【深海の恐怖】クトゥルフ神話のダゴンとは?半魚人の神の正体を徹底解説!

神話・歴史・伝承

深い海の底から聞こえてくる、不気味な鳴き声。
波間に浮かぶ巨大な影。
それは人間なのか、それとも魚なのか——。

古代から語り継がれてきた海の神「ダゴン」は、クトゥルフ神話の中でも特に恐ろしい存在として知られています。
旧約聖書にも登場するこの神は、H・P・ラヴクラフトの手によって、さらに不気味で謎めいた姿に生まれ変わりました。

この記事では、クトゥルフ神話における「ダゴン」の正体、その恐ろしい姿、そして深海に隠された伝承について、分かりやすく解説します。

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概要

ダゴンは、クトゥルフ神話に登場する半人半魚の海の神です。

父なるダゴン」という敬称で呼ばれ、深きものどもという水棲種族を統率する指導者として君臨しています。伴侶である母なるハイドラとともに、海洋種族から神のように崇められる存在なんです。

クトゥルフ神話の体系では、ダゴンは大いなるクトゥルフに仕える従者(小神、従属神)として位置づけられています。旧支配者ほどの力はありませんが、深海の世界では絶大な影響力を持つ恐ろしい存在です。

興味深いのは、ダゴンという名前自体は旧約聖書にも登場する古代の神に由来しているということ。ペリシテ人が崇拝していた異教の神が、クトゥルフ神話の中で恐怖の存在として蘇ったんですね。

系譜

ダゴンの正体については、実は複数の説があります。

深きものどもとの関係

最も一般的な説は、ダゴンは深きものどもが長い年月をかけて成長した個体だというものです。

深きものどもは殺されない限り死ぬことのない不死の種族。彼らは成長を続ける生物で、ダゴンとハイドラは数百万年もの時を経て巨大化した長老的存在だと考えられています。

ただし、この説には矛盾点もあります。通常の深きものどもの大きさはほぼ一定で、ダゴンほど巨大な個体は他に確認されていません。つまり、単なる成長だけでは説明がつかないんです。

クトゥルフの化身説

もう一つの有力な説は、ダゴンはクトゥルフの化身の一つというものです。

クトゥルフが封印されたとき、その力の一部が別の形となって現れた——それがダゴンだという解釈ですね。ダゴンが深きものども以上の超常的な能力を持つことや、クトゥルフへの深い献身を考えると、この説にも説得力があります。

父なるダゴンと母なるハイドラ

ダゴンには母なるハイドラという伴侶がいます。

この二柱は人間の目には区別がつかないほど似た姿をしていて、ともに深きものどもから崇拝されています。「父なる」「母なる」という敬称からも、彼らが単なる強大な個体ではなく、種族全体の象徴的な存在であることが分かりますね。

インスマスの伝承では、人類や深きものどもの「父祖」として語られることもありますが、これは象徴的・宗教的な表現だと考えられています。

姿・見た目

ダゴンの姿は、人間と魚類の特徴を併せ持つ、非常に不気味なものです。

基本的な外見

ダゴンの身体的特徴

  • 身長:6メートル以上の巨体
  • 手足:水かきのついた手足
  • :魚のような面貌
  • :どんよりと突出した大きな目(決して閉じることがない)
  • :分厚くたるんだ唇
  • 体型:全体的に人間に似た二足歩行の姿

第一次世界大戦中、太平洋上でアメリカの商船がダゴンらしき怪物を目撃した記録があります。その証言によると、背丈はハノーバートル(潜水艦)以上だったそうです。

深きものどもとの違い

ダゴンの姿は、基本的に深きものどもを巨大化したものと考えていいでしょう。

深きものどもも水かき、魚のような顔、突出した目といった特徴を持っていますが、ダゴンはそれを圧倒的なスケールで体現しているんです。まさに、深きものどもの「完成形」とも言える存在ですね。

ハイドラもダゴンと同様の姿をしており、人間の目では両者を見分けることはほぼ不可能だとされています。

他の姿

文献によっては、ダゴンが霧の雲として現れることもあると記されています。

実体のある姿だけでなく、より不定形で捉えどころのない存在としても顕現できるようです。その神秘的な性質が、ダゴンを単なる巨大生物ではなく、神格に近い存在として印象づけています。

