エジプト神話には、死後の世界を支えるさまざまな神々が登場しますが、その中でも特に重要な役割を果たすのがアヌビスです。
犬やジャッカルの頭を持つ神として知られるアヌビスは、死者の魂を守り、冥界への旅を助ける存在として崇拝されてきました。
この記事では、アヌビスの姿や役割、神話での位置づけ、そして彼が象徴するものについて詳しく解説します。
アヌビスとは

アヌビスは、エジプト神話に登場する重要な神で、冥界の神および死者の守護者として知られています。
犬またはジャッカルの頭を持つ姿で描かれることが多く、エジプト文化において死後の世界と密接に結びついています。
その役割や象徴性について詳しく見ていきましょう。
アヌビスの姿と象徴
外見
アヌビスは通常、黒いジャッカルの頭を持つ人間の姿で描かれます。
アヌビスの頭はジャッカルでなくとも、犬や狼と関連づけられます。
アヌビスの黒色は、ミイラ作りに使用するタールの色に関係しています。
また、人間の部位がないジャッカルとしても描かれます。
ジャッカルとの関連
古代エジプトでは、黒犬が墓地周辺に現れることが多く、これがアヌビスを死者の守護神と結びつけた理由とされています。
アヌビスの役割

ミイラ作りの守護者
アヌビスは、死者を来世に送るためのミイラ作りの過程を守護する神とされました。
エジプト神話では、最初のミイラを作ったのがアヌビスであると語られています。
- 死者の遺体を保存し、腐敗を防ぐ儀式を監督する。
- ミイラ化の過程を魔術的に保護する存在。
死者の審判の補佐
死後、魂が冥界に入るとき、アヌビスは重要な役割を果たします。
「死者の魂の軽量」では、死者の心臓を真実の羽根(マアトの羽根)と天秤にかけて、来世に進む資格があるかを測定します。
- 心臓が羽根よりも軽ければ、死者は再生と来世での生活を許されます。
- 心臓が羽根よりも重ければ、死者の魂は怪物アーマーンに食べられます。
- 儀式において、アヌビスは正確さと公正を保つ守護者として行動します。
アヌビスの神話と関係性

オシリスとの関係
アヌビスはオシリス(冥界の王)の補佐的な役割を担い、オシリスの死と復活の物語においても重要な役割を果たします。
アヌビスはオシリスの遺体をミイラ化し、彼を復活させる儀式の手助けをしたとされています。
家系
アヌビスの出自は神話によって異なりますが、多くの場合、母はネフティス、父はセトまたはオシリスとされています。
一説では、オシリスの息子とされ、父を助けて冥界での重要な役割を担っています。
その説では、アヌビスは不義の子としてネフティスに捨てられています。
捨てられたアヌビスは、オシリスの妻イシスに拾われ、育てられています。
信仰と崇拝
アヌビスはかなり古い時代から信仰されていました。
時代とともに、彼の信仰はどんどん広まっていき、ギリシャにまで及びました。
ギリシャでは、アヌビスをヘルメスやメルクリウスと結び付けました。
別名
アヌビスには、さまざまな別名があります。
- インプ
- 秘密の主人
- ケンティ・イメンティウ(西方人たちの長)
他にも多くの異名や地位を持っています。
まとめ
アヌビスは、死者の守護神として古代エジプト文化の中心的な存在でした。
彼の役割は、単に死を扱うだけでなく、再生や正義を象徴する重要なものでした。
ジャッカルの頭を持つ彼の姿は、死後の世界への安全な旅と秩序を保つ神秘的な存在として、今もエジプト神話の中で強く記憶されています。
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