ウィンナーの切り込みは日本独特の文化だった!箸で食べるための工夫が生んだ昭和の知恵

雑学

「ウィンナーには切り込みを入れて焼く」
日本人なら当たり前のように思えるこの習慣、実は日本独特の文化だということをご存知でしょうか?
実は海外では一般的ではないこの習慣について、その真相と歴史的背景を詳しく解説します。

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ウィンナーの切り込み、実は日本だけの習慣

結論から言うと、ウィンナーに切り込みを入れて焼くのは、ほぼ日本だけで行われている習慣です。
ヨーロッパ、特にウィンナーソーセージの本場であるドイツやオーストリアでは、そのまま焼いて食べるのが一般的です。

イギリスの伝統的なソーセージ(バンガーズ)についても、英語の料理文献や食文化に関する資料を調査しましたが、切り込みを入れる習慣に関する記述は見当たりませんでした。
イギリスのソーセージは、グリルやフライパンで焼く、あるいはオーブンで焼くのが一般的で、切り込みを入れるという習慣は確認できませんでした。

なぜ日本だけ?その理由は「箸」

日本でウィンナーに切り込みを入れる理由、それは箸でつかみやすくするためです。

ウィンナーソーセージが日本の家庭に広まったのは昭和30年代(1955年〜1964年)。
当時、油を引いたフライパンで炒めるという調理法が紹介されましたが、大きな問題がありました。
それは、ツルツルと滑って箸でつかめないということです。

ドイツやオーストリアではフォークとナイフで食べるウィンナーソーセージ。
しかし日本では、ご飯のおかずとして箸で食べる文化です。
この「箸で食べる」という、ドイツ人が想定していなかった状況を解決するために生まれたのが、切り込みを入れるというアイデアだったのです。

ウィンナーの切り込みを考案したのは誰?

この画期的なアイデアを考案したのは、料理記者の尚道子(しょう みちこ)さんです。

尚道子さんは、料理評論家・岸朝子さんの姉にあたる人物です。
岸朝子さんはフジテレビ「料理の鉄人」で「おいしゅうございます」という表現で知られる料理記者・食生活ジャーナリストです。
なお、NHK「きょうの料理」に出演していたのは姉の尚道子さんの方です。
NHK「きょうの料理」などのテレビの料理番組でこの方法を紹介したことで、ウィンナーソーセージは一気に家庭料理として、またお弁当のおかずとして広まっていきました。

タコさんウィンナーも同じ人の発明

さらに驚くべきことに、誰もが知っている「タコさんウィンナー」も尚道子さんが考案したと言われています。

タコさんウィンナーは昭和30年代後半(1957年頃)から存在し、今では日本のお弁当文化を代表するアイコン的存在です。
キャラ弁やデコ弁の先駆けとも言える、この愛らしい飾り切りも、箸でつかみやすくするという実用的な目的から生まれたものでした。

ちなみに、「タコさんウインナー」はプリマハムの登録商標となっています。

切り込みの方向に決まりはあるのか?

「日本では左上から右下に切る」という話を耳にすることがあります。
しかし実際のところ、切り込みの方向に明確なルールや慣習はありません

日本の料理サイトやレシピ本を調べても、切り込みの方向について特定のルールを示しているものは見当たりませんでした。
縦に切る人、斜めに切る人、格子状に切る人など、切り方は人それぞれです。

方向についての話は根拠不明

「左上から右下に切るのは箸で食べやすいから」という理由付けには、明確な根拠が見当たりません。
実際には、切り込みの方向よりも、切り込みを入れることで表面積が増え、箸で引っかかりやすくなるという効果が重要なのです。

メーカーは切り込みをNGとしている?

興味深いことに、現代のウィンナーメーカー各社は切り込みを入れることを推奨していません

大手メーカーの見解

丸大食品、日本ハム、伊藤ハムなどの大手メーカーは、ウィンナーをより美味しく食べるために以下のポイントを挙げています。

切り込みを入れない方が良い理由

  1. 肉汁が逃げる
  • ウィンナーの美味しさは、噛んだ瞬間に広がる肉汁にあります
  • 切り込みを入れて焼くと、中の脂や肉汁が流れ出てしまいます
  1. パリッと食感が損なわれる
  • ウィンナーの特徴である「パリッ」という食感は皮によるものです
  • 切り込みを入れると、この食感が失われます
  1. 旨味成分が減少
  • 加熱によって切り込み部分から旨味成分が流出します
  • 結果として、パサついた味わいになってしまいます