特徴

ダゴンは深海の支配者として、いくつかの特別な能力と性質を持っています。

超常的な能力

主な能力

  • 生物学的不死:老化では死なず、外的要因でのみ命を失う
  • 海中での圧倒的な力:深海でも自由に活動できる
  • 知性と記憶:太古の文明の記憶を保持
  • 狂気を誘発する目:その目を見た人間は狂気に陥る

ダゴンは単なる怪物ではなく、高度な知性を持つ存在です。初出作品「ダゴン」では、海底に現れた巨大な石柱(モノリス)に図や文字を刻んでおり、文明を持っていることが示唆されています。

感情と行動

興味深いのは、ダゴンにも感情があるということです。

初出作品では、かつてのルルイエやアトランティスといった古代文明が滅んでしまったことを嘆き、石柱を抱きしめながら慟哭の声をあげる場面が描かれています。この描写は、ダゴンが単なる破壊者ではなく、失われた栄光を惜しむ知的存在であることを物語っていますね。

深きものどもへの影響力

ダゴンは深きものどもの統率者・指導者として、絶大な影響力を持っています。

深きものども自体が不死で強力な種族ですが、ダゴンの能力はそれを遥かに凌駕しているんです。彼らはダゴンとハイドラを崇拝し、その指示に従って行動します。

四大精霊との関連

クトゥルフ神話の一部の設定では、ダゴンは水の精霊として分類されることもあります。

「旧支配者の四大精霊」という概念において、ダゴンが水の元素を司る存在とされているんです。ただし、この設定の信憑性は定かではなく、あくまで一つの解釈として理解しておくべきでしょう。

伝承

ダゴンにまつわる伝承は、古代から現代まで様々な形で語り継がれています。

旧約聖書のダゴン

クトゥルフ神話のダゴンの名前の由来は、旧約聖書に登場するペリシテ人の神ダゴンです。

『サムエル記』上巻第五章によれば、ダゴンはユダヤ人の神ヤーウェと敵対する異教の神でした。ペリシテ人はガザやアシュドドなどの地にダゴンを祀る神殿を建てていたそうです。

聖書のダゴンは農業の神であり穀物の神とされ、その名は「ダガン(穀物)」に由来するという説があります。一方で、「魚」を意味する言葉と「アホン(偶像)」を組み合わせて名付けられたという説もあり、この説の方が半人半魚の姿には合致していますね。

キリスト教の視点では、ダゴンはアスタロト、ベリアル、ベルゼブブなどと並ぶ悪魔として扱われています。

インスマスの影

ダゴン伝承の中心となるのが、マサチューセッツ州の港町インスマスの物語です。

19世紀初頭、インスマスのマーシュ家が深きものどもと密約を交わしたことから、町の運命は変わり始めました。船長オーベット・マーシュは南洋交易の途中で深きものどもの海底都市イハ=トレイを発見し、そこで取引を持ちかけたんです。

マーシュ家の密約内容

  • 深きものどもから金銭的援助と豊漁を受ける
  • 代わりに人間を生贄として捧げる
  • 人間と深きものどもが交配する

この密約により、インスマスではダゴン秘密教団(エソテリック・オーダー・オブ・ダゴン)が設立されました。

ダゴン秘密教団

ダゴン秘密教団は、父なるダゴン、母なるハイドラ、そして大いなるクトゥルフを崇拝する組織です。

表向きはメイソンのような団体を装っていましたが、実際には深きものどもとの交配を推進する恐ろしい集団でした。教団員には三つの誓いがありました。

教団の三つの誓い

  1. 秘密の誓い:教団の活動を外部に漏らさない
  2. 忠誠の誓い:ダゴンとハイドラへの絶対的な服従
  3. 混血の誓い:深きものどもと結婚し、その子を産む

この第三の誓いにより、インスマスでは人間と深きものどもの混血が広がり、住民の多くがインスマス面と呼ばれる特有の魚のような顔つきになっていったんです。

インスマスの終焉

1927年から1928年にかけて、アメリカ政府は密かにインスマスを調査しました。

表向きは密造酒の取り締まりでしたが、実際には深きものどもの脅威に対処するためです。政府は海軍を動員して沖合のデビルズ・リーフを魚雷で攻撃し、海底都市イハ=トレイを破壊しようとしました。

