インドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する英雄であり、ヒンドゥー教の神として今も多くの人々に崇められているラーマ。
「理想の王」「完璧な人格者」として知られるこの神様について、わかりやすく解説します。
7番目の化身

「ラーマ」はヴィシュヌ神の7番目の化身(アバター)として知られていて、地上に秩序と正義(ダルマ)をもたらす役割を果たしました。
ヴィシュヌは宇宙の保護者であり、ラーマはその働きを地上で体現する存在なのです。
ラーマには「ラーマチャンドラ」(月のように美しいラーマ)など、100以上の別名があります。
これらの名前は、ラーマの英雄的な行動や徳の高さを表現しています。
系譜

ラーマは、古代インドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する伝説の王子です。
彼はコーサラ国(アヨーディヤー)の王子として生まれました。
ラーマの誕生には神聖な物語があります。父親のダシャラタ王が神々の要請に応えて儀式を行い、ヴィシュヌ神がその祭火から現れました。
王は神秘の甘露を与えられ、それを第一王妃カウサリヤーに分け与えると、彼女はラーマを生みました。
家系図(簡略):
- 父: ダシャラタ王(正義深い王)
- 母: カウサリヤー(第一王妃)
- 妻: シーター(ヴィシュヌの妻ラクシュミーの化身とも言われる)
- 弟: ラクシュマナ(忠誠心あふれる弟)、バラタ、シャトルグナ
ラーマは、王族のなかでも最高に理想的な人格を持つ存在として語られます。
忠誠・勇気・誠実・謙虚さ、すべてを備えた徳のある人物です。
姿・見た目

ラーマは、インド絵画や彫刻で青みがかった肌で描かれることが多く、これはヴィシュヌの特徴を受け継いでいるからです。
主な特徴:
- 青い肌(神の象徴)
- まっすぐで端正な顔立ち
- 弓と矢を持つ(名弓使い)
- 修行者の装い
- 額にU字のマーク(ヴィシュヌの化身である象徴)
また、弟のラクシュマナや妻のシーター、そして忠実な従者の猿神ハヌマーンと一緒にいる姿で描かれることも多い。
特徴
ラーマは、単なる英雄ではありません。ヴィシュヌ神の化身として、この世に正義(ダルマ)を回復するために降臨しました。
ラーマの神格・性質:
- 正義と秩序の守護者(ダルマの体現者)
- クシャトリヤの一員
ラーマはクリシュナとともに、ヴィシュヌの化身として特に人気があります。
クリシュナがいたずら好きで恋多き神として親しまれるのに対し、ラーマは理性と正しい行動、そして望ましい美徳の模範として崇められています。
神話

ラーマが主人公となるのは、インド二大叙事詩のひとつ『ラーマーヤナ』です。
その内容を、わかりやすく要約してみましょう。
【ラーマーヤナ】のあらすじ(超要約)
- 世界の乱れ
ラークシャサ(羅刹・悪鬼)によって世界の秩序が乱れる。
ヴィシュヌは秩序回復のために化身となり、ダシャラタ王の王子として生まれる - 結婚
ジャナカ王を訪問した際、王女シータと出会い、彼女と結婚。 - 王子ラーマの追放
継母カイケーイーの陰謀により、王位継承を拒まれ、14年間の追放生活へ。
弟のラクシュマナと妻のシーターは自ら同行することを選びます。 - 森での生活とシーターの誘拐
森で平和に暮らしていたところ、妻のシーターが、悪魔王ラーヴァナに連れ去られてしまいます。ラーヴァナは、ラーマを恨むシュールパナカーにそそのかされ、シーターを誘拐したのです。 - ハヌマーンとの出会い
猿の英雄ハヌマーンと猿の王スグリーヴァの助けを借りて、シーター奪還のため大戦争を起こす。ハヌマーンはラーヴァナの王国ランカを探り、シーターがまだ生きていることを伝えます。 - 勝利と帰還、そして即位
大軍を率いてランカに攻め込み、ラーヴァナを討ち、シーターを救出。アヨーディヤーへ帰還し、王として即位する。 - 民の声に苦悩する王
シーターは火神アグニによって純潔を証明されましたが、ラーマは「シーターは本当に純潔だったのか?」という民の声に心を痛め、シーターを森へ帰す決断をする。 - 妻との別れ
後に、ラーマはシーターを迎えに行くのだが、シーターは夫への大地に呑み込まれ消えてしまう
。ラーマは妻との別れを嘆き悲しみ、その後、この世を去った。
まとめ
ラーマは、神でありながら人間らしい苦悩を生き抜いた英雄です。
今もインドをはじめ、世界中の多くの人々に愛され、崇拝されています。
- ヴィシュヌの化身として、正義を地上に取り戻す
- 理想の王子・夫・兄・父として、模範的な存在
- 神話『ラーマーヤナ』では、愛と戦いと苦悩のドラマが展開
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