実際の食べ比べ

切り込みありとなしで食べ比べをすると、明確な違いがあります。

切り込みなし

  • ジューシーでプリプリとした食感
  • 口に入れた瞬間、肉汁が溢れ出す
  • パリッとした皮の食感が楽しめる

切り込みあり

  • 少しパサつきがある
  • パリッと感がない
  • 旨味が欠けている印象

なぜ今でも切り込みを入れる人が多いのか

メーカーが推奨していないにもかかわらず、多くの人がウィンナーに切り込みを入れ続けています。
その理由をいくつか考察してみましょう。

1. 見た目の華やかさ

特にお弁当の場合、切り込みを入れることで見た目が華やかになります。
タコさんウィンナーや花形の飾り切りは、子どもが喜ぶ視覚的な楽しさがあります。

2. 昭和からの習慣

「ウィンナーは切り込みを入れて焼くもの」という認識が、世代を超えて受け継がれています。
親から子へ、祖父母から孫へと伝わる調理法として定着しているのです。

3. 箸でつかみやすい

本来の目的である「箸でつかみやすさ」は、今でも実用的なメリットです。
特に子どものお弁当では、食べやすさが重要視されます。

4. 破裂防止という誤解

「切り込みを入れないと破裂する」という誤解も広まっています。
しかし実際には、市販のウィンナーは加熱済みで、適切に調理すれば破裂することはほとんどありません。

ウィンナーメーカー推奨の美味しい焼き方

それでは、メーカーが推奨する本当に美味しいウィンナーの焼き方を紹介します。

丸大食品推奨の焼き方

  1. フライパンに油を引かない
  2. ウィンナーと大さじ1杯の水を入れる
  3. フタをして中火にかける
  4. 水分が蒸発したら完成

この方法は「蒸し焼き」と呼ばれ、ウィンナーの旨味を閉じ込めながら、ふっくらと仕上げることができます。

日本ハム(シャウエッセン)推奨の焼き方

  1. 沸騰したお湯にウィンナーを入れる
  2. 再沸騰したら火を止める
  3. 3分間そのまま置く
  4. 取り出して完成

ボイルする方法は、最も肉汁を逃さない調理法です。

伊藤ハム(アルトバイエルン)推奨の焼き方

  1. 電子レンジで加熱する方法もOK
  2. 600Wで30秒〜1分
  3. 簡単で肉汁も逃げにくい

切り込みを入れる場合の活用法

それでも見た目や食べやすさのために切り込みを入れたい場合は、以下のような活用法があります。

出汁として活用する調理法

切り込みから出た旨味を活かす料理なら、むしろ切り込みを入れるメリットがあります。

ポトフ

  • ウィンナーを半分や1/3にカット
  • 野菜と一緒に煮込む
  • ウィンナーから出た旨味がスープになる

カレーやシチュー

  • 細かく切って具材にする
  • 旨味成分がルー全体に広がる

パスタソース

  • 輪切りにして炒める
  • ソースに旨味が溶け込む

この場合は、「旨味を出汁にする」という明確な目的があるため、切ることが正解になります。

2種類のウィンナーを用意する

家族の好みが分かれる場合は、以下のような工夫も可能です。

  • 大人用:切り込みなしでジューシーに
  • 子ども用:タコさんウィンナーなど飾り切りで楽しく

同じフライパンで同時に焼けば、手間も増えません。

世界のソーセージ事情

最後に、世界各国のソーセージと食べ方について簡単に紹介します。

ドイツ・オーストリア

ウィンナーソーセージの本場では、ボイルまたはグリルで焼き、フォークとナイフで食べます。
切り込みを入れることはありません。
パンに挟んで食べる場合(ホットドッグ)も、ソーセージそのままです。

アメリカ

ホットドッグが主流ですが、ソーセージ自体に切り込みを入れることはありません。
焼いてパンに挟み、ケチャップやマスタードをかけて食べます。

イギリス

バンガーズと呼ばれる伝統的なソーセージは、グリルまたはフライパンで焼きます。
フルイングリッシュブレックファストの一部として、フォークとナイフで食べるのが一般的です。

韓国

ホットバーと呼ばれる串に刺したソーセージが人気ですが、切り込みは入れません。
衣をつけて揚げることも多く、日本とは異なる食べ方です。

まとめ:文化の違いが生んだ日本独特の知恵

ウィンナーの切り込みは、日本の箸文化とドイツのソーセージ文化が出会ったことで生まれた、日本独特の工夫でした。

この記事のポイント

  • ウィンナーに切り込みを入れるのは日本独特の習慣
  • 考案者は料理記者の尚道子さん(昭和30年代)
  • 理由は箸でつかみやすくするため
  • タコさんウィンナーも同じ人が考案
  • 「左上から右下に切る」という決まりは存在しない
  • イギリスで切り込みを入れる習慣も確認できない
  • 現在のメーカーは切り込みを推奨していない(肉汁が逃げるため)
  • ただし見た目の華やかさや食べやすさという別の価値がある

切り込み自体が日本独特の文化であるという事実は、食文化研究の観点から非常に興味深いものです。

美味しさを追求するなら切り込みなし、見た目や食べやすさを重視するなら切り込みあり。
どちらを選ぶかは、あなた次第です。

参考情報

本記事は、以下の情報源を参考に作成しました。

日本語の情報源

  • mybest「タコさんウィンナーは、こうして生まれた。」
  • Wikipedia「たこさんウィンナー」
  • eltha「ウインナーは切り込みNG?『ずっと間違ってた…』食品メーカーが”おいしさ損ねる三箇条”を伝授」
  • All About「ウインナーに切り込みをいれるのはNG? 意外と知られていないおいしい食べ方とは」
  • Yahoo!ニュース(栄養士食堂)「ウインナーは『写真のように焼かないで下さい!』大手メーカーがお願いするワケとは」
  • mamatas「意外と知らない?ウインナーに切り込みを入れる理由&かわいい飾り切り7選」

英語の情報源(イギリスのソーセージ文化調査)

  • Barker Bros Butchers「Stuart’s Guide to the British Banger」
  • Parker’s GBI「A Guide to Traditional British Sausages」
  • English Breakfast Society「A Guide to British Sausages」
  • Wikipedia「Sausage」(英語版)
  • TasteAtlas「Top 10 British Cooked Sausages」「9 Most Popular British Sausages」

※この記事は2025年2月時点の情報に基づいています。食品メーカーの推奨調理法は変更される可能性があります。

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