町の住民の多くが逮捕され、その多くは秘密裏に処刑されたと言われています。現在、インスマスはほとんど廃墟と化していますが、深きものどもとダゴンの脅威が完全に消えたかどうかは定かではありません。

南洋諸島の伝承

インスマス以外でも、ダゴンや深きものどもの影響は世界中で見られます。

マルケサス諸島では、両生類の頭部を持つ人間型の偶像「ティキ」が崇拝されていますが、これは深きものどもの姿を象ったものだと考えられています。

ニュージーランドのマオリ族が使用する彫刻入りの天井板や石像も、同様に深きものどもを表現したものだという説があります。

オーベット・マーシュが南洋交易で発見した深きものどもの信仰が、実は太平洋の島々に古くから存在していたことを示唆する証拠なんですね。

出典

ダゴンは、H・P・ラヴクラフトによって創造され、その後多くの作家によって発展させられたキャラクターです。

初出作品

ダゴンが初めて登場したのは、1917年に執筆されたラヴクラフトの短編小説『ダゴン』です。

この作品では、第一次世界大戦中に太平洋上で遭難した商船の乗組員が、海底から隆起した奇妙な陸地で巨大な怪物と遭遇する様子が描かれています。主人公は古代の石柱に刻まれた浮き彫りを目撃し、そこに描かれた半魚人たちが巨大な海獣を殺す場面を見ます。

そして夜、月明かりの下で小山のような巨大な怪物が海から現れ、石柱を抱きしめながら嘆きの声をあげる——。主人公はこの怪物を、伝承上のダゴンと重ね合わせたんです。

インスマスの影

ダゴンの設定が大きく広がったのは、1931年に執筆された『インスマスの影』においてです。

この作品で、ラヴクラフトは「父なるダゴンと母なるハイドラ」という概念を導入し、深きものどもとの関係、ダゴン秘密教団、インスマスの町の悲劇などを詳細に描きました。

クトゥルフとの関係も明確に言及され、ダゴンがクトゥルフに仕える存在であることが示されています。

その後の発展

ラヴクラフトの死後、多くの作家がダゴンの設定を拡張していきました。

リン・カーターは、ダゴンをクトゥルフの配下の小神として明確に位置づけ、ハイドラを正式な妻であると設定しました。また、邪神の分類として「レッサー・オールド・ワン」という概念を提唱し、ダゴンをそこに分類しています。

オーガスト・ダーレスも、ダゴンを神格として扱い、クトゥルフ神話の体系の中で重要な位置づけを与えました。

TRPG『クトゥルフの呼び声』では、ダゴンを「不死である深きものどもが数百万年の齢を経て強大に成長したもの」と設定し、ゲーム上の明確な能力値が与えられています。

様々な解釈

ダゴンの正体については、研究者の間でも意見が分かれています。

ロバート・M・プライスは、ダゴンとクトゥルフが実際には同一の存在ではないかと考察しています。クトゥルフの別名、あるいは化身としてのダゴンという解釈ですね。

一方、フランシス・レイニーは、ダゴンを水の精として位置づけ、「ラヴクラフトはダゴンをクトゥルフの顕現か、深きものどもを直接支配する者として考えていたらしい」と分析しています。

2001年のスペイン映画『DAGON』では、ダゴンとクトゥルフを同一視し、蛸の姿で登場させるという大胆な解釈がなされました。

まとめ

ダゴンは、クトゥルフ神話における深海の恐怖を象徴する存在です。

重要なポイント

  • 半人半魚の種族「深きものども」を統率する神格的存在
  • 「父なるダゴン」と「母なるハイドラ」が対となって崇拝される
  • 6メートル以上の巨体で、水かきのついた手足と魚のような顔を持つ
  • 大いなるクトゥルフに仕える従者(小神、従属神)の位置づけ
  • 旧約聖書のペリシテ人の神に由来する名前
  • インスマスのダゴン秘密教団による崇拝
  • 深きものどもの長老説とクトゥルフの化身説がある
  • ラヴクラフトの『ダゴン』(1917年)と『インスマスの影』(1931年)が主要な出典

太古の昔から海底に潜み、人間社会に密かに影響を与え続けてきたダゴン。
その存在は、私たちがまだ知らない深海の恐怖を象徴しています。
もしかしたら今も、世界中の海の底で、父なるダゴンと母なるハイドラが目を覚ます日を待っているのかもしれません。

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