私たちの食卓に並ぶお米や野菜、果物。
その豊かな恵みをもたらしてくれるのは、自然の力です。
日本の神話では、そうした生命を育む神秘的な力を「ムスビ」と呼び、それを司る神様たちを崇めてきました。
その中でも今回は、「ワクムスビ(稚産霊神/和久産巣日神)」について、その意味や力、ご利益までを分かりやすく紹介します。
ワクムスビの名前の意味

まずは「ワクムスビ(稚産霊神/和久産巣日神)」という名前に込められた意味を解き明かしてみましょう。
この名前のポイントは「ムスビ」。
ムスビは、万物生成、子孫繁栄、植物を生育させたり実らせたりする力を意味している。
「ムスビ(産霊)」という概念は日本の古代神道において非常に重要なものでした。
ワクムスビの系譜と由来

ワクムスビの誕生については、日本の神話書である『古事記』と『日本書紀』で異なる伝承が残されています。
系譜①:イザナミの死後に誕生(『古事記』より)
『古事記』によれば、ワクムスビの誕生はこのように語られています:
- 日本の国土を生み出した女神イザナミは、最後に火の神カグツチを産みます
- このとき重度のやけどを負い、イザナミは命を落としてしまいます
- イザナミの遺体からは、様々な神々が生まれました
- その中の一柱が「ワクムスビ(稚産霊神)」でした
ちなみに、ワクムスビはイザナミの尿から生まれた。
系譜②:カグツチの子(『日本書紀』より)
一方、『日本書紀』では別の伝承も記され、ワクムスビは「カグツチ」と「ハニヤマヒメ」の子とされています。
ワクムスビの神格と特徴

ワクムスビは、日本神話において「食物と農耕」に関わる重要な神格(神としての性質)を持っています。
ワクムスビの神格まとめ
- 五穀: 米や麦などの五穀をはじめとする食べ物をもたらす神様です。人間の命を支える食物の恵みを司ります。
- 養蚕: 神話で体から蚕を生み出したという話がある。
ワクムスビに関する神話と伝承

ワクムスビに関する記述は、日本の神話書である『古事記』や『日本書紀』に見られます。
神話のあらすじ(『古事記』より)
『古事記』に記されたワクムスビに関する神話を簡単にまとめると:
- イザナミが火の神カグツチを産み、重度のやけどを負って命を落とします
- イザナミの遺体からは、様々な神々が生まれました
- その中の一柱がワクムスビ(稚産霊神)でした
- 後にワクムスビは、食物の女神トヨウケビメを生み出します
神話のあらすじ②(『日本書紀』より)
『日本書紀』に記されたワクムスビに関する神話を簡単にまとめると:
- カグツチとハニヤマヒメの間に生まれる
- 頭から蚕と桑、へその中に五穀が生じた
ワクムスビを祀る神社とご利益

ワクムスビだけを主祭神として祀る神社は少ないですが、農耕・食物・産霊の神として、多くの神社に合祀(一緒に祀られる)されています。
主な神社
- 愛宕神社(京都府)
- 竹駒神社(宮城県)
ご利益
ワクムスビにお参りすると、以下のようなご利益があるとされています:
- 五穀豊穣
- 商売繁盛
- 開運招福
- 災難よけ
- 交通安全
五穀豊穣以外にもさまざま神徳がある。
まとめ
ワクムスビについて様々な角度から見てきました。
まとめポイント
- ワクムスビの「ムスビ」は生成する力を表す
- 系譜には2説あり:イザナミの尿から生まれた説と、カグツチの子という説があります
- 神格は、穀物・食物・養蚕を司る神として重要です
- ご利益は、五穀豊穣・商売繁盛・開運招福など多岐にわたる
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