下を入力:
%SystemRoot%\System32\cmd.exe /k doskey /macrofile=C:\tools\macros.txt
- ショートカットに名前をつける(例:「コマンドプロンプト(エイリアス有効)」)
手順3:ショートカットをタスクバーにピン留め
作成したショートカットを右クリックして「タスクバーにピン留めする」を選択すると、いつでも簡単にエイリアス付きのコマンドプロンプトを起動できます。
レジストリを使った自動化(上級者向け)
すべてのコマンドプロンプトで自動的にエイリアスを有効にしたい場合は、レジストリを編集する方法もあります。
注意:レジストリ編集は慎重に行ってください
Win + R
キーを押して「regedit」を実行- 以下のキーに移動:
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Command Processor
- 新しい文字列値「AutoRun」を作成
- 値に以下を設定:
doskey /macrofile=C:\tools\macros.txt
この方法は効果的ですが、レジストリを間違って編集するとシステムに問題が起きる可能性があります。初心者の方は、ショートカットの方法をおすすめします。
マクロファイルの方法は設定が少し複雑ですが、一度設定すれば非常に便利です。次は、もっとシンプルなバッチファイルの方法を見てみましょう。
方法3:バッチファイルでエイリアス作成

一番柔軟で使いやすい方法
バッチファイル(.batファイル)を作成して、パスの通ったフォルダに置く方法です。この方法は設定が簡単で、コマンドプロンプト以外でも使えるのが特徴です。
手順1:バッチファイル用のフォルダを作成
エイリアス用のフォルダを作成します(例:C:\tools\bin
)。
手順2:環境変数PATHに追加
Win + R
キーを押して「sysdm.cpl」を実行- 「詳細設定」タブ→「環境変数」をクリック
- 「ユーザー環境変数」の「Path」を選択→「編集」
- 「新規」をクリックして
C:\tools\bin
を追加 - 「OK」をクリックして保存
手順3:バッチファイルを作成
各エイリアスごとにバッチファイルを作成します。
ls.bat(dirコマンドのエイリアス)
@echo off
dir %*
ll.bat(詳細表示のエイリアス)
@echo off
dir /w %*
la.bat(全ファイル表示のエイリアス)
@echo off
dir /a %*
find.bat(ファイル検索のエイリアス)
@echo off
if "%1"=="" (
echo 使い方: find [検索パターン]
echo 例: find *.txt
) else (
dir /s /b %*
)
desk.bat(デスクトップ移動のエイリアス)
@echo off
cd /d "%USERPROFILE%\Desktop"
より高機能なバッチファイルの例
backup.bat(バックアップのエイリアス)
@echo off
if "%1"=="" (
echo 使い方: backup [コピー元フォルダ]
echo 例: backup C:\work
exit /b 1
)
set SOURCE=%1
set BACKUP_DIR=D:\backup\%DATE:~0,10%
mkdir "%BACKUP_DIR%" 2>nul
echo %SOURCE% を %BACKUP_DIR% にバックアップしています...
xcopy "%SOURCE%" "%BACKUP_DIR%" /E /H /Y
echo バックアップが完了しました。
proj.bat(プロジェクトフォルダ移動)
@echo off
if "%1"=="" (
cd /d "C:\work\projects"
dir /w
) else (
cd /d "C:\work\projects\%1"
)
バッチファイル方式のメリット
柔軟性が高い
- 複雑なロジックも組める
- エラーハンドリングができる
- 引数の検証ができる
互換性が良い
- コマンドプロンプト以外でも使える
- PowerShellからも実行できる
- ファイルエクスプローラーからダブルクリックでも実行可能
管理しやすい
- 1つのエイリアス = 1つのファイル
- 個別に編集・削除が簡単
- バージョン管理システム(Git)で管理できる
バッチファイル方式は少し手間がかかりますが、最も柔軟で強力な方法です。次は、PowerShellでの設定方法を見てみましょう。
方法4:PowerShellでエイリアス設定
モダンなシェルでより高機能なエイリアス
PowerShellは、Windowsの新しいコマンドライン環境です。より高機能なエイリアス設定ができ、関数を使った複雑な処理も可能です。
基本的なエイリアス設定
Set-Aliasコマンドの使い方
# 基本的な構文
Set-Alias エイリアス名 実際のコマンド
# 具体例
Set-Alias ll Get-ChildItem
Set-Alias ls Get-ChildItem
Set-Alias grep Select-String
現在のエイリアス一覧を確認
Get-Alias
特定のエイリアスを確認
Get-Alias ll
Set-Aliasの制限と関数による解決
Set-Aliasでは、引数付きのコマンドを直接エイリアスにできません。そこで、関数を定義して対応します。
関数を使った高度なエイリアス
# 詳細表示の関数
function ll { Get-ChildItem -Force }
# 隠しファイルも含めて表示
function la { Get-ChildItem -Force -Hidden }
# ファイルのみ表示
function lf { Get-ChildItem -File }
# フォルダのみ表示
function ld { Get-ChildItem -Directory }
# ファイル検索関数
function find {
param([string]$pattern)
if ($pattern -eq "") {
Write-Host "使い方: find [検索パターン]"
Write-Host "例: find *.txt"
} else {
Get-ChildItem -Recurse -Name $pattern
}
}
# よく使うフォルダへの移動
function desk { Set-Location $env:USERPROFILE\Desktop }
function docs { Set-Location $env:USERPROFILE\Documents }
function dl { Set-Location $env:USERPROFILE\Downloads }
プロファイルファイルで設定を永続化
PowerShellの設定を永続化するには、プロファイルファイル($PROFILE
)に記述します。
プロファイルファイルの場所を確認
$PROFILE
プロファイルファイルを作成・編集
# プロファイルファイルがない場合は作成
if (!(Test-Path -Path $PROFILE)) {
New-Item -ItemType File -Path $PROFILE -Force
}
# メモ帳でプロファイルファイルを開く
notepad $PROFILE
プロファイルファイルの記述例
# エイリアス設定
Set-Alias ll Get-ChildItem
Set-Alias ls Get-ChildItem
Set-Alias grep Select-String
# 関数定義
function la { Get-ChildItem -Force }
function lf { Get-ChildItem -File }
function ld { Get-ChildItem -Directory }
function find {
param([string]$pattern = "")
if ($pattern -eq "") {
Write-Host "使い方: find [検索パターン]" -ForegroundColor Yellow
Write-Host "例: find *.txt" -ForegroundColor Yellow
} else {
Get-ChildItem -Recurse -Name $pattern
}
}
# よく使うフォルダへの移動
function desk { Set-Location $env:USERPROFILE\Desktop; Get-ChildItem }
function docs { Set-Location $env:USERPROFILE\Documents; Get-ChildItem }
function proj { Set-Location "C:\work\projects"; Get-ChildItem }
# Git関連(Gitがインストールされている場合)
function gs { git status }
function ga { git add $args }
function gc { git commit -m $args }
function gp { git push }
# システム関連
function ps { Get-Process }
function kill { Stop-Process -Id $args }
# 起動時のメッセージ
Write-Host "PowerShell エイリアスが読み込まれました!" -ForegroundColor Green
Write-Host "使用可能なエイリアス: ll, la, lf, ld, find, desk, docs, proj" -ForegroundColor Cyan
PowerShellの利点
高機能
- .NETの機能が使える
- オブジェクト指向の処理
- 強力なパイプライン処理
モダンな環境
- Windows 10/11に標準搭載
- クロスプラットフォーム対応
- 豊富なモジュール
スクリプト作成が簡単
- 変数の型チェック
- エラーハンドリング
- ヘルプ機能の充実
PowerShellは学習コストが少し高いですが、非常に強力で柔軟なエイリアス設定ができます。
どの方法を選べばいい?比較表とおすすめ

4つの方法を比較
方法 | 永続化 | 引数対応 | 設定の簡単さ | 柔軟性 | おすすめ度 |
---|---|---|---|---|---|
doskey | × | ○ | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐ | ⭐⭐ |
doskey + マクロファイル | ○ | ○ | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
バッチファイル | ○ | ○ | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
PowerShell | ○ | ○ | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
用途別おすすめ方法
初心者・お試し利用 → doskeyコマンド
- 設定が簡単で、すぐに試せる
- リスクが少ない
日常的な作業効率化 → バッチファイル方式
- 設定と管理が簡単
- 幅広い環境で使える
- カスタマイズの自由度が高い
高度なカスタマイズ → PowerShell
- 最も柔軟で強力
- モダンな機能が使える
- 将来性がある
チーム開発 → マクロファイル + バッチファイル
- 設定ファイルをチームで共有できる
- バージョン管理が可能
実際の設定手順(おすすめパターン)
Step 1:まずはdoskeyで試す
doskey ls=dir
doskey ll=dir /w
doskey la=dir /a
Step 2:よく使うものをバッチファイル化
C:\tools\bin
フォルダを作成- PATHに追加
- 必要なバッチファイルを作成
Step 3:PowerShellも併用
- プロファイルファイルに基本設定を記述
- PowerShell特有の機能も活用
この段階的なアプローチで、自分に合った方法を見つけることができます。
まとめ
Windowsのコマンドプロンプトでエイリアス(別名)を設定する方法を4つ紹介しました。それぞれに特徴があるので、自分の使い方に合った方法を選ぶことが大切です。
覚えておきたいポイント
エイリアスの基本的な利点
- 長いコマンドを短縮できる
- タイピングミスが減る
- 作業効率が大幅にアップ
- 覚えやすい名前をつけられる
4つの設定方法
- doskey:簡単だが一時的
- マクロファイル:永続化できるが設定が複雑
- バッチファイル:最も柔軟で実用的
- PowerShell:高機能で将来性がある
おすすめの活用方法
- まずはdoskeyで試してみる
- 日常的に使うものはバッチファイル化
- PowerShellも併用して機能を拡張
- チームで設定を共有
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